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トライボコーティング技術研究会、令和4年度第3回研究会を開催

1年 9ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、令和4年度第3回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は12月9日、東京都江東区の東京都立産業技術研究センターで「令和4年度第3回トライボコーティング技術研究会」を開催した。

開催のようす

 

 当日は、大森会長の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。

・「都産技研 光学特性計測分野のご紹介」磯田和貴氏(東京都立産業技術研究センター)…都産技研では技術支援サービスとして、分光測定・オーダーメイド測定を通じた光学測定、光学定数や異方性などのよりミクロに踏み込んだ特性解析、エリプソメトリでの~10nmレベルの感度の膜厚解析を提供していることを紹介した。また、マイクロ~ナノオーダーの材料を基にした研究開発を行っている事例として、太陽光を対象に微細構造による光機能性の付与を試み、季節的な太陽位置の変化に着目して入射角依存の光学特性を設計し、夏と冬との間で~20%の反射率差を示す表面が得られたことなどを報告した。

・「めっき排水処理の課題とファインバブルを用いた排水処理技術」森久保 諭氏(東京都立産業技術研究センター)…めっき浴由来のアンモニアが高濃度で排水に混入することから開発したアンモニア処理技術が、少量でも影響の大きい脱脂剤由来の錯形成剤といった他の妨害物質に適用不可なため、脱脂剤削減を目指したファインバブル(FB)発生装置を利用した洗浄技術を開発。マイクロバブル発生量が高い装置では洗浄効果が高く、FB単独では気泡が届きにくい形状のワークではFBに超音波印加で付着物の除去効果が増加し薬品使用量を低減できることや、FB洗浄で亜鉛の排水処理性が向上することなどを報告した。

 講演後は大森会長が、次回研究会となる「第25回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム(通算第145回研究会)」について告知、シンポジウムの見どころとして「第15回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」の受賞記念講演について紹介した。大賞に輝いた東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏が業績名「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」で、事業賞に輝いた新明和工業を代表して岡本浩一氏が業績名「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」で、奨励賞に輝いた慶応義塾大学 小池 綾氏が業績名「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」で、それぞれ講演を行う。

第25回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウムの告知を行う大森会長

 

 その後、上記講演に関連して、分光エリプソメータや紫外・可視・近赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計などを備えた「光学計測実験室」と、FB洗浄装置などを備えた「環境負荷計測実験室」の見学会が行われた。

光学計測実験室の見学会のようす

 

kat 2022年12月10日 (土曜日)
kat

2022日本ダイカスト会議・展示会を開催、表面改質技術などが展示

1年 9ヶ月 ago
2022日本ダイカスト会議・展示会を開催、表面改質技術などが展示

 日本ダイカスト協会主催の「2022日本ダイカスト会議・展示会(j-dec 2022)」が11月10日~12日の3日間、横浜市西区のパシフィコ横浜で開催、展示会では154社・団体が出展した。2年に1回の同展は、2020年はコロナ禍により中止。今回は4年ぶりの開催となった。表面合改質関連では以下などの展示があった。

2022ダイカスト展示会のもよう

 オリエンタルエンヂニアリングは、プラズマCVD法により高張力鋼板のホットスタンプ金型をはじめとした各種用途に対応し、高い耐熱性、密着性、耐焼付き性を付与する硬質薄膜「OMC(H)(Oriental Magic Coating H)」を紹介した。プラズマCVD法のため拡散効果層と薄膜を一回の工程で複合処理できる。また、成膜温度が450~550℃と工具鋼の焼戻し温度以下の低温処理により変形がないという。さらに、被膜は徐々に組成を変える多層傾斜膜となっており高い耐摩耗性の膜が実現した。耐摩耗性と離型性を有しているため、成形精度を維持しつつ金型の寿命を向上させることができる。

オリエンタルエンヂニアリング「OMC(H)のサンプル」

 新東工業は、ショットピーニングを施すことで金型表面に圧縮残留応力を付与し耐ヒートチェック性を改善することにより型寿命が2倍以上に向上する「D-CHECK」、冷却孔止まり穴部へのショットピーニングにより冷却孔の応力腐食割れを抑制することで型寿命を3倍以上に向上する「D-SCC」、ダイカスト金型に細かなディンプルを形成することで鋳造時の湯流れを変化させ、溶湯の表層の温度低下、凝固速度の違い、流速の違い、空気の巻き込みによる不良発生を50%低減する「D-FLOW」を紹介した。また、ショットピーニングを処理した製品の全数検査が可能な表面評価技術「Sightia」のPRも行った。

新東工業のブース

 ニッチューは、ダイカスト製品用のハンガータイプにより製品同士がぶつからず、傷が付かない設計のショットブラスト装置「ZHBSF-100」の実機を展示。同装置は、小ロット生産も対応可能とし、コンパクトに設計された一室式の亜鉛ショット専用機。顧客の希望により硬質研削材対応や安全仕様集塵機へのグレードアップ、制御盤の位置変更等の対応も可能となっている。また、高性能RFD-3型ローターを搭載し、駆動モーターにはインバーターを付けたことでブラストの投射速度の調整も可能。作業者への安全配慮として、ワーク着脱口にはエリアセンサーなども備えている。

ニッチューのブース

 丸眞製作所は、ダイカスト金型向けコーティング(AlCrTiSi系複合多層膜)「MARC-D」を紹介。この被膜は緻密で耐溶着性、離型性、耐溶損性に優れており、TINやTiAlN、AlCrN被膜と比べて摩擦係数が低いという。硬度は3000Hv、膜厚2.5~4.0μm、酸化温度1100℃、処理温度は400~500℃となっている。窒化処理との複合処理を行う「MARC-D plus」も併せて紹介した。また、窒化ポテンシャル制御により用途に合った窒化層を提供するガス軟窒化処理「M-NCプロセス」は、γ'相主体の化合物層形成やε相主体の化合物層形成、ポーラス層を抑制した化合物層の形成、化合物層を形成しない拡散層のみといった機能特性に優れた表面形成が可能とした。

丸眞製作所「MARC-Dのサンプル」

 

admin 2022年12月9日 (金曜日)
admin

日本熱処理技術協会、2022年秋季講演大会を開催、イノベーション活動を報告

1年 9ヶ月 ago
日本熱処理技術協会、2022年秋季講演大会を開催、イノベーション活動を報告

 日本熱処理技術協会(https://jsht.or.jp/)は11月24日と25日の両日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場での対面参加とオンライン参加によるハイブリッド形式で、「第94回(2022年秋季)講演大会」(実行委員長:大林巧治・中部支部長(アイシン))を開催した。オンライン参加を含め約200名が参加して、一般セッションとシンポジウムセッション、田村・川嵜記念講演を含む全35件の講演がなされたほか、企業展示会が盛況裡に行われた。

開催のようす

 24日の開会の挨拶に立った大林実行委員長は「昨日(23日)のサッカーワールドカップでは日本がドイツに劇的な逆転勝利をおさめた。本講演大会でも、特に若い方々にサッカーワールドカップのパワーに負けないようなアグレッシブな発表をお願いしたい。また、久しぶりの対面開催となるこの機会に、質疑応答や意見交換、人材交流を活発に行っていただきたい。」と述べ、本誌取材に対し今講演大会の特色について次のように語った。

 「本講演大会は全てが見どころだが、一つ新しい試みとしてイノベーション活動である新企画『熱処理コンテスト』と『ねつ・が~る』の紹介がある。中部支部では、‟明るく、楽しく、熱く“をスローガンに、熱処理技術に関する学術・技術の発展を通じ、熱処理技術・モノづくりに取り組むすべての人の成長と、サスティナブルで豊かな社会の実現に貢献することを使命に掲げており、これまではセミナー中心の典型的教育活動を実施してきた。しかし参加者も企画する我々幹事も‟明るく、楽しく、熱く”の要素が少ないと考え、中部支部で2つの新企画を試行することにした。
 一つは、支給された試験片に自由に熱処理を施し強度を競う『熱処理コンテスト』で、中部支部発信の企画ながら全国から23チームに参加していただけた。多種多様な熱処理が施され、大企業のチームを抑えて、鳥取県金属熱処理協業組合のTeamTorinetsuが優勝し、コンテストは大変盛り上がった。参加者からは‟熱処理屋冥利に尽きる“、”若手に参加させたい”、‟熱処理の難しさ・面白さをあらためて感じた“など、熱い意見をいただいた。今大会内でのイノベーション活動報告では、その反響から開催が決まった第2回熱処理コンテストの新課題やスケジュールの発表を行い、その場で多くの方々に次回出場の表明をいただいた。
 もう一つは、熱処理に関わる女性からこれまでの歩みを含め自由に自己紹介をしてもらう企画『ねつ・が~る』。これまで8名の『ねつ・が~る』が紹介されており、様々な環境で、女性特有の課題を抱えながらも、職場上司や同僚の支援を受けながら熱処理技術や技能向上への取り組みが聞けて、女性に限らず多くの皆さんの参考、励みになると思う。イノベーション活動に期待していただきたい」。

イノベーション活動について語る大林実行委員長

 24日午後、大林実行委員長を座長にしたイノベーション活動報告では、鈴鹿工業高等専門学校の黒田大介氏から、イノベーション活動のねらい、概要説明と、下記8名の「ねつ・が~る」についての紹介がなされ、また、自薦・他薦を問わない「ねつ・が~る」の募集がなされた。
【ねつ・が~る】
・No.001 NTN 先端技術研究所 佐藤美有さん
・No.002 アイシン 生産技術本部 素形材生技部 舟本三恵さん
・No.003 トヨタ自動車 素形材技術部 表面改質技術室 古賀光絵さん
・No.004 鳥取県金属熱処理協業組合 製造課 高周波窒化係 係長 提嶋恭子さん
・No.005~008 アイシン 岡崎工場 マイルド浸炭ギヤ加工課
      新垣伶実さん、岩元成美さん、河津祐香さん、衣川優紀さん

 次いで、NTNの大木 力氏より、「第1回熱処理コンテスト」の結果、熱処理技術解説と全体考察が発表され、続いて、初代チャンピオンの鳥取県金属熱処理協業組合Team Torinetsuを代表し、川上昭徳氏が「第1回熱処理コンテストへの挑戦」と題して、強さを得るための熱処理技術確立に向けた取組みや、優勝したサンプルの分析・考察などについて発表した。

第1回熱処理コンテスト優勝の鳥取県金属熱処理協業組合を代表して講演した川上昭徳氏(左)と
ねつ・が~るNo.004の鳥取県金属熱処理協業組合の提嶋恭子さん(右)

