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新東工業、米社とレーザーピーニング加工の受託加工合弁会社

10ヶ月 ago
新東工業、米社とレーザーピーニング加工の受託加工合弁会社

 新東工業( https://www.sinto.co.jp )とアメリカのLSP Technologies(LSPT)は、レーザーピーニング(LP)加工の適用領域拡大を目指し、2023年4月3日付で共同出資による「新東LSPTレーザーピーニング(本社:豊川市、加賀秀明社長」を設立した。

 近年、航空機や自動車部品など高い安全性を求められる金属部品には、ピーニング工法を用いて耐久面における信頼性を向上させるのが一般的となっている。ピーニングには主に鉄系もしくは非鉄系の小さな球を金属表面に打ち付けるショットピーニング(SP)とレーザーを照射するLPがあり、それぞれ異なる特性を持っている。例えば、SPでは耐久性向上といった効果の付与が難しいチタンのような材料に対してはLPが効果的であり、LPでは照射が難しい形状に対してSPは適用可能など、材料・目的によって最適な工法は異なる。またLPでは投射材を使わないため廃棄物を出さない利点もある。

 従来より、表面処理のリーディングカンパニーである新東工業はSPをコア技術の一つとして、そのアプリケーションや評価の知見を蓄積してきたが、LPは世界的にも扱うメーカーが少ないのが実状だった。また、先述の通りSPとLPの特性の違いは明らかであることから、両技術の特性と対象材料・使用目的に応じた最適な加工条件の提案・加工、その効果の測定・検証が求められる。

 そこで、LP装置のトップメーカーであるLSPT社から国内初となる「The Procudo Laser Peening System(プロクド レーザーピーニング システム)」を導入し、新東工業が元来保有するSPに必要不可欠な投射材および投射条件に関する知見・ノウハウ、金属の特性評価をはじめとする測定技術にLSPT社のノウハウを融合した、LPの受託加工・測定専門会社を設立することとした。

 LSPTは、LP設備の製造・販売、LPの受託加工、技術サポート・メンテナンスを行っており、世界の大手航空機メーカー等を主要顧客としている。

 

admin 2023年5月16日 (火曜日)
admin

JCCとIHI Ionbond、自動車用プレス金型へのセラミックコーティングで業務提携

10ヶ月 1週 ago
JCCとIHI Ionbond、自動車用プレス金型へのセラミックコーティングで業務提携

 日本コーティングセンター(JCC、 https://www.jcc-coating.co.jp/ )とスイスのIHI Ionbond( https://www.ionbond.com/ )は、自動車用プレス金型へのセラミックコーティングで業務提携契約を締結した。

 物理蒸着(PVD)法を用いたセラミックコーティングは、製品の耐久性を向上させる表面処理技術の一種。自動車メーカーおよび自動車部品メーカーで使用されるプレス金型では、耐久性を向上させるためにPVD法によるセラミックコーティングが採用されている。一方、自動車関連メーカーは海外に多くの生産拠点を持ち、現地で金型の補修などが必要となるため、日本で提供されるセラミックコーティングと同じ処理を海外の生産拠点でも行いたい意向があった。

 JCCは、PVD法によるセラミックコーティングの受託加工における国内のリーディングカンパニーの一つであるが、現在のところ海外に生産拠点は持っていない。一方、IHI IonbonはPVD法、CVD法、PACVD法により受託加工を行うグローバルな表面処理メーカーで、15ヵ国に35の拠点を有している。

 今回の業務提携は、JCCの金型用の主力被膜である「ヴィーナス」とIHI Ionbondの金型用の主力被膜である「IonbondTM90 Concept」を日本および海外で相互に処理できるようにするもの。JCCはこれにより、IHI Ionbondを通して海外においても「ヴィーナス」を提供できる体制が整う。これにより日本のみならず海外の自動車関連メーカーの生産拠点をカバーすることができ、顧客の利便性を一層向上させることができる。

admin 2023年5月11日 (木曜日)
admin

TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジー:表面改質をテーマに第6回 国際シンポジウムを開催

10ヶ月 1週 ago
TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジー:表面改質をテーマに第6回 国際シンポジウムを開催

 大豊工業トライボロジー研究財団(TTRF)と大豊工業は4月13日、名古屋市の名古屋国際会議場で「TTRF-TAIHO International Symposium on Automotive Tribology 2023」を開催した。

開催のようす

 

 「トライボロジーの自動車社会への貢献」を全体テーマに掲げる同シンポジウムは、トライボロジー研究の進展と自動車技術への応用等に関しトップレベルの情報を交換するとともに、この分野での産学連携の現状と将来の可能性を示しその強化を図ることを目的に、2016年から開催されている。6回目となる今回は 、「Future Prospects of Tribological Materials Surviving a Once in a Century Period of Profound Transformation Part 2 Surface Treatment(100年に一度の大変革期に対応するためのトライボロジー材料の将来展望~Part2 表面処理~)」のテーマのもとで、低摩擦を目的とした表面処理技術や耐久性・信頼性向上を目的とした表面処理技術などが紹介された。

 開会の挨拶に立った鈴木徹志氏(大豊工業副社長)は、大豊工業が曾田範宗氏や木村好次氏をはじめとするトライボロジー研究の第一人者の指導を受けながらトライボロジーをコア技術としてマイクログルーブ軸受や樹脂コーティング軸受といった先進エンジンベアリングを世に送り出してきたことや、同社が多くの恩恵を受けてきたトライボロジーの研究開発支援と啓蒙に寄与する目的でTTRFを2000年に設立し、以降、多数のトライボロジーの研究テーマに対し累計220万USドルの助成を行っていることを報告した。また、学界と産業界のコラボレーションの強化によって一層のトライボロジー研究の活性化を支援していく目的で2016年から本シンポジウムを開催していることを紹介。自動車業界の大変革期にあってトライボロジーの諸課題が厳しさを増す中で、産学連携の強化によるトライボロジー技術の一層の高度化が課題解決に寄与できるとの観点から、「本日のシンポジウムにおいても、学界と産業界の両者の活発なディスカッションを通じて、トライボロジー研究開発の促進につながることを期待している」と述べた。

挨拶する鈴木氏

 

 続いて、Kenneth G. Holmberg氏(TTRF Director)をチェアマンに、以下のとおり基調講演が行われた。

「Development of Future Powertrains for Commercial Vehicles」石川直也氏(いすゞ中央研究所)…地球温暖化防止の重要な施策としてCO2削減が要求され、自動車の電動化が進められる一方で、電力を火力発電に頼っている現状からは車両の電動化だけではCO2削減にはつながらず、発電を含めた完全な電動化が達成されるまでは、内燃機関(ICE)車では再生可能エネルギー由来の燃料の使用や熱効率の改善を進める必要がある。本講演では、物流や生活を支える商用車として、稼働コストや耐久信頼性、航続距離といったユーザーの要求に対応しつつLCAでのカーボンニュートラルを実現するための取組みを紹介。EHL理論をベースにしたクランクシステムの摩擦低減・耐久信頼性向上のための解析技術や、潤滑技術や表面改質技術を活用した部品の寿命延長のほか、部品の潤滑状態や摩耗状態の予測技術を高めることでLCAでのCO2削減に貢献できると述べた。

「New Development of Functional Surface Finishing Technologies for Next Generation Automobiles」呉 松竹氏(名古屋工業大学)…ICE車から電気自動車(EV)への転換によるエネルギー消費の節減・改善を目的に軽量化が進められる中、表面改質の対象となる材料として、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム合金といった様々な軽量素材が採用されてきている。本講演では、EVへの転換で登場してきた部品(リチウムイオンバッテリーの部品など)に対応する表面改質技術が求められる中で、変速機用部品向けなどでアルミ合金の潤滑性・耐摩耗性を高めるAl2O3/MoS2(-Sn, Ni) コーティングや、電気端子や電気接点向けなどで銅合金に高い導電性や耐摩耗性を付与するAg(Sn)グラフェン複合コーティング、リチウムイオン電池の電極材料などに大容量と高い安全性を付与するTiO2-TiN(Sn, MoOx)複合コーティングなど、次世代車両に対応する様々な非鉄材料系表面処理技術を紹介した。

 上記2件の基調講演に続き、加納 眞氏(KANO Consulting Office)をチェアマンに、「低摩擦(Low Friction)の表面処理」をテーマとするセッションが以下のとおり行われた。

「Friction Reducing Methods of DLC Films in Oil-less Conditions」徳田祐樹氏(東京都立産業技術研究センター)…環境問題などからしゅう動部品の無潤滑化が求められる中、低摩擦特性や耐摩耗性などを表面に付与できる表面改質技術としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングが注目されている。ここでは、無潤滑下で低摩擦を実現するDLC技術として、300℃程度で予熱し最表面にグラファイトライク構造を形成した傾斜膜とすることで摩擦・摩耗特性を改善した事例や、マイクロスラリージェットエロージョン(MSE)法を用いてDLC膜に表面テクスチャを形成することでしゅう動とともにグラファイト化したDLC膜の摩耗粉をテクスチャ内に捕捉し低摩擦化を図った事例、塩素ドープDLC膜によって耐摩耗性と超低摩擦を付与した事例などを紹介した。

