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ナノ科学シンポジウム2022が開催

1年 3ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2022が開催

 ナノテクノロジーとSPMに特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2022 : NSSJ2022)」が11月18日に、東京都文京区の東京大学 工学部2号館での対面参加およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により開催された。主催は関東学院大学材料・表面工学研究所(高井 治 所長)と東京大学大学院 機械工学科 機械工学専攻 薄膜とトライボロジー研究室(崔 埈豪 准教授)とで、協賛はパーク・システムズ・ジャパンとNanoScientific、ヤマトマテリアル、ワイエイシイテクノロジーズ、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

開催のようす

 

 本シンポジウムは、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウム。2020年から開催され、3回目となる今回では以下のとおり講演がなされた。

・特別講演「マイクロ・ナノスケールでのロボット技術とバイオメディカル応用」新井史人氏(東京大学 工学系研究科 教授)…マイクロ・ナノスケールのロボット技術は①分析目的、②実験目的、③医療目的などに有用なツールと見られている。本講演では、ロボット技術をベースにセンサーやアクチュエーターを搭載し、単一の細胞を対象とした計測・分離操作の自動化や、微量な液体サンプルを扱うことが可能なマイクロ流体チップシステム「オンチップ・ロボットシステム」の概要と、オンチップ・ロボットシステムを活用したバイオメディカル分野での計測事例などを紹介した。

・「導電性金属酸化物薄膜内キャリア輸送を探る・操る」山本哲也氏(高知工科大学総合研究所 教授)…本講演ではワイドギャップ酸化物薄膜の高速キャリア輸送を目的に、原子間力顕微鏡(パーク・システムズ製NX-10)による測定を用いた設計的な制御例をもとに、多結晶薄膜における結晶子間配向性の制御の有効性を開設した。NX-10による数nmでの構造物性の解析をもとに結晶子間配向や表面特性の制御を行うことで、キャリア輸送の向上や改善につながることが確認された。

・「非晶質炭素膜を帯電材として用いた高耐久性高効率すべり型摩擦発電機の開発」崔 埈豪氏(東京大学 工学系研究科 准教授)…本講演では、低摩擦性・高誘電率のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)ベースの薄膜を帯電材として用いて開発した、高効率・高耐久性の滑り型摩擦発電システム(TENG)について紹介。ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いて各種帯電材の表面電位や仕事関数を計測した結果、水素含有DLC膜(H-DLC)が正極材として有用で、フッ素含有DLC膜(F-DLC)が負極材として有用なことを、またTENGとしての出力評価・耐久性評価を行った結果、正極材H-DLCと負極材PTFEの組み合わせが表面損傷なく高出力が得られたことを報告した。

・「The Frontier in Nanotechnological Solution―From Mechanical to Various SPM Analysis―」Sang-Joon Cho氏(Park Systems)…本講演では、AFMプラットフォームと白色干渉計(WLI)および光誘起力顕微鏡(PiFM)を組み合わせたハイブリッド計測装置とその可能性について紹介した。SPMは他の計測装置に比べて特に高さや幅などの形状情報や物理情報をダイレクトで取得できるなど多くの特徴を有するが、開発した新しいハイブリッド計測装置では、AFMとWLIとの複合化によるAFMの高分解能の解析機能を有する広い領域の3Dイメージングと、PiFMによる材料の化学分析が可能になりナノスケールでの化学組成分析も合わせた情報量の多い解析結果が得られることを報告した。

・「AFMによる粘弾性計測の可能性」中嶋 健氏(東京工業大学 物質理工学院 教授)…ナノレオロジーAFMでは、標準装備の圧電スキャナーとは別に、高周波数帯域のピエゾアクチュエーターを導入、これを外部から駆動することで最大6桁に及ぶ周波数帯域での測定が可能になる。本講演では、ナノレオロジーAFMによるナノ粘弾性測定において、微小振動中の接触面積の周波数依存性を考慮した解析法を独自に導入することで、レオメーターによるマクロ粘弾性測定と同等まで定量性を向上させたことを報告した。

・「オペランド電位計測によるエネルギー変換・蓄積デバイスの評価」石田暢之氏(物質・材料研究機構 博士)…講演者は、光照射下や充放電動作中などのデバイス動作状態で直接評価を行う「オペランド電位計測」として、ナノ~原子スケールで物性観察が可能なSPMと破断や研磨によってデバイス内部を断面に露出させて測定を行う「断面計測技術」とを組み合わせた手法を開発している。本講演では、表面電位を計測する手法であるKPFMを用いて、次世代のエネルギー変換・蓄積デバイスであるペロブスカイト太陽電池や全固体リチウムイオン電池のオペランド解析事例を紹介した。電池動作時のイオンや電子の動きを解析するには、電池性能を保った状態で断面試料を作製し、電位計測を行うことが重要とした。

・「走査型イオン伝導顕微鏡を用いた時間分解力学計測によるがん細胞解析」渡邉信嗣氏(金沢大学 ナノ生命科学研究所 准教授)…本講演では、プローブと試料とが直接接触せずに極めて脆弱な細胞の力学特性を計測できる走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)の高速イメージング技術を用いて、がん細胞表層の経時変化を計測し、悪性度が高く高転移性を有する細胞は転移性が低い細胞や良性腫瘍細胞には見られない細胞表層の活発な変動が見られ、それら細胞の弾性率が有意に減少していたことや、SICM計測データから遺伝子型がおおよそ分類できることを紹介。また、細胞表層の力学特性計測から得られる情報が、がん細胞の転移能を予測できる可能性などを示した。

・「一次元遷移金属カルコゲナイドの成長と評価」宮田耕充氏(東京都立大学 理学部 物理学科 准教授)…遷移金属とカルコゲンから構成される遷移金属カルコゲナイド(TMC)は、その多彩なナノ構造と物性より,近年大きな注目を集めている一方で、その多量合成や構造制御が重要な課題となっている。本講演では、化学気相成長(CVD)を利用して高い結晶性を持つTMC細線からなるナノファイバーの大面積薄膜(多量合成)を実現したことを報告した。また、AFMや電子顕微鏡の観察によって、TMC細線が成長基板に依存して二次元的な単層・二層のシート構造や三次元的な束状構造など様々な集合状態を形成することや、TMC細線が金属的な高い電気伝導特性や異方的な光学応答を示すことなどを紹介した。

・「Beyond 5G/6Gに向けた電子デバイスと表面処理技術」盧 柱亨氏(関東学院大学 材料・表面工学研究所 教授)…Beyond 5G/6Gに向け重要なウェアラブルデバイスにおいて、講演者は薄膜で良く曲がる樹脂フィルム基板の上に、曲げ耐性が強く電気抵抗が低い銅の薄膜や回路形成などを無電解めっき法で形成することに成功しているが、同薄膜の密着性向上で必要とされる後工程のアニーリングにおいて、恒温槽や電気オーブンで行う従来手法では耐熱温度が低い樹脂フィルム材料では十分なアニーリングができないという課題があった。本講演では、樹脂への熱ダメージを抑制しつつ銅薄膜表面のみにアニールを施すことが可能な新開発手法「フラッシュランプ・アニーリング法」について紹介。従来法に比べて銅薄膜との界面を平滑に保ちながら銅の結晶性改良の効果が期待されることや、透明フィルム部分に光が透過することを利用し裏面照射を試み効果的であったことを報告した。

 当日はまた、10件のポスター発表が実施され、選考委員により最優秀賞1名、優秀賞2名が以下のとおり選考された。

◆最優秀賞

・「ナノ層状リアクターの電子移動反応を利用したアゾ染料の酸化分解と反応条件の最適化」佐藤 匠氏(関東学院大学工学研究科 友野研究室)

◆優秀賞

・「ナノレオロジー原子間力顕微鏡によるナノ粘弾性測定の定量性の向上」樫森康晴氏(東京工業大学物質理工学院 中嶋研究室)

・「パルス電流を用いたスルファミン酸Ni浴による高速めっきの検討」莫 凡氏(関東学院大学材料・表面工学研究所)

授賞式のようす:最優秀賞受賞の関東学院大学・佐藤 匠氏(写真中央)と、
優秀賞受賞の東京工業大学・樫森康晴氏(右)と関東学院大学・莫 凡氏(左)

 

kat 2022年11月22日 (火曜日)
kat

KISTEC、トライボロジー技術フォーラムの参加呼びかけ

1年 4ヶ月 ago
KISTEC、トライボロジー技術フォーラムの参加呼びかけ

 神奈川県産業技術総合研究所(KISTEC、 https://www.kistec.jp/ )機械・材料技術部は12月12日、神奈川県海老名市の同研究所本部で「令和4年度トライボロジー技術フォーラム」を開催する。当日は会場での開催と同時にオンライン上でライブ配信を行うハイブリッド形式にて開催する。問い合わせ・申し込みはこちらから。内容は以下のとおり。

