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ナノ科学シンポジウム2023がハイブリッド開催

11ヶ月 1週 ago
ナノ科学シンポジウム2023がハイブリッド開催

 ナノテクノロジーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)に特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2023 : NSSJ2023)」が10月27日に東京都文京区の東京大学 浅野キャンパス 武田ホールで、対面参加とオンライン参加からなるハイブリッド形式で開催された。主催は関東学院大学材料・表面工学研究所とパーク・システムズ・ジャパンで、協賛はNanoScientificとヤマトマテリアル、Ark Station、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

参加者による記念撮影


 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、SPMの登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウム。2020年から開催され4回目となる今回は、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表がなされた。

・特別講演「ナノテクノロジーとナノ原子(=水素)考察」西 和彦氏(日本先端工科大学(仮称))…注目される水素を作るナノテクノロジーの着想点として、粒子の大きさを小さくし総表面積(反応面積)を大きくする、反応温度を上げる、反応気圧を上げるという化学反応の加速や、究極の水素ビジネスである水を還元して水素にする還元剤の研究、水素を貯蔵・デリバリーするナノカプセルの生成のほか、常温核融合もどき、常温超電導の周辺、元素間融合など、ビジネスになる理論・実学の追求を目指し新設する日本先端工科大学(仮称)の研究分野の一端を紹介した。

特別講演を行う西氏


・「AFMナノインデンテーションによる1次元グラフェン歪み格子の作製」田中悟氏(九州大学)…グラフェンに歪み(勾配)を加えると発生する「擬磁場」は電子の運動を仮想的に表す「場」であるが、実際の電子はあたかも磁場下にあるような運動を行う。この擬磁場を周期的に形成することでランダウ量子化,無磁場の量子異常ホール効果の観察が期待されるが、そのためには1・2次元周期歪みグラフェンの形成が必要となる。ここでは1次元歪み格子の実現のため、AFMナノインデンテーションによるSiC表面への周期的ナノトレンチ構造の形成とグラフェン転写による歪みの導入を試みた結果を議論した。

・「SPM技術を用いた全固体電池の評価」富沢祥江氏(太陽誘電)…全固体電池のサイクル特性やレート特性などの性能向上を図る上で、効率的・効果的な解析技術が不可欠となる。全固体電池の詳細な動作解析を行う目的でSPM装置を導入した。SPM技術の中でもケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)による電位分布評価は、電池を駆動させながら(operando計測)、電極内部の電位変化を可視化できるため、不良箇所を特定したり、正負各極の動作メカニズムを詳細に解明したりできる強力な手法である。ここではKPFM以外にも、SPMを活用した材料物性の評価事例、全固体電池デバイスの解析事例を紹介した。

・「3D Heterogeneous Integrated System Chip Technology」G.P. Li 氏(カリフォルニア大学 )…ここでは、将来のエッジシステムとして、統合センシングやワイヤレス通信、AIデバイスを支える3Dヘテロジニアス集積システム(3D HIS)チップ技術を取り上げた。3D HISはムーアの法則を超える半導体のナノエレクトロニクスを実現する。提案された3D HISチップ技術の研究は、相対的な人認知機能を模倣する多機能3Dシステムの開発に注がれていると述べた。

・「薄膜デバイスにおける巨大磁気回転効果」能崎幸雄氏(慶應義塾大学)…マクロな回転運動から磁気を生み出す磁気回転効果は、約100年前にアインシュタイン、ドハース、バーネットによって発見された。しかし、キロヘルツオーダーの高速な回転運動でも地磁気程度の微弱な磁気しか生み出せなかったため、これまでその応用研究はほとんど行われてこなかった。講演者は、最新のナノテクノロジーを駆使することにより、薄膜デバイス内にギガヘルツオーダーの超高速な回転運動を生成し、巨大な磁気回転効果を生み出すことに成功した。当日は、磁気回転効果の基礎とその薄膜デバイス構造を概説し、磁気回転効果のデバイス応用についてその可能性を語る。

・「AFM Methodologies for Quality Assessment of Lithium-ion Battery Electrodes」Seong-Oh (Jake) Kim氏(Park Systems)…リチウムイオン電池 (LIBs) はスマートフォンやノートパソコン、EVなどのポータブル蓄電デバイスとして広く使われている。LIBs のnmスケールでの形態と電気特性との相互作用を理解することは、LIBs の性能と品質管理の進歩の上で極めて重要となる。ここでは、AFMを用いてLIBs の電極材料の分析を実施、LIBs のカソードとアノードの活材料の役割や、バッテリーの容量と電力に及ぼすそれらの影響を浮き彫りにした。

・「ダイヤモンド半導体デバイスの作製とインチ径ウェハの成長メカニズム」嘉数 誠氏(佐賀大学)…ダイヤモンドはバンドギャップが5.47eVのワイドギャップ半導体で、絶縁破壊電界、熱伝導率、キャリア移動度が高く、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)を超える大電力・高効率パワー半導体として期待されている。ここでは、サファイア基板とMgO基板を用いた場合を比較し、ダイヤモンドの初期成長表面をAFMで観察し、結晶品質を決める成長機構を調べた。

・「半導体光デバイスと通信・センサーへの応用」荒川太郎氏(横浜国立大学)…半導体レーザーをはじめとする半導体光デバイスは、光ファイバー通信、センシング、分光分析、加工、医療・バイオなどさまざまな分野に応用され、光エレクトロニクスと呼ばれる工学分野の中心を担っている。化合物半導体光デバイスは主にレーザーや発光ダイオード、光変調器、光スイッチなど能動素子として使用され、シリコン光デバイスも発光素子を除く能動・受動素子として使用されている。ここでは化合物半導体とシリコン光デバイスを中心に、それらの動作原理と光ファイバー通信やバイオセンサー・ガスセンサーへの応用例を紹介した。 

・「AFMによる粘弾性計測の最新の展開」中嶋 健氏(東京工業大学)…AFMを用いて粘弾性計測を行う試みにはいくつかの方法がある。ここでは、それらについて概観するとともに、特に貯蔵弾性率・損失弾性率などを画像化できるナノ粘弾性計測手法(nanoDMA)について、原理と最新の展開を紹介した。例えば、フィラーと高分子マトリックスからなるナノコンポジットの界面の粘弾性について、マトリックスがゴム状態にある場合とガラス状態にある場合で界面の振る舞いが異なっている。それを可視化した最近の論文について詳しく述べた。

 当日はまた、30件のポスター発表が実施され、選考委員により最優秀賞1名、優秀賞2名が以下のとおり選考された。

◆最優秀賞
・「分子応答型DNAナノポアを用いたATP計測技術の確立」赤井大夢氏(長岡技術科学大学)

◆優秀賞
・「原子層モアレ超格子直接観察用資料の作製」川瀬仁平氏(東京大学)

・「Mapping force inside living cells by AFM in response to environmentalstimli」王 洪欣氏(物質・材料研究機構)

ポスターセッション表彰式のようす

 

kat 2023年12月12日 (火曜日)
kat

トライボコーティング技術研究会、令和5年度第2回研究会を開催

11ヶ月 1週 ago
トライボコーティング技術研究会、令和5年度第2回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は10月5日、東京都板橋区の板橋区立グリーンホールで「第148回研究会:令和5年度第2回研究会」を開催した。今回は、マイクロ加工シンポジウム「第51回 マイクロファブリケーション研究の最新動向」のトライボセッションとして開催された。「第10回板橋オプトフォーラム」も同時開催された。トライボセッションでは以下の発表があった。

会場の様子

・「株式会社オンワード技研の会社概要とコーティング技術について」川畠丈志氏(オンワード技研)…熟成してきた自社の強味として、1990年代から手がけているDLC技術の業界に対する認知度の高さや、T字型フィルタードアーク方式の装置など自社開発の装置(保有装置15台中自社開発装置が10台)があること、DLC膜一つをとっても各種製法による水素含有DLC(a-C:H)コーティングから水素フリーDLC(ta-C)コーティングまで顧客ニーズに合わせたさまざまな膜の提案ができること、年間140万点の受託加工において欠けなどのハンドリングミスが8点という、コーティングの前後処理から膜の試験測定評価までの徹底した品質管理体制などをアピールした。

講演する川畠氏

 当日は企業展示コーナーが併設され、トライボコーティング関連ではRtec-Instrumentsが多機能トライボメーター(摩擦摩耗試験機)や三円筒転がり疲労・耐ピッチング性評価試験機などのトライボロジー試験機を紹介したほか、オンワード技研が各種DLCとそれらを施した切削工具のサンプルを展示した。また、東京理科大学 佐々木信也研究室(主宰:佐々木信也教授)が充実した試験分析評価装置を保有し各種のトライボロジー試験が可能なトライボセンターについて、埼玉工業大学 長谷研究室(主宰:長谷亜蘭准教授)が光学・精密部品の生産技術に寄与するアコースティックエミッション(AE)センシングとトライボロジーについて紹介した。

Rtec-Instrumentsの展示ブース

 

kat 2023年12月12日 (火曜日)
kat

表面改質展・真空展2023など7展が開催

11ヶ月 1週 ago
表面改質展・真空展2023など7展が開催

 「表面改質展2023」「真空展2023」「2023洗浄総合展」など7展(主催:日刊工業新聞社など)が11月29日〜12月1日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。表面改質関連では、以下のような出展があった。

表面改質展2023のようす

 三洋貿易( https://sanyo-trading.co.jp/ )は、ドイツ・KRUSS(クルス)社製のコーティング表面を計測するハンディ3D接触角計「Ayriis」を紹介した。同品は3D接触角の測定に対応したPC不要のハンディ接触角計。ワンクリックのわずか数秒で、表面のぬれ性を示す接触角を全自動で評価できる。測定フード内に90個のLED光源が液滴を覆うように配置されており、液滴表面で反射されるこれら光のパターンを2台のカメラで解析することによって接触角を算出する。液滴法は固液界面のベースラインを読み取る必要があり、場合によってはそこで機器由来または使用者由来の誤差が発生するリスクがあったが、3D接触角ならベースラインを読み取る必要がないため、初めて装置を触る人でも熟練者と同じ測定精度を保つことができるという。