「Development of DLC Reinforced Metal Matrix Coatings for Low Friction Sliding Components」Shahira Liza binti Kamis氏(Universiti Teknologi Malaysia)…ベアリングなどしゅう動部品においては、オイルの使用に伴う環境への配慮から、また風力発電など遠隔地にあって保守の難しい用途において、DLCなどの自己潤滑性材料による低摩擦化が求められている。本講演では、電気化学的成膜法を用いて、しゅう動部品の一方の材料にDLCフレークを分散させることによって、しゅう動時の無潤滑下での低摩擦化を図る手法を紹介した。開発した自己潤滑性を有するDLC/CuやDLC/NiなどのDLC強化複合コーティングは、潤滑油の供給なしにしゅう動部品の低摩擦化を実現。金属膜にDLCを添加し効率的に自己潤滑性を得る本手法を適用することで、各種機械が少ないエネルギーで同程度の出力を得られ、さらに部品の寿命を延長できる、と総括した。

「Material Design for Control of Tribo-film Structure Formed from Friction Modifiers」小池 亮氏(トヨタ自動車東日本)…エンジン油の低粘度化とともに自動車しゅう動部品の境界潤滑下での摩擦が増え、MoDTCに代表される摩擦調整剤への要求が高まっている。しかし、自動車しゅう動部品において適用の進むDLCなど硬質膜の種類により、摩擦調整剤の効果を発現するトライボフィルムの形成が影響される。本研究では、MoDTC添加油中における硬質膜を用いた摩擦系での低摩擦発現に関し、硬質膜自体が反応性を持たないCrNなどの窒化物膜は摩擦初期のなじみ過程で相手材からのFeの移着が低摩擦発現のためのトライボフィルム形成の必要条件であることや、トライボフィルムが最表層にMoS2を形成するには硬質膜基材とFe酸化物の結晶の格子定数が整数倍となることによって形成される緻密な Fe酸化物のナノ界面の形成が必要なこと、などを明らかにした。

 また、上坂裕之氏(岐阜大学)をチェアマンに、「耐久信頼性向上(Improve Durability and Reliability)の表面処理」をテーマとするセッションが以下のとおり行われた。

「Advanced Durability Surface Treatment Materials of Sliding Bearing for High Performance Diesel Engine」児玉勇人氏(大豊工業)…ディーゼルエンジンの高出力化とともにエンジンベアリングに対する負荷は高まる傾向にある。同社では高PVに対応する鉛フリーの表面処理技術として、銅合金エンジンベアリング向けのビスマス(Bi)コーティングやアルミ合金エンジンベアリング向けの樹脂コーティングを開発している。Biコーティングはトライボロジー特性に優れるものの、より高出力化するディーゼルエンジンのベアリングとしては軟質金属のため機械的強度が足りず、疲労摩耗特性が十分ではないという課題があった。本講演ではこの課題に対して、Biコーティングにアンチモン(Sb)を添加した新開発のコーティングが耐疲労強度を向上したことや、樹脂コーティングにおいて組成を最適化することで同様のアプリケーションに耐える耐摩耗性を付与できたことなどを報告した。

「Development of High strength and Anticorrosive Aluminum Alloys and Improvement of Fatigue Property」芹澤 愛氏(芝浦工業大学)…自動車の軽量化を目的にアルミニウム合金の適用が進む中で、アルミニウム合金に耐食性を付与する表面改質技術が求められている。本講演では、蒸気コーティング法でアルミニウム合金表面に緻密に成膜した水酸化アルミニウム被膜(AlO(OH))が水酸化物結晶の腐食防止効果によって高い耐食性を示すことや、蒸気コーティングの熱エネルギーによって硬度が上昇しアルミ合金の強度が高まったことなどを紹介した。動電位分極曲線からは水酸化アルミニウム被膜を被覆した基材の腐食電流密度が減少していることや孔食が抑制されていることが分かり、平面曲げ疲労試験からは水酸化アルミニウム被膜を被覆した試験片疲労亀裂の発生が抑えられ、アルミニウム合金の疲労寿命延長に寄与できることが確認された。

「Improvement of Fatigue Strength by Mechanical Surface Treatment Using Sustainable Peening Method」祖山 均氏(東北大学)…自動車の燃費・電費改善から、低摩擦化や耐久性・信頼性の向上と、環境負荷低減が求められている。本講演では、この目的に対応した、消耗材であるショット材を用いることなく疲労強度改善が可能な、サスティナブルな機械的表面改質技術「キャビテーション・ピーニング」を紹介。キャビテーション気泡の崩壊時に生じた衝撃力を有効利用してピーニングを行うキャビテーション・ピーニングが、表面硬化や残留圧縮応力の付与を実現しつつ平滑な表面を生成できることや、キャビテーション・ピーニングによってギヤやローラの疲労特性が改善された事例などが紹介された。

 講演終了後は、杉原功一実行委員長(大豊工業社長)が挨拶に立ち、「今回は100年に一度という自動車業界の大変革におけるトライボロジー材料の将来展望と、低摩擦および耐久信頼性向上のための表面処理技術という、二つのテーマでセッションを設けた。その中でトライボロジー材料:表面処理技術についての貴重な講演がなされ、学界と産業界との活発な議論がなされた。本日のシンポジウムの成果がSDGS実現に向けたトライボロジー課題の解決につながることを祈念するとともに、今後シンポジウムをより意義のあるものとして開催できるよう、参加いただいた皆様からのご意見やご示唆をいただければ幸いである。本シンポジウムの開催を継続しつつレベルアップを図っていき、産官学の連携をより強固なものにしていく一助とできれば大変うれしい」と述べて、シンポジウムは閉会した。

挨拶する杉原実行委員長

 

kat 2023年5月9日 (火曜日)
kat

平山氏(日産自動車)らに「ステンレス溶射ボアに対応した厚膜DLCピストンリングの開発」で論文賞

10ヶ月 3週 ago
平山氏(日産自動車)らに「ステンレス溶射ボアに対応した厚膜DLCピストンリングの開発」で論文賞

 自動車技術会は4月26日に第73回自動車技術会賞の受賞者を決定した。自動車技術会賞は、1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的として設けられ、自動車技術における多大な貢献・功績に対し贈呈している。今回、表面改質関連では、論文賞に平山勇人氏(日産自動車)など「ステンレス溶射ボアに対応した厚膜DLCピストンリングの開発」、技術開発賞に谷川達也氏(トヨタ車体)「100%塗着霧化塗装技術」が受賞した。受賞理由は以下のとおり。

 「ステンレス溶射ボアに対応した厚膜DLCピストンリングの開発」平山勇人氏・柴田大輔氏・内海貴人氏・野間 俊氏(日産自動車)、篠原章郎氏(リケン)…カーボンニュートラル実現に向けたCO2削減のためエンジン燃費改善は最重要課題である。排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation、EGR)率の向上による排気凝縮水の増加により、ボア腐食環境が厳しくなっている。これらの背景から、ステンレス溶射ボアを開発したが、窒化Cr膜を採用したピストンリングとの摺動における凝着摩耗が課題であった。窒化Cr膜を使わない厚膜DLCはアブレシブ摩耗が課題であるが、脱落したドロップレット形状に倣って弾性変形することにより、アブレシブ摩耗を抑制するメカニズムを明らかにした。ステンレス溶射ボアと厚膜DLCピストンリングの組み合わせでEGR率20%を成立し、燃費4%の向上を実現した。本開発での知見は、EGR率30%以上の実現、腐食環境が厳しいバイオ燃料を活用したフレックス燃料車へも適用可能な成果であり、高く評価された。

 「100%塗着霧化塗装技術」立川達也氏・田中敦史氏・佐藤洋平氏(トヨタ自動車)、野田祥吾氏・赤荻隆斗氏(大気社)…自動車塗装で使用されている霧化塗装機は、ベルカップと呼ばれるノズルを高速回転させ、塗料をベルカップ円周上のエッジから液糸状にし、シェービングエアーと呼ばれるエアー機で霧化状にして吹付けしている。この塗装方法は、エアーによる影響で被塗物からの塗料の跳ね返りが生じるため、塗料の塗着率は60~70%程度であり、塗着しなかった塗料を回収・処理する大掛かりな設備が必要である。本技術は、塗料飛散の原因となるエアーや遠心力をまったく使用せず、塗料の微粒化を電気の反発力のみで行い、静電引力で被塗物へ付着させるため、100%の塗着率を可能にした。塗料の飛散がないため、塗料回収・処理する大掛かりな設備を小型化でき、CO2の削減が可能となる。本技術は、CO2排出量が多い自動車塗装工場の姿を一新することが可能な技術開発として高く評価された。

admin 2023年4月27日 (木曜日)
admin

FPS、第16回岩木賞の業績募集を開始、締め切りは9月30日、表彰費用の賛助も募集

10ヶ月 3週 ago
FPS、第16回岩木賞の業績募集を開始、締め切りは9月30日、表彰費用の賛助も募集

 未来生産システム学協会(FPS)は、「第16回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」の業績募集を開始した。締め切りは本年9月30日。

 岩木賞はトライボコーティング技術研究会が提唱し、NPO法人である精密科学技術ネットワーク(PEN)が2008年度から創設し表彰していたが、2011年度からは一般社団法人であるFPSが継承し表彰している。

 岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。募集対象は表面加工、表面改質、表面分析、トライボロジー、コーティングに関わる研究・開発・技術・支援・交流・事業化などで著しい成果、業績(製品、サービス、学会発表や特許申請/登録されたものを含む)を上げた個人、法人、団体で、表彰対象は受賞業績が公表できること、FPSに参加できること、と定めている。

 本年度は大賞、優秀賞、特別賞、奨励賞を中心に募集を行うが、国際賞、事業賞、功績賞の申請も受け付ける。国際賞以外は、原則として日本国内に居住地、研究室や本社、本部、主力工場などの活動拠点を有する個人、法人、もしくは団体が対象。国際賞は、海外に居住地などの主たる活動拠点を有する個人、法人、団体が対象となる。

 各賞の審査基準は以下のとおり。

【大賞】
・開発技術が世界的に高い水準にあり、新規独創性に優れたもの。
・開発技術が実用化されており、経済的・社会的貢献が認められるもの。

【優秀賞】
・開発技術が日本国内において高い水準にあり、新規独創性に優れたもの。
・開発技術が実用化されており、社会的貢献が認められるもの。

【特別賞】
・開発技術が当該業界において高い水準にあり、新規/独創性に優れたもの。
・開発技術が実用化されているか、実用化の途上にあり、社会的貢献が認められるもの。

【奨励賞】
・開発技術が当該業界において優れており、新規/独創性に優れたもの。
・開発技術が実用化の途上にあり、実用化の努力が認められるもの。

【事業賞】
・事業化技術または事業/ビジネスモデル、サービスなどが当該業界で影響力を有し、当該業界の知名度を上げる、インフラの構築を行う、社会生活に恩恵をもたらすなどの効果を通して、活性化、発展に貢献をなし、波及効果を生むなどの活動の成果、努力が認められるもの。

【国際賞】
・開発技術または事業化技術または事業/ビジネスモデル、サービスなどが当該業界で影響力を有し、当該業界の我が国との関係において協力、連携、協調関係を育み、または当該業界の知名度を上げ、活性化、発展に貢献をなし、波及効果を生むなどの活動の成果、努力が認められるもの。

【功績賞】
・大賞、優秀賞、特別賞、奨励賞の評価尺度と、事業賞、国際賞の評価尺度のいずれの面でも極めて顕著な業績が認められるもの。

 岩木賞受賞業績については、2024年2月に開催予定のシンポジウム「トライボコーティングの現状と将来」で、表彰および受賞業績の記念講演がなされる。岩木賞に関する問い合わせ、申請様式の請求は、FPS表彰顕彰部門岩木賞表彰事業部内 事務局まで(E-mail:award@e-shg.net)。 

 トライボコーティング技術研究会ではまた、岩木賞表彰費用の賛助を呼びかけている。問い合わせ・申し込みは、岩木賞表彰事務局まで(award@tribocoati.st)。

 なお、岩木賞のこれまでの受賞業績は以下のとおり。

第1回~第15回 岩木賞の受賞業績一覧

 

kat 2023年4月24日 (月曜日)
kat

メカニカル・サーフェス・テック2023年4月号 特集「工具の表面改質」、キーテク特集「浸炭処理」4月25日発行!

10ヶ月 3週 ago
メカニカル・サーフェス・テック2023年4月号 特集「工具の表面改質」、キーテク特集「浸炭処理」4月25日発行!

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2023年4月号 特集「工具の表面改質」キーテク特集「浸炭処理」が当社より4月25日に発行される。

 今回の特集「工具の表面改質」では、周期的にアーク放電を発生させるパルスアークプラズマ法により作製した耐摩耗膜の開発事例について、高硬度材の表面切削加工において長時間の高精度加工を実現するために開発したコーティング被膜について、工具鋼の材料設計と金属熱処理による組織制御について、ダイヤモンド成膜工具の刃先を先鋭化するとともに工具表面を平滑化する装置と処理事例について紹介する。

 また、キーテク特集「浸炭処理」においては、浸炭焼入設備の特徴とIoTの活用事例について、環境負荷低減に配慮した低圧浸炭装置の概要について紹介する。

特集:工具の表面改質

◇パルスアークプラズマ法による切削工具向け耐摩耗膜の開発・・・佐賀大学 長谷川 裕之、堤 祐太郎、田中 康介

◇高硬度鋼加工に適した工具被膜の開発・・・オーエスジー 王 媺、羽生 博之

◇工具鋼の材料設計と組織制御・・・プロテリアル 片岡 公太

◇ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発・・・新明和工業 岡本 浩一

キーテク特集 浸炭処理

◇浸炭処理装置の特徴とIoT化・・・中外炉工業 吉本 誠司、小山 良介

◇低圧浸炭炉関連の最近の話題・・・パーカー熱処理工業 関 正広 氏に聞く

連載

注目技術:電気で動く分子モーター・・・ノースウェスタン大学

トピックス

サーフテクノロジー、PFAS対策で非粘着/撥水/親水セラミックコーティングの取扱いを開始
ナノコート・ティーエス、トライボロジーラボの機能を刷新
トライボコーティング技術研究会、第15回岩木賞贈呈式、第25回シンポジウムを開催
表面技術協会、第74回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

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admin 2023年4月24日 (月曜日)
admin

JAST、5月29日~31日にトライボロジー会議 2023 春 東京をリアル開催、参加登録は5月15日まで

10ヶ月 4週 ago
JAST、5月29日~31日にトライボロジー会議 2023 春 東京をリアル開催、参加登録は5月15日まで

 日本トライボロジー学会(JAST)は5月29日~31日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで、「トライボロジー会議 2023 春 東京」(実行委員長:出光興産・上村秀人氏)を開催する。トライボロジー会議 春 東京のリアル開催は2019年5月以来、4年ぶりとなる。JASTでは現在、トライボロジー会議への事前参加登録(https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=202)と、東京都新宿区のバトゥール東京で開催される懇親会への事前参加登録(https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=207)を呼び掛けている。参加登録はいずれも5月15日まで受け付けている。

 

 今回は、「機械要素」、「潤滑剤」、「固体潤滑」、「表面処理・コーティング」、「分析・評価・試験方法」、「摩擦」、「摩耗」、「摩擦材料」、「バイオトライボロジー」、「表面・接触」、「流体潤滑」、「疲労」、「シミュレーション」、「境界潤滑」、「現象・理論」のテーマによる一般講演と、「“超”を目指す軸受技術の最前線」、「表面テクスチャによるトライボロジー特性制御の最近の成果と今後の展開」、「水素が関わるトライボロジーの諸現象」、「自動車用動力伝達系のトライボロジー」、「自動車用エンジン油最前線―自動車の低燃費、カーボンニュートラルに向けた潤滑油の貢献―」のテーマによるシンポジウムセッション、技術賞受賞講演と論文賞受賞講演で、全182件の発表が行われる。

 30日には第67期定時社員総会・学会賞授賞式が執り行われ、続いて14時50分~16:55実行委員長の出光興産・上村秀人氏の司会による特別フォーラムが開催され、長谷川晶一氏(東京工業大学)による講演「バーチャルリアリティにおける摩擦のリアリティの実現とメタバースへの応用の期待」と、三木哲也氏(公正研究推進協会、電気通信大学 名誉教授)による講演「事例に学ぶ研究不正の実情と対応」がなされる。

トライボロジー会議への事前参加登録は以下のとおり。
https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=202

 30日の18時30分~20時30分にはまた、トライボロジー会議会場の国立オリンピック記念青少年総合センターから参宮橋駅経由で30分圏内にある、東京都新宿区のバトゥール東京に会場を移して、横浜国立大学・大久保 光氏の司会のもと、懇親会が開催される。懇親会への事前参加登録は以下のとおり。
https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=207

kat 2023年4月20日 (木曜日)
kat

日立ハイテクなど、SEMで第69回大河内記念生産賞を受賞

11ヶ月 ago
日立ハイテクなど、SEMで第69回大河内記念生産賞を受賞

 日立製作所と日立ハイテクはこのほど、大河内記念会が主催する「第69回(令和4年度)大河内賞」において、「極端紫外線露光世代の半導体測長SEMの開発と高精度化」で「大河内記念生産賞」を受賞し、3月22日に日本工業倶楽部会館にて行われた贈賞式にて表彰された。

贈賞式のもよう

 大河内賞は、生産工学、生産技術、生産システムの研究ならびに実施などで、学術の進歩と産業の発展に大きく貢献した顕著な個人、グループまたは事業体を表彰するもの。大河内記念生産賞は、特に会社、工場などの事業体に対して送られる賞となる。

 近年、半導体デバイスの微細化が進む中、ウェーハ上に形成された微細パターンの寸法計測に特化した測長SEMは0.1nmレベルの精度と安定性が要求されている。今回の受賞は、端紫外線(EUV)露光世代の半導体パターン計測用に開発した測長SEM(製品名:CG7300)を対象として、高精度化、安定性、デジタル技術装置の3点に着目した技術開発に対して、その成果が評価されたもの。

 スマートフォンなどで用いる最先端の半導体デバイスでは、nmレベルの極めて小さな素子が用いられている。このような半導体デバイスでは、回路パターンを小さくすることによる高性能化とデバイスの製造コストの低減を両立しなければならず、今後もさらに小さな回路パターンを製造することが求められている。