「開会挨拶」

髙木 眞一 氏(KISTEC 機械・材料技術部 部長)

「表面処理・コーティングの機能性向上技術としゅう動界面の観察技術の応用実例」

村島 基之 氏(東北大学 工学研究科 機械機能創成専攻 准教授)

 機械表面における表面粗さや表面エネルギーを含めた表面性状は、摺動特性に大きな影響を与える。しかし、例えば表面粗さでは図面の記号からも分かるように、上限値以下であればよいという管理がされるのが実情である。本講演では表面性状の最適化により生まれる新しい表面機能性を企業共同研究の事例を交え解説する。また、最新の界面観察技術を摺動特性評価に活用した最新研究事例を解説する。

「環境調和型潤滑剤とDLCを用いたグリーントライボロジー技術動向」

加納 眞 氏(KANO Consulting Office 代表)

 環境にやさしい潤滑剤とDLCコーティングの組み合わせによる超低摩擦特性は、近年多くの論文が公開されているだけではなく、すでに欧州では実量産適用に向けた国家プロジェクトが実施されている。その適用ターゲットの一つが歯車となっている。本フォーラムにおいては、それらに関連した摩擦特性や開発動向について紹介する。 

「潤滑状態や潤滑剤の化学構造によって異なるDLCコーティング膜の摩擦特性」

吉田 健太郎 氏(KISTEC 機械・材料技術部)

 カーボンニュートラルの実現、SDGsの観点からダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜と環境負荷の小さい潤滑油を用いて超低摩擦化技術の開発に取り組んでいる。今回、その一部である潤滑状態や潤滑剤の化学構造によって異なるDLC膜の摩擦特性について紹介する。

「トライボロジー関連設備見学」

見学は、会場参加者のみ。

admin 2022年11月14日 (月曜日)
admin

第15回岩木賞に、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏、新明和工業、慶応義塾大学 小池 綾氏が受賞

1年 4ヶ月 ago
第15回岩木賞に、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏、新明和工業、慶応義塾大学 小池 綾氏が受賞

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(FPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第15回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもので、当該分野で多くの功績を残した故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設されたもの。

 15回目となる今回は、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏が業績名「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」により大賞に輝いた。また、新明和工業が業績名「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」により事業賞に輝いた。さらに、慶応義塾大学 小池 綾氏が業績名「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」により奨励賞を受賞した。

 大賞の業績「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」は、高分子材料の初期破壊現象であり工業的には抑制されるべき現象であるクレージング現象を制御しつつ活用しナノ多孔高分子フィルムおよび繊維を開発するという世界唯一の技術である。高分子のクレーズの内部はナノオーダーのフィブリル(繊維束)とボイド(孔)からなるスポンジ状ナノ構造であり、本業績では、脆性に破壊する高分子フィルムの破壊直前の状態を管理・制御する技術を開発することで、フィルムあるいは繊維状の素材に、安定したクレーズを生じさせるとともに、規則構造を持たせることに成功したもの。本技術により、視点により透明性が異なる視界制御性フィルムや水中にマイクロバブルを発生する膜として上市されていることや、本技術を繊維製品等に多用途展開するベンチャー企業FiberCrazeがスタートしていることなどが評価され、受賞に至った。

 また、事業賞の業績「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」は、一般的にダイヤモンド成膜がTiNやTiALNなどのPVD膜に比べて膜厚が厚く切削工具に施すと刃先Rが大きくなり切削性能が低下するのに対し、プラズマイオン処理によりダイヤモンド成膜された切削工具の刃先を先鋭化する装置を開発し、CFRP加工などで従来から行われている「捨て穴加工」を排除し生産効率向上に寄与する技術を確立したもの。従来からレーザーを用いてダイヤモンド成膜した切削工具の刃先を先鋭化する技術はあったが、ツールパスの設定が難しく、加工後の表面状態が必ずしも良好とは言えず一部基材の露出も見られる場合がある。本開発は、プラズマのアンテナ効果を利用し、主として刃先のダイヤモンド被膜をイオンエッチングすることで先鋭化とドロップレットの低減を可能にしたほか、一度に複数本の工具が処理可能で従来技術が抱える問題を解決できることなどが評価された。

 さらに、奨励賞の業績「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」は、世界に先駆けて実施した高重力場アディティブマニュファクチャリング(AM)の研究成果である。宇宙空間の微小重力場で金属AMを用いた保全などを行う際、粉末が浮き、スパッタがどこまでも飛び、内部欠陥が浮力の減少でいつまでも排出されないなど、粉末床溶融結合法(PBF)は実行困難となる。本業績では、10Gまでの高重力場を作用させる装置を開発、造形プロセス評価において、1Gでは造形面に粉末が凝集したのに対し、10Gでは凹凸の少ない粉末床を形成し、スパッタの発生が合成加速度の逆数に比例して減少することが、また、造形物品質評価では、1層造形物のうねりが10Gで低減しボーリング現象を抑制することや多層造形物の密度と硬さが向上し金属組織の微細化が図られることが確認された。高重力場を援用した超微細構造造形を用いることで機能性表面生成への重要な一歩となる可能性が評価された。

 第15回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2023年2月24日に埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所で開催される「第25回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム」(通算145回研究会)で行われる予定。

kat 2022年11月8日 (火曜日)
kat

メカニカル・サーフェス・テック2022年10月号 特集「自動車の表面改質」10/25に発行

1年 4ヶ月 ago
メカニカル・サーフェス・テック2022年10月号 特集「自動車の表面改質」10/25に発行

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2022年10月号 特集「自動車の表面改質」が当社より10月25日に発行される。

 今回の特集「自動車の表面改質」では、環境対応を視野に入れた自動車における熱処理・表面改質技術適用状況について、内燃機関ピストンリングに適用されているドライコーティング技術について、EVやFCVなど次世代車両を含む自動車分野における窒化処理やDLCコーティングについて、欧米においてブレーキディスクの耐摩耗性技術として行われている軟窒化処理について紹介する。

 また、クローズアップコーナーにおいては、PVDコーティング最前線として、アルミニウム含有率70at%以上の立方晶AlCrN皮膜の形成を可能としたPVDコーティング装置について、試験・評価最前線として、材料表面強度試験による汎用窒化とアトム窒化の比較、樹脂上めっきと樹脂表面改質の関係、DLC膜の性能発揮調査について紹介する。

 

特集:自動車の表面改質

◇自動車の環境対応への熱処理・表面改質技術の貢献・・・日産自動車 藤川 真一郎
◇内燃機関ピストンリング用ドライコーティング技術について・・・TPR 菅原 駿
◇自動車におけるDLCコーティングおよび塩浴軟窒化処理の最近の動向・・・HEF DURFERRIT JAPAN ジュリアン グリモ 氏に聞く
◇欧米における軟窒化処理によるブレーキディスクの耐摩耗性向上・・・ナイトレックス・メタル 堂田 明良

PVDコーティング最前線

◇高Al含有の立方晶AlCrN皮膜を成膜できるPVDコーティング装置の開発・・・神戸製鋼所 尾石 昂

表面試験・評価最前線

◇自動車の軽量化・高剛性化・耐久性向上に資するMSE試験・・・パルメソ 松原 亨

連載

注目技術:実ワークのコーティング膜厚・膜質検査が可能な顕微分光膜厚計・・・大塚電子

トピックス

ナノ科学シンポジウム2022が11月18日にハイブリッド開催
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admin 2022年10月24日 (月曜日)
admin

トライボコーティング技術研究会、令和4年度第 2 回研究会を開催

1年 5ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、令和4年度第 2 回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は10月5日、東京都板橋区の板橋区立文化会館で「令和4年度第2回研究会」をリアルおよびオンラインによるハイブリッド形式で開催した。今回は、「第50回:マイクロファブリケーション研究の最新動向」、「第10回インテリジェント/AIものづくりシンポジウム」との同時開催で、テーマは「レーザーによる表面改質、トライボコーティング評価技術、自由曲面オプティカルファブリケーション」。「第9回板橋オプトフォーラム(IOF)」との同時開催となる。

 当日は、大森氏による趣旨説明の後、以下のとおり講演がなされた。

開催のようす

 