 イノベーション活動報告の最後には、トヨタ自動車の西田幸司氏から「第2回熱処理コンテスト」の開催案内と課題発表が行われた。第2回熱処理コンテストの競技内容と新課題、規定は以下のとおりである。
【第2回熱処理コンテスト】
・課題:各1チームにつき以下の材質(および規定形状・規定寸法)の3点曲げ試験片を3本支給。3点曲げ試験における耐荷重が最も大きくなるよう熱処理等を実施し試験片1本を事務局に提出、事務局にて3点曲げ試験が実施され、最大耐荷重が評価
・試験片の材質:SPCC
・熱処理は自由で、試験片の厚さおよび幅の寸法変化が±0.1mmの範囲内であればショットブラスト、表面硬化処理、コーティング、平面研磨も可
・参加申込み受付開始:本年11月28日
・参加申込み受付締切:2023年1月20日
・参加者への試験片発送:2023年2月6日(予定)
・熱処理を施した試験片の提出締切:2023年3月31日
・参加費(税込):7000円/1チーム
・参加資格:1チームに1名以上の正会員、学生会員が参加、または維持会員(ただし、維持会員は1口1チーム参加可能とする)
・結果発表:2023年4月に愛知県技術開発交流センターで開催される「第13回中部支部講演大会」内で発表予定

 さらに24日には、同協会会長の奥宮正洋氏(豊田工業大学)による田村・川嵜記念講演「窒素を活用した熱処理の展望」が行われ、カーボンニュートラル等の課題から期待される窒素の有効活用として、高温のオーステナイト相中に窒素を浸入させた後に焼入れを行い浸炭同様に鋼表面の硬さを向上させつつ圧縮残留応力を付与し疲れ強さを向上させる「浸窒焼入れ」のプロセスなどについて解説したほか、アルミニウムの表面硬化熱処理への窒素の有効活用や窒化アルミニウムの機能材料への応用についても発表された。

奥宮会長による田村・川嵜記念講演のようす

 25日には「自動車部品の熱処理技術」をテーマに、大林実行委員長を座長にシンポジウムが開催され、日産自動車の塩飽敬之氏より自動車の電動化と生産技術について概観する基調講演のほか、全5件の熱処理(強化) 技術,装置技術、CAE技術などについての講演がなされた。

 また会期中は、熱処理関連製品、装置を扱う13社(旭千代田工業、ミクニ機工、マコー、アイエムティー、DOWAサーモテック、パルステック工業、山本科学工具研究社、IHI機械システム、日綜電工業、メタルヒート、メトロ電気工業、中外炉工業、堀場製作所)による企業展示会が併設された。

企業展示会場のようす

 例えば、メトロ電気工業は、スズキ、中部電力と共同開発し「平成27年度 省エネ大賞 省エネ事例部門 資源エネルギー庁長官賞」を受賞した「赤外線ヒーター式HIGH POWER金型加熱器」を出展した。加熱時間短縮、均一加熱、温度制御が容易、安全性向上、作業環境の改善、金型メンテナンスの低減、製品不良率の低減、設置が容易、CO2削減など、金型の予備加熱の従来方式であるガス燃焼方式における課題解決に伴う各種メリットの発現をアピールした。

メトロ電気工業「赤外線ヒーター式HIGH POWER金型加熱器」

 山本科学工具研究社は、JIS鉄鋼材料から代表的な材料を選定し、第1類から第7類に分類、これらに厳正な熱処理を施した「代表的な金属標準顕微鏡組織を現出した標本集(解説書付属)」を紹介した。大学や企業などにおいて熱処理後の金属組織を理解するための教材として有効利用が可能とアピールした。

山本科学工具研究社「代表的な金属標準顕微鏡組織を現出した標本集(解説書付属)」


 

kat 2022年12月8日 (木曜日)
kat

JIMTOF2022開催、コーティングやブラストなどの表面改質技術が集結

1年 10ヶ月 ago
JIMTOF2022開催、コーティングやブラストなどの表面改質技術が集結

 日本工作機械工業会と東京ビッグサイトは11月8日~13日、東京都江東区の東京ビッグサイトで4年振りとなる「JIMTOF2022(第31回 日本国際工作機械見本市)」を開催した。多品種少量生産に対応する複合加工機やマシニングセンタ+協働ロボットといった工作機械の出展が見られる中、金型・工具の耐久性向上などに関する表面改質技術が多数披露された。以下に一端を紹介する。

JIMTOF2022のようす

 IHI Hauzer Techno Coating(https://www.hauzertechnocoating.com)は、新開発のバッチ式PVDコーティング装置「Hauzer Flexicoat® 500」を紹介した。Flexicoat® シリーズの最小容量機種であったFlexicoat® 850 をより小型化したプラットフォームで、有効コーティング容量は小さくなるものの、大型の装置と同様に、磁場を最適化し面内均一のアークスポットが可能な独自アークイオンプレーティング「CARC+」や(デュアル)マグネトロンスパッタリング、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)が、Flexicoat® シリーズのすべての機能を利用できる。CARC+はドロップレット生成を抑えられる上、ターゲット使用率が高く、高い成膜レートを実現できる。また、イオン化率が非常に高く金属イオンと反応性ガスイオンの組成比が高いHuPIMS+の利用によって、平滑・高密度で欠陥がなく密着性の良いコーティングが高いコーティング速度で得られる。デュアルスパッタあるいはデュアルアークの装置構成が可能なため、大学・研究機関のR&D向けから、生産性(成膜速度)が重視される産業向けまでできる。マイクロドリルや複雑形状の金型など、仕上げ研磨の難しいアプリケーションに適している。今回はIHIグループ企業でコーティング受託加工を手掛けるIHI Ionbondや、CVD装置販売を手掛けるIHI Bernexと共同で出展した。

IHIグループのブース

 厚地鉄工( http://www.atsuchi-ascon.co.jp/ )は、強力な噴射力を発揮する直圧式の汎用手動機「BA-1」を展示。同装置は使いやすいコンパクトタイプで、同社独自の機構により加圧されたエアによって噴射力の強いブラスト処理ができる。これにより、ブラスト処理時間の大幅な短縮が可能になる。小さなブラスト装置内に集塵機、レギュレーター、エアフィルター、エア加減弁などの周辺機器を搭載して省スペース化。錆や塗装剥がし、難物の鋳造品・鋳物砂の除去、高硬度金属のブラスト処理など幅広い分野に対応できる。また、ロボット1台でブラスト処理から搬送までを可能にした「ABS-BS3-AT」の実機を展示。昨今、需要が急増しているロボットとブラスト装置を組み合わせるシステムを提案。ティーチングも含めた多品種対応が可能な点や、ロボットによりブラスト処理の高効率化、品質安定化、省力化を図れる点を訴求した。

厚地鉄工のブース

 神戸製鋼所(https://kobelco-coating.com/jp/)は、従来品と比べて、生成する被膜の長寿命化を達成したアークイオンプレーティング(AIP)装置「AIP-iXシリーズ」を紹介した。切削工具向けの代表的な被膜AlCrNは、コーティング被膜中のAlの含有量が多いほど耐酸化性に優れ高速切削や高切込みなどの難加工条件に適している一方で、Alの含有量が多くなりすぎる(概ね65at%以上)場合、被膜構造が高硬度な立方晶から六方晶へと変化し硬度が低下するという課題があった。AIP-iXでは搭載した新型蒸発源「μ-ARC」により、被膜の金属元素のうちAl含有率が70at%以上であっても立方晶を維持、硬質で表面粗度も良好なAlCrN被膜の成膜が可能となっている。また、新型エッチングシステム「Me-FAPE」が奥まった部分の密着性を向上し、処理空間内でのエッチング性能の均一性も改善。これらの搭載機能により、従来のハイエンド工具と比較して約1.5倍の寿命向上が確認されている。さらに、従来よりも大幅に広範囲な操業データをサンプリング・表示可能な状態モニターシステムを採用、トラブル発生時のスムーズな原因特定に貢献するほか、蓄積されたバッチごとのデータの状態推移をグラフ化し予防保全を容易にしている。

神戸製鋼所のブース

 新明和工業(https://www.shinmaywa.co.jp/pbp/)は、ダイヤモンドコーティングの適用について紹介した。同社のダイヤモンドコーティング装置は熱フィラメントCVD法を採用し、大面積にダイヤモンドを合成することが可能で、切削工具へのコーティングなど量産品への適用が可能となっている。独自技術により密着性を最適化し、導電性ダイヤモンドコーティングにも対応している。また、今回は「第15回岩木賞 事業賞」を受賞した、ダイヤモンドコーティングを被覆した工具の刃先先鋭化処理についても紹介した。プラズマイオン処理によりダイヤモンドコーティングが成膜された切削工具の刃先を先鋭化する装置を開発し、CFRP加工などで従来から行われている「捨て穴加工」を排除し生産効率向上に寄与することに成功したもので、プラズマのアンテナ効果を利用し、主として刃先のダイヤモンド被膜をイオンエッチングすることで先鋭化とドロップレットの低減を可能にしたほか、一度に複数本の工具が処理可能となっている。

新明和工業「ダイヤモンドコーティング工具の刃先先鋭化処理」

 CemeCon(https://www.cemecon.com/jp-ja)は、ミクロンサイズの粒子で構成され高い硬度と密着性を実現する「マイクロ・クリスタルライン」と、ナノサイズの微細粒子で構成され非常に滑らかで強靭な「ナノ・クリスタルライン」を交互に積層させる、CVD法によるダイヤモンドコーティングを紹介した。ダイヤモンド膜に最適な機械的/化学的前処理により、各層の比較的大きな粒子と微細な粒子がアンカー効果により優れた密着性を実現するほか、き裂が発生した場合でも層の境界を越えて広がることがない。切削工具用コーティングとして滑らかで高硬度・高靭性の膜を密着性よく成膜、高い寸法制御とシャープエッジ制御が可能なことをアピールした。また、HiPIMS技術によるコーティングを紹介。12μmまでの厚膜が可能で、ドロップレットのない平滑で高硬度・高靭性の膜を高密着に成膜できる。50HRC前後の高硬度材やステンレス鋼、チタンなどの加工に最適なTiAlSiNコーティング「InoxaCon🄬」と、インコネル718の高速加工などに最適なAlTiN コーティング「FerroCon🄬」の提案を展開している。

CemeConのブース

 パーカー熱処理工業( https://pnk.co.jp/ )は、同社独自の次世代型自動制御ガス窒化システム「NITRONAVI®」を搭載した窒化装置「RAV-N」を広築( https://www.hirochiku.co.jp/ )と展示した。NITRONAVI®を適用する最大のメリットは表面相制御による機械的特性の改善あるという。同システムは、窒化ポテンシャル(KN)制御により、鋼表面を化合物層レス、γ’相、またε相へ選択的に制御することができる。この結果、耐疲労性・耐摩耗性・耐食性等の機械的特性改善が可能になる。昨今の環境対応においても、従来のガス窒化/軟窒化で無駄に使用していたNH3ガスを処理ごとに最適化したレシピで運用することでNH3ガス使用量の圧縮が期待できるという。また、NITRONAVI®は自動で設定したKN値になるように雰囲気を制御する。この自動制御によって作業者のスキルに依存しない窒化/軟窒化処理を実現する。

