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第168回 機械要素技術展に見る、求められるモーションテクノロジーと材料・表面改質技術

会場のもよう ベアリングや直動案内、ねじ、ばねなどの機械要素や、金属や樹脂などの材料・加工技術や表面処理・改質技術に関する専門技術展「機械要素技術展(M-Tech)2012」が6月20日~22日、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された。最新の製品技術を通して、直動案内などのモーションテクノロジーや材料・表面改質技術に対するニーズの傾向がうかがえた。

ベアリング・直動案内で新興国勢が示す過剰品質の見直し

会場のもよう2 エネルギー不足の中、省エネにつながる各種機械のベアリングの摩擦ロスの低減が求められている。これに対して、イグスは内外輪に自己潤滑性ポリマーを用いたポリマーボールベアリングを、オイレス工業では、水関連ビジネスでも使える水中・海水中での低摩擦を実現する固体潤滑剤埋込型軸受を展示した。

 工作機械や半導体・FPD製造装置などの直線運動を支える直動案内では、THKや日本トムソン、日本ベアリングなどがボールリテーナや潤滑部品などの装着により、高精度で低フリクション、長期メンテナンスフリーを実現する製品などを出展した。

 こうした中、中国や台湾など新興国からのベアリング製品・直動案内製品の出展も多く見られた。

 ゴトー・エンタープライズは一般的な鋼製ベアリングからセラミックベアリングまで、低コスト、短納期を実現する中国製ベアリングを紹介した。また、台湾に本社を置くハイウィンは、日本の機械装置で要求の多い精度や音の静かさなどをクリアしながらも、コストメリットや短納期を図る直動案内をアピールした。

 少し前、中国の工作機械需要の急増などから日本製の直動案内のデリバリーの遅れが問題になったことがある。その際に取りざたされたのが、直動案内の用途に対して過剰品質の製品が使われている例が多いのでは、ということだった。たとえばアルミの筐体に取り付けるのに、剛性の高い鋼製の、しかも高精度な直動案内が必要かといったことだった。アルミはたわむ上、アルミの筐体が使われる用途で求められる精度はそう高くないというわけだ。中国製や台湾製の直動案内では、そうした過剰品質の見直し気運の中、コストパフォーマンスや安定した供給体制の可能性を提起した。

医療向けなど新分野を目指す材料・表面改質技術

会場のもよう3 ものづくりの復権を目指し国をあげて医療やエネルギーなど新規産業の創出が進められる中、材料や表面改質技術でもそうした新分野での適用に向けた提案がなされた。

 ダイセル・エボニックは最も機械的特性の高いエンジニアリングプラスチックであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を展示、その高い機械的強度と生体適合性を生かした人工関節への適用や生体材料の接合部材としての適用を示した。

 カソードアークPVD法による水素フリーダイヤモンドライクカーボン(DLC)を展示したビヨンズは、骨腫瘍診断のために生体から骨標本を切り出すガイドピン式経皮骨針にDLC膜をコーティングすることで患者への負担を軽減した器具(静岡県県立がんセンターらと共同研究)を展示した。

 キスコは、化学蒸着法(CVD)による人体に安全で信頼性の高い透明なパラキシリレン樹脂コーティングを出展、ステントやカテーテル、内視鏡、手術器具、注射器ガスケットなど医療機器への適用を提案した。

 機械要素技術展は、「日本のものづくりワールド2012」のもとで開催された展示会の一つだが、今回の展示からは、新興国とのコスト競争や円高、エネルギー不足など厳しさを増す経済環境下で、生き残りをかけた我が国のものづくりの在り方をあらためて考えさせられたように思う。