第一部:特別セッション

・「微細加工関連の最新研究動向~ MIRAI会議にみるマイクロ・トライボファブリケーション事例~」大森 整氏(理化学研究所)…本年8月19日に三条市立大学で開催された国際会議「MIRAI会議 第15回シンポジウム(15th MIRAI Conference on Micro-Fabrication and Green Technology)」におけるマイクロ・トライボファブリケーション研究の概要を紹介した。埼玉工業大学・長谷亜蘭氏からはアコースティックエミッション(AE)を用いたトライボロジー現象の解明に関する話題が、オンワード技研からは高付加価値を生むDLCコーティングなどPVDコーティング技術の話題が、三条市立大学からはレーザ誘起湿式改質法による先端的表面機能の創成に関する話題が提供された。理化学研究所からはまた、電解インプロセスドレッシング(ELID)研削およびイオンショット加工を通した表面改質技術について紹介、CMPも併用することで骨粗鬆症の患者へのインプラント埋め込みにも有効とした。

・「新しいデンタルインプラントの創出―パルスレーザ加工によるジルコニアインプラントの表面改質―」水谷正義氏(東北大学大学院/理化学研究所 大森素形材工学研究室)…歯科インプラントへの応用を目的にレーザ改質したジルコニア表面の特性を評価、材料学的知見からはジルコニアへのレーザ改質は表面の変色・還元・低温劣化の促進をもたらし、また、レーザ改質後の変質は追加熱処理により改善できることが、生物学的知見からはレーザ改質による粗面化は細胞挙動を良好にするが、レーザ改質による変質は細胞の活性に良好な影響を与えない可能性があることが分かった。また、パウダー・ジェット・デポジッション(PJD)という粒子衝突手法による革新的歯科治療の事例として、ハイドロキシアパタイト(HA)の成膜による、う蝕(酸によって歯質が脱灰・欠損する口腔内疾患)の新しい治療法を提案した。

第二部:トライボセッション

・「実ワークのトライボコーティングの膜厚・膜質検査のご紹介」岡本宗大氏(大塚電子)…三次元形状体に成膜されたDLC膜などの膜厚(1nm~)の解析に加えて、光学定数(屈折率:n、消衰係数:k)といった膜由来の構造解析を、非接触・非破壊・顕微で迅速に計測できる顕微分光膜厚計「OPTMシリーズ」の技術と適用事例を紹介した。同じく非破壊計測であるエリプソメトリー法では最小スポット径が大きいため特定の部位の計測が難しいほか、数十秒~数分の計測時間を要するなどの課題があったのに対し、顕微分光膜厚計では高速オートフォーカス機能により、1ポイント1秒以下の高速計測を実現するほか、最小スポット径が3μmと小さいため微小領域で狙った部位を計測できる。最適化シミュレーションデータ生成の高速化やFFT Multi Pro(多層同時解析)などの新機能について紹介したほか、切削工具のDLC膜やペットボトルのDLC膜・シリカ膜の膜厚・膜質測定の事例を紹介した。

第三部: マイクロセッション

・「自由曲面光学部品および微細構造表面の高精度加工技術」閻 紀旺氏(慶應義塾大学)…スピンドル回転と工具運動を同期させるスローツールサーボ機構を用いた超精密旋削加工は非軸対称な自由曲面形状でも短時間・高精度に加工できる一方、複数の誤差要因によって理想形状と実際の加工形状の間に誤差が発生するため、形状誤差を計測し補正することが必要とされる。講演では、考えられるすべての誤差要因を包括的に分析し加工前に予測に基づき補正することで1回のみの加工でナノレベルの形状精度を実現できる補正技術について紹介した。また、サブマイクロオーダーの工具輪郭誤差が形状精度を低下させる課題に対し、白色干渉計を用いて工具輪郭を計測しフィードフォワード補正をかけることで、1回の加工で形状精度150nmの自由曲面旋削を可能にする機上計測・補正技術を紹介した。さらに、分割切削法による追従誤差低減や、その他の微細構造表面加工技術について提案した。

 当日は光学・精密機器関連の企業展示と大学研究室によるポスター発表が行われ、トライボコーティング関連では企業展示で大塚電子とナノコート・ティーエスが、ポスター発表で埼玉工業大学マイクロ・ナノ工学研究室(長谷研究室)、理化学研究所 大森素形材工学研究室が参加した。

 

大塚電子の展示のようす

 

ナノコート・ティーエスの展示のようす

 

理化学研究所大森素形材工学研究室の展示のようす

 

 講演終了後は「第5回IOF Award企業展示・大学研究室ポスター発表奨励賞表彰式」が開催され、企業展示3件とポスター発表2件が表彰され、トライボコーティング関連では、埼玉工業大学 長谷研究室が選ばれた。光学部品表面におけるナノメートルオーダーの精度・品位を維持するためには、加工表面で起こるトライボロジー現象の認識と制御が必須となるが、同研究室では材料の変形・破壊時に発生する弾性応力波を計測するAEセンシングの活用と摩擦界面で起こるトライボロジー現象の可視化など多角的な研究に取り組んでおり、今回はそれらの研究を通じて光学部品の生産技術への寄与を目指していることなどが評価された。

 

第5回IOF Award 大学研究室ポスター発表奨励賞表彰式のようす
:右から二番目が埼玉工業大学・長谷亜蘭氏

 

kat 2022年10月17日 (月曜日)
kat

ナノコート・ティーエス、11月1日に東京本社・トライボロジーラボを移転

1年 5ヶ月 ago
ナノコート・ティーエス、11月1日に東京本社・トライボロジーラボを移転

 ナノコート・ティーエス(https://www.nanocoat-ts.com/)は11月1日、東京本社およびトライボロジーラボを東京都立川市に移転する。東日本の営業体制を強化するとともに、トライボロジーラボの規模を拡大することで受託試験の増強を図る狙い。以下の新拠点で業務を開始する。

〒190-0003 東京都立川市栄町6-1 立飛ビル3号館407
本社(代表) TEL:042(537)7134
本社(営業) TEL:042(537)7535
トライボロジーラボ TEL:042(519)7504
本社/トライボロジーラボ FAX:042(519)7584

立飛ビル3号館


 

kat 2022年10月13日 (木曜日)
kat

JCU が染料系化合物を使用しない装飾用硫酸銅めっきプロセス開発

1年 5ヶ月 ago
JCU が染料系化合物を使用しない装飾用硫酸銅めっきプロセス開発

 JCU( https://www.jcu-i.com/ )は、金属やプラスチック素材にめっきを行う工程において、環境に負荷がかかる染料系化合物を使用しない高レベリング(平滑性)装飾用硫酸銅めっきプロセス「CU-BRITE DF-10」を開発した。

 独自に開発した非染料系の化合物をめっき薬品に添加することで、染料系化合物を使用したプロセスと同等以上の平滑性と光沢性をもつ銅めっき被膜外観にすることを可能にしたうえ、作業環境が改善される。同プロセスは従来の染料系プロセスの設備がそのまま使用可能で、焦げつきやピットなどの外観不良も大幅に抑制できる。また、染料系プロセスよりも活性炭による浄化が迅速に行えるなどの利点もあり、生産性向上にも大きく貢献できる。国内外の装飾めっき市場のニーズにお応えできる価格で提供できるよう、2022 年内の販売開始を目指している。

 自動車や水栓金具などに使用される部品の一部は、美しい金属外観および防錆機能を持たせるため、めっき技術により素材上に金属膜を形成している。その工程の一つである装飾用硫酸銅めっきプロセスでは、平滑で光沢のある外観を得るために、めっき薬品の添加剤として染料系の化合物を使用することが一般的。しかし、染料系化合物は合成する際に強力な酸化剤などを使用することから、製造工場での土壌汚染や、排水・廃液処理における環境負荷の軽減が課題となっている。また、染料系化合物は樹脂などの表面への吸着性が強く、少量の使用でも作業環境や周囲への汚染が広がるなど取り扱いが難しい物質でもある。同社では、染料系化合物の環境負荷を重く受け止め、非染料系の化合物でも従来プロセスを上回る性能を持つプロセスの開発を進めてきた。

左:硫酸銅めっきプロセスの使用例(自動車ドアハンドル) 右:装飾用めっき工程の一覧

 

admin 2022年10月11日 (火曜日)
admin

シチズン時計、DLCコーティングの新色を21年ぶりに開発

1年 5ヶ月 ago
シチズン時計、DLCコーティングの新色を21年ぶりに開発

 シチズン時計は、腕時計のケースやバンドの素材表面に特殊な加工処理を施すことで時計本来の美しさを傷から守る独自の表面硬化技術「デュラテクト」において、従来ブラックのみだった「デュラテクト DLC」から21年ぶりの新色となる「デュラテクト DLCブルー」を開発した。このDLCブルーを採用した製品を男性向け主力ブランド「シチズン アテッサ」から、ブランド35周年記念第3弾「Blue Universe Collection」として本年11月10日より発売する。