パーカー熱処理工業のブース

 マコー(https://www.macoho.co.jp/)は、超硬チップ(スローアウェイチップ)処理用の最新ウェットブラスト装置「VD-W019」を紹介した。切削工具表面に付着した密着を阻害する不純物を完全除去し、ピュアな表面を露出させることで、コーティングの密着強度を従来の2倍以上に向上させるコーティング前処理効果を発現できる。また、超硬チップのPVDコーティングのドロップレット除去によるコーティングはく離・チッピングの防止や表面粗さ低減を実現できる。さらに、刃先のバリを除去し刃先にR付け(刃先ホーニング)を行うことで刃先のチッピングを防止、工具寿命を1.5~3倍に向上できるほか、すくい面と逃げ面R比率をコントロールし、K値(A/B比)を1.0~2.0に制御、高精度加工や複雑形状の加工に対応できる。

マコーのブース

 ヤマシタワークス(https://www.yamashitaworks.co.jp/)/日本スピードショア(https://speedshore.co.jp/)は、異形状ワークを簡単に短時間で鏡面仕上げ加工できる装置「エアロラップ」を展示した。エアロラップは、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、被加工材(ワーク)表面を高速で滑走させて発生する摩擦力によって磨くもの。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えることなく、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にしている。今回は、各種金型部品の磨き時間短縮、切削工具の寿命延長、DLCなどドライコーティング成膜の前後処理など、様々な用途で使用が可能で、再生可能なエコ製品で、食品素材をコアに持つ研磨材を用いていることをアピールした。今回はエアロラップにロボットを組み合わせて、ワークを所定の位置に設置、加工した後にワークを取り出してパレットに並べていくといった、自動化の提案を行った。

ヤマシタワークス/日本スピードショア「エアロラップの自動化システム」

 山本科学工具研究社( https://www.ystl.jp/ )は、JISやISOなどの各種硬さ試験規格(ロックウェル、ビッカース、ブリネル、ショア、リープ、超微小硬さ試験用など)で規定された硬さ試験機の定期検証・日常点検に利用される「高精度硬さ基準片」を展示。同社の基準片は、試験片面のどの部分を測定しても同じ硬さが出るように均一に製造されている。同社では、こうした精度の高い硬さ基準片を製造するための材料工学、熱処理技術、仕上加工技術を保有している。安定した数値が出ることから日本国内をはじめ、世界のあらゆる国でも認められ、国際的に広く使用されているという。

山本科学工具研究社「高精度硬さ基準片」

 

admin 2022年11月30日 (水曜日)
admin

表面改質展・真空展2022など6展が開催

1年 10ヶ月 ago
表面改質展・真空展2022など6展が開催

 「表面改質展2022」「真空展2022」「高精度・難加工技術展2022」など6展(主催:日刊工業新聞社)が10月19日〜21日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。表面改質関連では、以下のような出展があった。

 関東学院大学 材料・表面工学研究所(https://mscenter.kanto-gakuin.ac.jp/)は、最新の表面処理技術に関する実演や同研究所と技術供与契約を結ぶ企業数社の製品や技術を紹介した。会期中は材料・表面工学研究所 高井 治所長がUV照射による表面改質などの技術や効果などについてプレゼンを行った。また、ブース内でヤマトマテリアルは、同研究所で開発した、大豆を特殊加熱・特殊微粉砕する技術により非常に舌触りがなめらかで、超微粉で水に溶けやすく、様々な加工品への使用が可能な大豆粉(きな粉)である「ミラクルきなっこ」を紹介した。消化不良を引き起こす成分を取り除いた、おなかに優しい大豆粉で、風味の良いミルキーな味わい、たんぱく質・イソフラボン・オリゴ糖・サポニン・大豆レシチン・ビタミンB群・食物繊維・脂質・ミネラルの9種類の栄養成分を保持、健康と美容をサポートするスーパーフードとなっている。同社はまた、大気圧プラズマ装置「AP-4000シリーズ」を展示した。大気雰囲気下で圧縮エアのみでプラズマを発生る装置で、シリコーンゴム、エラストマ、汎用樹脂~スーパーエンプラ、CFRTPといった難接着材料の接着性の改善や塗装性、塗膜性の改善などにおいて、スポット処理だけではなく、回転ノズルを用いることでより広い面積に対してもプラズマ処理が可能となっている。
 

プレゼンを行う高井氏(左)と実演のようす

 

 東京電子(https://www.toel.co.jp/)は、10-⁷~10-¹³Pa台の残留ガス分析が高精度で行えるようにイオン源を改良した超高感度質量分析計「WATMASS-MPH」を紹介した。WATMASS‒MPHの技術をベースに超低ガス放出の真空構造材である0.2%BeCuで分析室を構成することによって、10-15Pa・m3/s (He)の極小リークを計測することが可能な「破壊分析型超高感度ガス分析装置」などを開発しているが、このほどプロセス評価やデバイスの品質管理・品質解析などを目的に、ユーザーから半導体デバイス等のサンプルを預かり、同社埼玉事業所に設けた受託分析ラボに設置した高精度の四重極型質量分析システムにより破壊/非破壊でガス分析を行う受託サービスを開始したと告知した。

WATMASS-MPH

 

 パーク・システムズ・ジャパン(https://www.parksystems.com/jp/)は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。
 

Park FX40

 

 ヤマシタワークス(https://www.yamashitaworks.co.jp/)/日本スピードショア(https://speedshore.co.jp/)は、異形状ワークを簡単に短時間で鏡面仕上げ加工できる装置「エアロラップ」を展示した。エアロラップは、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、被加工材(ワーク)表面を高速で滑走させて発生する摩擦力によって磨くもの。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えることなく、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にしている。今回は、各種金型部品の磨き時間短縮、切削工具の寿命延長、DLCなどドライコーティング成膜の前後処理など、様々な用途で使用が可能で、再生可能なエコ製品で、食品素材をコアに持つ研磨材を用いていることをアピールした。今回はロボットを組み合わせたシステムを披露。ロボットがワークを把持して装置キャビン内の加工部まで搬送し、ワーク全面が加工されるように装置内でワークを回転、加工後は装置外に取り出すという自動化の提案を行った。

エアロラップ+ロボットによる自動化の提案

 

kat 2022年11月30日 (水曜日)
kat

高機能トライボ表面プロセス部会 第19回例会と第20回機能性コーティングの最適設計技術研究会が合同開催

1年 10ヶ月 ago
高機能トライボ表面プロセス部会 第19回例会と第20回機能性コーティングの最適設計技術研究会が合同開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)「第19回例会」と日本トライボロジー学会 機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)「第15期 第1回(通算第20回)会合」が11月16日、名古屋市千種区の名古屋大学 ベンチャービジネスラボラトリー ベンチャーホールでの対面参加およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、合同開催された。

開催のようす

 

 高機能トライボ部会は、自動車の低燃費化・高性能化などへの高機能トライボ表面の寄与が増してきていることを背景に設立され、自動車関連・コーティング関連企業や、大学・研究機関などが参加しての分野横断的な議論を通じ、低摩擦/高摩擦、耐摩耗性などに優れた高機能トライボ表面のためのプロセス革新に向けた検討を行う場として機能している。

 また、機能性コーティングの最適設計技術研究会は、窒化炭素(CNx)膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の硬質炭素系被膜および二硫化モリブデン等の固体潤滑被膜を実用化する上で重要となるコーティングの最適設計技術の向上を目指し、幅広い分野の研究者・技術者が集い、研究会での話題提供と討論や、トライボロジー会議でのシンポジウムの開催などを行っている。

 機能性コーティングの最適設計のための研究開発を支える先進表面分析技術に関して,特にラマン分光分析の話題にフォーカス。上坂代表幹事/主査の開会挨拶に続いて、以下のとおり、4件の話題提供がなされた。
           
・「DLCをちょっと深く考えてみる」鷹林 将氏(有明工業高等専門学校)…DLCの化学構造とその変化はラマンスペクトルでよく表されると考えられているが、ラマンスペクトルは融合形状を示しピーク分離解析は困難であるため、DLCのラマン分光解析は多種多様となると解説した上で、以下のとおりまとめた。①DLCのラマンスペクトルは五つの活性バンド(N、D、G-、G+、D′)から構成されている、②各バンドはLorentz関数(G-バンドはBWF関数)を共通のGauss関数で畳み込んだ関数で表現できる、③光電子制御タウンゼント放電(PATD)中で成膜したDLCは、五つのバンドを明確に分離できる、④各バンドの比面積と位置シフト量からDLCの化学構造を類推できる。最終的にラマンスペクトル解析によってDLCの化学構造は、π共役の発展度合いがDLCの特性を決定するとした「sp2クラスターモデル」で説明できると結論、DLCはπ共役成長が緩やかで誘電性が特徴的な炭素材料である、と総括した。

・「各種分析手法によるトライボフィルムの分析事例紹介」沼田俊充氏(日産アーク)…各種分析手法を用いたトライボフィルム調査と摩擦特性との相関について解説。低分子添加剤の定性・含有量を見るLC-MS、金属錯体添加剤の変質を見るXAFS、元素の定量化を行うICPといったオイル(添加剤)の分析手法や、最表面の元素分布を見るAES、最表面の化学状態を見るXPS、被膜の厚さ・断面構造を見る断面TEMといったトライボフィルムの分析手法を組み合わせることで、オイルの劣化やトライボフィルムの化学状態・構造を解析し、摩擦特性への影響を考慮できる、とまとめた。また、NOxガスバブリングにより市販エンジンオイルを劣化させ、摩擦特性、添加剤含有量の変化、摺動面におけるMoS2の分布についてラマン分光法による分析を行った結果、AFMとラマン分光法の複合解析によって突起部のMoS2の被覆率を算出したほか、潤滑油中MoDTCの減少が摺動面接触部におけるMoS2の被覆率の低下を引き起こし摩擦係数の上昇につながることを明らかにした。添加剤分析、トライボフィルム分析の結果を総合的に解析することでオイルの劣化が摩擦特性へ与える影響を考察できる、と総括した。

・「熱可塑性高分子における顕微ラマン散乱分光法による結晶化度測定」山口 誠氏(秋田大学、オンライン講演)…今後市場が急拡大すると予測されている、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたCFRPとマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を使用したCFRTPという炭素繊維複合高分子材料について解説した後、熱可塑性高分子における、機械的特性に影響する結晶化度の評価法として、1μm領域という局所領域の評価が可能な各種のラマン散乱分光法について紹介した。CFRTPのマトリックス樹脂の熱可塑性高分子としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の低波数領域のラマンスペクトルを見ることで、結晶化度評価や結晶化度の局所空間分布評価を行った結果、炭素繊維との相互作用や局所加熱部周辺の結晶化度、レーザ加工における熱影響、局所ひずみなどを明らかにした。