 日立製作所と日立ハイテクは、この小さな回路パターンの寸法を計測するため、高精度なフォーカス合わせを実現する対物レンズ、電子ビーム揺れ抑制技術および電子ビーム形状補正デジタル処理技術を開発した。これにより、個別装置間のパターン寸法計測値差(機差)を従来機種比で約10%精度向上(機差:0.10nm以下レベル)に成功し、世界最高水準の半導体パターン検査技術を確立した。

 開発した技術により半導体パターンの検査精度が向上し、半導体製造の歩留まり向上に寄与する。これにより、CG7300はEUV対応半導体パターンの測長SEMとして高く評価され、世界中の半導体メーカーに多数導入されているという。

CG7300

 

admin 2023年4月13日 (木曜日)
admin

第38回素形材産業技術表彰、DOWAサーモやブルー・スターR&Dが受賞

11ヶ月 ago
第38回素形材産業技術表彰、DOWAサーモやブルー・スターR&Dが受賞

 素形材センターはこのほど、「第38回素形材産業技術表彰」の受賞者を発表した。表面改質関連では、素形材センター会長賞にトヨタ自動車とDOWAサーモテックの「環境負荷に配慮した真空浸炭焼入プロセスと量産設備の開発」、素形材産業技術表彰委員会特別賞にブルー・スターR&Dの「水中の超音波振動と脱気を利用したバリ取り洗浄技術の開発」、ティーケーエンジニアリング、あいち産業科学技術総合センター、愛知産業の「熱処理シミュレーションと金属3Dプリンターによる誘導加熱用加熱コイルの開発」、が受賞した。

 同賞は、素形材産業の技術水準の進歩向上に貢献した技術の開発者等を表彰する制度。素形材産業の重要性等を広く社会一般に周知し、素形材業界の活性化を図るために行われている。今回は、経済産業大臣賞1件、中小企業庁長官賞1件、経済産業省製造産業局長賞1件、素形材センター会長賞3件、素形材産業技術表彰委員会特別賞4件、奨励賞4件が選定された。表面改質関連の受賞者、受賞技術は以下のとおり。

素形材センター会長賞

 「環境負荷に配慮した真空浸炭焼入プロセスと量産設備の開発」坂上秀幸氏・横本祥平氏・池山正芳氏(トヨタ自動車)、藤田貴弘氏・柴田大樹氏・上岡真弥氏(DOWAサーモテック)

 HEV や BEV の歯車など自動車用駆動部品の強化処理である浸炭焼入は、連続ガス浸炭が主流である。このプロセスは処理時間が長く、大型設備・大ロットでの処理となり「エネルギロスが大きくCO2排出量が多い」「運搬や中間在庫のムダが発生する」などの問題がある。これらを解決すべく、機械加工ラインと一連で設置可能なコンパクトで生産能力の高い真空浸炭焼入技術を開発した。

 昇温や冷却など加工点のばらつき低減を軸とした短時間処理プロセスと、高さを2m以下に抑えた真空浸炭室や地下ピットを廃止した冷却油槽を持つ量産設備の開発により、浸炭焼入れの現場を変える「運搬レス・在庫ミニマム」と「低CO2 (▲29%)」を実現した。また、複数の小ロット浸炭室を個別条件で稼働させることにより、多種少量生産や需要変動にもフレキシブルに対応できるとともに、品質ばらつき低減による部品の小型・軽量化、低コスト化など、ものづくりの進化への貢献も期待できる。

 本技術は2018年から量産を開始し、国内外の部品生産に展開している。今後、ガス浸炭炉の置換えや新部品への採用など社内外への展開により、カーボンニュートラルのさらなる加速に貢献していく。

工程の概念図素形材産業技術表彰委員会特別賞

「水中の超音波振動と脱気を利用したバリ取り洗浄技術の開発」柴野佳英氏(ブルー・スターR&D)

 ますます複雑化し精密化する各種、成型加工部品の量産工程において、そのバリ取りの自動化技術の確立は、国際競争力確保の上からも非常に重要である。同社は、水を脱気、冷却し、強力な超音波を照射し、直径10mmに達するキャビティー(微小真空核群)を無数に生成させ、その発生と消滅時に生じる正と負の衝撃力でバリを取り、同時に洗浄する技術を世界で初めて開発、実用化した。環境にやさしく、同時に洗浄、乾燥も可能な超音波バリ取り装置は、300機種以上、標準化され、日本はじめ13か国で使用されており、品質も向上と人件費の大幅削減に貢献している。自動車部品産業、電子部品産業、半導体部品、医療用部品、航空宇宙産業部品産業のあらゆる分野で精密加工が進み、バリの微小化と表面の清浄化も求められており、超音波バリ取り洗浄技術は、既存のバリ取り技術に代わる変わることも期待される革新的な技術である。

超音波バリ取り洗浄装置

「熱処理シミュレーションと勤続3ディープリンターによる誘導加熱用加熱コイルの開発」下村 豊氏・清水稔彦氏・河辺正臣氏(ティーケーエンジニアリング)、加藤正樹氏・梅田隼史氏(あいち産業科学技術総合センター)、近藤拓未氏(愛知産業)

 銅はレーザーの反射率が高いことと、また熱伝導率が高くメルトプールが形成されにくいことから、従来、付加製造(AM)技術の一つである SLM 方式での銅製品の造形は難しいといわれてきた。本開発では、700Wの高出力なレーザーでの適正な造形パラメーターを確立したことにより、密度99.8%以上で面粗さも良好な造形体の製造が可能となり、従来のろう付けコイルより遥かに優れた銅合金(C18150)製のAMコイル®を開発、実用化した。また、CAEとAMを組み合わせることで、新規製品に対する加熱コイル開発期間を「49日から22日」と大幅に短縮できた(コイル再製作の場合)。さらに加熱コイルにおける「トポロジー最適化+AM」の組み合わせの開発では、トポロジー最適化で同定されたコイル形状をAMで製作し、実際に焼入れすると良好な焼入パターンが得られた。これは将来的に誘導加熱のコイル設計・製作が「CAE+AM」に置き換えが可能なことを示唆しており、非常に意義ある検証結果が得られている。

トポロジー最適化+AM

 

admin 2023年4月13日 (木曜日)
admin

日新電機、ベトナム市場向けPVDコーティングサービスの事業を強化

11ヶ月 ago
日新電機、ベトナム市場向けPVDコーティングサービスの事業を強化

 日新電機( https://nissin.jp )のグループ会社である日新電機ベトナム(本社:ベトナム、以下NEV)は、ベトナム市場向けファインコーティングサービス事業を強化するため、PVDコーティング装置を追加導入した。装置は2月から本格的に稼働開始しており、ベトナム地域の工具・金型ユーザーに対し、用途に合わせた最適なコーティング膜をより迅速に提供している。

 ベトナムでは、従来の二輪車産業や電子機器産業に加え、近年、海外大手自動車メーカーの進出やベトナム発の自動車メーカーも立ち上がるなど、自動車の需要拡大も見込まれている。製造業の発展とともに、これらの生産に用いられる切削工具・金型の長寿命化によるコスト削減効果や、加工速度向上によるスループット向上、コスト削減効果への期待からコーティング技術が注目されている。NEVでは2020年7月よりベトナム市場向けコーティング受託サービス事業を開始した。新型コロナウイルス感染症が収束してきた2022年4月以降、ベトナム経済の順調な回復を受けコーティング需要も増加しており、それら需要に応えるため装置を増設した。

 今回導入した装置は、同グループ会社である日本アイ・ティ・エフ(森口秀樹社長)が製造した「アドバンスドコーティングシステムM500D」。新型蒸発源「ステアワン蒸発源」を搭載したことにより平滑で高品位なコーティング膜が形成できるため、切削工具や歯切工具、成型金型の耐摩耗性が向上し寿命を大幅に改善することができる。有効コーティング範囲もφ500×H600mmと従来比1.5倍となり、プレス金型などの大型基材への対応が可能となる。またコーティング設備増設により、窒化膜(TiN、AlTiN、AlCrN)やDLC膜など対応膜種の拡充と納期の短縮も実現している。

PVDコーティング製品

 

admin 2023年4月13日 (木曜日)
admin

リガク、半導体デバイスメーカーの計測ニーズに応えるため米にテクノロジーセンター

11ヶ月 ago
リガク、半導体デバイスメーカーの計測ニーズに応えるため米にテクノロジーセンター

 リガク( https://japan.rigaku.com/ )は、2023年4月11日、半導体デバイスメーカーの計測ニーズに応えるため、アメリカ・カリフォルニア州サニーベールに「リガク・テクノロジーセンター・シリコンバレー」を開設した。

リガク・テクノロジーセンター・シリコンバレー

 同センターでは、リガクの最新の薄膜デバイス計測技術の紹介、デモ測定、アプリケーション・オペレーション・メンテナンストレーニングなど、様々なサービスを提供する。

 同社は、過去 30 年にわたり、半導体デバイス計測業界をリードする様々な製品を開発し、研究開発からインラインファブリケーションまで幅広い用途にX線分析技術と装置を提供し続けている。今回の同センターの設立により、米国の半導体デバイス顧客との関係がより緊密になり、次世代ソリューションの開発促進に拡がることが期待るという。

 取締役副社長兼薄膜デバイス事業部⻑の尾形 潔氏は「今回の半導体計測テクノロジーセンターの開設は、半導体の研究開発や大量生産に向けた最先端の計測ソリューションを提供するための重要な一歩である。この新施設は、当社が近い将来展開する多くの重要な取組みの最初のステップとなる」と述べている。