デュラテクト DLCブルーを採用したBlue Universe Collection


 

 開発したDLCブルーは、独特の深い青色を素材表面に施すことができる表面硬化処理技術で、傷に強く、滑らかな触り心地のDLCの特性を維持しつつ青色を実現。シャボン玉が虹色に見える現象と同じ「薄膜干渉」という原理に着目し、高度なDLC成膜技術を用いて開発した。

 DLCはダイヤモンドと黒鉛の間の性質を持つ炭素膜だが、炭素同士のつながり方次第で黒鉛のような黒色にもダイヤモンドのような透明にもなる。同社では今回、成膜条件を最適化したダイヤモンド寄りの透明に近いDLC膜を開発。これを通常の黒色のDLC膜の上に成膜して積層構造とした。これに光を当てると、透明のDLC膜の表面で反射する光と、透過して下の黒色のDLC膜表面で反射する光とに分かれ、それぞれが干渉し合う「薄膜干渉」を起こす。その際、膜の厚みによって、特定の波長が強くなったり、弱くなったりすることで色が変わるが、同社では数十nmレベルで膜厚を均一に制御する高度な技術を用いて青色の波長を強め、DLCのみを用いて深い青色を生み出すことに成功したもの。

 

DLCブルーの膜構成

 

DLCブルーの深い青色を生み出す原理


  

 DLCは擦り傷に強いだけでなく、非常に滑らかな触り心地が特徴で、同社では業界でいち早く2001年から腕時計にDLCを採用し、男性モデルを中心に数多くの商品を展開している。これまでブラックに限られていたDLCに新色DLCブルーが登場することで、デザインのバリエーションが広がることになる。

 このDLCブルーを採用した男性向け主力ブランド「シチズン アテッサ Blue Universe Collection」(本年11月10日発売)の詳細は、同ブランドのウェブサイト(https://citizen.jp/attesa/special/blueuniverse/index.html)で確認できる。

kat 2022年10月11日 (火曜日)
kat

日本熱処理技術協会、11月7日、8日に2022年度 第3回熱処理技術セミナーを開催

1年 5ヶ月 ago
日本熱処理技術協会、11月7日、8日に2022年度 第3回熱処理技術セミナーを開催

 日本熱処理技術協会は11月7日、8日、対面参加(鉄鋼会館6階:東京都中央区日本橋茅場町3-2-10)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、「2022年度 第3回熱処理技術セミナー-熱処理基礎講座Ⅱ-」を開催する。今回は、浸炭・窒化・高周波といった代表的な表面硬化熱処理技術を中心に、これらの熱処理とは不可分な金属学的現象への解説を加えて、熱処理技術を中心に据えた基礎講座プログラムとしている。

参加申込締切は10月26日で以下のURLから申し込みができる。定員はオンライン参加が80名で、対面参加が先着20名。参加費は正会員36000円(税込)、維持会員36000円(税込)、非会員56000円(税込)。

URL  https://forms.office.com/r/myE6PS0ivN

 内容は以下のとおり。

11月7日

・9:50~10:00「オンライン配信に当っての注意事項」日本熱処理技術協会 事務局
・10:00~11:30「鋼の焼入性と合金元素」梅澤 修氏(横浜国立大学)

・12:30~14:00「拡散」中田伸生氏(東京工業大学)

・14:10~15:40「残留オーステナイト」土山聡宏氏(九州大学)

・15:50~17:20「鉄鋼材料の高強度化と変形・破壊の基礎」田中將己氏(九州大学)

 

11月8日

・10:00~11:30「金属の高温酸化」上田光敏氏(東京工業大学)

・12:30~14:00「表面硬化熱処理の基礎」奥宮正洋氏(豊田工業大学)

・14:10~15:40「鉄鋼材料の窒化・浸窒処理における組織制御の考え方」宮本吾郎氏(東北大学)

・15:50~17:20「高周波熱処理」竹屋昭宏氏(第一高周波工業)

kat 2022年9月30日 (金曜日)
kat

ナノ科学シンポジウム2022が11月18日にハイブリッド開催

1年 5ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2022が11月18日にハイブリッド開催

 ナノテクノロジーとSPMに特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2022 : NSSJ2022)」が11月18日10時~17時半に、対面参加(東京大学 工学部2号館:東京都文京区本郷7-3-1)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により開催される。主催は東京大学機械工学科(准教授崔 埈豪氏)と関東学院大学材料・表面工学研究所(所長 高井 治氏)で、協賛はパーク・システムズ・ジャパンとヤマトマテリアル、ワイエイシイテクノロジーズ、後援は日刊工業新聞社、メカニカル・テック社とNanoScientific。

 シンポジウムHP(https://event.nanoscientific.org/jp)から参加登録できる。参加費は無料。

 

 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウムで、今回のNSSJ 2022では、科学に変革をもたらすSPMの幅広い応用と技術に焦点を当て、先端技術のための新しいナノ材料、機能性表面、さらにナノテクノロジーやSPMを使った応用技術についても紹介する。

 2020年から開催され3回目となる今回は、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表がなされる。

特別講演 マイクロ・ナノスケールでのロボット技術とバイオメディカル応用 新井史人氏(東京大学 工学系研究科 教授)

最先端のロボット技術として、近年、AIによる知能化技術が注目される一方で、微細な対象物の分析、微細作業の自動化や、小型集積化技術といった、マイクロ・ナノスケールでのロボット技術はフロンティア技術として重要である。これらのロボット技術のバイオメディカル分野への応用は、活発化している。例えば、単一の細胞を対象とした計測・分離操作の自動化や、微量な液体サンプルを扱う必要性が増している。そこで、本講演では、マイクロ・ナノスケールでのロボット技術とバイオメディカル応用にフォーカスし、マイクロ流体チップと微小プローブによる微小力計測や関連する応用例などを紹介する。

導電性金属酸化物薄膜内キャリア輸送を探る・操る 山本哲也氏(高知工科大学総合研究所 教授)

導電性金属酸化物薄膜の膜厚を 50nm から更に 10 nm 以下と薄くしていくと、膜厚はキャリア電子が他のキャリア電子と衝突しない自由な距離(平均自由行程)と同程度となっていく。ポイントの1つは結晶構造や導電性を維持しながらの膜成長を可能とさせる薄膜成長装置の実現の可否にある。薄膜構造を表面、基板との界面、及びバルクとの3つに分けられると仮定し、そのキャリア電子輸送特性を操ることを目標とする定量的議論を行う。議論の焦点は該特性を決める支配因子を明らかにすることである。ナノスケールでの秩序の乱れと縮退系との科学を紐解く。

AFMによる粘弾性計測の可能性 中嶋 健氏(東京工業大学 物質理工学院 教授)

原子間力顕微鏡によるソフトマテリアル の粘弾性計測の方法には古くからさまざまな方法が考案されてきている。静的なフォースカーブの弾性理論からの逸脱を議論する方法、タッピングモードの位相像からエネルギー散逸を評価する方法、そして最近ではナノレオロジーAFMとも呼ぶべき手法がいくつか存在する。発表ではそれらの手法および応用事例について簡単にレビューし、将来の方向性について現在考えていることを述べる。

Beyond 5G/6Gに向けた電子デバイスと表面処理技術 盧 柱亨氏(関東学院大学 材料・表面工学研究所 教授)

「高速」「大容量」「低遅延」「多数端末との接続」の特徴をもつ5G高速モバイルネットワークの普及によりBig dataを上手く処理することができるようになり、全てのモノがインターネットによって繋がっているIoE (Internet of Everything)の実現に拍車がかかり、AI、自動運転、遠隔医療など、時代は、Industry 4.0からSociety 5.0への期待が高まっている。データをより高速で安定的に伝送するためのBeyond 5G/6Gの技術の研究開発が活発に行われており、そのうち、材料の長所を生かし、新たな機能を付与できる表面処理技術の研究・開発も重要視されている。本講演では、ウェアラブルデバイスのFlexible樹脂フィルム基板上への回路形成などに応用するための最終ステップとして銅薄膜の密着力と結晶性を向上させるために行う恒温槽での熱処理代わりにMulti-shot Flash Lamp による新しいアニーリング法について紹介する。

非晶質炭素膜を帯電材として用いた高耐久性高効率すべり型摩擦発電機の開発 崔 埈豪氏(東京大学 工学系研究科 准教授)