三洋貿易のブース

 東京電子( https://www.toel.co.jp/ )は、ベリリウム銅合金(0.2%BeCu)製の真空構造材を展示した。ベリリウム銅による真空構造材は熱伝導率が極めて高く、熱輻射率が高いことが特徴。一般的に真空構造材に用いられているステンレスと比較すると熱伝導率は13倍高く、熱輻射率は1/7以下であることから、高温にならずガス放出を大きく抑えることができる。同社ではベリリウム銅が真空構造材として適応するために加工後、研磨工程、還元・脱ガス工程、バリア膜形成工程を行い、さらなる低ガス放出、低水素放出、低温化、耐水素吸着化を実現している。

東京電子のブース

 東ソー( https://www.tosoh.co.jp/ )は、、PVDやCVDコーティングなどのドライコーティングの前処理に適した炭化水素系高機能洗浄方法「HC-WSエマルジョン洗浄」の紹介を行った。この洗浄方法は、水切り剤である「HC-WSシリーズ」に水を加え、超音波等でエマルジョン化させた液中でワークの洗浄を行う。洗浄後は、HC-250もしくはHC-370で容易にリンスをすることができる炭化水素と水の両方の洗浄作用が兼ね備わっているため、油性から水溶性の汚れまで幅広い汚れを除去できるとともに、乾燥した水溶性加工油や異物等に対しても極めて優れた除去能力を発揮する。また水洗浄と異なり、錆びの心配もない。さらに、液管理が容易なことも特徴の一つだという。同社では、洗浄試験の依頼も受け付けている。

東ソーのブース

 ナノテック( https://www.nanotec-jp.com/ )は、開発用小型HiPIMS成膜装置「ICF330-SP」の展示を行った。同装置は大電力マグネトロンスパッタリング(HiPIMS)でのコーティングに機能を特化した小型の成膜装置。機能特化によりコストを抑え低価格で提供できるようにした。キャスターを取り付けコンセントによる給電とすることで装置の移動を可能にしている。同装置は2024年春頃の販売を予定しており、現在は試作や機器のレンタルに対応しているという。また、同社のコーティング受託加工の売上の約半分を占める医療用のDLCコーティング「生体適合性ICFコーティング」についても紹介を行った。

 不二WPC( https://www.fujiwpc.co.jp/ )は、機械部品や金型の疲労強度を向上するWPC処理やDLCコーティング、これらの複合技術を紹介した。また、グループ会社のサーフテクノロジーが手掛ける食品分野では、小麦粉やコーンスターチなど食品粉体のホッパーやフルイなどへの付着を抑制する効果があり採用実績の多いショットピーニング技術「マイクロディンプル処理®」をベースに、より細かい粉体の付着抑制効果を実現しつつ、食中毒の原因となる大腸菌や黄色ブドウ球菌などの繁殖を抑制、さらには死滅させる技術を紹介した。マイクロディンプル処理による食品粉体の付着抑制(食品ロスの防止)・滑り性向上(生産性向上)の提案に加えて、新たに抗菌性付与という点を謳っていくことで、ユーザーである食品加工工場でのコーティング不使用による異物混入防止に加えて、煩雑なサニテーション作業の低減が可能になることを訴求していく。

不二WPCのブース

 レスカ( https://www.rhesca.co.jp/ )は、DLCコーティング膜を中心とした硬質被膜などの界面強度評価を行う摺動型はく離強度試験機「OST3000」の実機を展示した。同試験機は、測定途中に任意のタイミングで圧子と試料両方の摩耗状態の観察を行う。装置の測定結果として得られる印加荷重および摩擦力(摩擦係数)の出力と別に任意タイミングでの摩耗痕観察画像を取得することで、摩耗の進行状況や、摩擦力(摩擦係数)変化発生要因解析や、破壊起点の解明等に使用できる。測定モードはステップ荷重、リニア荷重、一定荷重(距離)を用意。標準で測定対象物及び圧子の摩耗痕を観察するCCDカメラを装備しているが、AFMや白色干渉顕微鏡等を追加することも可能。

レスカのブース

 

admin 2023年12月11日 (月曜日)
admin

HEF、第8回鉄道技術展でブッシュと窒化処理を提案

11ヶ月 2週 ago
HEF、第8回鉄道技術展でブッシュと窒化処理を提案

 HEF DURFERRIT JAPANは11月8日~10日、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された「第8回鉄道技術展2023」(主催:産経新聞社)に出展した。

HEFブースの様子

 

 HEFブースでは今回、フランスの鉄道車両において多数採用されている「HEFブッシュ」が紹介された。ブッシュのしゅう動面内のグリース分布をコントロールし、給脂インターバルの長期化を実現することで高速鉄道AGVなどに採用されている。こうした実績を背景に、日本国内でも鉄道分野でのHEFブッシュ採用の提案が早くから進められており、国内の地下鉄車両などですでに採用されている。HEFブッシュを採用することで、軌道保守や分岐器、車両(例えばブレーキ装置、トーションバー・アンチローリング装置、連結システム)などにおいて、メンテンナンスフリーや寿命延長に寄与できることを提案した。

HEFブッシュ

 

 また、CLIN(Controlled Liquid Ionic Nitriding)技術を適用したクリーンな塩浴軟窒化プロセス「ARCOR処理」を紹介。優れた耐摩耗性・耐焼付き性・耐食性を持つことから、六価クロムめっき代替処理として提案を行った。本プロセスに関わる薬剤は欧州化学物質庁(ECHA)に登録されREACH規制に適合する環境対応型プロセスとして認定を受けている。
 

ARCOR処理をした各種部品 kat 2023年12月4日 (月曜日)
kat

大同特殊鋼、ベトナム子会社が新工場で熱処理、表面処理を導入

11ヶ月 2週 ago
大同特殊鋼、ベトナム子会社が新工場で熱処理、表面処理を導入

 大同特殊鋼の連結子会社であるベトナムのDAIDO DMS VIETNAM CO.,LTD.(以下 DMSV)は10月10日、主要取引先をはじめとする関係者が出席し、現地ベトナムにて新工場の開所式を開催した。

開所式でのテープカットの様子

 DMSVは大同特殊鋼と同社の連結子会社である大同DMソリューションの両社で2008年にベトナムに設立した金型用鋼の加工販売拠点。今回、事業拡大に備えて新工場を建設し、2023年5月に旧工場から転居、同月に稼働を開始した。

 式典では、大同特殊鋼 副社長の山下敏明氏が出席し、「新工場は以前の工場から大きく変化を遂げている。これまで以上にスピーディに、日本と同様の品質をベトナムの皆さまに提供していくことを期待している」と祝辞を述べた。

 新工場は旧工場の約3倍の面積を持ち在庫保管能力を強化したほか、これまで行ってきた機械加工ラインに加えて、新たに熱処理ラインと表面処理ラインを導入し製造プロセスを拡張した。また、作業および物流効率に配慮したレイアウトとし生産能力の向上を目指している。

 DMSVは、大同特殊鋼の工具鋼製品の素材提供から加工および熱処理まで手掛けることで、成長著しいベトナム市場において日本国内同様の品質・サービスを提供していく。

admin 2023年12月1日 (金曜日)
admin

表面設計コンソーシアム、設立講演会を開催

1年 ago
表面設計コンソーシアム、設立講演会を開催

 表面設計コンソーシアム(https://surfacedesignconsortium.com/)は11月15日、神奈川県海老名市の神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)海老名本部で催された「Innovation Hub 2023」の1フォーラムとして、「表面設計コンソーシアム 設立講演会~神奈川から世界へ、ものづくり中小企業による産学公地域連携の新しいカタチ~」を開催した。

開催の様子

 

 表面設計コンソーシアムは、複雑な表面課題にソリューションを提供しつつ、今後求められる表面課題に対応する複合処理の技術開発をする目的で設立された。創設メンバーは、微粒子投射技術を有する不二WPC(https://www.fujiwpc.co.jp/)と、多様なコーティング技術を持つ日本電子工業(http://www.ndkinc.co.jp/)、熱処理技術を提供する武藤工業(https://www.mt-k.com/)、金型の設計・製造を手掛ける昭和精工(https://www.showa-seiko.co.jp/)に加えて、豊富な分析評価技術を保有するKISTEC、理論構築を担う横浜国立大学。

 当日はまずKISTEC理事長の北森武彦氏が挨拶に立ち、「例えば、自転車のベアリングを変えるという表面設計だけでも、動力伝達の改善に寄与できたという経験がある。脱炭素社会において最適な表面設計を提供し企業の課題解決を図るとともに、部材のエネルギー効率を高め企業と社会の脱炭素にワンストップソリューションで貢献する本コンソーシアムの活動の意義は大きい。この活動において中小企業支援に務めるKISTECとしては、強みとする表面解析・分析で積極的に寄与していきたい」と述べた。

挨拶する北森氏


 続いて本講演会の司会も務めるKISTEC 川崎技術支援部長の髙木 眞一氏が、「KISTECのものづくり中小企業支援と表面設計コンソーシアム」と題して講演した。表面に優れた機能を与えるには、ベース素材の材料設計技術や表面改質技術、その上に被覆する薄膜制御技術、さらには最表面のテクスチャ制御技術までをトータルに高度なレベルで協調させる「設計」が必要であるとする表面設計の考え方について説明。現象が複雑・動的でメカニズム解明が容易でないといった表面技術分野において、KISTECなど公設試は分析・評価技術に強みはあるものの、生産技術に関わる企業にニーズ・オーダーに対して1機関で表面設計ソリューションを開発・提供することは難しい。これに対し表面設計のスペシャリスト集団である表面設計コンソーシアムは、情報が分散しがちで目標が不明瞭になりがちといった、ものづくり企業を取り巻く環境の変化や課題に対して、ワンストップで情報を集約・統合し目標の明確化と技術の統合を図り技術の高付加価値化につなげることのできる、産官公地域連携の新しい形である、と総括した。