 同センターでは、最新技術を駆使した以下の半導体計測ソリューションを体験すること
ができる。
・全反射蛍光X線分析(Total Reflection X-ray Fluorescence、TXRF):基板表裏面の微量コンタミネーション検出
・波⻑分散型蛍光X線分析(Wavelength Dispersive X-ray Fluorescence、WD-XRF:薄膜の高精度膜厚・組成測定
・エネルギー分散型蛍光 X 線分析(Energy Dispersive X-ray Fluorescence、ED-XRF)および光学分析:FEOL(Front End of Lin、素子形成行程)、BEOL(Back End of Line、配線工程)、パッケージングアプリケーション向けの薄膜特性の評価
 マイクロスポット ED-XRF と光学顕微鏡の組み合わせは、インライン非破壊計測に活用できる。ED-XRF、XRR、XRD を統合した装置は、超薄膜、多層膜、ベタ膜、パターン膜など様々なアプリケーションをサポートする
・高分解能 X 線回折(High Resolution X-ray Diffraction)、X 線反射率分析(X-ray Reflectivity、XRR):エピタキシャル膜の歪み、組成、膜厚、多結晶膜の結晶相、テクスチャー、多層薄膜の膜厚、密度、ラフネスの測定に使用する

 

admin 2023年4月13日 (木曜日)
admin

神戸製鋼所、燃料電池セパレータ用チタン圧延材が市村産業賞 功績賞を受賞

11ヶ月 ago
神戸製鋼所、燃料電池セパレータ用チタン圧延材が市村産業賞 功績賞を受賞

 市村清新技術財団主催の「第55回(令和4年度)市村賞」において、神戸製鋼所の佐藤俊樹氏、淺 勇輔氏、トヨタ自動車の萱嶋 浩一氏が燃料電池セパレータ用チタン圧延材「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」で「市村産業賞 功績賞」を受賞した。NCチタンは、同社の技術開発本部と素形材事業部門が材料を開発し、機械事業部門の持つ設備技術を融合し、トヨタ自動車とともに世界で初めて量産化に成功したもの。今回の受賞テーマとしては「水素社会実現に貢献する燃料電池向け表面処理チタン材の開発」となる。

NCチタンのコンセプト(断面イメージ図)

 市村賞は、我が国の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野あるいは学術分野の進展に多大な貢献をされた個人またはグループを表彰し、市村産業賞、市村学術賞、市村地球環境産業賞、市村地球環境学術賞の4分野が設けられている。市村産業賞は、優れた国産技術を開発し、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者に贈呈する表彰で、本年4月17日に帝国ホテル 東京で贈呈式が開催された。

 カーボンニュートラルに向けた水素社会実現のためには燃料電池自動車(FCEV)の普及拡大が求められており、基幹モジュールである燃料電池を大量に供給する必要がある。燃料電池1台に対して、その主要部品であるセパレータは数百枚搭載されるが、既存セパレータは生産性の低さが課題であり、燃料電池の大量供給の妨げとなっていた。
 
 同社はチタン表面の酸化被膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有することでナノメートルオーダーの緻密な被膜”Nano-Carbon composite coat”を開発した。さらに、表面処理の生産性を高めるコイル状チタン材への連続表面処理技術も確立した。NCチタンは、プレス成形でも皮膜がはく離せず、燃料電池内部の酸性腐食環境でも表面導電性を維持することが可能となる。

 既存セパレータは、切板状態のセパレータを1枚ずつ表面処理する必要があり生産性に課題があった。同社は本技術により、表面処理を高速・高効率化し、生産律速であったプレス成形後の表面処理工程を省略できるプレコート型セパレータの実用化を世界で初めて実現した。その結果、セパレータの生産性が大幅に改善され、燃料電池の大量供給が可能となった。NCチタンは2020年に量産を開始し、同年12月にトヨタ自動車より発売のFCEV“MIRAI”に独占的に供給されている。今後、乗用車に限らず、商用車や鉄道、船舶等へ適用を拡大し、水素社会実現への貢献が期待される。

NCチタンと燃料電池セパレータの外観

 

admin 2023年4月13日 (木曜日)
admin

カーボンナノチューブを用いた表面処理がサウジアラムコで採用

11ヶ月 1週 ago
カーボンナノチューブを用いた表面処理がサウジアラムコで採用

 竹中製作所( https://www.takenaka-mfg.co.jp )とGSIクレオス( https://www.gsi.co.jp )が共同開発した高機能表面処理「ナノテクト®」が、サウジアラビア王国の世界最大石油会社 Saudi Aramco(サウジアラムコ)にプラント用締結部材向け表面処理として採用されることが決定した。

 サウジアラムコは2015年より、カーボンナノチューブ充填ナノテクト®塗装物の高い機械的特性、耐腐食性に注目し、長期間のフィールドテストを実施、また厳しい性能評価を複層で続けてきたが、昨年までにすべての試験に合格し、2月末に社内認証もすべて完了、今回の正式発表に至ったもの。

 サウジアラムコは、既存の表面処理に比べたナノテクト®表面処理品の塗膜の高い機械的特性および耐腐食性、また超高性能由来のプラント超長寿命化による CO2排出量の大幅低減提案に対しても高く評価したという。

 今回の採用を機に、竹中製作所とGSIクレオスは、2016年に共同設立した UAE(アラブ首長国連邦)内拠点を活用し、サウジアラムコが有する巨大石油・ガスプラント等に向けてナノテクト®表面処理品の供給を開始し、これら販売活動を通じて「構造物の超長期間の保全」に向けた取組みを進め、「環境負荷の低減」と「持続可能な社会の実現」に貢献していく。

 ナノテクト®は、GSIクレオスのカップ積層型カーボンナノチューブ(CSCNT)を、竹中製作所の有する高度な分散技術と被膜形成技術を駆使して塗料内に複合被膜化したことで生まれた超高機能表面処理で、カーボンナノチューブ由来の高い耐摩耗性や衝撃耐久性に加え、業界最高水準の防錆性(塩水噴霧試験で4000 時間以上の防錆能力)などの高い性能を持つ。

CSCNT模式と塗膜内の分散ナノテクト®の各種性能

 この表面処理は、2016年に「カーボンナノチューブ複合樹脂塗膜」としてJIS規格化された。これはカーボンナノチューブが含まれる工業製品としては、我が国初のJIS規格化事例となっている。

 竹中製作所とGSIクレオスは、中東沿岸地域や砂漠などの過酷環境に位置するプラントでナノテクト®表面処理金属部材(ボルト・ナット等)の販売活動を強化しており、2019年にはUAE国営石油ガス会社ADNOCグループでのナノテクト®採用も発表している。他にも中東特有の極端な寒 /温、乾/湿など激しい天候にも対応し得る表面処理として、様々な分野、用途で採用が進んでいる。

admin 2023年4月6日 (木曜日)
admin

JX金属、台湾拠点で半導体用スパッタリングターゲット生産能力増強

11ヶ月 1週 ago
JX金属、台湾拠点で半導体用スパッタリングターゲット生産能力増強

 JX金属の子会社である台湾日鉱金属は、半導体用スパッタリングターゲットの加工設備の増強を行い、同拠点における生産能力を現行から約80%引き上げることとした。今後、新規ラインの設計・建設・立上げを行い、2024年度下期以降、随時稼働予定。

 JX金属グループの半導体用スパッタリングターゲットは、最先端のロジックやメモリなどをはじめ、各種半導体デバイスの製造に用いられている。製品は業界トップのシェアを有しており、「2040年JX金属グループ長期ビジョン」において「フォーカス事業」として位置付けている先端素材分野の主力製品の一つ。世界的なデジタル化進展に伴って半導体産業の拡大が進み、長期的な観点で需要増が見込まれることから、現在同社グループでは国内外で同製品の生産能力の増強を行っている。この一環として、最先端半導体の生産拠点である台湾においても、従来比2倍の能力とするための設備投資を今年度に完了したが、同地域の将来的な需要増を見据え、今般、これにさらに上積みして生産能力増強を行うことを決定した。

台湾日鉱金属

 

admin 2023年4月6日 (木曜日)
admin

第19回 FC EXPOが開催、BPPコーティングなどが展示

11ヶ月 3週 ago
第19回 FC EXPOが開催、BPPコーティングなどが展示

 「第19回 FC EXPO―【国際】水素・燃料電池展―」が3月15日 ~17日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。表面改質関連では、燃料電池車(FCV)のバイポーラプレート(BPP)用コーティングなどが展示された。

 

 

 HEFグループは、HEF DURFERRIT JAPAN、TS 群馬、ナノコート・ティーエスの共同で出展。BPP用に開発した、導電性、耐食性、密着性に優れたPVD コーティング「セルテスFC」を紹介した。ステンレス、チタン、アルミニウムといったBPPの基材を問わず、高い耐食性(陽極:1μA/cm2未満・アクティブピークなし、陰極:1μA/cm2未満)・導電性(100S/cm以上)と低い接触抵抗値(0.01Ωcm未満)を持つBPP向けカーボンコーティングとなっている。量産対応としては、成膜面を最適な状態にする自動洗浄ラインから、最大の生産効率を実現する専用治具、生産性を最大化する最先端の成膜装置、確かな品質保証とトレーサビリティーを実現する自動カメラ検査装置を組み込んだ専用生産設備を設計・開発・製造している。