摩擦発電は、生活や自然の中の機械エネルギーを電気に変換する発電技術であり、バッテリーを必要としない自己発電型IoTセンサーへの応用が大いに期待される。帯電材間の相対運動により生成する電荷を用いて発電する摩擦発電は、帯電材表面間の高速相対滑りにより発電効率は高められるが、帯電材の摩擦損失と耐久性が大きな問題である。本研究は、従来のポリマー帯電材に代り、低摩擦性・高誘電率の非晶質炭素膜を帯電材として用いることで、高効率・高耐久性の滑り型摩擦発電システムの開発を行った。摩擦発電は小型モバイル機器への応用が大いに期待されており、非晶質炭素膜を成膜する薄膜プロセスは小型デバイスの制作に有効である。

一次元遷移金属カルコゲナイドの成長と評価 宮田耕充氏(東京都立大学 理学部 物理学科 准教授)

遷移金属とカルコゲンから構成される遷移金属カルコゲナイド(TMC)は、その多彩なナノ構造と物性より,近年大きな注目を集めている。一方で、その多量合成や構造制御は未だ重要な課題となっている。我々のグループでは、この課題の解決に向け、化学気相成長(CVD)を利用した合成技術の開発を進めてきた。本発表では、TMCの一次元ナノ構造の成長と評価に関する最近の成果を紹介する。

高速走査型イオン伝導顕微鏡による生細胞表層ナノ力学動態の可視化 渡辺信嗣氏(金沢大学 ナノ生命科学研究所 准教授)

 

オペランド電位計測によるエネルギー変換・蓄積デバイスの評価 石田暢之氏(物質・材料研究機構 博士)

近年、エネルギー変換・貯蔵デバイス(太陽電池、リチウムイオン電池等)が盛んに研究されている。我々はこれらデバイスの動作原理の理解、および、デバイス設計指針の獲得を目的として、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いたナノスケール電位計測に取り組んでいる。特に、光照射下や充放電動作中などのデバイス動作状態で直接評価を行う「オペランド電位計測」に関する基盤技術の開発を行っている。本発表では、次世代デバイスとして注目を集めるペロブスカイト太陽電池や全固体リチウムイオン電池の評価・解析事例を紹介する。

kat 2022年9月30日 (金曜日)
kat

JASIS2022開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

1年 5ヶ月 ago
JASIS2022開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

 日本分析機器工業会と日本科学機器協会は9月7日~9日、千葉市美浜区の幕張メッセ 国際展示場で、分析機器・科学機器の総合展示会「JASIS2022」を開催した。当日は、322社・機関、982小間の出展と新技術説明会が59社/225テーマの講演が多数催された。来場者は12465名(昨年8490名)、新技術説明会の聴講者数は6908名(同4813名)だった。

JASIS2012のもよう

 エリオニクス( https://www.elionix.co.jp/ )は、DLCなどの硬質被膜やめっき皮膜、フィルム材料などの樹脂材料、微小粒子や粉体材料の硬さ・弾性率などの機械的特性を測定できるナノインデンテーション試験機「ENT-5」の展示を行った。振動や温度変化などの外乱の影響を抑えた機構で、高いデータ再現性を実現。高荷重ユニット(5μN~2000mN)と低荷重ユニット(0.5μN~10mN)の交換が容易、装置の校正をユニット交換により行うことでメンテナンス性を向上している。純国産のため親しみやすいGUIとなっている。

エリオニクス「ENT-5」

 大塚電子(https://www.otsukael.jp/)は、ゼータ電位・粒子径・分子量測定システム「ELSZneo」を紹介した。ELSZseries の最上位機種で、希薄溶液~濃厚溶液でのゼータ電位・粒子径測定に加え、分子量測定を可能にしている。新しい機能として、粒度分布の分離能を向上させるため多角度測定を採用。また、粒子濃度測定やマイクロレオロジー測定、ゲルの網目構造解析も可能にした。新しくなったゼータ電位平板セルユニットは、新開発した高塩濃度対応コーティングにより、生理食塩水などの高塩濃度環境下での測定が可能。

大塚電子「ELSZneo」

 新東科学( https://www.heidon.co.jp/ )は、直交バランスアーム方式や測定中にカバー可能な機構を採用したスタンダードモデルの摩擦摩耗試験機「トライボギアTYPE:40」の実機を展示した。摩擦力を測定する荷重変換器を測定子直上に配置し、不要な機構をなくしたことにより、高いレスポンスとセッティングの誤差を排除した。また、試料テーブルの摺動方向をアームに対して直交させことにより、往路復路の荷重変動をなくし耐摩耗性評価の信頼性を大幅に向上させた。さらにY方向ステージを標準装備して13mmストロークするように設計、一度試験が終わった後もサンプルを付け替えることなく別の部分で測定が行える。オプションのトライボソフトを使用するとパソコンから簡単に条件入力、解析、さらに試験操作まで行える。

「トライボギアTYPE:40」

 THK(https://www.thk.com/)は、軸受に求められる機能と非磁性を高次元で両立する直動案内「LMガイド」、ボールねじ、ボールスプライン、クロスローラーリングといった「高機能非磁性製品」を紹介した。磁気をほとんど帯びず、かつ軸受に適した硬度を持つ特殊合金「THK-NM1」を使用することで、比透磁率が1.005未満という高水準の非磁性を実現、強磁場を発生させる核磁気共鳴分析装置(NMR)や電荷を帯びた粒子を扱う透過型電子顕微鏡(TEM)などでの使用に最適。また、特殊熱処理技術により、軸受に適した硬度が得られることで、従来のオーステナイト非磁性鋼と比べて大幅に優れた耐荷重性能を発揮、従来よりも小型形番を選定できるため装置全体のダウンサイジングに貢献できる。

THK「高機能非磁性製品」

 パーク・システムズ・ジャパン(https://www.parksystems.co.jp/)は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。

パーク・システムズ・ジャパン「Park FX40」

 ブルカージャパン ナノ表面計測事業部(https://www.bruker-nano.jp/)は、ナノ機械特性およびナノトライボロジー特性評価が可能な、コンパクト設計の卓上型ナノインデンテーションシステム「Hysitron TS 77 Select」を展示した。ナノからマイクロスケールで信頼性の高い機械的特性およびトライボロジー特性評価を提供。ナノ機械特性評価で最も利用頻度が高く、ベーシックな手法である定量的ナノインデンテーション試験、ナノ摩耗試験、In-Situ SPMイメージング技術、高解像度の機械的特性マッピング技術を有したエントリーモデル。オプションとして動的ナノインデンテーション、ナノスクラッチの機能も用意。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部「Hysitron TS 77 Select」

 堀場製作所(https://www.horiba.co.jp/)は、検出器の改良と信号処理を高速化する独自アルゴリズムの採用で分析時間を最大65%削減するとともに、卓上型蛍光X線で世界初のホウ素からの軽元素分析を実現する微小部X線分析装置「XGT-9000 Pro/Expert」を展示した。蛍光X線では検出が非常に難しいホウ素(B)の分析が可能になったことで、より一般的な炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)などの軽元素が高感度に分析でき、従来は複数の装置を用いざるを得なかった酸化物や窒化物、有機物などの分析も1台で完結できる。

堀場製作所「XGT-9000 Pro/Expert」

 リガク(https://japan.rigaku.com/ja)は、品質管理現場に最適なX線回折装置「MiniFlex_XpC」を展示した。誰でも簡単に使用でき、測定者による誤差のない評価が可能。広い検出面積を誇る高分解能・高速1次元検出器で測定データの高強度化を実現できるため測定時間が短縮可能。品質管理に最適な試料ローディング機構により、装置の扉を開かずに簡単に試料設置が可能。D/teXUltra250による短時間測定により作業効率を向上できる。最小3タップ(3クリック)で測定、解析、結果の一覧表示と合否判定ができる。5年程度の長期耐久性能を備えた試料水平小型ゴニオメーターを搭載。

リガク「MiniFlex_XpC」

 レニショー(https://www.renishaw.jp/)は、研究グレードの顕微鏡に高性能のラマン分光装置を統合した「inVia™ 共焦点ラマン顕微鏡」を展示した。効率の高い光学系により、極微量の物質からでも、最短時間で最高のラマンデータが得られる。高感度のため薄膜や単層から極わずかなラマン散乱でも検出しラマンスペクトルを取得できる。総合的なマッピングとイメージング技術の搭載により、2D領域でも3D空間でも情報にあふれた詳細なラマンイメージを生成できる。In Via Qontorの自動フォーカストラッキング技術により、曲面・粗面のサンプルでも分析でき、光学像観察とラマン測定の両モードでフォーカスを維持できる。