講演する髙木氏


 また、横浜国立大学大学院 工学研究院長の梅澤 修氏が、「擦り合わせ技術の複合化によるシステムソリューションを目指す」と題して講演。大量生産・大量消費・大量廃棄社会からグリーン循環社会へとパラダイム変化する中で量の価値観から質の価値観へと変化してきている一方で、特に中小企業では低コスト競争で失われた人材能力(現場技術)や広い視野で本質をとらえる人材育成(研究開発)が課題となっている。中小企業では擦り合わせ技術に強みがある一方で、核心技術への理解不足、Designing力の欠如、ユーザーからの情報開示がなくソリューションにフィードバックできない、といった問題を抱えている。これに対し産学公連携の新しい形である企業主体の本コンソーシアムには、産業社会に対しては技術蓄積と競争力を生かし、人材を育成するとともに、課題とそのソリューションに関する情報を整理・共有するための懸け橋となってもらい、また中小企業に対しては核心技術を理解させて擦り合わせ技術をつなぐための、垂直連携による情報とソリューションの高度化を図るための役割を担ってほしい、と応援した。

講演する梅澤氏


 さらに、不二WPC 取締役 技術開発部長の熊谷正夫氏が「企業連携で目指すもの-新たなビジネスモデルと複合技術によるイノベーション」と題して講演。日本はもはや技術的にも先進国ではなく、技術開発の主体は大企業から中小企業へと移っている。こうした日本の生き残る道は「製品・技術の付加価値を高め、かつ内需を増やす(高く売って賃金に反映させる)」ことで、産学公連携による複合技術によって最適な表面設計を実現することで、ユーザーにコストプライスではなくバリュープライスを認めてもらうことが重要。バリューを評価してもらうための中心的なスペースとして、不二WPC内に新設した「ソリューションラボ」を、ユーザーとともに実際の不具合品を見ながら故障解析を行い複合技術による最適化提案を行うほか、これから必要となる技術開発のための単体試験・実証試験が行え複合技術による技術提案ができる場と紹介。また、単一技術では要求特性に対し十分な効果が得られない場合に、(学術的な知見や製造技術を踏まえて総合的に協調させる)表面設計的な複合技術が有効である事例を示した。

講演する熊谷氏

 

 その後、コンソーシアムメンバー各社の得意技術紹介が以下のとおり行われた。

 不二WPC 技術開発部 主任研究員の斎藤邦夫氏は、弾性変形がメインのショットピーニングに対し塑性変形がメインのWPC処理は表面組織の微細化による疲労強度向上や、残留応力の付与といった、さまざまな特長を持つことを説明したほか、機械部品の破壊の8割を占めるとされる疲労破壊のWPCによる対策事例などを紹介。さらに食品分野で採用実績の多いFDA取得のDLCとWPCの複合処理の提供が可能とアピールした。

齋藤氏


 日本電子工業 相模原工場長の池永 薫氏は、同社が①高周波焼入れ・焼戻し、②プラズマ窒化、③セラミックコーティング・DLCなどの硬質被膜と言う各種表面改質処理を、ユーザーニーズに合わせて提供できることを紹介。プラズマ窒化処理層の上にSi含有DLC膜を組み合わせたハイブリッド処理では、DLCで通常必要なCr系中間層が不要でダイレクトに成膜でき、さらに同ハイブリッド処理を一つの炉で連続処理できるという強みをアピールした。

池永氏


 武藤工業 企画開発部長の中村正美氏は、真空熱処理、ソルト焼入れ、油焼入れ、サブゼロ処理など同社が手掛ける幅広い処理について、特長や処理事例を紹介。また、同社HPでは熱処理研究等に関して直感的に理解できる「お役立ち資料」がダウンロードできることをアピールした。熱処理は機械的特性を高めるが、材料を硬くした時のコーティングへの影響やワイヤーカットへの影響を考慮する必要があるとして、コーティングや切削技術のスペシャリストを抱えるコンソーシアムとの協調で最善の方法を提案していきたいを述べた。

中村氏


 昭和精工 代表取締役の木田成人氏は、金属プレス用金型と金型を使用した設備に強みがあること、近年では新分野としてリチウムイオン電池用金型の受注が伸びていることなどを紹介。国内最大市場シェアを持つ飲料・食品アルミ容器金型に関するトピックスとして、SDGsの観点からペットボトルに代わり需要が増してきているリサイクル率94%のアルミ缶における新しい成形の話題などについて紹介した。また、新しい試みであるキャンプ製品の開発・販売やSNSを利用したウェブマーケティングなどについて紹介した。

木田氏


 KISTEC 川崎技術支援部長の髙木眞一氏は、ソリューションラボの保有する試験・分析設備で主だった解析は十分可能だが、より詳細な分析が必要とされる際にはKISTECの分析・評価設備が利用できることを紹介。微粒子ピーニングによる浸炭焼入れの鋼表面のナノ結晶化や、ファインブランキング用金型の耐久性向上などの分析・評価事例を紹介しつつ、集束イオンビーム(FIB)と透過電子顕微鏡(TEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)などKISTECの保有する微細構造解析や成分分析機器などを駆使して、表面にまつわる不具合原因解明や新技術開発の支援が可能なことをアピールした。

髙木氏

 

kat 2023年11月20日 (月曜日)
kat

第16回岩木賞に、神戸製鋼所、大阪大学 孫 栄硯氏、宮崎大学 大西 修氏が受賞

1年 ago
第16回岩木賞に、神戸製鋼所、大阪大学 孫 栄硯氏、宮崎大学 大西 修氏が受賞

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(FPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第16回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもので、当該分野で多くの功績を残した故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設されたもの。

 16回目となる今回は、神戸製鋼所が業績名「AIP法による高Al含有立方晶AlCrN皮膜および装置の開発」により事業賞に輝いた。また、大阪大学 孫 栄硯氏が業績名「ビトリファイドボンド砥石とフッ素系プラズマを用いたドレスフリー研磨法の開発」により優秀賞に輝いた。さらに、宮崎大学 大西 修氏が業績名「次世代のマルチレンジ対応型加工プロセスを目指す純氷ブロック砥石の提案と研究開発」により奨励賞を受賞した。

 切削工具向けの代表的な皮膜であるAlCrN皮膜は、皮膜中のAlの含有量が多いほど耐酸化性に優れ、高速切削や高切込みなどの難加工条件に適しているが、皮膜の金属元素の内概ね65at%以上とAl含有率が多くなりすぎると、皮膜構造が高硬度な立方晶から六方晶へと変化し硬度が低下するという課題があった。この課題に対して事業賞の業績「AIP法による高Al含有立方晶AlCrN皮膜および装置の開発」は、アーク蒸発源の磁場設計やプラズマ制御技術の開発、蒸発源試作や成膜実験などを行い、アーク蒸発源μ-ARC(ミューアーク)を開発、Al含有率が70at%以上であっても立方晶を維持し、マクロパーティクルも少ない高硬度かつ高面粗度のAlCrN皮膜の成膜を可能とすることに成功したもの。上記の新型アーク蒸発源や新型エッチング源、新制御システムなどを搭載し本年4月に発売を開始した新型PVDコーティング装置AIP-iXがすでに販売実績を持つことや、本装置で成膜される高硬度かつ高面粗度膜が、従来アーク蒸発源では難しかった小径工具といった精密な切削工具においても適用が可能であること、また、既存用途である金型や部品だけでなく、パーティクルが少ないといった利点から水素関連や電池関連新規用途への展開も期待できることなどが評価された。

 SiC、GaN、ダイヤモンドなどの高硬度で化学的に不活性の難加工材料の最終仕上げ方法では、スラリーを用いたCMP(化学機械研磨)プロセスが多用されるが、スラリー研磨ではエッチピットのために表面粗さが悪化するなど多くの課題を持つ。スラリーの代わりに固定砥粒(砥石)を用いたドライ研磨法ではその課題を解決できるが、研磨中の砥粒の摩耗に起因する「目つぶれ」や、砥粒間への切りくず侵入などに起因する「目詰まり」などの問題が研磨速度低下の原因となる。ドレッシングは砥石の切れ味を回復できるが、頻繫な目直しは加工能率の低下とコストの上昇を招く。優秀賞の業績「ビトリファイドボンド砥石とフッ素系プラズマを用いたドレスフリー研磨法の開発」では、難加工材料表面に照射し改質膜を形成することで軟質化させる「CF4プラズマ」と、母材より軟質な固定砥粒を作用させ軟質層のみを除去してダメージフリーな表面が得られる「ビトリファイド砥石」の使用で、オートドレスと高い研磨レートを実現できる、完全ドライのプラズマ援用研磨法(PAP法)を提案。AlN基板のドライ研磨において、同砥石のボンド材主成分であるシリカがエッチングされ、リアルタイムに適度なオートドレッシング作用がなされ砥石の目詰まりが起こらないことや、CF4 含有プラズマの照射でAlN基板表面に除去されやすいAlF3軟質層が形成されるため、プラズマ援用ドレッシングとプラズマ改質の相乗効果により、プラズマ照射なしの場合と比べ約2倍の研磨レートが得られたことなどが評価された。