・「表面増強ラマン分光法を用いた水素含有DLC膜の極表面測定~MoDTC分解中間物質による摩耗促進機構の解明~」野老山貴行氏(名古屋大学)…DLC膜表面の表面増強ラマン分光法(SERS)を用いた測定を簡便に行うための手法として、金ナノ粒子塗布または金スパッタ法を比較。増強効果を得るために最適な波長の選択やラマンデータの検出深さについて明らかにした。金スパッタ法に比べ金ナノ粒子塗布法はラマンシグナルの検出深さに優位性があり、通常ラマン測定法に比べ金ナノ粒子塗布法を用いたSERS測定では最大強度が増加したほか、SERS測定における波長の影響を明らかにした結果、特に633nm波長の場合にIDピーク強度が高く摩擦に伴う結晶構造の変化を検出する際に分かりやすい結果が得られるものと推測した。そのほか、MoDTC由来物質をそれぞれ純物質として添加したポリアルファオレフィン(PAO)油中における摩擦試験を行い、DLC膜の摩耗形態の分類(アブレシブ摩耗、水素脱離摩耗、炭素脱離摩耗)を行った。講演後は、野老山氏の所属する生産プロセス工学 梅原研究室を訪問、上述の研究を支える試験・分析評価機器の一部を見学した。

 

梅原研究室にて見学した機器の一例:大塚電子製の反射分光膜厚計「OPTM」
無潤滑下/潤滑油下の摩擦界面その場観察による摩擦メカニズムのその場解析などに適用

 

kat 2022年11月29日 (火曜日)
kat

ナノ科学シンポジウム2022が開催

1年 10ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2022が開催

 ナノテクノロジーとSPMに特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2022 : NSSJ2022)」が11月18日に、東京都文京区の東京大学 工学部2号館での対面参加およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により開催された。主催は関東学院大学材料・表面工学研究所(高井 治 所長)と東京大学大学院 機械工学科 機械工学専攻 薄膜とトライボロジー研究室(崔 埈豪 准教授)とで、協賛はパーク・システムズ・ジャパンとNanoScientific、ヤマトマテリアル、ワイエイシイテクノロジーズ、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

開催のようす

 

 本シンポジウムは、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウム。2020年から開催され、3回目となる今回では以下のとおり講演がなされた。

・特別講演「マイクロ・ナノスケールでのロボット技術とバイオメディカル応用」新井史人氏(東京大学 工学系研究科 教授)…マイクロ・ナノスケールのロボット技術は①分析目的、②実験目的、③医療目的などに有用なツールと見られている。本講演では、ロボット技術をベースにセンサーやアクチュエーターを搭載し、単一の細胞を対象とした計測・分離操作の自動化や、微量な液体サンプルを扱うことが可能なマイクロ流体チップシステム「オンチップ・ロボットシステム」の概要と、オンチップ・ロボットシステムを活用したバイオメディカル分野での計測事例などを紹介した。

・「導電性金属酸化物薄膜内キャリア輸送を探る・操る」山本哲也氏(高知工科大学総合研究所 教授)…本講演ではワイドギャップ酸化物薄膜の高速キャリア輸送を目的に、原子間力顕微鏡(パーク・システムズ製NX-10)による測定を用いた設計的な制御例をもとに、多結晶薄膜における結晶子間配向性の制御の有効性を開設した。NX-10による数nmでの構造物性の解析をもとに結晶子間配向や表面特性の制御を行うことで、キャリア輸送の向上や改善につながることが確認された。

・「非晶質炭素膜を帯電材として用いた高耐久性高効率すべり型摩擦発電機の開発」崔 埈豪氏(東京大学 工学系研究科 准教授)…本講演では、低摩擦性・高誘電率のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)ベースの薄膜を帯電材として用いて開発した、高効率・高耐久性の滑り型摩擦発電システム(TENG)について紹介。ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いて各種帯電材の表面電位や仕事関数を計測した結果、水素含有DLC膜(H-DLC)が正極材として有用で、フッ素含有DLC膜(F-DLC)が負極材として有用なことを、またTENGとしての出力評価・耐久性評価を行った結果、正極材H-DLCと負極材PTFEの組み合わせが表面損傷なく高出力が得られたことを報告した。

・「The Frontier in Nanotechnological Solution―From Mechanical to Various SPM Analysis―」Sang-Joon Cho氏(Park Systems)…本講演では、AFMプラットフォームと白色干渉計(WLI)および光誘起力顕微鏡(PiFM)を組み合わせたハイブリッド計測装置とその可能性について紹介した。SPMは他の計測装置に比べて特に高さや幅などの形状情報や物理情報をダイレクトで取得できるなど多くの特徴を有するが、開発した新しいハイブリッド計測装置では、AFMとWLIとの複合化によるAFMの高分解能の解析機能を有する広い領域の3Dイメージングと、PiFMによる材料の化学分析が可能になりナノスケールでの化学組成分析も合わせた情報量の多い解析結果が得られることを報告した。

・「AFMによる粘弾性計測の可能性」中嶋 健氏(東京工業大学 物質理工学院 教授)…ナノレオロジーAFMでは、標準装備の圧電スキャナーとは別に、高周波数帯域のピエゾアクチュエーターを導入、これを外部から駆動することで最大6桁に及ぶ周波数帯域での測定が可能になる。本講演では、ナノレオロジーAFMによるナノ粘弾性測定において、微小振動中の接触面積の周波数依存性を考慮した解析法を独自に導入することで、レオメーターによるマクロ粘弾性測定と同等まで定量性を向上させたことを報告した。

・「オペランド電位計測によるエネルギー変換・蓄積デバイスの評価」石田暢之氏(物質・材料研究機構 博士)…講演者は、光照射下や充放電動作中などのデバイス動作状態で直接評価を行う「オペランド電位計測」として、ナノ~原子スケールで物性観察が可能なSPMと破断や研磨によってデバイス内部を断面に露出させて測定を行う「断面計測技術」とを組み合わせた手法を開発している。本講演では、表面電位を計測する手法であるKPFMを用いて、次世代のエネルギー変換・蓄積デバイスであるペロブスカイト太陽電池や全固体リチウムイオン電池のオペランド解析事例を紹介した。電池動作時のイオンや電子の動きを解析するには、電池性能を保った状態で断面試料を作製し、電位計測を行うことが重要とした。

・「走査型イオン伝導顕微鏡を用いた時間分解力学計測によるがん細胞解析」渡邉信嗣氏(金沢大学 ナノ生命科学研究所 准教授)…本講演では、プローブと試料とが直接接触せずに極めて脆弱な細胞の力学特性を計測できる走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)の高速イメージング技術を用いて、がん細胞表層の経時変化を計測し、悪性度が高く高転移性を有する細胞は転移性が低い細胞や良性腫瘍細胞には見られない細胞表層の活発な変動が見られ、それら細胞の弾性率が有意に減少していたことや、SICM計測データから遺伝子型がおおよそ分類できることを紹介。また、細胞表層の力学特性計測から得られる情報が、がん細胞の転移能を予測できる可能性などを示した。

・「一次元遷移金属カルコゲナイドの成長と評価」宮田耕充氏(東京都立大学 理学部 物理学科 准教授)…遷移金属とカルコゲンから構成される遷移金属カルコゲナイド(TMC)は、その多彩なナノ構造と物性より,近年大きな注目を集めている一方で、その多量合成や構造制御が重要な課題となっている。本講演では、化学気相成長(CVD)を利用して高い結晶性を持つTMC細線からなるナノファイバーの大面積薄膜(多量合成)を実現したことを報告した。また、AFMや電子顕微鏡の観察によって、TMC細線が成長基板に依存して二次元的な単層・二層のシート構造や三次元的な束状構造など様々な集合状態を形成することや、TMC細線が金属的な高い電気伝導特性や異方的な光学応答を示すことなどを紹介した。

・「Beyond 5G/6Gに向けた電子デバイスと表面処理技術」盧 柱亨氏(関東学院大学 材料・表面工学研究所 教授)…Beyond 5G/6Gに向け重要なウェアラブルデバイスにおいて、講演者は薄膜で良く曲がる樹脂フィルム基板の上に、曲げ耐性が強く電気抵抗が低い銅の薄膜や回路形成などを無電解めっき法で形成することに成功しているが、同薄膜の密着性向上で必要とされる後工程のアニーリングにおいて、恒温槽や電気オーブンで行う従来手法では耐熱温度が低い樹脂フィルム材料では十分なアニーリングができないという課題があった。本講演では、樹脂への熱ダメージを抑制しつつ銅薄膜表面のみにアニールを施すことが可能な新開発手法「フラッシュランプ・アニーリング法」について紹介。従来法に比べて銅薄膜との界面を平滑に保ちながら銅の結晶性改良の効果が期待されることや、透明フィルム部分に光が透過することを利用し裏面照射を試み効果的であったことを報告した。

 当日はまた、10件のポスター発表が実施され、選考委員により最優秀賞1名、優秀賞2名が以下のとおり選考された。

◆最優秀賞

・「ナノ層状リアクターの電子移動反応を利用したアゾ染料の酸化分解と反応条件の最適化」佐藤 匠氏(関東学院大学工学研究科 友野研究室)

◆優秀賞

・「ナノレオロジー原子間力顕微鏡によるナノ粘弾性測定の定量性の向上」樫森康晴氏(東京工業大学物質理工学院 中嶋研究室)

・「パルス電流を用いたスルファミン酸Ni浴による高速めっきの検討」莫 凡氏(関東学院大学材料・表面工学研究所)

授賞式のようす:最優秀賞受賞の関東学院大学・佐藤 匠氏(写真中央)と、
優秀賞受賞の東京工業大学・樫森康晴氏(右)と関東学院大学・莫 凡氏(左)

 

kat 2022年11月22日 (火曜日)
kat

KISTEC、トライボロジー技術フォーラムの参加呼びかけ

1年 10ヶ月 ago
KISTEC、トライボロジー技術フォーラムの参加呼びかけ

 神奈川県産業技術総合研究所(KISTEC、 https://www.kistec.jp/ )機械・材料技術部は12月12日、神奈川県海老名市の同研究所本部で「令和4年度トライボロジー技術フォーラム」を開催する。当日は会場での開催と同時にオンライン上でライブ配信を行うハイブリッド形式にて開催する。問い合わせ・申し込みはこちらから。内容は以下のとおり。

「開会挨拶」

髙木 眞一 氏(KISTEC 機械・材料技術部 部長)

「表面処理・コーティングの機能性向上技術としゅう動界面の観察技術の応用実例」

村島 基之 氏(東北大学 工学研究科 機械機能創成専攻 准教授)