 

admin 2022年9月29日 (木曜日)
admin

JAST、第19回 機能性コーティングの最適設計技術研究会を開催

1年 5ヶ月 ago
JAST、第19回 機能性コーティングの最適設計技術研究会を開催

 日本トライボロジー学会(JAST)の機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)は9月5日、「第15期 第1回(通算第19回)会合(オンサイト会議)」を開催した。

開催のようす

 

 同研究会は、窒化炭素(CNx)膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の硬質炭素系被膜および二硫化モリブデン等の固体潤滑被膜を実用化する上で重要となるコーティングの最適設計技術の向上を目指し、幅広い分野の研究者・技術者が集い、研究会での話題提供と討論や、トライボロジー会議でのシンポジウムの開催などを行っている。

 今回はDLC膜をはじめとする表面改質やナノ粒子による低摩擦化技術、接触部位における解析技術にフォーカス。上坂主査の開会挨拶に続いて、以下のとおり、2件の話題提供がなされた。

挨拶する上坂氏

 

「潤滑油添加剤MoDTCとの反応性を高めたDLC膜、炭素系ナノ粒子による低摩擦化の展望」馬渕 豊氏(宇都宮大学)…摩擦調整剤MoDTCとの反応性を高めるDLC膜の研究では、遷移元素であるNi を蒸着したDLC膜が反応性向上に有効として着目。ta-C膜にNiを蒸着した膜ではta-C膜に比べ摩擦係数が半減したことが確認されたほか、Ni蒸着ta-C膜のオージェ分析結果からは、Ni の蒸着により表層にMoS2の生成とそれを支持するFe3O4/Niの2層構造が認められ、NiがMoS2の支持層であるFe3O4の生成を促進する可能性があるとした。また、ナノダイヤモンド、フラーレン、酸化グラフェンなどの炭素系ナノ粒子による低摩擦メカニズムの研究では、①炭素系同素体のナノ粒子は、分散剤であるグリセリンモノオレート(GMO)との共存下で摩擦係数が1/10にまで低下すること、②その内訳としてGMOの効果が約7~8割を占めること、③GMO添加量の低下に伴い二次粒子径が増大し摩擦係数の増大につながること、④摩擦メカニズム解析として吸着サイト数NEBCを定義して整理した結果、各ナノ粒子の摩擦係数との相関が認められたが粒子の構造を超えた統一的な整理には至らなかったと総括した。

講演する馬渕氏

 

「スパッタ薄膜を用いた固体表面接触部の測定について」川口尊久氏(宇都宮大学)…従来の真実接触部の検出方法では困難だったメゾスケールの大きさの真実接触部について、弾性接触を含めて詳細に検出できる方法として、固体表面に数nmの厚さでスパッタ薄膜を被覆し、その薄膜が接触によって相手表面に移着することを利用し真実接触部を検出する方法を紹介した。ここでは、滑らかなガラス平面試料に金(Au)のスパッタ薄膜を、表面に数十nmRaの微小な粗さを持つ鋼球に白金(Pt)のスパッタ薄膜を成膜し、負荷荷重を変えて二面を押し付ける実験を行い、ガラス平面試料側の薄膜が鋼球側に移着した接触部の様子を光学顕微鏡とSPM(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した事例を紹介。押し付け実験後の平面試料を光学顕微鏡で測定した結果からは、接触痕の全体像から、荷重の増加に伴い接触痕の接触した範囲の半径が大きくなっていくことが分かったほか、接触痕の中心部付近は荷重の増加に伴って微細に接触した個々の領域が外周部に比べてより大きくなっていることが、接触痕の外周部付近では個々の微細な接触領域が中心部に比べて小さく点在していることが分かった。また、SPMにより接触痕を観察した結果、個々の微細な接触領域が荷重の増加に伴って大きくなる様子や新たな接触領域の発生などの様子がより詳細に観察できた。

講演する川口氏

 

 講演終了後は、川口研究室、馬渕研究室、宇都宮大学分析センターの見学会が、それぞれ実施された。

 

川口研究室の見学会のようす

 

馬渕研究室の見学会のようす

 

宇都宮大学分析センターの見学会のようす


 

kat 2022年9月28日 (水曜日)
kat

トライボコーティング技術研究会、令和4年度特別研究会、第13回トライボコーティング・ドライコーティング合同研究会を開催

1年 6ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、令和4年度特別研究会、第13回トライボコーティング・ドライコーティング合同研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 主任研究員 大森 整氏)は9月2日、東京都板橋区の理研板橋連携研究センターで「令和4年度特別研究会」を開催した。本研究会は、第13回となるトライボコーティング・ドライコーティング合同研究会を兼ねて、リアルおよびオンラインによるハイブリッド開催となった。また本研究会はマイクロ加工懇談会などとの同時開催となった。

 当日は、大森会長の開会挨拶に続いて、関連イベントの開催状況の報告ならびに講演概要の紹介がなされた。 

進行する大森 整会長

 続いて以下のとおり講演がなされた。

・「チタン合金およびNi基超耐熱合金切削時のコーティング膜損傷とその対策、超高圧クーラントについて」臼杵 年氏(東京大学生産技術研究所)…航空・宇宙・エネルギー産業向けの難削材切削加工のためのコーティング工具の開発を行っている。切削工具のコーティング技術と特徴の解説とともに、Ni基合金の切削加工時に生じるコーテッド工具のコーティング膜損傷の事例と分析結果が紹介された。その結果、コーティング膜損傷は、表面から1μmまでの表層でのせん断破壊に起因することが示された。さらに、コーティング方法によるコーティング膜損傷の原因には特徴的な違いがあり、特にドロップレットは破壊起点になり得ることから大きく影響を及ぼすとした。また、切削時のクーラント供給について、油剤は切削領域の周辺にしか侵入できず、熱源周辺部で熱を奪い刃先の冷却がなされるものの、潤滑膜による潤滑機構は考えにくいとの考えが示された。
 

講演する臼杵氏

 

・「ワイドギャップ半導体基板のスラリーレスダメージフリー研磨プロセス‐プラズマ援用研磨と電気化学機械研磨‐」山村和也氏(大阪大学)…新しい高能率ダメージフリー製造プロセスの研究開発の一環で、形を創り(Figuring)、表面を磨き(Finishing)、性質を変える(Functionalization) というF3プロセスとして、大気圧プラズマを援用した化学的無歪加工プロセスが提案されている。アプリケーションとしてワイドギャップ半導体基板である単結晶SiCウェハの仕上げ研磨へ適用され、プラズマ照射の援用によりスクラッチフリー、無歪状態の表面創成が実現された。また、GaNへの適用もなされ、良好な結果が得られた。続いて、焼結AlN基板の脱粒フリー研磨、単結晶ダイヤモンド基板の加工事例の紹介が行われ、スラリーレス電気化学機械研磨について紹介がなされた。
 

講演する山村氏

 

 講演に続いて、今後の予定、参画行事について紹介がなされた後、大森素形材工学研究室内の施設見学会が行われ、大気圧プラズマによる表面処理の試み、AI加工システムの基礎開発状況、ナノダイヤモンド含有砥石によるナノ表面加工について、現場での熱心な質疑と意見交換が行われた。 
 

見学会のようす

 

kat 2022年9月13日 (火曜日)
kat

オリンパス、米・ファンドに科学事業分野を売却

1年 6ヶ月 ago
オリンパス、米・ファンドに科学事業分野を売却

 オリンパス( https://www.olympus.co.jp/ )は、科学分野の製品を取り扱う子会社エビデント( https://www.evidentscientific.com/ja/ )を投資ファンドの米・ベインキャピタルに売却すると発表した。2023年1月4日を目途にエビデントの全株式をベインキャピタルに譲渡する。

 オリンパスは、内視鏡事業および治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、経営基盤の強化に努めている。また、医療分野と科学分野のそれぞれの事業特性に合った経営体制を確立することが各事業の成長と収益性の向上を加速させ、同社グループ全体の企業価値向上に資すると判断し、2022年4月に同社の科学事業をエビデントとして分社化した。

 エビデントが事業を手掛ける科学事業分野は、世界的に根強い需要に支えられている。ライフサイエンス分野を支える生物顕微鏡は学術・医学分野の研究開発市場、病理検査市場に加え、近年は創薬や不妊治療支援の需要の拡大を支えている。また、産業分野では、拡大する半導体市場や電子部品市場に向けた工業用顕微鏡や自動車・航空・ガスパイプライン・発電配電装置・金属・貴金属など、多分野に渡る製造・インフラ検査向けの工業用内視鏡・非破壊検査機器・蛍光X線分析装置を提供している。