 奨励賞の業績「次世代のマルチレンジ対応型加工プロセスを目指す純氷ブロック砥石の提案と研究開発」では、結合剤として純水を凍らせた氷である「純氷」を用いた純氷ブロック砥石(PIB砥石)を開発、PIB砥石は純氷によって結合剤自体が冷却作用を持ち、かつ砥石表面から溶解・脱落した結合剤は環境に悪影響のない“水”となり、これが潤滑・切りくず除去作用を生むことで、研削油剤や研磨剤を使わない環境の構築できる。また、研削油剤・研磨剤による作業環境悪化も抑止できるほか、研削油剤・研磨剤・結合剤から工作物へのコンタミネーションの抑止にも効果が期待できる。さらにPIB砥石の製作段階で、砥石内の砥粒の粒度や分布を調整することで、一つの砥石で荒加工から仕上げ加工までとマルチレンジに対応可能といった砥石も製作できるなど、さまざまな応用が可能な砥石となる。PIB砥石が環境に悪影響を及ぼさず、荒加工から仕上げ加工まで対応可能なことや、石英ガラスやLED基板などに使われるサファイアに対して加工が可能なことなど、本砥石が実用化した際の産業界への波及の可能性などが評価された。

 第16回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2024年2月22日に埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所で開催される「第26回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム」(通算150回研究会)で行われる予定。
 

kat 2023年11月9日 (木曜日)
kat

KISTEC、トライボロジー技術フォーラムの参加受付開始

1年 ago
KISTEC、トライボロジー技術フォーラムの参加受付開始

 神奈川県産業技術総合研究所(KISTEC、 https://www.kistec.jp/ )機械・材料技術部は12月8日、神奈川県海老名市のKISTEC海老名本部で「令和5年度トライボロジー技術フォーラム ~低炭素社会の実現に向けたトライボシステム開発~」を開催する。当日は会場での開催と同時にオンライン上でライブ配信を行うハイブリッド形式にて開催する。参加費は無料。時間は13時30分~16時30分まで。問い合わせ・申し込みはこちらから。

 フォーラムの内容は以下のとおり。

「オープニング」 青木 信義 氏(KISTEC 機械・材料技術部 部長) 超低環境負荷潤滑剤を目指した糖アルコールの潤滑特性とレオロジー特性 本田 知己 氏(福井大学 工学研究科産業創成工学専攻 教授)

 環境に優しい新たな潤滑剤として食品成分である糖アルコールおよび還元水あめのトライボロジー特性を調べた結果、NSF H1規格の食品機械用潤滑油と比較して同程度、またはそれ以上に良好な摩擦特性を有する糖アルコールを4種類見いだした。ここでは、摩擦摩耗試験とレオロジー測定の結果をもとに、低摩擦発現機構の解明を試みた結果について、最新のデータを含めて概説する。

環境にやさしい潤滑剤とDLCを用いたグリーントライボロジー技術動向 加納 眞 氏(KANO Consulting Office 代表)

 環境にやさしい生分解性潤滑油やアルコール水溶液とDLCコーティングの組み合わせによる超低摩擦特性は、近年多くの論文が公開されているだけでなく、すでに欧州では実量産適用に向けた国家プロジェクトが実施されている。その適用ターゲットの一つが歯車となっている。本フォーラムにおいては、それらに関連した摩擦特性や開発動向について紹介する。   

「連続荷重増加すべり試験および潤滑下の試験によるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の評価技術について」 吉田 健太郎 氏(KISTEC 機械・材料技術部 材料物性グループリーダー)

 KISTECでは硬質薄膜の機能性評価試験を実施している。本フォーラムでは連続荷重増加すべり試験を用いたDLC膜の損傷形態の評価、およびDLC膜と潤滑剤含有成分との相互作用による反応膜の形成と低摩擦化の関係について解説する。

「KISTEC内トライボロジー関連設備見学」

admin 2023年11月1日 (水曜日)
admin

メカニカル・サーフェス・テック2023年10月号 特集「自動車の表面改質」「ピーニング」10月25日に発行!

1年 ago
メカニカル・サーフェス・テック2023年10月号 特集「自動車の表面改質」「ピーニング」10月25日に発行!

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2023年10月号 特集「自動車の表面改質」キーテク特集「ピーニング」が当社より10月25日に発行される。

 今回の特集「自動車の表面改質」では、ステンレス溶射ボアとの凝着摩耗に対応した厚膜DLCピストンリングについて、燃料電池向けターボチャージャの技術と適用状況について、自動車部品メーカーに対し長期的にコミットするめっきメーカーの取り組みについて、自動車の電動化や自動運転が進むにつれて重要性が増す電磁波シールド性に関するドライコーティングの技術について紹介する。

 また、キーテク特集「ピーニング」おいては、微粒子投射処理による抗菌性能の付与について、レーザーピーニングの開発状況と適用状況について紹介する。

キーテク特集:ピーニング

◇微粒子投射処理による抗菌性能の付与・・・サーフテクノロジー 西谷 伴子

◇レーザーピーニングの適用状況と今後の展望・・・新東工業 小林 祐次

連載

注目技術:めっき応用技術「MID工法」による、PPS樹脂製ロボットハンドへのセンサー機能の付与・・・DIC

トピックス

表面設計コンソーシアムが設立、11月15日にKISTECで設立講演会を開催

JASIS2023開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

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admin 2023年10月24日 (火曜日)
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ブルカー、AFMタッピングモード用純正シリコンカンチレバーの販売を開始

1年 1ヶ月 ago
ブルカー、AFMタッピングモード用純正シリコンカンチレバーの販売を開始

 ブルカーは、オリンパス製マイクロカンチレバーOMCL-AC160TS-R3/C3とOMCL-AC240TS-R3/C3シリーズの販売終了に伴い、その完全後継品となるタッピングモード用純正シリコンカンチレバー「OTESPA-R4」と「OLTESPA-R4」の販売を開始致した。プローブ設計、プローブ製造装置、製造プロセスが同じである完全後継品のため、従来のオリンパスマイクロカンチレバーと同じ使用方法・条件での使用が可能。日本国内では、ブルカージャパン ナノ表面計測事業部(http://www.bruker-nano.jp)が取り扱いを開始している。

ブルカー製タッピングモード用純正シリコンカンチレバー「OTESPA-R4/OLTESPA-R4」

 

 場所を狙いやすい高解像度観察に最適なタッピングモード用シリコンカンチレバーの特長は、以下のとおり。

・高い水平分解能:三角形の形状を持つプローブは、探針先端が安定した鋭さを保つ。実際、背面アルミコート付きのプローブでさえ、探針の先端曲率半径は平均10nm以下となるように作られている。OTESPAプローブは、非常に応用範囲が広く、結晶表面、薄膜、ICデバイスなどの形状を優れた分解能で測定できる

・先端探針構造:鋭利な探針は、カンチレバー先端に配置されており、探針位置とサンプル測定位置の関係をAFMの光学顕微鏡で観察できるため、簡単・正確に位置合わせを行うことができる

 また、それぞれの完全後継品の特長は、以下のとおり。

 OTESPA-R4(OMCL-AC160TS-R3/C3後継品)は、優れたQ特性による高分解能イメージングを実現。共振周波数300kHz(標準値)とバネ定数26N/m(標準値)を両立。タッピングモードにおけるサンプルへのダメージを最小限に抑える。

 OLTESPA-R4(OMCL-AC240TS-R3/C3後継品)は、粘弾性測定やソフトサンプルに対応するバネ定数2N/m(標準値)のタッピングモード用シリコンカンチレバー。ソフトマテリアルの形状評価や粘弾性計測などに最適。

 仕様は以下のとおり。

 

kat 2023年10月17日 (火曜日)
kat

ブルカー、ポリマー薄膜から硬質薄膜、半導体デバイスなどの機械的特性評価に最適なナノインデンターシステムをリリース

1年 1ヶ月 ago
ブルカー、ポリマー薄膜から硬質薄膜、半導体デバイスなどの機械的特性評価に最適なナノインデンターシステムをリリース

 ブルカーはこのほど、ナノメカニカルテストにおいて優れたレベルの性能、自動化、生産性をもたらすナノインデンターシステム「Hysitron TI 990 TriboIndenter®」をリリースした。日本国内では、ブルカージャパン ナノ表面計測事業部(http://www.bruker-nano.jp)が取り扱いを開始している。

ナノインデンターシステム「Hysitron TI 990 TriboIndenter」

 

 TI 990は、業界をリードするナノインデンターシステムを包括的に進化させたもので、新しい測定モード、さらにスループット2倍と高速化された測定モード、200mm ×300mmの広いテストエリアを備えている。

 これによって例えば、ポリマー薄膜のナノスケール試験の精度向上、コンビナトリアル材料科学のスループット向上、300mm半導体ウエハのマルチ測定分析などを可能としている。性能、使いやすさ、柔軟性を兼ね備えた TI 990 は、ポリマー研究、合金開発、半導体デバイスなどに対して最適な機械的特性評価ソリューションを提供する。

 複数の特許取得済みである独自の技術を活用したTI 990は、ナノスケールでの定量的な機械的特性評価およびトライボロジー特性評価を可能にする。新しいPerformech IIIコントローラ、高度なフィードバック制御モード、次世代nanoDMA IV動的ナノインデンテーション、XPM II高速機械特性マッピングなど、測定および解析プロセスのあらゆる面で最新技術を採用。ユニバーサル・サンプル・チャックを使用することで、ほぼすべてのサンプルを取り付け、より広い試験可能領域で測定することができる。トップビューのサンプルナビゲーションは、新しいTriboScan 12ソフトウェアでのシステムセットアップを効率化し、装置の遠隔操作をより簡単にする。

 ミネソタ大学ツインシティーズ校のNathan Mara教授は、「TI 990には、強力な新制御モード、特に新しい混合モード・フィードバック制御が搭載されており、幅広い時間領域での研究の可能性が広がっている。小さな長さスケールでの新しい実験の可能性が広がっていることに感動している」と語っる。