展示ブースのようす

 

BPP用カーボンコーティング「セルテスFC」


 IHIグループは、IHI(車両用過給機事業部門)、IHI Hauzer Techno Coating 、IHI Ionbondの共同で出展。IHI Hauzer Techno Coatingは、導電性・耐食性に優れたBPP用PVDカーボンコーティングのサンプルを展示したほか、インライン式PVDコーティング装置「Hauzer Flexliner®」を紹介した。大量生産に適した設計がなされており、高度に自動化された工場ラインへのインテグレートも容易で、モジュールコンセプトのため生産能力増強やコーティングプロセス追加に対しても柔軟な拡張性を有する。BPP向けPVDカーボンコーティングでは年間1000万枚レベルの生産が可能で、量産フェーズに十分対応できるコーティング装置としてアピールした。

展示ブースのようす

 

BPP向けカーボンコーティング

 

kat 2023年3月29日 (水曜日)
kat

トシコ、中部地区の生産拠点を移転し生産能力増強

1年 ago
トシコ、中部地区の生産拠点を移転し生産能力増強

 トシコ( https://www.tosico.co.jp/ )は愛知県一宮市に新工場を建設し、中部地区での生産拠点である岐阜県関ヶ原町の関ヶ原工場から移転する。

 粘着テープや接着剤が付着しない非粘着表面を形成する「トシカル®コーティング」を行う同社は、これまで埼玉県川越市の本社工場と関ヶ原工場の二拠点体制で生産を行ってきた。関ヶ原工場は、1996年に操業を開始した工場で中部地区の生産拠点としていたが、生産能力の限界や建物等の老朽化が顕在化していた。

 そこで同社では、今後の顧客の多様なニーズに素早く対応するため、グループ会社のフロロコート名古屋の隣地に移転し、成長に向けた新たな工場を建設することとした。新工場では、新規にバッチ炉と水洗ブースを導入し、生産能力をこれまでの1.8倍に増強する。また、建屋の屋根にソーラーパネルを設置し低炭素社会への対応に向けて、ESGに配慮した工場運営を行っていく。併せて、現在の製造のみの組織体制から、製造と販売が一体の事業部制へと変更する。これまでよりスムーズに顧客に対応することで、技術に加えさらなる顧客満足度の向上を目指す。

 新工場の敷地面積は1640m2、建屋面積は826m2、総投資額は4億5000万円。2023年4月28日に竣工、5月16日からの生産開始を予定している。

新工場(東海工場)の概要
住所:〒494-0003 愛知県一宮市三条字野間8番1
代表電話:0586-82-1145
FAX番号:0586-82-1146
生産品目:表面処理(トシカルS®コーティング、ファインブラスト®加工)

新工場のイメージ

 

 

admin 2023年3月14日 (火曜日)
admin

ナノコート・ティーエス、トライボロジーラボの機能を刷新

1年 ago
ナノコート・ティーエス、トライボロジーラボの機能を刷新

 ナノコート・ティーエス(https://www.nanocoat-ts.com)は2022年11月、東京本社およびトライボロジーラボを東京都立川市に移転した。PVD(物理蒸着)コーティングの精密部品・精密加工金型、自動車部品などへの適用を進める営業の体制を東日本で強化するとともに、DLC膜などの開発/不良解析を目的とした受託試験サービスの拠点である「トライボロジーラボ」の機能刷新による受託試験の増強を図っている。

トライボロジーラボのスタッフ一同
左から、生田啓一氏、庄子健一氏、熊谷 泰社長、川本秀士氏、坂下武雄氏

 

 トライボロジーラボ機能刷新の最大のポイントは、同社が属するHEFグループが1960年代に開発した摩擦摩耗試験機「HEF TRIBOMETER」の、大幅なシステム系統の見直しだ。HEF TRIBOMETERは機械の剛性が高く、ラボスケールから実機条件に近いパイロットスケールまで、種々のトライボロジー試験が行える。

 今回は特に自動車分野や航空宇宙分野などから要求の高い高速・高荷重の試験が実施できるよう、試験片の回転速度を従来の3000rpm から5000rpmへ、試験片への負荷荷重を従来の1000Nから 2000Nへと高めた。

 新システムには、低慣性タイプで高頻度位置決め運転や高加減速運転に最適な主軸用ACサーボモータ「HG-JR503K」(三菱電機製)と、各2個の揺動モータと負荷モータを一つのコントローラーで動かせるステッピングモーター「αSTEP AZシリーズ」(オリエンタルモーター製)を搭載。タッチパネルを用いて試験条件を設定すると、シーケンス制御により上記5点のモータが個別に制御され、セットされた試験片に対し設定された雰囲気、負荷荷重、速度条件で摩擦摩耗試験が自動で行われる。試験片に合わせたアタッチメントのカスタムメイドにも対応している。

 上述のトライボメータ試験モジュールに加え、「FALEX(ファレックス)試験モジュール」も10月をめどに稼働できるよう準備を進めている。そのほか、水素雰囲気中での試験モジュールも構築できるという。

機能が刷新されたHEF TRIBOMETER


 トライボロジーラボではまた、自社製造で外販も行う表面清浄度測定器「コロナサーフ」がWindows10での計測制御・データ解析ができるようバージョンアップ、使い勝手が向上し貸し出しも始める予定。コロナサーフは、コロナ放電によって電荷を付与する前後の、母材の表面電位(仕事関数)の変化を振動容量法(ケルビンプローブ)で非接触測定し、母材表面の汚染(酸化)度合いを定量評価。洗浄プロセスの開発や生産ラインでの部品表面の清浄度管理、成膜前処理管理などにも利用できるほか、DLC被膜の表面電子構造の評価・品質管理にも利用されている。

バージョンアップされたコロナサーフ

 

 また、大阪大学名誉教授・井澤靖和氏が開発した「非破壊・非接触DLC膜厚測定装置」も設置。分光干渉方式の応用でDLC膜の膜厚が非接触・高精度に短時間で得られる。三次元形状のサンプルの膜厚やパイプ内径上のDLC膜の膜厚も測定できるほか、膜厚分布状態の把握ができ成膜プロセスの最適化が図れる。

非破壊・非接触DLC膜厚測定装置

 

kat 2023年3月14日 (火曜日)
kat

サーフテクノロジー、PFAS対策で非粘着/撥水/親水セラミックコーティングの取扱いを開始

1年 ago
サーフテクノロジー、PFAS対策で非粘着/撥水/親水セラミックコーティングの取扱いを開始

 サーフテクノロジー(https://www.microdimple.co.jp)は、パーフルオロアルキル(PFOA)およびポリフルオロアルキル(PFOS)など有機フッ素化合物(PFAS)の規制が日本国内でも本格化しつつある中、食品工場で適用されPFAS対策の施されていないフッ素樹脂コーティングの代替となる非粘着性を有しつつ、フッ素樹脂よりも耐摩耗性の高いセラミックコーティング「Infinityシリーズ」の取扱いを開始する。

 サーフテクノロジーではPFAS対策強化を見据え、早くからフッ素樹脂コーティングの代替として粉体などの滑り性を向上させ洗浄性を高められる「マイクロディンプル処理(MD 処理®)」の提案を進めており、PFAS 問題への自主対応を強力に進める食品業界において篩やホッパー、フライヤーなど幅広い用途で採用が拡大してきている。また、最近ではMD処理®による細菌・ウイルス・カビの抑制効果も認められてきている。

 そして今回さらに、食品業界で実績のある非粘着・耐摩耗性を付与するYMM 製セラミックコーティング「Infinityシリーズ」の販売を開始しフッ素樹脂コーティングの得意とする非粘着用途をカバーしつつ、さらに耐摩耗性を高めるという付加価値を提供すべく、YMMとInfinityシリーズの販売総代理店契約を結んだもの。

 セラミックコーティングInfinityシリーズはもともと大東化成が2010年ごろから取扱いを開始、フッ素樹脂コーティングの代替として、食品工場での適用実績は少なくなかった。しかし、同社の組織上の問題からユーザー対応が停滞していたことから、2020年に食品輸送事業を主体とするYMM(旧社名:YMMフードサービス)へと大東化成から事業が譲渡され、YMMがコーティング事業部を新設してInfinityシリーズを販売することとなった。

 だが、YMMに事業譲渡された時点で食品工場への販売ルートはほとんど途絶えており、食品工場においてフッ素樹脂コーティングを代替し強化できる可能性のあるInfinityシリーズの適用を進める方策がない状況にあった。そこでMD処理®やDLCコーティングなどの食品工場での採用が拡大しているサーフテクノロジーの名声を耳にしたYMMの経営陣が、サーフテクノロジーに対し、食品分野で構築された同社のネットワークを通じてのInfinityシリーズの拡販を願い出た。