 機械表面における表面粗さや表面エネルギーを含めた表面性状は、摺動特性に大きな影響を与える。しかし、例えば表面粗さでは図面の記号からも分かるように、上限値以下であればよいという管理がされるのが実情である。本講演では表面性状の最適化により生まれる新しい表面機能性を企業共同研究の事例を交え解説する。また、最新の界面観察技術を摺動特性評価に活用した最新研究事例を解説する。

「環境調和型潤滑剤とDLCを用いたグリーントライボロジー技術動向」

加納 眞 氏(KANO Consulting Office 代表)

 環境にやさしい潤滑剤とDLCコーティングの組み合わせによる超低摩擦特性は、近年多くの論文が公開されているだけではなく、すでに欧州では実量産適用に向けた国家プロジェクトが実施されている。その適用ターゲットの一つが歯車となっている。本フォーラムにおいては、それらに関連した摩擦特性や開発動向について紹介する。 

「潤滑状態や潤滑剤の化学構造によって異なるDLCコーティング膜の摩擦特性」

吉田 健太郎 氏(KISTEC 機械・材料技術部)

 カーボンニュートラルの実現、SDGsの観点からダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜と環境負荷の小さい潤滑油を用いて超低摩擦化技術の開発に取り組んでいる。今回、その一部である潤滑状態や潤滑剤の化学構造によって異なるDLC膜の摩擦特性について紹介する。

「トライボロジー関連設備見学」

見学は、会場参加者のみ。

admin 2022年11月14日 (月曜日)
admin

第15回岩木賞に、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏、新明和工業、慶応義塾大学 小池 綾氏が受賞

1年 10ヶ月 ago
第15回岩木賞に、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏、新明和工業、慶応義塾大学 小池 綾氏が受賞

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(FPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第15回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもので、当該分野で多くの功績を残した故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設されたもの。

 15回目となる今回は、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏が業績名「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」により大賞に輝いた。また、新明和工業が業績名「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」により事業賞に輝いた。さらに、慶応義塾大学 小池 綾氏が業績名「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」により奨励賞を受賞した。

 大賞の業績「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」は、高分子材料の初期破壊現象であり工業的には抑制されるべき現象であるクレージング現象を制御しつつ活用しナノ多孔高分子フィルムおよび繊維を開発するという世界唯一の技術である。高分子のクレーズの内部はナノオーダーのフィブリル(繊維束)とボイド(孔)からなるスポンジ状ナノ構造であり、本業績では、脆性に破壊する高分子フィルムの破壊直前の状態を管理・制御する技術を開発することで、フィルムあるいは繊維状の素材に、安定したクレーズを生じさせるとともに、規則構造を持たせることに成功したもの。本技術により、視点により透明性が異なる視界制御性フィルムや水中にマイクロバブルを発生する膜として上市されていることや、本技術を繊維製品等に多用途展開するベンチャー企業FiberCrazeがスタートしていることなどが評価され、受賞に至った。

 また、事業賞の業績「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」は、一般的にダイヤモンド成膜がTiNやTiALNなどのPVD膜に比べて膜厚が厚く切削工具に施すと刃先Rが大きくなり切削性能が低下するのに対し、プラズマイオン処理によりダイヤモンド成膜された切削工具の刃先を先鋭化する装置を開発し、CFRP加工などで従来から行われている「捨て穴加工」を排除し生産効率向上に寄与する技術を確立したもの。従来からレーザーを用いてダイヤモンド成膜した切削工具の刃先を先鋭化する技術はあったが、ツールパスの設定が難しく、加工後の表面状態が必ずしも良好とは言えず一部基材の露出も見られる場合がある。本開発は、プラズマのアンテナ効果を利用し、主として刃先のダイヤモンド被膜をイオンエッチングすることで先鋭化とドロップレットの低減を可能にしたほか、一度に複数本の工具が処理可能で従来技術が抱える問題を解決できることなどが評価された。

 さらに、奨励賞の業績「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」は、世界に先駆けて実施した高重力場アディティブマニュファクチャリング(AM)の研究成果である。宇宙空間の微小重力場で金属AMを用いた保全などを行う際、粉末が浮き、スパッタがどこまでも飛び、内部欠陥が浮力の減少でいつまでも排出されないなど、粉末床溶融結合法(PBF)は実行困難となる。本業績では、10Gまでの高重力場を作用させる装置を開発、造形プロセス評価において、1Gでは造形面に粉末が凝集したのに対し、10Gでは凹凸の少ない粉末床を形成し、スパッタの発生が合成加速度の逆数に比例して減少することが、また、造形物品質評価では、1層造形物のうねりが10Gで低減しボーリング現象を抑制することや多層造形物の密度と硬さが向上し金属組織の微細化が図られることが確認された。高重力場を援用した超微細構造造形を用いることで機能性表面生成への重要な一歩となる可能性が評価された。

 第15回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2023年2月24日に埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所で開催される「第25回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム」(通算145回研究会)で行われる予定。

kat 2022年11月8日 (火曜日)
kat

メカニカル・サーフェス・テック2022年10月号 特集「自動車の表面改質」10/25に発行

1年 11ヶ月 ago
メカニカル・サーフェス・テック2022年10月号 特集「自動車の表面改質」10/25に発行

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2022年10月号 特集「自動車の表面改質」が当社より10月25日に発行される。

 今回の特集「自動車の表面改質」では、環境対応を視野に入れた自動車における熱処理・表面改質技術適用状況について、内燃機関ピストンリングに適用されているドライコーティング技術について、EVやFCVなど次世代車両を含む自動車分野における窒化処理やDLCコーティングについて、欧米においてブレーキディスクの耐摩耗性技術として行われている軟窒化処理について紹介する。

 また、クローズアップコーナーにおいては、PVDコーティング最前線として、アルミニウム含有率70at%以上の立方晶AlCrN皮膜の形成を可能としたPVDコーティング装置について、試験・評価最前線として、材料表面強度試験による汎用窒化とアトム窒化の比較、樹脂上めっきと樹脂表面改質の関係、DLC膜の性能発揮調査について紹介する。

 

特集:自動車の表面改質

◇自動車の環境対応への熱処理・表面改質技術の貢献・・・日産自動車 藤川 真一郎
◇内燃機関ピストンリング用ドライコーティング技術について・・・TPR 菅原 駿
◇自動車におけるDLCコーティングおよび塩浴軟窒化処理の最近の動向・・・HEF DURFERRIT JAPAN ジュリアン グリモ 氏に聞く
◇欧米における軟窒化処理によるブレーキディスクの耐摩耗性向上・・・ナイトレックス・メタル 堂田 明良

PVDコーティング最前線

◇高Al含有の立方晶AlCrN皮膜を成膜できるPVDコーティング装置の開発・・・神戸製鋼所 尾石 昂

表面試験・評価最前線

◇自動車の軽量化・高剛性化・耐久性向上に資するMSE試験・・・パルメソ 松原 亨

連載

注目技術:実ワークのコーティング膜厚・膜質検査が可能な顕微分光膜厚計・・・大塚電子

トピックス

ナノ科学シンポジウム2022が11月18日にハイブリッド開催
JASIS2022開催、測定・分析技術が一堂に集結

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admin 2022年10月24日 (月曜日)
admin

トライボコーティング技術研究会、令和4年度第 2 回研究会を開催

1年 11ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、令和4年度第 2 回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は10月5日、東京都板橋区の板橋区立文化会館で「令和4年度第2回研究会」をリアルおよびオンラインによるハイブリッド形式で開催した。今回は、「第50回:マイクロファブリケーション研究の最新動向」、「第10回インテリジェント/AIものづくりシンポジウム」との同時開催で、テーマは「レーザーによる表面改質、トライボコーティング評価技術、自由曲面オプティカルファブリケーション」。「第9回板橋オプトフォーラム(IOF)」との同時開催となる。

 当日は、大森氏による趣旨説明の後、以下のとおり講演がなされた。

開催のようす

 

第一部:特別セッション

・「微細加工関連の最新研究動向~ MIRAI会議にみるマイクロ・トライボファブリケーション事例~」大森 整氏(理化学研究所)…本年8月19日に三条市立大学で開催された国際会議「MIRAI会議 第15回シンポジウム(15th MIRAI Conference on Micro-Fabrication and Green Technology)」におけるマイクロ・トライボファブリケーション研究の概要を紹介した。埼玉工業大学・長谷亜蘭氏からはアコースティックエミッション(AE)を用いたトライボロジー現象の解明に関する話題が、オンワード技研からは高付加価値を生むDLCコーティングなどPVDコーティング技術の話題が、三条市立大学からはレーザ誘起湿式改質法による先端的表面機能の創成に関する話題が提供された。理化学研究所からはまた、電解インプロセスドレッシング(ELID)研削およびイオンショット加工を通した表面改質技術について紹介、CMPも併用することで骨粗鬆症の患者へのインプラント埋め込みにも有効とした。

・「新しいデンタルインプラントの創出―パルスレーザ加工によるジルコニアインプラントの表面改質―」水谷正義氏(東北大学大学院/理化学研究所 大森素形材工学研究室)…歯科インプラントへの応用を目的にレーザ改質したジルコニア表面の特性を評価、材料学的知見からはジルコニアへのレーザ改質は表面の変色・還元・低温劣化の促進をもたらし、また、レーザ改質後の変質は追加熱処理により改善できることが、生物学的知見からはレーザ改質による粗面化は細胞挙動を良好にするが、レーザ改質による変質は細胞の活性に良好な影響を与えない可能性があることが分かった。また、パウダー・ジェット・デポジッション(PJD)という粒子衝突手法による革新的歯科治療の事例として、ハイドロキシアパタイト(HA)の成膜による、う蝕(酸によって歯質が脱灰・欠損する口腔内疾患)の新しい治療法を提案した。

第二部:トライボセッション

・「実ワークのトライボコーティングの膜厚・膜質検査のご紹介」岡本宗大氏(大塚電子)…三次元形状体に成膜されたDLC膜などの膜厚(1nm~)の解析に加えて、光学定数(屈折率:n、消衰係数:k)といった膜由来の構造解析を、非接触・非破壊・顕微で迅速に計測できる顕微分光膜厚計「OPTMシリーズ」の技術と適用事例を紹介した。同じく非破壊計測であるエリプソメトリー法では最小スポット径が大きいため特定の部位の計測が難しいほか、数十秒~数分の計測時間を要するなどの課題があったのに対し、顕微分光膜厚計では高速オートフォーカス機能により、1ポイント1秒以下の高速計測を実現するほか、最小スポット径が3μmと小さいため微小領域で狙った部位を計測できる。最適化シミュレーションデータ生成の高速化やFFT Multi Pro(多層同時解析)などの新機能について紹介したほか、切削工具のDLC膜やペットボトルのDLC膜・シリカ膜の膜厚・膜質測定の事例を紹介した。