 また、ブルカーのナノメカニカルテスト事業部統括部長のOden Warren博士は、「TI 990はテストプロセスと可能性を最適化するためにあらゆる面が再考されている。当社のエンジニアは、測定の柔軟性の向上からシステムのセットアップの容易さ、操作の合理化まで、すべてを改善した。この新しいシステムでお客様が飛躍的な進歩を遂げられることを楽しみにしている」とコメントしている。

kat 2023年10月17日 (火曜日)
kat

JASIS2023開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

1年 1ヶ月 ago
JASIS2023開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

 日本分析機器工業会と日本科学機器協会は9月4日~6日、千葉市美浜区の幕張メッセ 国際展示場で、分析機器・科学機器の総合展示会「JASIS2023」を開催した。展示会では、354社・機関、1096小間(昨年322社・機関、982小間)の出展と「新技術説明会」、「JASISトピックスセミナー」の講演が多数催された。リアル展示会への来場者は16115名(昨年12465名)、新技術説明会の聴講者数は6908名(同9884名)、トピックスセミナーの聴講者数は4991名(昨年2654名)だった。表面試験・評価機器関連では以下のような展示があった。

JASIS2023のようす

 大塚電子( https://www.otsukael.jp/ )は、測定する人も場所も選ばずに、瞬時に対象物(フィルムやガラスなどの透明材料)の三次元情報として、光の波の情報全て(光波動場)を独自の波面センサで取得して、可視化する光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。観察および測定対象(以後、対象)から生じる光波動場を、結像素子を介さずに波面センサに記録して、任意の面の像を計算処理で生成する。視野700×700μm、深さ1400μmの三次元情報を対象にフォーカスを合わせることなく2秒未満(標準)で取得して、取得した三次元情報を、後から無段階で任意面を再生できる(デジタルリフォーカシング)。また、防振に優れた独自設計のため設置環境をあまり気にしないで済む。

大塚電子「MINUK」

 JFEテクノリサーチ( https://www.jfe-tec.co.jp/ )は、シリコンウエハやガラス、樹脂フィルム、金属などの表面の0.1~50μmの薄膜の膜厚分布を短時間に高精度で測定・表示できる膜厚分布測定装置「FiDiCa(フィディカ)」を紹介した。面分光が可能な同社独自のイメージング分光器「インスペクター」を用い、薄膜の分光スペクトルを測定し、分光干渉法を利用した独自アルゴリズムにより、膜厚の分布を高解像度かつ高精度に測定する。従来の分光干渉法を用いた膜厚計は、点測定のため、走査して面分布を測定すると100点でも1時間以上要していたという。本装置では、150万点の膜厚データを約10分で測定することができ、大幅な効率化が図れる。測定モードは、高精細と高速の二つのモードを備えている。A4サイズの対象を高精細モードで0.2mmメッシュでは約10分間で測定する。高速モードで3mmメッシュでは約15秒間で迅速に測定が行える。

JFEテクノリサーチ「「FiDiCa」」

 島津製作所( https://www.shimadzu.co.jp/ )は、堀場製作所と共同開発を行った「LC-Ramanシステム」の実機を展示した。同システムは島津製作所の高速液体クロマトグラフ(HPLC)と堀場製作所のラマン分光装置を融合させた計測機器。HPLCの「わける」技術とラマン分光装置の「みえる」技術の融合により、計測の精度や効率を大幅に高めるとともに未知成分の検出も期待できる。HPLCとラマン分光装置をつなぐ専門ソフトウェア「LiChRa(リクラ)」を搭載し、それぞれから得られたデータや試料情報を紐付け一元管理を行う。アプリケーションとしては、ヘルスケア分野ではバイオマーカー探索や生体中成分の分析、食品分野では糖類、脂肪酸の組成分析や新規機能成分の探索、化成品分野では合成化合物の構造推定、不純物評価、化粧品などの成分構造変化分析など。

島津製作所「LC-Ramanシステム」

 新東科学( https://www.heidon.co.jp/ )は、直交バランスアーム方式や測定中にカバー可能な機構を採用したスタンダードモデルの摩擦摩耗試験機の実機を展示した。摩擦力を測定する荷重変換器を測定子直上に配置し、不要な機構をなくしたことにより、高いレスポンスとセッティングの誤差を排除した。また、試料テーブルの摺動方向をアームに対して直交させことにより、往路復路の荷重変動をなくし耐摩耗性評価の信頼性を大幅に向上させた。さらにY方向ステージを標準装備して13mmストロークするように設計、一度試験が終わった後もサンプルを付け替えることなく別の部分で測定が行える。オプションのトライボソフトを使用するとパソコンから簡単に条件入力、解析、さらに試験操作まで行える。

新東科学「トライボギアTYPE:40」

 THK( https://www.thk.com/ )は、軸受に求められる機能と非磁性を高次元で両立する直動案内「LMガイド」、ボールねじ、ボールスプライン、クロスローラーリングなどの「高機能非磁性製品」を紹介した。磁気をほとんど帯びず、かつ軸受に適した硬度を持つ特殊合金「THK-NM1」を使用することで、比透磁率が1.005未満という高水準の非磁性を実現、強磁場を発生させる核磁気共鳴分析装置(NMR)や電荷を帯びた粒子を扱う透過型電子顕微鏡(TEM)などでの使用に最適。今回はまた、そうした分析装置・観察装置への試料のハンドリングを行い24時間の無人での分析や実験を実施できる、自社製ロボットやロボットハンド「ならいグリップハンド」を用いた自動化システムを提案した。

THK「自社製ロボットおよびロボットハンドを用いた分析・実験業務の自動化システム」

 パーク・システムズ・ジャパン( https://www.parksystems.co.jp/ )は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。

パーク・システムズ・ジャパン「Park FX40」

 リガク( https://japan.rigaku.com/ja )は、業界初の自己診断機能vestaeye®の搭載により、今までは測定を行わないと判断がつかなかった潜在的な問題も早期に発見し素早く対処することが可能となる示差走査熱量計(DSC)「Thermo plus EVO3シリーズ DSCvesta2」を紹介した。オートサンプルチェンジャー(ASC)付きの場合の測定条件は、単一ウィンドウで簡単に設定でき24試料までセット&1000連続測定が可能なため、測定点数が多いときや長時間の無人測定に有効。各種冷却ユニットや試料観察ユニットとも干渉せずに同時使用が可能で拡張性に優れているほか、センサの機械的強度や熱応力に強いエンボス形状で、耐久性を追求した。

リガク「DSCvesta2」

 

admin 2023年10月11日 (水曜日)
admin

ナノ科学シンポジウム2023が10月27日にハイブリッド開催

1年 1ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2023が10月27日にハイブリッド開催

 ナノテクノロジーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)に特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2023 : NSSJ2023)」(https://event.nanoscientific.org/jp/2023)が10月27日10時~17時30分に、東京大学 浅野キャンパス 武田ホール(東京都文京区弥生2丁目11-16 武田先端知ビル5階:浅野正門入ってすぐ左手)での対面参加とオンライン参加からなるハイブリッド形式で開催される。

 主催は関東学院大学材料・表面工学研究所とパーク・システムズ・ジャパンで、協賛はNanoScientificとヤマトマテリアル、Ark Station、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

 シンポジウムHP(https://event.nanoscientific.org/jp/2023/registration)から参加登録できる。参加費は無料。

 

 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、SPMの登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウムで、今回のNSSJ 2023では、科学に変革をもたらすSPMの幅広い応用と技術に焦点を当て、先端技術のための新しいナノ材料、機能性表面、さらにナノテクノロジーやSPMを使った応用技術についても紹介する。

 2020年から開催され4回目となる今回は、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表がなされる。

特別講演 タイトル未定 西 和彦氏(日本先端工科大学(仮称)設置準備委員会 特別顧問) AFMナノインデンテーションによる1次元グラフェン歪み格子の作製 田中 悟氏(九州大学大学院工学研究院 教授)

 グラフェンに歪み(勾配)を加えると擬磁場が発生する。擬磁場は電子の運動を仮想的に表す「場」であるが、実際の電子はあたかも磁場下にあるような運動を行う。この擬磁場を周期的に形成することにより、ランダウ量子化,更に(無磁場の)量子異常ホール効果の観察が期待されるが、そのためには1・2次元周期歪みグラフェンの形成が必要である。本発表では1次元歪み格子の実現のために、原子間力顕微鏡(AFM)ナノインデンテーションによるSiC表面への周期的ナノトレンチ構造の形成とグラフェン転写による歪みの導入を試みた結果を議論する。

SPM技術を用いた全固体電池の評価 富沢祥江氏(太陽誘電 開発研究所 材料開発部)

同社では発火や爆発の危険性が極めて少ない安全な全固体電池を開発している。全固体電池のサイクル特性やレート特性などの性能向上を図る上で、効率的かつ効果的な解析技術が不可欠である。全固体電池の詳細な動作解析を行う目的でSPM装置を導入した。SPM技術の中でもケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)による電位分布評価は、電池を駆動させながら(operando計測)、電極内部の電位変化を可視化できるため、不良箇所を特定したり、正負各極の動作メカニズムを詳細に解明したりできる強力な手法である。本発表ではKPFM以外にも、SPMを活用した材料物性の評価事例、全固体電池デバイスの解析事例を紹介する。

3D Heterogeneous Integrated System Chip Technology G.P. Li 氏(カリフォルニア大学 教授)

 The combination of Internet of Things (IOT) and deep machine learning (AI) at edge is emerging as an universal solution in various industrial sectors. It is envisioned under IOT/AI that a new ecosystem will be established to transform fundamentally how human will interact with physical world, leading to truly industry revolution. Consequently, it promises a great potential to address and solve some of the challenges facing the world today such as resource and energy productivity, environmental sustainability, and demographic change. To enable such a future smart edge system, one needs to research physical mechanisms and mathematical algorithms for multi-sensor data fusion, to research manufacturing processes for implementation of the edge system, and to develop on-time and real-time prediction and adaptive control/learning. New 3D heterogeneous integrated system (HIS) chip engineering technologies will be explored in order to address these emerging demands in future smart edge systems.