 このような活況な市場環境の中、エビデントの事業の特性に合った機動的かつ柔軟な意思決定を可能にすることが、同社のさらなる成長・拡大につながると考え、エビデントの全株式をベインキャピタルに譲渡する結論に至ったという。

 オリンパスの竹内康雄社長は「ベインキャピタルにはエビデントの事業の価値と成長の可能性を深く理解していただいているとともにエビデントがグローバルな組織としての連携力と、積極的に最新技術を実用化する卓越した企業文化によって多様な顧客ニーズに応え、これまでオリンパスに貢献してきたことも高く評価していただいている。ベインキャピタルはエビデントにとって、その事業特性に応じた最適な事業環境を提供し、企業価値を持続的に最大化できる最適なパートナーであると確信している」と述べている。

 エビデントの齋藤吉毅社長は「エビデントはベインキャピタルの元で引き続き、革新的な製品・ソリューションを顧客に提供していく。これまでのノウハウを活用し、今後はクラウドを含むデジタル技術を活用したソリューションを拡充することで、研究や検査分野におけるワークフローの改善および顧客への提供価値向上に努めていく。より自律的な経営が可能になることで、アジャイル型の製品開発やオープンイノベーションを推進し、顧客の課題解決に向けた製品の展開スピードをより高められると考えている」と述べている。

 

admin 2022年9月2日 (金曜日)
admin

メカニカル・サーフェス・テック2022年8月号 特集「表面改質の試験・評価」8/25に発行

1年 6ヶ月 ago
メカニカル・サーフェス・テック2022年8月号 特集「表面改質の試験・評価」8/25に発行

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2022年8月号 特集「表面改質の試験・評価」が当社より8月25日に発行された。

 今回の特集「表面改質の試験・評価」では、ISO提案を予定している摩擦摩耗試験機を用いたDLC膜の耐荷重能評価の概要と評価結果の一例について、ユーザーがDLC被膜に関するISO規格の試験を行った後にその結果が適正であることをDLC工業会が確認する制度について、潤滑油介在下での硬質薄膜の摩擦摩耗特性評価で適用実績の多いトラクション試験機の概要と試験評価事例について、ソフトマター研究に役立つ評価・分析装置として利用されているモジュール交換式多機能摩擦摩耗試験機の概要と試験評価事例について、ベリリウム銅合金を真空構造材に用いた超高感度ガス分析装置の開発と適用について紹介する。

特集:表面改質の試験・評価

◇摩擦摩耗試験機を用いたDLC膜の耐荷重能評価・・・産業技術総合研究所 間野 大樹
◇DLC工業会確認マーク発行制度とその活用・・・DLC工業会 平塚 傑工
◇トライボロジー試験機を用いたDLCなど硬質薄膜関連の試験評価・・・島貿易 兒島 正宜 氏に聞く
◇多機能摩擦摩耗試験機によるソフトマター・コーティングのトライボロジー特性評価・・・Rtec-Instruments Tushar Khosla氏に聞く
◇ベリリウム銅合金を真空構造材に用いた超高感度ガス分析装置の開発と適用・・・東京電子 黒岩 雅英氏に聞く

連載

注目技術:表面清浄度の監視・制御技術・・・インテクノス・ジャパン

トピックス

厚地鉄工、ブラスト装置の拡販で2022国際ウエルディングショーに出展
産総研、傷が素早く自己修復する透明防曇皮膜を開発
高機能トライボ表面プロセス部会とドライコーティング研究会、合同研究会を開催

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admin 2022年8月25日 (木曜日)
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日本熱処理技術協会、10月13日、14日に2022年度 第2回熱処理応用講座を開催

1年 7ヶ月 ago
日本熱処理技術協会、10月13日、14日に2022年度 第2回熱処理応用講座を開催

 日本熱処理技術協会は10 月13 日、14 日の両日、対面参加(製粉会館5F 第2・3会議室:東京都中央区日本橋兜町15-6)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、「2022年度 第2回熱処理技術セミナー-熱処理応用講座-」を開催する。テーマは「カーボンニュートラル社会へ貢献する工業炉・熱処理技術の進化」。

 申込締切日は10月3日で、以下URLから申し込みができる。定員は、オンライン参加が80名で対面参加が先着20名。参加費は、正会員36000円(税込)、維持会員36000円、非会員56000円(税込)。

https://forms.office.com/r/Y0v4aZaVhe

 内容は以下のとおり。

10月13日

・9:55~10:00「オンライン配信に当っての注意事項」日本熱処理技術協会 事務局

・10:00~11:00【特別講演】「カーボンニュートラルを巡る産業政策の動向」沼舘 建氏(経済産業省)…2050 年のカーボンニュートラルに向け、経済産業省では様々な政策に取り組んでいる。本講演ではこれら各種政策の動向を紹介するとともに、素形材産業をはじめとする産業界に期待することについて説明する。

・11:10~12:00「工業炉技術の発展と脱炭素化への取組み」加藤健次氏(日本工業炉協会)…本講演では、これまでの日本の工業炉の高効率化・省エネルギー技術の開発経緯をレビューするとともに、現在の課題と将来の脱炭素化社会に向けた工業炉の取組み内容を紹介する。

・13:00~14:00「高周波熱処理技術の現状と脱炭素社会に向けた期待」川嵜一博氏(応用科学研究所)…電気加熱の高周波熱処理はエネルギー変換効率が高く、CO2の直接排出量が少ない“ダブル-Eco(Ecological & Economical)”熱処理で、1個流し処理ゆえに品質ばらつきも少なく、今後の脱炭素社会でも有利である。他の表面改質と複合して新たな品質機能の発現も可能で、本講演では高周波熱処理技術の現状と期待について紹介する。

・14:10~15:10「自動車の環境対応に貢献する熱処理・表面改質技術」藤川真一郎氏(日産自動車)…自動車の環境対応として自動車の燃費向上と自動車製造におけるCO2削減の両面のアプローチが求められている。本講演では、新しい表面改質技術による自動車の摺動抵抗の低減や軽量化技術、高温真空浸炭技術による工場操業におけるCO2削減について紹介し、今後の課題に対応する熱処理・表面処理技術への期待を述べる。

・15:20~16:20「脱炭素熱処理・表面処理に対する開発動向のご紹介」中岡真悟氏(日本テクノ)…脱炭素社会、カーボンニュートラルの要請に対し、エネルギー多消費型の熱処理は鍛造、鋳造と同様に、厳しく変革を迫られている。そこで本講演では、これらの要請に応えつつ、省資源、省エネルギーかつ高機能を付与できる熱処理技術について解説する。

10月14日

・10:00~11:30「化石燃料の大量消費と環境問題を解決するための水素エネルギーキャリア戦略」赤松史光氏(大阪大学)…私たちが利用しているエネルギーの約9割は、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料を燃焼させることによって生み出されている。しかしながら、近年、化石燃料の大量消費により地球温暖化などの地球規模の環境問題が起こっている。この問題を解決するために、太陽光、太陽熱、風力等の再生可能な自然エネルギーを用いて、化石燃料を代替する水素のバリューチェーンを構築するための研究開発が、大型国家プロジェクトとして推進されている。本講演では、化石燃料の大量消費と環境問題を解決するためのエネルギーキャリア戦略について、最新の研究結果を引用して説明する。

・12:30~13:30「工業炉における脱炭素燃焼技術の開発動向」友澤健一氏(中外炉工業)…本講演では、熱技術を核として新しい価値を創造する同社による、カーボンニュートラル貢献に向けた非化石燃料の燃焼技術の開発の取組みを紹介する。化石燃料と比較して燃焼速度や発熱量など燃焼に関わる物性がまったく異なる水素とアンモニアの二つの非化石燃料について、開発経緯や開発課題の克服方法など中心に解説する。

・13:40~14:40「真空浸炭の原理から考える短時間化のための組織制御」田中浩司氏(大同大学)…肌焼鋼の浸炭性は鋼中のCr、Si濃度によって大きく変化し、一般にはこれら元素の表面酸化物が影響する。真空浸炭では過剰浸炭、すなわちオーステナイト粒界に生成するフィルム状炭化物の挙動が左右される。短時間化のためのプロセス開発には、浸炭層内のマクロな拡散、および炭化物周りのミクロな拡散場を理解する必要がある。