第三部: マイクロセッション

・「自由曲面光学部品および微細構造表面の高精度加工技術」閻 紀旺氏(慶應義塾大学)…スピンドル回転と工具運動を同期させるスローツールサーボ機構を用いた超精密旋削加工は非軸対称な自由曲面形状でも短時間・高精度に加工できる一方、複数の誤差要因によって理想形状と実際の加工形状の間に誤差が発生するため、形状誤差を計測し補正することが必要とされる。講演では、考えられるすべての誤差要因を包括的に分析し加工前に予測に基づき補正することで1回のみの加工でナノレベルの形状精度を実現できる補正技術について紹介した。また、サブマイクロオーダーの工具輪郭誤差が形状精度を低下させる課題に対し、白色干渉計を用いて工具輪郭を計測しフィードフォワード補正をかけることで、1回の加工で形状精度150nmの自由曲面旋削を可能にする機上計測・補正技術を紹介した。さらに、分割切削法による追従誤差低減や、その他の微細構造表面加工技術について提案した。

 当日は光学・精密機器関連の企業展示と大学研究室によるポスター発表が行われ、トライボコーティング関連では企業展示で大塚電子とナノコート・ティーエスが、ポスター発表で埼玉工業大学マイクロ・ナノ工学研究室(長谷研究室)、理化学研究所 大森素形材工学研究室が参加した。

 

大塚電子の展示のようす

 

ナノコート・ティーエスの展示のようす

 

理化学研究所大森素形材工学研究室の展示のようす

 

 講演終了後は「第5回IOF Award企業展示・大学研究室ポスター発表奨励賞表彰式」が開催され、企業展示3件とポスター発表2件が表彰され、トライボコーティング関連では、埼玉工業大学 長谷研究室が選ばれた。光学部品表面におけるナノメートルオーダーの精度・品位を維持するためには、加工表面で起こるトライボロジー現象の認識と制御が必須となるが、同研究室では材料の変形・破壊時に発生する弾性応力波を計測するAEセンシングの活用と摩擦界面で起こるトライボロジー現象の可視化など多角的な研究に取り組んでおり、今回はそれらの研究を通じて光学部品の生産技術への寄与を目指していることなどが評価された。

 

第5回IOF Award 大学研究室ポスター発表奨励賞表彰式のようす
:右から二番目が埼玉工業大学・長谷亜蘭氏

 

kat 2022年10月17日 (月曜日)
kat

ナノコート・ティーエス、11月1日に東京本社・トライボロジーラボを移転

1年 11ヶ月 ago
ナノコート・ティーエス、11月1日に東京本社・トライボロジーラボを移転

 ナノコート・ティーエス(https://www.nanocoat-ts.com/)は11月1日、東京本社およびトライボロジーラボを東京都立川市に移転する。東日本の営業体制を強化するとともに、トライボロジーラボの規模を拡大することで受託試験の増強を図る狙い。以下の新拠点で業務を開始する。

〒190-0003 東京都立川市栄町6-1 立飛ビル3号館407
本社(代表) TEL:042(537)7134
本社(営業) TEL:042(537)7535
トライボロジーラボ TEL:042(519)7504
本社/トライボロジーラボ FAX:042(519)7584

立飛ビル3号館


 

kat 2022年10月13日 (木曜日)
kat

JCU が染料系化合物を使用しない装飾用硫酸銅めっきプロセス開発

1年 11ヶ月 ago
JCU が染料系化合物を使用しない装飾用硫酸銅めっきプロセス開発

 JCU( https://www.jcu-i.com/ )は、金属やプラスチック素材にめっきを行う工程において、環境に負荷がかかる染料系化合物を使用しない高レベリング(平滑性)装飾用硫酸銅めっきプロセス「CU-BRITE DF-10」を開発した。

 独自に開発した非染料系の化合物をめっき薬品に添加することで、染料系化合物を使用したプロセスと同等以上の平滑性と光沢性をもつ銅めっき被膜外観にすることを可能にしたうえ、作業環境が改善される。同プロセスは従来の染料系プロセスの設備がそのまま使用可能で、焦げつきやピットなどの外観不良も大幅に抑制できる。また、染料系プロセスよりも活性炭による浄化が迅速に行えるなどの利点もあり、生産性向上にも大きく貢献できる。国内外の装飾めっき市場のニーズにお応えできる価格で提供できるよう、2022 年内の販売開始を目指している。

 自動車や水栓金具などに使用される部品の一部は、美しい金属外観および防錆機能を持たせるため、めっき技術により素材上に金属膜を形成している。その工程の一つである装飾用硫酸銅めっきプロセスでは、平滑で光沢のある外観を得るために、めっき薬品の添加剤として染料系の化合物を使用することが一般的。しかし、染料系化合物は合成する際に強力な酸化剤などを使用することから、製造工場での土壌汚染や、排水・廃液処理における環境負荷の軽減が課題となっている。また、染料系化合物は樹脂などの表面への吸着性が強く、少量の使用でも作業環境や周囲への汚染が広がるなど取り扱いが難しい物質でもある。同社では、染料系化合物の環境負荷を重く受け止め、非染料系の化合物でも従来プロセスを上回る性能を持つプロセスの開発を進めてきた。

左:硫酸銅めっきプロセスの使用例(自動車ドアハンドル) 右:装飾用めっき工程の一覧

 

admin 2022年10月11日 (火曜日)
admin

シチズン時計、DLCコーティングの新色を21年ぶりに開発

1年 11ヶ月 ago
シチズン時計、DLCコーティングの新色を21年ぶりに開発

 シチズン時計は、腕時計のケースやバンドの素材表面に特殊な加工処理を施すことで時計本来の美しさを傷から守る独自の表面硬化技術「デュラテクト」において、従来ブラックのみだった「デュラテクト DLC」から21年ぶりの新色となる「デュラテクト DLCブルー」を開発した。このDLCブルーを採用した製品を男性向け主力ブランド「シチズン アテッサ」から、ブランド35周年記念第3弾「Blue Universe Collection」として本年11月10日より発売する。

デュラテクト DLCブルーを採用したBlue Universe Collection


 

 開発したDLCブルーは、独特の深い青色を素材表面に施すことができる表面硬化処理技術で、傷に強く、滑らかな触り心地のDLCの特性を維持しつつ青色を実現。シャボン玉が虹色に見える現象と同じ「薄膜干渉」という原理に着目し、高度なDLC成膜技術を用いて開発した。

 DLCはダイヤモンドと黒鉛の間の性質を持つ炭素膜だが、炭素同士のつながり方次第で黒鉛のような黒色にもダイヤモンドのような透明にもなる。同社では今回、成膜条件を最適化したダイヤモンド寄りの透明に近いDLC膜を開発。これを通常の黒色のDLC膜の上に成膜して積層構造とした。これに光を当てると、透明のDLC膜の表面で反射する光と、透過して下の黒色のDLC膜表面で反射する光とに分かれ、それぞれが干渉し合う「薄膜干渉」を起こす。その際、膜の厚みによって、特定の波長が強くなったり、弱くなったりすることで色が変わるが、同社では数十nmレベルで膜厚を均一に制御する高度な技術を用いて青色の波長を強め、DLCのみを用いて深い青色を生み出すことに成功したもの。

 

DLCブルーの膜構成

 

DLCブルーの深い青色を生み出す原理


  

 DLCは擦り傷に強いだけでなく、非常に滑らかな触り心地が特徴で、同社では業界でいち早く2001年から腕時計にDLCを採用し、男性モデルを中心に数多くの商品を展開している。これまでブラックに限られていたDLCに新色DLCブルーが登場することで、デザインのバリエーションが広がることになる。

 このDLCブルーを採用した男性向け主力ブランド「シチズン アテッサ Blue Universe Collection」(本年11月10日発売)の詳細は、同ブランドのウェブサイト(https://citizen.jp/attesa/special/blueuniverse/index.html)で確認できる。

kat 2022年10月11日 (火曜日)
kat

日本熱処理技術協会、11月7日、8日に2022年度 第3回熱処理技術セミナーを開催

2年 ago
日本熱処理技術協会、11月7日、8日に2022年度 第3回熱処理技術セミナーを開催

 日本熱処理技術協会は11月7日、8日、対面参加(鉄鋼会館6階:東京都中央区日本橋茅場町3-2-10)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、「2022年度 第3回熱処理技術セミナー-熱処理基礎講座Ⅱ-」を開催する。今回は、浸炭・窒化・高周波といった代表的な表面硬化熱処理技術を中心に、これらの熱処理とは不可分な金属学的現象への解説を加えて、熱処理技術を中心に据えた基礎講座プログラムとしている。

参加申込締切は10月26日で以下のURLから申し込みができる。定員はオンライン参加が80名で、対面参加が先着20名。参加費は正会員36000円(税込)、維持会員36000円(税込)、非会員56000円(税込)。

URL  https://forms.office.com/r/myE6PS0ivN

 内容は以下のとおり。

11月7日

・9:50~10:00「オンライン配信に当っての注意事項」日本熱処理技術協会 事務局
・10:00~11:30「鋼の焼入性と合金元素」梅澤 修氏(横浜国立大学)

・12:30~14:00「拡散」中田伸生氏(東京工業大学)

・14:10~15:40「残留オーステナイト」土山聡宏氏(九州大学)

・15:50~17:20「鉄鋼材料の高強度化と変形・破壊の基礎」田中將己氏(九州大学)

 

11月8日

・10:00~11:30「金属の高温酸化」上田光敏氏(東京工業大学)

・12:30~14:00「表面硬化熱処理の基礎」奥宮正洋氏(豊田工業大学)

・14:10~15:40「鉄鋼材料の窒化・浸窒処理における組織制御の考え方」宮本吾郎氏(東北大学)

・15:50~17:20「高周波熱処理」竹屋昭宏氏(第一高周波工業)

kat 2022年9月30日 (金曜日)
kat

ナノ科学シンポジウム2022が11月18日にハイブリッド開催

2年 ago
ナノ科学シンポジウム2022が11月18日にハイブリッド開催

 ナノテクノロジーとSPMに特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2022 : NSSJ2022)」が11月18日10時~17時半に、対面参加(東京大学 工学部2号館:東京都文京区本郷7-3-1)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により開催される。主催は東京大学機械工学科(准教授崔 埈豪氏)と関東学院大学材料・表面工学研究所(所長 高井 治氏)で、協賛はパーク・システムズ・ジャパンとヤマトマテリアル、ワイエイシイテクノロジーズ、後援は日刊工業新聞社、メカニカル・テック社とNanoScientific。

 シンポジウムHP(https://event.nanoscientific.org/jp)から参加登録できる。参加費は無料。

 

 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウムで、今回のNSSJ 2022では、科学に変革をもたらすSPMの幅広い応用と技術に焦点を当て、先端技術のための新しいナノ材料、機能性表面、さらにナノテクノロジーやSPMを使った応用技術についても紹介する。

 2020年から開催され3回目となる今回は、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表がなされる。

特別講演 マイクロ・ナノスケールでのロボット技術とバイオメディカル応用 新井史人氏(東京大学 工学系研究科 教授)