 下平英二・サーフテクノロジー社長は、「2022年12月に東京ビッグサイトで出展していた展示会の当社ブースをYMMの社長、会長、コーティング事業部長が突然訪ねてきた。その後もYMM経営陣の二度の来社があり、YMMのコーティングを売ってほしいと言う。三顧の礼ではないが、ノンフライめんの蒸熱工程での付着抑制などでInfinityシリーズが使われていたが入手できないと顧客から聞いていたこともあり、PFASの規制が急速に進む中でのフッ素樹脂コーティング代替のためのラインナップ増強も目的に、Infinityシリーズの販売総代理店を務めることを決めた。フッ素樹脂コーティングが大幅に値上げする傾向にあることもあり、フッ素樹脂コーティングと同等程度の非粘着性と優れた耐摩耗性を付与できるInfinityシリーズの価格優位性は、当社の食品分野でのネットワークを通じて適用を広げられると考えている」と語る。

 今回、サーフテクノロジーが取扱いを開始するのは、非粘着・耐熱・耐摩耗性セラミックコーティング「Infinity 530(YMM製品名:Infinity 330改)と、撥水性セラミックコーティング「Infinity 531(YMM製品名:Infinity GL-1)」、親水性セラミックコーティング「Infinity 532(YMM製品名:Infinity GL-2)」。

 Infinity 530 はファインセラミックス(SiO2)を原材料に使用した平均膜厚20μmの無機系コーティングで、フッ素樹脂コーティングと同等の非粘着性を有しつつ、フッ素樹脂コーティングでは対応できない450℃の高い耐熱性と鉛筆硬度9H の高い耐摩耗性を実現する。ゾルゲル複合材料技術(アルコキシド系ゾルを加熱などによりゲル状態とし、セラミックスなどを合成する化学操作の一つ)の適用で有害な有機バインダーを含まずに高い密着性を実現できる、安全なコーティングとなっている。

 Infinity 530 は表面に非粘着性を付与できることから、チャーハンや卵焼き、ハンバーグなどケチャップや調味料などが多用される、フッ素樹脂コーティングが適用されてきたアプリケーションで、さらに耐摩耗性を付与でき、非粘着の効果を持続できる。また、水蒸気が浸透しない耐スチーム性を有することからは、水蒸気で蒸すノンフライめんのくっつきなども防止できる。

 一方、Infinity531、Infinity 532 はポリマーを含まない完全無機質な膜厚1μmのセラミックコーティング。Infinity 531は撥水性に優れ、Infinity532は親水性に優れる。水と有機溶媒からなる反応液中において、加水分解、脱水縮合させた後、200℃以下の温度でガラス化。Infinity 530で必要とされる下地処理のサンドブラスト処理が要らないため、母材を傷つけることがないほか、下地処理が必要ない膜厚1μmの薄膜のため刃物などの薄物に適用できる。また、内径0.5mmといった細い配管の内面でも耐腐食性向上を目的とした適用実績があり、配管内面のアプリケーションにも提案を進める。

 Infinity531、Infinity 532 は膜厚1μmの薄膜のため、MD処理®による微細な凹凸をトレースでき、MD処理®が実現する滑り向上や付着抑制、洗浄力向上といったテクスチャーの形状効果を持続できる保護膜としても、有効と見られる。サーフテクノロジーでは、MD処理®の保護膜として耐摩耗性の高いDLCコーティングの採用実績も多いが、DLCコーティングを使うだけの耐久性が必要のない用途では、比較的低コストのテクスチャー保護膜としても、Infinity531、Infinity 532が利用できる。

 これまでMD処理のアプリケーション開拓を手掛け、今回Infinityシリーズの販促を担当することになったサーフテクノロジーの新井正彦氏は、「粘性のある食品を扱うローラーの表面などにはフッ素樹脂コーティングの被覆が多用されてきたが、Infinity 530はフッ素樹脂と同等程度の非粘着性を付与でき、フッ素樹脂以上の耐摩耗性によって非粘着性を持続できる。また、Infinity531、Infinity 532 は(ブラスト処理を伴わない)平滑な薄膜のため、ふき取りが容易で衛生的に優位。いずれも、多くの点でフッ素樹脂コーティングの代替が狙えると思う。PFAS対策は必至で、評価し置き替えるには時間を要するため、早期に着手すべき。MD処理®は食品分野では比較的新しい技術になるが、早くからPFAS対策に取り組む食品メーカーは積極的に試験評価し採用している。MD処理®の販促に際して実施したように処理の性能やメリットが分かる試験動画をInfinityシリーズでも制作するとともに、MD処理®とInfinityシリーズとの複合処理のテストピースを作製し食品メーカーに提出して評価してもらうことなどにより、フッ素樹脂コーティングの代替を加速させていきたい」と意欲を語っている。

Infinityシリーズを処理したプレートを手にする販促担当者の新井氏

 

kat 2023年3月9日 (木曜日)
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トライボコーティング技術研究会、第15回岩木賞贈呈式、第25回シンポジウムを開催

1年 ago
トライボコーティング技術研究会、第15回岩木賞贈呈式、第25回シンポジウムを開催

 トライボコーティング技術研究会と理化学研究所は2月24日、埼玉県和光市の理化学研究所 鈴木梅太郎記念ホールで、「岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)第15回贈呈式」および「第25回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム-ナノ多孔高分子フィルム、先進コーティング、高機能3Dプリンタ、CT技術-」をハイブリッド開催した。

第15回岩木賞受賞者と関係者


 岩木賞は表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故・岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。トライボコーティング技術研究会が提唱して2008年度に創設、現在は未来生産システム学協会(FPS)が表彰事業を行っている。

 第15回目となる今回は、東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏が業績名「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」により大賞に輝いた。また、新明和工業が業績名「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」により事業賞に輝いた。さらに、慶応義塾大学 小池 綾氏が業績名「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」により奨励賞を受賞した。

 大賞の業績「クレージング現象を利用したナノ多孔高分子フィルムおよび繊維の開発」は、高分子材料の初期破壊現象であり工業的には抑制されるべき現象であるクレージング現象を制御しつつ活用しナノ多孔高分子フィルムおよび繊維を開発するという世界唯一の技術である。高分子のクレーズの内部はナノオーダーのフィブリル(繊維束)とボイド(孔)からなるスポンジ状ナノ構造であり、本業績では、脆性に破壊する高分子フィルムの破壊直前の状態を管理・制御する技術を開発することで、フィルムあるいは繊維状の素材に、安定したクレーズを生じさせるとともに、規則構造を持たせることに成功したもの。本技術により、視点により透明性が異なる視界制御性フィルムや水中にマイクロバブルを発生する膜として上市されていることや、本技術を繊維製品等に多用途展開するベンチャー企業FiberCrazeがスタートしていることなどが評価され、受賞に至った。

 受賞の挨拶に立った武野氏は、「大学院生だった40年前に理化学研究所で岩木正哉先生のご指導を受けて研究を進めた。今回岩木先生の偉業を讃えて創設されたこの賞を受賞する栄誉にあずかり、岩木先生から賞をいただいた気分で大変感慨深い」と語った。

左から、大森会長、武野氏、当日プレゼンターを務めたFPS表彰顕彰部門長 藤井 進氏

 

 また、事業賞の業績「ダイヤモンド成膜工具の刃先先鋭化装置の開発」は、一般的にダイヤモンド成膜がTiNやTiAlNなどのPVD膜に比べて膜厚が厚く切削工具に施すと刃先Rが大きくなり切削性能が低下するのに対し、プラズマイオン処理によりダイヤモンド成膜された切削工具の刃先を先鋭化する装置を開発し、CFRP加工などで従来から行われている「捨て穴加工」を排除し生産効率向上に寄与する技術を確立したもの。従来からレーザーを用いてダイヤモンド成膜した切削工具の刃先を先鋭化する技術はあったが、ツールパスの設定が難しく、加工後の表面状態が必ずしも良好とは言えず一部基材の露出も見られる場合がある。本開発は、プラズマのアンテナ効果を利用し、主として刃先のダイヤモンド被膜をイオンエッチングすることで先鋭化とドロップレットの低減を可能にしたほか、一度に複数本の工具が処理可能で従来技術が抱える問題を解決できることなどが評価された。

 受賞の挨拶に立った岡本氏は、「栄誉ある賞をいただき、先鋭化装置の開発者一同が喜びを感じている。本賞を受賞し評価されたことは装置の大きなPRとなる。これを機に拡販へとつなげていきたい。先鋭化装置は販売実績がありながらも、まだまだ改良すべき点も多く、関係各位のご指導をいただきながら、より良い装置に仕上げていきたい」と語った。

左から、大森会長、岡本氏、藤井氏


 

 さらに、奨励賞の業績「高重力場を援用した高機能 3Dプリンタの開発」は、世界に先駆けて実施した高重力場アディティブマニュファクチャリング(AM)の研究成果である。宇宙空間の微小重力場で金属AMを用いた保全などを行う際、粉末が浮き、スパッタがどこまでも飛び、内部欠陥が浮力の減少でいつまでも排出されないなど、粉末床溶融結合法(PBF)は実行困難となる。本業績では、10Gまでの高重力場を作用させる装置を開発、造形プロセス評価において、1Gでは造形面に粉末が凝集したのに対し、10Gでは凹凸の少ない粉末床を形成し、スパッタの発生が合成加速度の逆数に比例して減少することが、また、造形物品質評価では、1層造形物のうねりが10Gで低減しボーリング現象を抑制することや多層造形物の密度と硬さが向上し金属組織の微細化が図られることが確認された。高重力場を援用した超微細構造造形を用いることで機能性表面生成への重要な一歩となる可能性が評価された。