・14:50~15:50「ゼロカーボン・循環型の熱処理を見据えた超高速浸炭技術の紹介」山本亮介氏(ジェイテクトサーモシステム)…2050年カーボンニュートラルの実現に向け多くの取組がなされている。特に大量のエネルギーを使用する熱処理工程においては抜本的対策が求められ、多様化する機械部品に対し効率的な熱処理提供が肝要となる。そこで本講演では、インライン化を可能とする誘導加熱を用いた超高速浸炭技術を中心に脱炭素社会に向けた技術を紹介する。

・16:00~17:00「ガスの消費を大幅削減する新しいCOガス浸炭法の提案」水越朋之氏(大阪産業技術研究所)…現在、工業的に広く普及しているCOを含む混合ガスによる浸炭処理法のカーボンニュートラル化では、加熱手段だけでなく、オバーフローさせ、燃焼排出している使用後の処理雰囲気ガスについても何らかの対処が必要となっている。これについては様々な方策が検討されているが、本講演ではガスの消費そのものの大幅な削減による対処について説明する。

kat 2022年8月16日 (火曜日)
kat

マコー、ウェットブラストによるコーティング・めっきの密着性向上を提案

1年 7ヶ月 ago
マコー、ウェットブラストによるコーティング・めっきの密着性向上を提案

 マコー(https://www.macoho.co.jp/)はウェットブラストを成膜前処理として用いることによる、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)やフィルム、非鉄金属など各種素材へのコーティング・めっきの密着性向上を提案している。ウェットブラストは、研磨材(メディア・投射材)を使用し表面に微細な凹凸を形成することによって、アンカー効果で対象物の材質を問わずに接着力を向上させることが可能で、同社では、接着対象物の素材が限定されないことや、時間依存性がないことなどの特徴を前面に、ウェットブラストによる成膜前処理による効果を訴求していく。

JPCA Show 2022(第51回国際電子回路産業展)での密着性向上の提案

 

 製造現場においては、エンプラやフィルム、ガラスなどに成膜したコーティングやめっき膜がはく離しやすい、異取材同士の接着強度が上がらない、密着性を高めるための表面エッチングなどの薬品処理をなくしたい、といった密着性に関連した課題が少なくない。

 こうした密着性向上の課題に対して同社では、ウェットブラストを用いた前処理によって、素材を選ばずにコーティング・めっきの密着強度を高めるアプローチを紹介している。

 コーティング前処理としてウェットブラスト処理を利用すると、表面積拡大による濡れ性改善のため時間依存性がなく、また、ナノレベルの精密な凹凸によるアンカー効果によってコーティング・めっきが強固に成膜できる。さらに物理的な加工のため、有機・無機の材質に関わらず幅広い材料に使用できる。

 スーパーエンプラ・ポリフェニレンサルファイド(PPS)へのめっきの例では、前処理なしの場合にはPPS全面への均一な成膜が困難だったのに対し、ウェットブラストによる前処理を施したPPSでは、全面への均一で密着性の良好な成膜が可能になっている。また、ポリイミド(PI)フィルムへのCuめっきの例では、前処理なしの場合にはPIフィルムとめっきの界面ではく離が薄人されたのに対し、ウェットブラストによる前処理を施したPIフィルムではめっきとの強固な接着界面が確認されている。

 ガラスへの二酸化ケイ素(SiO2)コーティングでウェットブラストを前処理として施した例では、フッ酸などのケミカルエッチングを使用しない物理的な加工により、ガラスを曇らせない緻密な凹凸面を形成することで、クラックなどのダメージを与えずにコーティングの密着性を向上させている。また、CFRPへのアクリル塗装の接着の例でも、前処理なしのCFRPに比べウェットブラストによる前処理を施したCFRPでは、アクリル塗装膜の密着強度が約2.5倍に向上していることがスクラッチ試験の結果から分かっている。

 同社では、こうしたコーティング・めっきの密着強度を高めるためのウェットブラスト装置として、表面の洗浄と下地加工(ウェットブラスト)を同時に行いコーティング・めっきに最適な表面を生成できる板・フィルム状ワーク用連続自動処理装置「PFE 300/600」や、ウェットブラストのみの研究開発用装置「ラムダTypeⅡ」などをランナップ、適用を提案している。

 

板・フィルム状ワーク用連続自動処理装置「PFE 300/600」

 

ウェットブラストのみの研究開発用装置
「ラムダTypeⅡ」


 

kat 2022年8月16日 (火曜日)
kat

エリコンバルザース、プラスチック射出成形金型向けコーティングを開発

1年 7ヶ月 ago
エリコンバルザース、プラスチック射出成形金型向けコーティングを開発

 エリコンバルザース(本社:リヒテンシュタイン)は、プラスチック射出成形金型の高寿命化を実現するドライコーティング「BALINIT MOLDENA」を開発した。

 同被膜はCrN/CrON系被膜で膜厚7μm。ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの摩耗しやすい材料の射出成形金型や押出成形金型へのコーティングに適している。また、100%リサイクル素材や難燃剤を多く含む素材など、腐食性の高い素材の射出成形金型にも適しているという。

 同被膜はすでに顧客の試験・評価で、従来使用していた耐摩耗性コーティングよりも摩耗が少なく、中性塩水噴霧試験で耐腐食性が大幅に向上していることが証明されているという。不飽和ポリエステル(40%)を加工する射出成形金型に標準的なコーティングを施した場合、4万回のショットでコーティングがはく離するが、新コーティングでは20万ショット後においても変わらずに高品質での加工が可能だったという。

 プロダクトライン責任者のアンドレアス・ライター氏は「顧客はエネルギー効率を改善し、資源の節約のために、より軽いプラスチック、リサイクルプラスチックを使用している。BALINIT MOLDENAによって、私たちはプラスチック加工のための既存のソリューションを強化することに成功した。安定したプロセスを可能にし、ポリマー製造ラインの寿命を延ばす最適なソリューションを顧客に提供できることを嬉しく思う」と話している。

 エリコングループでは、今回開発した「BALINIT MOLDENA」をグローバルで展開しており、日本ではエリコンジャパン バルザース事業本部( https://www.oerlikon.com/balzers/jp/ja/ )が窓口となっている。

 

admin 2022年8月10日 (水曜日)
admin

紀陽銀行、東研サーモテックの脱炭素の取組みに対して融資を実行

1年 7ヶ月 ago
紀陽銀行、東研サーモテックの脱炭素の取組みに対して融資を実行

 紀陽銀行は、東研サーモテックの脱炭素社会実現に向けた取組みに対して融資を実行すると発表した。

 東研サーモテックは、自動車用部品や建設機械部品等の金属熱処理事業を営む国内大手の熱処理事業者で、ガスや電気の使用量削減による二酸化炭素排出量削減に向け、装置メーカーとの共同開発を行うなど、脱炭素社会の実現に向けた取組みを行っている。

 今回、同行と同社は、東研サーモテック 橋本工場における二酸化炭素排出量抑制および生産性向上のための設備ライン増設にかかる融資契約を締結した。この取組みにより導入される設備は、橋本工場の既存設備に比べ熱処理時の二酸化炭素排出量を30%以上削減することが可能になるという。
 

東研サーモテック橋本工場

 

admin 2022年8月9日 (火曜日)
admin

日鉄エンジニアリング、インドネシアに溶融亜鉛めっきラインを竣工

1年 7ヶ月 ago
日鉄エンジニアリング、インドネシアに溶融亜鉛めっきラインを竣工

 日鉄エンジニアリング( https://www.eng.nipponsteel.com/ )は、インドネシアのPT.ALEXINDO社より受注した溶融亜鉛めっきライン「Continuous Galvanizing Line:CGL」を竣工、このほど引渡しを行った。

 本設備は、耐候性・耐久性に優れた建材用55%AL-Zn溶融亜鉛めっき鋼板を製造する設備であり、日鉄エンジニアリングがインドネシアに納入したCGLでは3基目となる。プロジェクト実行にあたっては、同社と当社グループ会社である日鉄設備工程(上海)が一体となり、試運転調整まで一貫してトラブルなく円滑に完了したという。

 また本設備は、同社独自に開発した最新型ワイピング装置「NSblade」を備えており、低速厚目付から高速薄目付まで、広範囲にわたり高精度な目付量の制御が可能となっている。NSbladeは、高速通板時に発生しやすくなるスプラッシュとエッジオーバーコートを効果的に抑制することができ、溶融亜鉛めっき鋼板の品質改善に寄与する。

 日本製鉄グループのエンジニアリング会社として、鋼板処理分野の設備技術と開発力に強みを持つ同社は、国内外でCGLの実績を積み重ねている。

CGLに設置されているNSblade

 

admin 2022年8月4日 (木曜日)
admin
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21 分 43 秒 ago
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