最先端のロボット技術として、近年、AIによる知能化技術が注目される一方で、微細な対象物の分析、微細作業の自動化や、小型集積化技術といった、マイクロ・ナノスケールでのロボット技術はフロンティア技術として重要である。これらのロボット技術のバイオメディカル分野への応用は、活発化している。例えば、単一の細胞を対象とした計測・分離操作の自動化や、微量な液体サンプルを扱う必要性が増している。そこで、本講演では、マイクロ・ナノスケールでのロボット技術とバイオメディカル応用にフォーカスし、マイクロ流体チップと微小プローブによる微小力計測や関連する応用例などを紹介する。

導電性金属酸化物薄膜内キャリア輸送を探る・操る 山本哲也氏(高知工科大学総合研究所 教授)

導電性金属酸化物薄膜の膜厚を 50nm から更に 10 nm 以下と薄くしていくと、膜厚はキャリア電子が他のキャリア電子と衝突しない自由な距離(平均自由行程)と同程度となっていく。ポイントの1つは結晶構造や導電性を維持しながらの膜成長を可能とさせる薄膜成長装置の実現の可否にある。薄膜構造を表面、基板との界面、及びバルクとの3つに分けられると仮定し、そのキャリア電子輸送特性を操ることを目標とする定量的議論を行う。議論の焦点は該特性を決める支配因子を明らかにすることである。ナノスケールでの秩序の乱れと縮退系との科学を紐解く。

AFMによる粘弾性計測の可能性 中嶋 健氏(東京工業大学 物質理工学院 教授)

原子間力顕微鏡によるソフトマテリアル の粘弾性計測の方法には古くからさまざまな方法が考案されてきている。静的なフォースカーブの弾性理論からの逸脱を議論する方法、タッピングモードの位相像からエネルギー散逸を評価する方法、そして最近ではナノレオロジーAFMとも呼ぶべき手法がいくつか存在する。発表ではそれらの手法および応用事例について簡単にレビューし、将来の方向性について現在考えていることを述べる。

Beyond 5G/6Gに向けた電子デバイスと表面処理技術 盧 柱亨氏(関東学院大学 材料・表面工学研究所 教授)

「高速」「大容量」「低遅延」「多数端末との接続」の特徴をもつ5G高速モバイルネットワークの普及によりBig dataを上手く処理することができるようになり、全てのモノがインターネットによって繋がっているIoE (Internet of Everything)の実現に拍車がかかり、AI、自動運転、遠隔医療など、時代は、Industry 4.0からSociety 5.0への期待が高まっている。データをより高速で安定的に伝送するためのBeyond 5G/6Gの技術の研究開発が活発に行われており、そのうち、材料の長所を生かし、新たな機能を付与できる表面処理技術の研究・開発も重要視されている。本講演では、ウェアラブルデバイスのFlexible樹脂フィルム基板上への回路形成などに応用するための最終ステップとして銅薄膜の密着力と結晶性を向上させるために行う恒温槽での熱処理代わりにMulti-shot Flash Lamp による新しいアニーリング法について紹介する。

非晶質炭素膜を帯電材として用いた高耐久性高効率すべり型摩擦発電機の開発 崔 埈豪氏(東京大学 工学系研究科 准教授)

摩擦発電は、生活や自然の中の機械エネルギーを電気に変換する発電技術であり、バッテリーを必要としない自己発電型IoTセンサーへの応用が大いに期待される。帯電材間の相対運動により生成する電荷を用いて発電する摩擦発電は、帯電材表面間の高速相対滑りにより発電効率は高められるが、帯電材の摩擦損失と耐久性が大きな問題である。本研究は、従来のポリマー帯電材に代り、低摩擦性・高誘電率の非晶質炭素膜を帯電材として用いることで、高効率・高耐久性の滑り型摩擦発電システムの開発を行った。摩擦発電は小型モバイル機器への応用が大いに期待されており、非晶質炭素膜を成膜する薄膜プロセスは小型デバイスの制作に有効である。

一次元遷移金属カルコゲナイドの成長と評価 宮田耕充氏(東京都立大学 理学部 物理学科 准教授)

遷移金属とカルコゲンから構成される遷移金属カルコゲナイド(TMC)は、その多彩なナノ構造と物性より,近年大きな注目を集めている。一方で、その多量合成や構造制御は未だ重要な課題となっている。我々のグループでは、この課題の解決に向け、化学気相成長(CVD)を利用した合成技術の開発を進めてきた。本発表では、TMCの一次元ナノ構造の成長と評価に関する最近の成果を紹介する。

高速走査型イオン伝導顕微鏡による生細胞表層ナノ力学動態の可視化 渡辺信嗣氏(金沢大学 ナノ生命科学研究所 准教授)

 

オペランド電位計測によるエネルギー変換・蓄積デバイスの評価 石田暢之氏(物質・材料研究機構 博士)

近年、エネルギー変換・貯蔵デバイス(太陽電池、リチウムイオン電池等)が盛んに研究されている。我々はこれらデバイスの動作原理の理解、および、デバイス設計指針の獲得を目的として、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いたナノスケール電位計測に取り組んでいる。特に、光照射下や充放電動作中などのデバイス動作状態で直接評価を行う「オペランド電位計測」に関する基盤技術の開発を行っている。本発表では、次世代デバイスとして注目を集めるペロブスカイト太陽電池や全固体リチウムイオン電池の評価・解析事例を紹介する。

kat 2022年9月30日 (金曜日)
kat

JASIS2022開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

2年 ago
JASIS2022開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

 日本分析機器工業会と日本科学機器協会は9月7日~9日、千葉市美浜区の幕張メッセ 国際展示場で、分析機器・科学機器の総合展示会「JASIS2022」を開催した。当日は、322社・機関、982小間の出展と新技術説明会が59社/225テーマの講演が多数催された。来場者は12465名(昨年8490名)、新技術説明会の聴講者数は6908名(同4813名)だった。

JASIS2012のもよう

 エリオニクス( https://www.elionix.co.jp/ )は、DLCなどの硬質被膜やめっき皮膜、フィルム材料などの樹脂材料、微小粒子や粉体材料の硬さ・弾性率などの機械的特性を測定できるナノインデンテーション試験機「ENT-5」の展示を行った。振動や温度変化などの外乱の影響を抑えた機構で、高いデータ再現性を実現。高荷重ユニット(5μN~2000mN)と低荷重ユニット(0.5μN~10mN)の交換が容易、装置の校正をユニット交換により行うことでメンテナンス性を向上している。純国産のため親しみやすいGUIとなっている。

エリオニクス「ENT-5」

 大塚電子(https://www.otsukael.jp/)は、ゼータ電位・粒子径・分子量測定システム「ELSZneo」を紹介した。ELSZseries の最上位機種で、希薄溶液~濃厚溶液でのゼータ電位・粒子径測定に加え、分子量測定を可能にしている。新しい機能として、粒度分布の分離能を向上させるため多角度測定を採用。また、粒子濃度測定やマイクロレオロジー測定、ゲルの網目構造解析も可能にした。新しくなったゼータ電位平板セルユニットは、新開発した高塩濃度対応コーティングにより、生理食塩水などの高塩濃度環境下での測定が可能。

大塚電子「ELSZneo」

 新東科学( https://www.heidon.co.jp/ )は、直交バランスアーム方式や測定中にカバー可能な機構を採用したスタンダードモデルの摩擦摩耗試験機「トライボギアTYPE:40」の実機を展示した。摩擦力を測定する荷重変換器を測定子直上に配置し、不要な機構をなくしたことにより、高いレスポンスとセッティングの誤差を排除した。また、試料テーブルの摺動方向をアームに対して直交させことにより、往路復路の荷重変動をなくし耐摩耗性評価の信頼性を大幅に向上させた。さらにY方向ステージを標準装備して13mmストロークするように設計、一度試験が終わった後もサンプルを付け替えることなく別の部分で測定が行える。オプションのトライボソフトを使用するとパソコンから簡単に条件入力、解析、さらに試験操作まで行える。

「トライボギアTYPE:40」

 THK(https://www.thk.com/)は、軸受に求められる機能と非磁性を高次元で両立する直動案内「LMガイド」、ボールねじ、ボールスプライン、クロスローラーリングといった「高機能非磁性製品」を紹介した。磁気をほとんど帯びず、かつ軸受に適した硬度を持つ特殊合金「THK-NM1」を使用することで、比透磁率が1.005未満という高水準の非磁性を実現、強磁場を発生させる核磁気共鳴分析装置(NMR)や電荷を帯びた粒子を扱う透過型電子顕微鏡(TEM)などでの使用に最適。また、特殊熱処理技術により、軸受に適した硬度が得られることで、従来のオーステナイト非磁性鋼と比べて大幅に優れた耐荷重性能を発揮、従来よりも小型形番を選定できるため装置全体のダウンサイジングに貢献できる。

THK「高機能非磁性製品」

 パーク・システムズ・ジャパン(https://www.parksystems.co.jp/)は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。

パーク・システムズ・ジャパン「Park FX40」

 ブルカージャパン ナノ表面計測事業部(https://www.bruker-nano.jp/)は、ナノ機械特性およびナノトライボロジー特性評価が可能な、コンパクト設計の卓上型ナノインデンテーションシステム「Hysitron TS 77 Select」を展示した。ナノからマイクロスケールで信頼性の高い機械的特性およびトライボロジー特性評価を提供。ナノ機械特性評価で最も利用頻度が高く、ベーシックな手法である定量的ナノインデンテーション試験、ナノ摩耗試験、In-Situ SPMイメージング技術、高解像度の機械的特性マッピング技術を有したエントリーモデル。オプションとして動的ナノインデンテーション、ナノスクラッチの機能も用意。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部「Hysitron TS 77 Select」

 堀場製作所(https://www.horiba.co.jp/)は、検出器の改良と信号処理を高速化する独自アルゴリズムの採用で分析時間を最大65%削減するとともに、卓上型蛍光X線で世界初のホウ素からの軽元素分析を実現する微小部X線分析装置「XGT-9000 Pro/Expert」を展示した。蛍光X線では検出が非常に難しいホウ素(B)の分析が可能になったことで、より一般的な炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)などの軽元素が高感度に分析でき、従来は複数の装置を用いざるを得なかった酸化物や窒化物、有機物などの分析も1台で完結できる。

堀場製作所「XGT-9000 Pro/Expert」

 リガク(https://japan.rigaku.com/ja)は、品質管理現場に最適なX線回折装置「MiniFlex_XpC」を展示した。誰でも簡単に使用でき、測定者による誤差のない評価が可能。広い検出面積を誇る高分解能・高速1次元検出器で測定データの高強度化を実現できるため測定時間が短縮可能。品質管理に最適な試料ローディング機構により、装置の扉を開かずに簡単に試料設置が可能。D/teXUltra250による短時間測定により作業効率を向上できる。最小3タップ(3クリック)で測定、解析、結果の一覧表示と合否判定ができる。5年程度の長期耐久性能を備えた試料水平小型ゴニオメーターを搭載。