 In this talk, we will first describe the nature of the future smart edge system and its applications. Then a 3D heterogeneous integrated microchip technology architecture enabling AI is proposed. Manufacturing methods for designing, fabricating, and integrating sensing, wireless communication and AI in 3D HIS chip technology will be discussed for implementing smart cyber-physical-human-environment system as an intelligent platform for future edge system. 3D heterogeneous integrated system will also enable nanoelectronics beyond Moore’s integrated circuits paradigm, next generation of cyber physical edge intelligence science and technologies, and beyond human machine interaction. The proposed HIS chip technology will unite individual discipline research efforts into a 3D system with multiple functions mimicking holistic human cognitive functions in a technology platform.

薄膜デバイスにおける巨大磁気回転効果 能崎幸雄氏(慶應義塾大学 理工学研究科 教授)

 マクロな回転運動から磁気を生み出す磁気回転効果は、約100年前にアインシュタイン、ドハース、バーネットによって発見された。しかし、キロヘルツオーダーの高速な回転運動でも地磁気程度の微弱な磁気しか生み出せなかったため、これまでその応用研究はほとんど行われてこなかった。講演者は、最新のナノテクノロジーを駆使することにより、薄膜デバイス内にギガヘルツオーダーの超高速な回転運動を生成し、巨大な磁気回転効果を生み出すことに成功した。当日は、磁気回転効果の基礎とその薄膜デバイス構造を概説し、磁気回転効果のデバイス応用についてその可能性を語る。

AFM Methodologies for Quality Assessment of Lithium-ion Battery Electrodes Seong-Oh (Jake) Kim氏(Park Systems)

 Lithium-ion based batteries (LIBs) are widely used as portable energy storage devices in various applications, including smartphones, laptops, and electric vehicles. Understanding the interplay between morphology and electronic properties at the nanometer scale is crucial for advancing the performance and quality control of LIBs. 

 This study provides a brief introduction to the basic principles of batteries and highlights the analysis of lithium-ion battery materials using Atomic Force Microscopy (AFM). The structure and composition of LIB electrodes, including active materials, conductive materials, and binders, are discussed. The role of active materials in the cathode and anode, and their impact on battery capacity and power, is highlighted. The challenges associated with volume changes and structural evolution of electrode materials during charge-discharge cycles are also addressed. 

 AFM is presented as a versatile platform for investigating the morphology and electrical properties of LIB materials at the micro- and nano-meter spatial resolutions. The ability of AFM to provide correlative information, including topography and electrical properties, such as resistance and local work function and the application of AFM in studying electrode materials for LIBs, including characterization of pristine materials, evaluation of electrode fabrication processes, and probing mechanical and electrical degradations caused by cycling, are highlighted. AFM is recognized as a valuable tool for gaining insights into the degradation mechanisms of LIBs and advancing the development of next-generation battery technologies.

ダイヤモンド半導体デバイスの作製とインチ径ウェハの成長メカニズム 嘉数 誠氏(佐賀大学大学院理工学研究科 教授)

 ダイヤモンドはバンドギャップが5.47eVのワイドギャップ半導体で、絶縁破壊電界、熱伝導率、キャリア移動度が高く、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)を超える大電力・高効率パワー半導体として期待されている。

 講演者らは、875MW/cm2の出力電力(BFOM)を示すダイヤモンドMOSFETを作製した。オフ電圧は3659Vである。この素子は、NO2を用いたp型ドーピングと低温堆積Al2O3膜によるパッシベーションの独自技術を用いている。

 また、ダイヤモンドウェハは、2インチ径まで大口径化が進んでいる。サファイア基板とMgO基板を用いた場合を比較し、ダイヤモンドの初期成長表面をAFMで観察し、結晶品質を決める成長機構を調べた。

半導体光デバイスと通信・センサーへの応用 荒川太郎氏(横浜国立大学 理工学部 数物・電子情報系学科 教授)

 半導体レーザーをはじめとする半導体光デバイスは、光ファイバー通信、センシング、分光分析、加工、医療・バイオなど様々な分野に応用されており、光エレクトロニクスと呼ばれる工学分野の中心を担っている。化合物半導体光デバイスは主にレーザーや発光ダイオード、光変調器、光スイッチなど能動素子として使用されている。シリコン光デバイスも発光素子を除く能動・受動素子として使用されており、いずれの場合も半導体が重要な役割を果たしている。

 本講演では、これまで講演者らが研究・開発してきた化合物半導体およびシリコン光デバイスを中心に、それらの動作原理と光ファイバー通信やバイオセンサー・ガスセンサーへの応用例を紹介する。 

AFMによる粘弾性計測の最新の展開 中嶋 健氏(東京工業大学 物質理工学院 教授)

 AFMを用いて粘弾性計測を行う試みにはいくつかの方法がある。

 本講演ではそれらについて概観するとともに、特に貯蔵弾性率・損失弾性率などを画像化できるナノ粘弾性計測手法(nanoDMA)について、原理と最新の展開を紹介する。例えば、フィラーと高分子マトリックスからなるナノコンポジットの界面の粘弾性について、マトリックスがゴム状態にある場合とガラス状態にある場合で界面の振る舞いが異なっている。それを可視化した最近の論文について詳しく取り扱う。

kat 2023年9月26日 (火曜日)
kat

表面設計コンソーシアムが設立、11月15日にKISTECで設立講演会を開催

1年 1ヶ月 ago
表面設計コンソーシアムが設立、11月15日にKISTECで設立講演会を開催

 「表面設計コンソーシアム」(https://surfacedesignconsortium.com/)がこのほど、複雑な表面課題にソリューションを提供しつつ、今後求められる表面課題に対応する複合処理の技術開発をする目的で設立された。創設メンバーは、微粒子投射技術を有する不二WPC(https://www.fujiwpc.co.jp/)と、多様なコーティング技術を持つ日本電子工業(http://www.ndkinc.co.jp/)、熱処理技術を提供する武藤工業(https://www.mt-k.com/)、金型の設計・製造を手掛ける昭和精工(https://www.showa-seiko.co.jp/)に加えて、豊富な分析評価技術を保有する神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)、理論構築を担う横浜国立大学。

 

 表面設計コンソーシアムは、単一の技術では対応できない表面に関わるユーザーのニーズ・オーダー(表面課題)に対して、表面技術のスペシャリスト集団がエンジニアリングの立場から共同受注し、計測・評価を経た根拠のある合理的で最適なバリューコストを高める表面設計ソリューション、また、各種の表面損傷に対して寿命予測が可能な表面設計ソリューションを開発し提供することを目的とするもの。

 一方で、将来的に必要とされるであろう表面課題に対応する複合処理の技術開発も行っていく。

 同コンソーシアムは11月15日15:00~17:15、神奈川県海老名市のKISTEC海老名本部(https://www.kistec.jp/aboutus/access/#ebina)研究棟5階・共通技術研修室で、「Innovation Hub 2023」の1フォーラムとして、「表面設計コンソーシアム 設立講演会~神奈川から世界へ、ものづくり中小企業による産学公地域連携の新しいカタチ~」を開催する。申込はこちらから。

 同フォーラムの内容は以下のとおり

・15:00~15:05    「開会の挨拶」
北森武彦氏(KISTEC 理事長)

・15:05~15:20
「KISTECのものづくり中小企業支援と表面設計コンソーシアム」
髙木 眞一氏(KISTEC 川崎技術支援部長)

・15:20~15:40
「擦り合わせ技術の複合化によるシステムソリューションを目指す」
梅澤 修氏(横浜国立大学大学院 工学研究院長)

・15:40~16:00
「企業連携で目指すもの-新たなビジネスモデルと複合技術によるイノベーション」
熊谷正夫氏(不二WPC 取締役 技術開発部長)

・16:00~16:15
「メンバー各社の得意技術紹介①」斉藤 邦夫氏(不二WPC 技術開発部 主任研究員)

・16:15~16:30
「メンバー各社の得意技術紹介②」池永 薫氏(日本電子工業 相模原工場長)

・16:30~16:45
「メンバー各社の得意技術紹介③」中村正美氏(武藤工業 企画開発部長)

・16:45~17:00
「メンバー各社の得意技術紹介④」木田成人氏(昭和精工 代表取締役)

・17:00~17:15
「メンバー各社の得意技術紹介⑤」髙木眞一氏(KISTEC 川崎技術支援部長)

kat 2023年9月25日 (月曜日)
kat

日本熱処理技術協会、11月28日、29日に2023年度 第3回熱処理技術セミナーを開催

1年 2ヶ月 ago
日本熱処理技術協会、11月28日、29日に2023年度 第3回熱処理技術セミナーを開催

 日本熱処理技術協会は11月28日、29日、対面参加(製粉会館5F 第2・3 会議室:東京都中央区日本橋兜町15-6)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、「2023年度 第3回熱処理技術セミナー-熱処理基礎講座Ⅱ-」を開催する。

 第3 回熱処理技術セミナーでは、浸炭・窒化・高周波といった代表的な表面硬化熱処理技術を中心に、これらの熱処理とは不可分な金属学的現象についての解説を加えて,熱処理技術を中心に据えた基礎講座プログラムで構成されており、新入社員教育などをはじめとした企業における人材育成に最適なプログラムとなっている。

 申込締切は11月16日で、以下のURLから申し込みができる。対面参加の定員は30名。参加費は正会員36000円(税込)、維持会員36000円(税込)、非会員56,000円(税込)、高専、大学、大学院に所属する学生会員および非会員に適用される学生価格は10000円(税込)。

https://forms.office.com/r/LH2YUCsFpJ

 内容は以下のとおり。

11月28日

・9:55~10:00「開会挨拶および注意事項」日本熱処理技術協会

・10:00~11:30「鋼の焼入性と合金元素」梅澤 修氏(横浜国立大学)…鋼の等温(恒温)変態線図および連続冷却変態線図、焼入性について概説の上、鋼の焼入性に及ぼす炭素量および合金元素の影響、焼入・焼戻しによる強化との組織学的関係について述べる。

