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第164回 中小企業の技術が支えるわが国のものづくり

「第24回中小企業優秀新技術・新製品賞」表彰式のもよう りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞は先ごろ、「第24回中小企業優秀新技術・新製品賞」を決定、4月11日に東京都千代田区のホテルグランドパレスで、世界に誇る中小企業の製品・技術39件が表彰された。

 同賞は、中小企業が開発する優れた技術や新製品を表彰することにより、わが国中小企業の技術振興を図り、産業の発展に貢献することを目的として実施しているもの。表面改質およびその評価技術関連では以下のとおりの受賞となった。

・熊防メタル「超硬質アルマイト イーマイトUH処理」…アルミ材料の表面硬度を高めるアルマイト処理において、従来処理がビッカースHV300~400HVだったのに対して、独自開発の処理液では、1.5倍以上の600HVを実現、鋼相当の耐摩耗性に加え耐食性を実現している。基材を鋼からアルミに置き換えて同処理を施すことで、機械的強度を保持しつつ重量を1/3抑えられるため、軽量化による燃費向上を目指す自動車部品に最適という。

・魁半導体「大面積大気圧プラズマ装置「SKlp-CBL300」」…同プラズマ装置は大気圧プラズマでは世界最大級となる30㎝核でのプラズマ発生を可能にした。自動車ガラスに使われるポリカーボネートの前処理では1秒間で10㎝のスピードで送ることができる。フロントガラスサイズに合わせて、発生面積が1.1×1.4mサイズの本格量産機の開発も進めているという。
ナノメートルサイズ摩耗の様子
・パルメソ「新しい材料表面強度評価のMSE試験装置」…同装置は、水と1μmのセラミックス微粒子をスラリー状に混合、圧縮空気を使って毎秒100mの速度で試料表面に噴射して同微粒子の摩耗度合いを計測し、摩耗率という尺度で評価する。マイクロスラリージェットというある種のブラスト処理を応用して試験評価技術を構築したもの。硬質薄膜材料の表面強さを評価する。たとえばダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬質膜やセラミックス材料、金属・樹脂材料の表面強度評価を20nm単位で行えるため、基材の影響を受けずに薄膜そのものの評価が可能という。
 
 第24回「中小企業優秀新技術賞・新製品賞」贈賞式で来賓の挨拶を行った経済産業省 中小企業庁・鈴木正徳長官は、「今回受賞した技術は独創性や新規性の面で類を見ない技術。昨年の東日本大震災で実用化されていればと惜しみつつ、わが国発の世界に冠たる技術として誇りに思う」と述べた。

 折しも中小企業庁では、「“日本の未来”応援会議~小さな企業が日本を変える~(略称:“ちいさな企業”未来会議)」を設置、30数ヵ所に及ぶ地方会議の開催を進めている。わが国企業の9割を占め、製造業、商業などわが国経済を支える中小企業が、内需減少、新興国との競争、震災・円高など厳しい環境の中で、いかにその潜在力・底力を発揮し、もう一度元気になることができるかは国民的課題であるとし、次代を担う青年層や女性層の中小企業経営者を中心に、中小企業団体、税理士などの士業、商店街関係者、生業、地域金融機関など、幅広い主体の参加の下、中小企業の経営力・活力の向上に向けた議論を行う。

 我が国からのインフラ輸出などで前線に立つ大企業の名が報じられることは多いが、実際には航空宇宙や新エネルギー、医療福祉などのビジネス化において、中小企業の技術が土台を支えているところは大きい。わが国企業の9割を占める中小企業の技術が今回のような表彰を機に日の目を見て、当面の課題である東日本大震災の復興や放射線の除染、さらには技術立国を支える国際競争力の高い技術として実用化され、社会に貢献していくことを願う。