リガク「MiniFlex_XpC」

 レニショー(https://www.renishaw.jp/)は、研究グレードの顕微鏡に高性能のラマン分光装置を統合した「inVia™ 共焦点ラマン顕微鏡」を展示した。効率の高い光学系により、極微量の物質からでも、最短時間で最高のラマンデータが得られる。高感度のため薄膜や単層から極わずかなラマン散乱でも検出しラマンスペクトルを取得できる。総合的なマッピングとイメージング技術の搭載により、2D領域でも3D空間でも情報にあふれた詳細なラマンイメージを生成できる。In Via Qontorの自動フォーカストラッキング技術により、曲面・粗面のサンプルでも分析でき、光学像観察とラマン測定の両モードでフォーカスを維持できる。

 

admin 2022年9月29日 (木曜日)
admin

JAST、第19回 機能性コーティングの最適設計技術研究会を開催

2年 ago
JAST、第19回 機能性コーティングの最適設計技術研究会を開催

 日本トライボロジー学会(JAST)の機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)は9月5日、「第15期 第1回(通算第19回)会合(オンサイト会議)」を開催した。

開催のようす

 

 同研究会は、窒化炭素(CNx)膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の硬質炭素系被膜および二硫化モリブデン等の固体潤滑被膜を実用化する上で重要となるコーティングの最適設計技術の向上を目指し、幅広い分野の研究者・技術者が集い、研究会での話題提供と討論や、トライボロジー会議でのシンポジウムの開催などを行っている。

 今回はDLC膜をはじめとする表面改質やナノ粒子による低摩擦化技術、接触部位における解析技術にフォーカス。上坂主査の開会挨拶に続いて、以下のとおり、2件の話題提供がなされた。

挨拶する上坂氏

 

「潤滑油添加剤MoDTCとの反応性を高めたDLC膜、炭素系ナノ粒子による低摩擦化の展望」馬渕 豊氏(宇都宮大学)…摩擦調整剤MoDTCとの反応性を高めるDLC膜の研究では、遷移元素であるNi を蒸着したDLC膜が反応性向上に有効として着目。ta-C膜にNiを蒸着した膜ではta-C膜に比べ摩擦係数が半減したことが確認されたほか、Ni蒸着ta-C膜のオージェ分析結果からは、Ni の蒸着により表層にMoS2の生成とそれを支持するFe3O4/Niの2層構造が認められ、NiがMoS2の支持層であるFe3O4の生成を促進する可能性があるとした。また、ナノダイヤモンド、フラーレン、酸化グラフェンなどの炭素系ナノ粒子による低摩擦メカニズムの研究では、①炭素系同素体のナノ粒子は、分散剤であるグリセリンモノオレート(GMO)との共存下で摩擦係数が1/10にまで低下すること、②その内訳としてGMOの効果が約7~8割を占めること、③GMO添加量の低下に伴い二次粒子径が増大し摩擦係数の増大につながること、④摩擦メカニズム解析として吸着サイト数NEBCを定義して整理した結果、各ナノ粒子の摩擦係数との相関が認められたが粒子の構造を超えた統一的な整理には至らなかったと総括した。

講演する馬渕氏

 

「スパッタ薄膜を用いた固体表面接触部の測定について」川口尊久氏(宇都宮大学)…従来の真実接触部の検出方法では困難だったメゾスケールの大きさの真実接触部について、弾性接触を含めて詳細に検出できる方法として、固体表面に数nmの厚さでスパッタ薄膜を被覆し、その薄膜が接触によって相手表面に移着することを利用し真実接触部を検出する方法を紹介した。ここでは、滑らかなガラス平面試料に金(Au)のスパッタ薄膜を、表面に数十nmRaの微小な粗さを持つ鋼球に白金(Pt)のスパッタ薄膜を成膜し、負荷荷重を変えて二面を押し付ける実験を行い、ガラス平面試料側の薄膜が鋼球側に移着した接触部の様子を光学顕微鏡とSPM(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した事例を紹介。押し付け実験後の平面試料を光学顕微鏡で測定した結果からは、接触痕の全体像から、荷重の増加に伴い接触痕の接触した範囲の半径が大きくなっていくことが分かったほか、接触痕の中心部付近は荷重の増加に伴って微細に接触した個々の領域が外周部に比べてより大きくなっていることが、接触痕の外周部付近では個々の微細な接触領域が中心部に比べて小さく点在していることが分かった。また、SPMにより接触痕を観察した結果、個々の微細な接触領域が荷重の増加に伴って大きくなる様子や新たな接触領域の発生などの様子がより詳細に観察できた。

講演する川口氏

 

 講演終了後は、川口研究室、馬渕研究室、宇都宮大学分析センターの見学会が、それぞれ実施された。

 

川口研究室の見学会のようす

 

馬渕研究室の見学会のようす

 

宇都宮大学分析センターの見学会のようす


 

kat 2022年9月28日 (水曜日)
kat

トライボコーティング技術研究会、令和4年度特別研究会、第13回トライボコーティング・ドライコーティング合同研究会を開催

2年 ago
トライボコーティング技術研究会、令和4年度特別研究会、第13回トライボコーティング・ドライコーティング合同研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 主任研究員 大森 整氏)は9月2日、東京都板橋区の理研板橋連携研究センターで「令和4年度特別研究会」を開催した。本研究会は、第13回となるトライボコーティング・ドライコーティング合同研究会を兼ねて、リアルおよびオンラインによるハイブリッド開催となった。また本研究会はマイクロ加工懇談会などとの同時開催となった。

 当日は、大森会長の開会挨拶に続いて、関連イベントの開催状況の報告ならびに講演概要の紹介がなされた。 

進行する大森 整会長

 続いて以下のとおり講演がなされた。

・「チタン合金およびNi基超耐熱合金切削時のコーティング膜損傷とその対策、超高圧クーラントについて」臼杵 年氏(東京大学生産技術研究所)…航空・宇宙・エネルギー産業向けの難削材切削加工のためのコーティング工具の開発を行っている。切削工具のコーティング技術と特徴の解説とともに、Ni基合金の切削加工時に生じるコーテッド工具のコーティング膜損傷の事例と分析結果が紹介された。その結果、コーティング膜損傷は、表面から1μmまでの表層でのせん断破壊に起因することが示された。さらに、コーティング方法によるコーティング膜損傷の原因には特徴的な違いがあり、特にドロップレットは破壊起点になり得ることから大きく影響を及ぼすとした。また、切削時のクーラント供給について、油剤は切削領域の周辺にしか侵入できず、熱源周辺部で熱を奪い刃先の冷却がなされるものの、潤滑膜による潤滑機構は考えにくいとの考えが示された。
 

講演する臼杵氏

 

・「ワイドギャップ半導体基板のスラリーレスダメージフリー研磨プロセス‐プラズマ援用研磨と電気化学機械研磨‐」山村和也氏(大阪大学)…新しい高能率ダメージフリー製造プロセスの研究開発の一環で、形を創り(Figuring)、表面を磨き(Finishing)、性質を変える(Functionalization) というF3プロセスとして、大気圧プラズマを援用した化学的無歪加工プロセスが提案されている。アプリケーションとしてワイドギャップ半導体基板である単結晶SiCウェハの仕上げ研磨へ適用され、プラズマ照射の援用によりスクラッチフリー、無歪状態の表面創成が実現された。また、GaNへの適用もなされ、良好な結果が得られた。続いて、焼結AlN基板の脱粒フリー研磨、単結晶ダイヤモンド基板の加工事例の紹介が行われ、スラリーレス電気化学機械研磨について紹介がなされた。
 

講演する山村氏

 

 講演に続いて、今後の予定、参画行事について紹介がなされた後、大森素形材工学研究室内の施設見学会が行われ、大気圧プラズマによる表面処理の試み、AI加工システムの基礎開発状況、ナノダイヤモンド含有砥石によるナノ表面加工について、現場での熱心な質疑と意見交換が行われた。 
 

見学会のようす

 

kat 2022年9月13日 (火曜日)
kat

オリンパス、米・ファンドに科学事業分野を売却

2年 1ヶ月 ago
オリンパス、米・ファンドに科学事業分野を売却

 オリンパス( https://www.olympus.co.jp/ )は、科学分野の製品を取り扱う子会社エビデント( https://www.evidentscientific.com/ja/ )を投資ファンドの米・ベインキャピタルに売却すると発表した。2023年1月4日を目途にエビデントの全株式をベインキャピタルに譲渡する。

 オリンパスは、内視鏡事業および治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、経営基盤の強化に努めている。また、医療分野と科学分野のそれぞれの事業特性に合った経営体制を確立することが各事業の成長と収益性の向上を加速させ、同社グループ全体の企業価値向上に資すると判断し、2022年4月に同社の科学事業をエビデントとして分社化した。

 エビデントが事業を手掛ける科学事業分野は、世界的に根強い需要に支えられている。ライフサイエンス分野を支える生物顕微鏡は学術・医学分野の研究開発市場、病理検査市場に加え、近年は創薬や不妊治療支援の需要の拡大を支えている。また、産業分野では、拡大する半導体市場や電子部品市場に向けた工業用顕微鏡や自動車・航空・ガスパイプライン・発電配電装置・金属・貴金属など、多分野に渡る製造・インフラ検査向けの工業用内視鏡・非破壊検査機器・蛍光X線分析装置を提供している。

 このような活況な市場環境の中、エビデントの事業の特性に合った機動的かつ柔軟な意思決定を可能にすることが、同社のさらなる成長・拡大につながると考え、エビデントの全株式をベインキャピタルに譲渡する結論に至ったという。

 オリンパスの竹内康雄社長は「ベインキャピタルにはエビデントの事業の価値と成長の可能性を深く理解していただいているとともにエビデントがグローバルな組織としての連携力と、積極的に最新技術を実用化する卓越した企業文化によって多様な顧客ニーズに応え、これまでオリンパスに貢献してきたことも高く評価していただいている。ベインキャピタルはエビデントにとって、その事業特性に応じた最適な事業環境を提供し、企業価値を持続的に最大化できる最適なパートナーであると確信している」と述べている。

 エビデントの齋藤吉毅社長は「エビデントはベインキャピタルの元で引き続き、革新的な製品・ソリューションを顧客に提供していく。これまでのノウハウを活用し、今後はクラウドを含むデジタル技術を活用したソリューションを拡充することで、研究や検査分野におけるワークフローの改善および顧客への提供価値向上に努めていく。より自律的な経営が可能になることで、アジャイル型の製品開発やオープンイノベーションを推進し、顧客の課題解決に向けた製品の展開スピードをより高められると考えている」と述べている。

 

admin 2022年9月2日 (金曜日)
admin
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