・12:30~14:00「拡散」中田伸生氏(東京工業大学)…熱処理、表面処理において拡散は重要な現象である。本講義では、金属を対象とした物質の拡散について概説する。特に気/固界面や相変態を含む複相間での拡散を理解するため、化学ポテンシャル勾配による拡散を理解することを目的とする。

・14:10~15:40「残留オーステナイト」土山聡宏氏(九州大学)…焼入れした鋼中に生成する残留オーステナイトについて、その生成機構や生成量に及ぼす鋼組成と熱処理条件の影響について述べる。また、残留オーステナイトの有効利用を目的とした最近の研究についても紹介する。

・15:50~17:20「鉄鋼材料の高強度化と変形・破壊の基礎」田中將己氏(九州大学)…本講義では、材料の破壊現象について、塑性変形をほとんど伴わない脆性破壊から塑性変形を伴う延性破壊について、その特徴を材料学的な見地に立って解説する。特に塑性変形(転位運動)挙動の温度依存性に着目する。

11月29日

・10:00~11:30「金属の高温酸化」上田光敏氏(東京工業大学)…本講義では、金属の高温酸化現象を概観するとともに、酸化現象を理解する上で重要となる平衡論(金属酸化物の化学的安定性)と速度論(酸化皮膜の成長とイオンの拡散)について概説する。

・12:30~14:00「表面硬化熱処理の基礎」奥宮正洋氏(豊田工業大学)…機械構造用部品に用いられる鋼を加熱してオーステナイト組織とし、炭素または窒素を侵入させた後に焼入れして機械的性質を向上させる表面硬化熱処理に関する硬化メカニズム、得られる組織、雰囲気管理方法等について基礎的な解説を行う。

・14:10~15:40「鉄鋼材料の窒化・浸窒処理における組織制御の考え方」宮本吾郎氏(東北大学)…窒化処理や浸窒焼入れ処理によって適切な表面特性を得るためには、表層組織の制御が欠かせない。本講義では、組織制御に必要となる状態図・熱力学や拡散、化合物層、拡散層生成挙動と表面硬化の関係について概説する。

・15:50~17:20「高周波熱処理」井戸原 修氏(高周波熱錬)…高周波熱処理は急速短時間加熱、表面加熱、部分加熱を特徴とし、自動車部品など機械構造用部品の熱処理の熱処理方法として幅広く用いられている。本講義では、この高周波熱処理技術の基礎と特徴、応用について解説する。
 

kat 2023年9月21日 (木曜日)
kat

日本熱処理技術協会、10月23日、24日に2023年度 第2回熱処理技術セミナーを開催

1年 2ヶ月 ago
日本熱処理技術協会、10月23日、24日に2023年度 第2回熱処理技術セミナーを開催

 日本熱処理技術協会は10月23日、24日、対面参加(製粉会館5F 第2・3 会議室:東京都中央区日本橋兜町15-6)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、「2023年度 第2 回熱処理技術セミナー-熱処理応用講座-」を開催する。テーマは、「浸炭焼入処理~浸炭焼入れを幅広く俯瞰する~」。

 第2 回熱処理技術セミナーでは浸炭焼入処理を主題として取り上げ、焼入組織、浸炭反応の基礎、材料の分析技術、最新の浸炭設備、材料技術およびシミュレーションから構成され、浸炭焼入処理を理解するための知識を幅広く学べる講座で、企業における人材育成に最適なプログラムとなっている。

 申込締切は10月13日で、以下のURLから申し込みができる。対面参加の定員は30名。参加費は正会員36000円(税込)、維持会員36000円(税込)、非会員56,000円(税込)、高専、大学、大学院に所属する学生会員および非会員に適用される学生価格は10000円(税込)。

https://forms.office.com/r/8Q59XkVckV

 内容は以下のとおり。

10月23日

・8:55~ 9:00「開会挨拶および注意事項」日本熱処理技術協会

・9:00~10:30「鋼の焼入性と焼入組織」土山聡宏氏(九州大学)…鋼の焼入性や焼入組織(マルテンサイト)ならびに得られる硬さに対して、主な支配因子となる炭素濃度の影響、および付加的に添加される合金元素の影響について概説する。また、最近の解析機器を用いた研究成果を紹介し、マルテンサイトの強化機構に関する考え方について述べる。

・10:40~12:10「鉄鋼材料の浸炭反応の基礎」宮本吾郎氏(東北大学)…浸炭処理では、所望の表面炭素濃度を得るために、雰囲気ガス組成の調整が重要であることから、その基礎となる各種浸炭性ガスと鉄鋼材料間の反応における平衡状態や反応速度、それらに及ぼす添加元素の影響や、固溶した後の炭素の拡散速度の基礎的な考え方について解説する。

・13:10~14:40「浸炭焼入設備の変遷と今後の動向」藤原 稔氏(DOWA サーモテック)…各種産業を支える重要工程である熱処理は長年にわたるプロセス開発と合わせ、それに供する熱処理設備においても各時代の背景、ニーズに合わせた技術開発で進歩、発展してきた。本講義では浸炭焼入設備を中心に、これまでの変遷を振り返るとともに新たな時代の要請に即した今後の熱処理設備の技術動向についても紹介する。

・14:50~16:20「進化する滴注式ガス浸炭」木立 徹氏(オリエンタルエンヂニアリング)…現在、ガス浸炭法としては変成炉式と滴注式のガス浸炭法がある。滴注式浸炭法はメタノール分解ガスをキャリアガスとし、高CO、高H2雰囲気での高速かつ均一な浸炭が可能である。近年では真空排気機構、断熱構造等の改良により省エネルギー化、安全性、品質が向上している。本講義では、本方式の基礎的な原理と特徴について解説する。

・10月24日

・10:00~11:30「数値シミュレーションと実験をつなぐデータ同化」山中晃徳氏(東京農工大学)…熱処理において材料内部で進行するミクロ組織形成の数値解析手法としてフェーズフィールド法が有用であるが、定量的な解析結果を得るためには数理モデル内のパラメータや物性値が必要である。本講義では、取得可能な実験データからパラメータなどを逆推定するとともに、解析結果の精度向上に有効なデータ同化について解説する。

・12:30~13:30「真空浸炭炉内のガス流れ・浸炭の連成シミュレーション」牧野総一郎氏(豊田中央研究所)…本講義では、真空浸炭炉内のガスの流れを、材料への浸炭と連成しながら計算する新しいシミュレーション技術について、一般的な流体シミュレーション技術の概要を含めて紹介する。また、本手法を実際のテスト浸炭炉や、複数の鋼材が配置されるバッチ式浸炭炉に適用した際の予測精度や有用性、今後の展開についても紹介する。

・13:40~15:10「材料表層のキャラクタリゼーション」杉山昌章氏)(大阪大学)…本講義では、鉄鋼材料の熱処理組織を調べる電子顕微鏡(SEM、TEM)や三次元アトムプローブ法の概要を述べ、浸炭などの表層からの深さ分布を考慮する場合に重要となる試料の作製方法や、X線回折法、グロー放電発光分析(GDS)法、FE-EPMA法、電子後方散乱回折(EBSD)法など、材料表層の分析技術について概説する。

・15:20~16:50「浸炭部品の高性能化のための材料技術」奥田金晴氏(JFEスチール)…浸炭用鋼材は、自動車用機械部品としての優れた強度・疲労特性や部品製造工程でもさまざまな特性が要求され、最近ではカーボンニュートラル(CN)の観点からの対応技術も求められている。本講義では、浸炭用鋼材に求められる代表的な特性とその向上策、CNの観点から部品製造工程省略を目的とした研究事例について紹介する。
 

kat 2023年9月21日 (木曜日)
kat

単行本『Dr.クマガイのノンビ~リ地球紀行』が9月15日に発刊

1年 2ヶ月 ago
単行本『Dr.クマガイのノンビ~リ地球紀行』が9月15日に発刊

 単行本『Dr.クマガイのノンビ~リ地球紀行』(熊谷正夫著)が、当社より9月15日に発刊された。

 

 

 本書は、表面改質&表面試験・評価の技術情報誌『メカニカル・サーフェス・テック』で2018年12月号から2021年10月号で連載された、サイエンティスト・熊谷正夫氏(不二WPC 取締役 技術部長)の旅行記を編集・改題を行い単行本化したもの。

 本書は、旅行好きで世界各国を旅してきた著者による、イタリア編から 、インドネシア編、トルコ編、ペルー編、イギリス編、 ベトナム・サパ編、東欧編、 台湾編 、スイス編、ミャンマー編 、ニュージーランド編、アメリカ・ニューオーリンズ編、ベトナム・ホイアン編 、地中海クルーズ編 、カンボジア編、アメリカ西海岸編 、タイ編 、総括編の全18話から構成された旅行記である。

 しかしながら、材料や表面改質分野や表面試験・分析評価分野をはじめとする工学の知識は勿論、歴史や地理、経済、文学、哲学…と実に広範な分野にわたる、豊富な知識と独自の見解・世界観を持つ著者が「自己表現」した本書は、単なる紀行文ではもちろんなく、歴史や文化学、哲学等々…が随所に散りばめられた随想であり思想書である、独自の旅行記に仕上がっている。

 A5判、 118頁、で価格は1650円(税込)。購入はアマゾンから。

熊谷正夫(くまがい・まさお)
1950年生まれ。東京工業大学工学部高分子工学科卒。大阪大学にて博士(工学)取得。
1973年 神奈川県工業試験所(現(地独)神奈川県立産業技術総合研究所)入所、
表面分析、表面改質の研究開発、企業支援に従事。
2010年  (株)不二WPC入社、現在、同社 取締役 技術部長。

kat 2023年9月20日 (水曜日)
kat

マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン、2024年4月、国内2 ヵ所目の拠点を名古屋に開設

1年 2ヶ月 ago
マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン、2024年4月、国内2 ヵ所目の拠点を名古屋に開設

 マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンは9月12日、名古屋市中区のヒルトン名古屋で記者会見を開催、同社の主要顧客となる自動車産業へのサポート強化を目的として、2024年4月に神奈川県平塚市に次ぐ国内2ヵ所目の拠点を名古屋に開設する予定であることを公表した。

ジュリアン・ベイショア社長による記者会見の様子

 

 今回日本での二次投資を行うのは、表面処理剤・めっき液メーカーで米国コネチカット州に本社を置くマクダーミッド・エンソン・インダストリアル・ソリューションズで、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンはその日本法人となる。米国本社による今回の戦略的投資は、重要顧客である日本の自動車部品メーカーに対し長期的にコミットする姿勢を示すもの。

 新拠点「名古屋ラボラトリー」は、名古屋市守山区にある中小企業基盤整備機構の運営するクリエイション・コア名古屋内に本年10月に新設。同施設はインフラが整っていて即時利用できるものの、約4000万円を投じて試作用めっき槽のほか、耐食性を確認するためのキャス試験機・塩水噴霧試験機、デザイン・意匠性を確認するためのグロスメーター、摩擦係数を測定するCOF試験機、耐摩耗性を評価するテーバー試験機などの試験評価設備(すべて日本製を予定)の導入完了を待つ必要があることから、半年後の来年4月から本格稼働する予定としている。

 現在は既存および新規顧客の担当営業として3名がリモートワークを始めているが、稼働にあたり2名の試作・実験担当者を新規採用する計画で、順次人員を増やして、地域の雇用創出にも寄与していく。

 

名古屋ラボラトリー

 

 マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンのめっき液は、防錆・防食、装飾などを目的に、アルミホイールやフロントグリル、ドアノブ、インストルメントパネル、ファスナー部品など自動車の内・外装部品に幅広く使われている。中でも、金属材料を使用せずに、樹脂にメタリック感を与える装飾めっきは軽量化(省燃費化)の点から採用されており、より薄膜化することで軽量化に貢献している。同社は長年にわたり、中部圏9県(富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県)にある、50社超の一次(Tier 1)、二次(Tier 2)自動車部品メーカーをはじめとする企業にめっき液を納入している。現時点では、これら顧客に対し神奈川県平塚市の本社を拠点に技術サービスを行っているが、自動車関連企業が特に集中し、また地理的に中部圏9県のほぼ中心に位置する愛知県名古屋市に新拠点を構えることで、顧客対応の迅速化を図るとともに事業継続計画(BCP)対策を強化する狙いだ。

 

防錆・防食めっきZinKladを処理したボルトのサンプル

 

 日本法人の役割としては大別して、①国内営業活動とめっき液納入後のアフターサービス、②日本企業の海外工場向けの営業活動、③自動車メーカーやTier1の自動車部品メーカーにアプローチして各種ニーズにマッチしためっき薬品を開発し、メーカーに図番指名してもらう「スペックイン活動」、④日本の原料メーカーの調査(調達)、⑤新製品の開発・改良(一部)、⑥同業他社の調査などがある。

 名古屋ラボラトリーでは当初、この内の①国内営業活動とめっき液の納入後のアフターサービスと、⑤自動車メーカー、自動車部品メーカーの各種ニーズにマッチする新製品の開発・改良、の二つの機能を主に平塚本社と分担しつつ、時間がかかるが将来のビジネス拡大につながる③自動車メーカーに対するスペックイン活動も、並行して進めていく。

 めっき液の機能・品質を保持するには、①の細やかなアフターサービスが必要とされる。めっきは各添加剤の化学反応によって、部品に必要とされる皮膜を形成する効果を発揮する。このため、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンの納品するめっき液や添加剤の多くは、顧客のめっき槽で複数混合して使用される。この混合されためっき液はしかし、たとえば前工程で用いられる脱脂液の混入などによって、次第に機能が低下する場合がある。完全に劣化してしまうと液全量を廃棄しなくてはならなくなるため、同社では定期的に顧客を訪問し、めっき液のサンプルを預かって分析・評価し、顧客のめっき液が最適な状態になるように数%の添加剤を補給するなどのアドバイスを実施して、顧客の製品品質の確保と、めっき液の長寿命化によるコスト削減に貢献している。

 環境規制対応を含めた日本の自動車メーカーの独自の要求に適合する、⑤新製品の開発・改良もまた、日本でしか対応できない活動の一つだ。例えば、六価クロムめっきは青白い、まばゆい色調が出せることから装飾めっきとして多用されてきたが、六価クロムがELV指令で規制対象物質となり、欧州向けを中心に三価クロムめっきへの切り替えが進められている。日本の自動車メーカーでは、欧州向けに限らず全車で三価クロムめっきに切り替える動きもある。これに対し、漆黒調の三価クロムめっき「トワイライト」やサテン調ニッケルめっき「パールブライト」が、日本で独自に開発され、エンブレムやプレートなど自動車の顔となるような部品で採用されている。

 

装飾めっき「トワイライト」を処理したサンプル

 

装飾めっき「パールブライト」を処理したサンプル

 

 ジュリアン・ベイショア社長は、「名古屋ラボラトリーが新設・稼働することにより、自動車関連の顧客に対するアフターサービスの充実と、次世代のめっき液の開発・改良の期間短縮が図られることとなる。日本の顧客は当社の環境に優しい製品群の価値を良く認識しており、この自動車ビジネスは大きく成長し、日本での事業拡大を実現できた。日本の顧客は特に持続可能性に積極的に取り組む傾向があるため、電気自動車の市場についても当社のサービスを拡大できるものと期待している。また愛知県へ投資することで日本を拠点とする自動車部品メーカーの市場への当社の浸透がさらに加速するものと期待している。今後さらに日本の自動車業界に貢献できるよう、より一層社業の発展に尽くしていく」と語っている。
 

今後の抱負を語るジュリアン・ベイショア社長

 

kat 2023年9月16日 (土曜日)
kat

メカニカル・サーフェス・テック2023年8月号 特集「表面改質の試験・評価」8月25日に発行!

1年 2ヶ月 ago
メカニカル・サーフェス・テック2023年8月号 特集「表面改質の試験・評価」8月25日に発行!

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2023年8月号 特集「表面改質の試験・評価」が当社より8月25日に発行される。

 今回の特集では、原子間力顕微鏡(AFM)の表面改質分野での使用例と有用性について、、創エネ、省エネ、表面制御・表面改質に関わるDLCコーティング関連の研究と計測・試験評価技術について、表面改質分野の機械的特性を試験・評価機器を取り揃えているメーカーからそれぞれの機器の特徴と試験事例について、硬さ試験の概要と硬さ基準片による試験機の正しい管理について、MSE試験の試料の準備や試験条件設定など使い方と膜の密着度や耐久性評価について紹介する。

 

特集:表面改質の試験・評価

◇原子間力顕微鏡(AFM)の表面改質分野での使用例と有用性・・・関東学院大学 高井 治

◇創エネ・省エネDLC研究を援用する計測・試験評価技術・・・東京都市大学 崔 埈豪 氏に聞く

◇トライボロジー試験機を用いたコーティングなどの試験評価・・・Rtec-instruments 國井 卓人 氏に聞く

◇基準片による硬さ試験機管理・・・山本科学工具研究社 山本 正之

◇断面精密強度分布から密着度や耐久性評価・・・パルメソ 松原 亨

連載

注目技術:EMOハノーバー2023で披露されるコーティング技術

トピックス

Rtec-Instruments、第1回セミナー&ユーザーズミーティングを開催

高機能トライボ表面プロセス部会、第5回合同研究会を開催、ドライコーティング研究会は今回で解散

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admin 2023年8月22日 (火曜日)
admin

日本製鉄、高耐食めっき鋼板が脱炭素型外装システムに採用

1年 3ヶ月 ago
日本製鉄、高耐食めっき鋼板が脱炭素型外装システムに採用

 日本製鉄の高耐食めっき鋼板「ZAM」が、日建設計と瀬尾製作所が共同で開発した脱炭素型外装システム「Envilope01」に採用され、その第一号物件として神保町SF Iビルに適用された。

 「Envi-lope01」は、中小ビルを想定し、簡易な鋼板製パーツをすだれ状に編んだ外皮(外壁の外側)として設置するもので、建物に差す日射の屋内への熱負荷を約65%低減している。また、周辺の建物形状から太陽の動きとともに建物に当たる日差しがどのように変化するのかを解析し、2種類ある鋼板製パーツ(底の形状が異なるリング状のプレス金物)を組み合わせることで、約20%の日射を空に向けて再帰反射させている。さらに、開口率は約70%あり、室内からの視界を阻害するものではない。結果として、空調利用等に伴う温暖化ガス排出量の削減を図ることができ、建物(ビル)の運用時でのCO2排出(SCOPE1,2)を低減することができる仕様となっている。

 日本製鉄のZAMは、高耐食性能を有し長期間の使用に耐えること、また素材製造時のCO2排出量が他素材(アルミ等)に比べて低いことから、Envi-lope01に採用された。また、鋼板製パーツの製造では、瀬尾製作所が有する仏具製造で実績のあるプレス技術をベースに日本製鉄の鋼板の深絞り加工技術の知見を融合することにより、設計者の意図した意匠を実現した。

神保町SF Iビル

 

admin 2023年8月8日 (火曜日)
admin
Checked
14 分 24 秒 ago
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