 受賞の挨拶に立った小池氏は、「栄えある賞を受賞したことを機に、開発技術を社会に広めていきたい。同時に、社会に役立てていただけるよう研究開発を深化させたい」と述べた。

左から、大森会長、小池氏、藤井氏

 

 贈呈式の後はシンポジウムに移行。岩木賞の記念講演として大賞に輝いた東海国立大学機構 岐阜大学 武野明義氏が、事業賞に輝いた新明和工業 岡本氏が、奨励賞に輝いた慶応義塾大学 小池氏がそれぞれ講演を行った後、以下のとおり3件のトライボコーティング技術研究会会員による講演がなされた。

・「DLC コーティング技術とアルミ切削工具への応用展開」小磯裕太氏(日本電子工業)…従来の水素含有DLC(a-C:H)膜中にケイ素(Si)を含有させた豊田中央研究所開発のDLC-Siコーティング技術を同社のプラズマ熱処理技術とプラズマCVD装置のノウハウにより実用化した「NEO Cコーティング」のほか、UBMS法+PACVD法で成膜するDLC-P(a-C:H)やアークイオンプレーティング法で成膜するDLC-A(ta-C)、UBMS法で成膜するDLC-S(a-C:H)やW-DLC(a-C:H:W)、PACVD法で成膜するSi-DLC(a-C:H:Si)など多種の標準ラインナップを有するPVD方式で成膜した「NEO VCコーティング」の技術を紹介。製造プロセスにより構造や硬さ、表面粗さなどの特性の異なる各種のNEO VCコーティングを成膜した切削工具を用いてアルミニウム合金のドライ切削特性について評価したところ、アルミニウム合金のドライ切削にはドロップレット数を抑えたta-C膜であるDLC-Aが適している一方で、シリコンを多く含むアルミニウム合金の切削では工具摩耗が見られたことを報告した。

・「無機-有機ハイブリッドコーティングの設計と応用―機能性ハードコート材の開発―」佐熊範和氏(東京都立産業技術研究センター)…無機結合を代表するシロキサン結合(Si-O)エネルギーは極めて大きく耐光性・耐久性に優れる。しかしこうした優位性を持つポリシロキサン樹脂をコーティング用途に展開するには、脆性・密着性・硬化性・溶解性・安定性などのハンドリング性に劣るため、その改善を目的にHybrid sol-gel法を用いて有機ポリマーとハイブリッド化した無機-有機ハイブリッド樹脂を合成した。粒子ハイブリッドとしてはコロイダルシリカ(ナノシリカゾル)表面の-SiOHを反応対象としHybrid sol-gel法による有機ポリマーとの共重合により硬度・耐熱・耐久性が高まった透明ハードコート化が可能になる。無機-有機ハイブリッドコーティングとしてはまた、防汚型ハードコートやUV吸収性ハードコート、屈折率制御型ハードコートなどが実現できることを紹介した。

・「新たに発見された離散ラドン逆変換厳密解に基づくCT画像」高梨宇宙氏(理化学研究所)…フィルター逆投影(FPB)法はCT画像再構成法の数学的な基礎を与える連続空間上で定義されたラドン変換から自然に導かれるが、計測データが離散的なため骨と軟部組織の境界や金属と樹脂部品の境界などで再構成画像にアーチファクトを生じる。一方、吸収係数を未知数、投影データ群を既知数とした連立方程式を解くことで画像再構成を行う代数的再構成(ART)法は問題設定の段階から空間を離散化して取り扱うため同様のアーチファクトが生じにくい反面、ラドン変数で保障される投影データと断層画像の一対一対応が壊れてしまう。こうした問題に対し、適切な離散化で意図的に過剰系を作りそこに含まれる正則系を取り出すことでラドン変換の逆変換の厳密解を構成するアルゴリズム「SOL」を考案した。3Dプリンタで造形した既知の体積の撮像ターゲットを作成し同ターゲットのX線CT画像データを取得、SOLとFBP法を用いて同じデータに対し三次元再構成を行い、得られた三次元データを、画像解析ソフトによるセグメンテーション手法で体積を評価し撮像ターゲットの体積と比較したところ、SOLの体積評価精度がより高い結果となり、SOLの厳密解再構成画像の評価値が有効であると示された。

第25回シンポジウムのもよう

 

kat 2023年3月6日 (月曜日)
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表面技術協会、第74回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

1年 ago
表面技術協会、第74回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、オンライン会議システムを利用したリモート方式により「第74回通常総会および各賞授与式」を開催した。

第74回通常総会のもよう

 当日は第73期事業報告、会計報告が行われた後、第74期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第145回講演大会(3月8日~9日)は新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえオンライン方式で開催したこと、第146回講演大会(9月6日~7日)は埼玉工業大学との共催により対面開催したことなどを報告した。事業計画では、第147回講演大会を千葉工業大学津田沼キャンパスで開催することや第148回講演大会を山形大学米沢キャンパスで開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議を行うことなどを確認した。

 役員改選では、前期に引き続いて会長に松永守央氏(北九州産業学術推進機構 理事長)、副会長に幅﨑浩樹氏(北海道大学 大学院工学研究院 教授)、山本渡氏(山本鍍金試験器 代表取締役社長)が再任。今期より近藤英一氏(山梨大学 大学院総合研究部 教授)、鈴木一徳氏(スズキハイテック 代表取締役社長)が副会長に選任された。

 理事を代表して挨拶に立った松永会長は「会員数が減少している問題がある。将来計画委員会でも話し合われているが、当協会は特に女性会員が非常に少ない。今年度もう一度各委員会で対策を検討していきたい。研究課題としてはカーボンニュートラルとCASEを含めた新しいモビリティの問題、5Gの問題など色々と表面技術が関わる問題がある。こうした問題についても表面技術誌やセミナーを通して発信していきたい。会員増加にもつながるはずだ」と述べた。

挨拶する松永会長

 当日の席上では、「2023年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、各賞選考委員長が受賞者と業績、受賞理由を述べた。協会賞には、安住和久氏(北海道大学 大学院工学研究院 特任教授)が業績「金属の表面処理に関する実験的および理論的研究」で受賞。安住氏は腐食防食および表面処理分野において研究開発を行ってきた。腐食科学分野においては、鉄やチタンなどの不働態皮膜の半導体的性質に関する研究において分光エリプソメトリー、光電流スペクトル、インピーダンススペクトル、電気抵抗法などを活用して、nmオーダーの極薄膜である不働態皮膜の光学物性と不働態電場保持機能の解明、皮膜の厚さおよび構造と電子物性との関係などを明らかにした。またカップリング電流マッピングによるすきま腐食、大気腐食などの腐食進展解析、光電気量マッピングによる金属中水素透過挙動解析など、各種の腐食現象可視化技術を開発している。このほか、高レベル核廃棄物地下埋設環境におけるコンテナ候補金属材料、特に極低酸素濃度環境における銅の腐食挙動解析を進めてきた。近年は、マルチ埋込み電極によるコンクリート鉄筋の腐食挙動解析、氷点下での腐食現象解明に取り組み、カップリング電流マッピングによる氷下の鋼表面の腐食挙動の可視化、積雪下腐食モニタリング、実環境における大気腐食モニタリングなどを実現している。
 表面処理分野においては、アルミニウム、マグネシウムなどの難めっき軽金属合金への耐食めっき前処理に関する研究を進め、アルミニウムの2回ジンケート前処理機構の解明、マグネシウム合金への化成処理および無電解めっき前処理、銅ナノ粒子析出活性化処理を併用したイオン液体浴からのマグネシウム上へのアルミニウムめっきの実現、薄層複合対極からの合金析出など新規めっき法の開発を行った。また、量子計算による電析素過程の解析、イオン液体浴からのチタン合金析出の効率化、イオン液体相変化におけるインピーダンス挙動解析と3成分系相図作成への応用などの新たな手法を開発した。さらに、液中大気圧プラズマの解析と応用、二酸化炭素の電気化学的還元の効率化に関する研究、導電性ポリマー多層膜の製膜と応用、各種pHセンサの開発など、幅広い分野にわたり研究業績をあげている。

協会賞を受賞した安住氏

 また技術賞では、馬渕豊氏(宇都宮大学 大学院地域創生科学研究科)ら3名が業績「AEを用いた潤滑下におけるDLC膜の密着力評価方法の開発」で受賞。開発された技術は、汎用的な摩擦試験機にDLC膜のはく離を検知するアコースティックエミッション(AE)センサを加えることで、エンジン実部品と相関のある密着力を計測する簡易的な評価方法である。課題解決のポイントは、エンジンにて高負荷条件で頻繁に生じるはく離現象の再現のため、ドロップレット等による表面欠陥の影響の緩和策として先端曲率の大きい3/8inchベアリング鋼球を圧子とした点である。また、無潤滑下での摩擦係数の変動や異物に対する感受性を潤滑下での試験条件に変更することで抑制し、AEのみによる膜のはく離検知を可能とした点である。さらに、密着力評価の際にDLC膜の適用先の油種を用いる場合もあるため、異なる油種の影響に関する解析を行った。その結果、試験後の表面粗さと摩耗による曲率変化を把握し潤滑パラメータλで整理することで、油種違いでのはく離荷重を補正比較する手法を確立した。本技術は、汎用のPin/Disk試験機にAEセンサとアンプのみを装着することで実現可能であり、わずかな投資でDLC膜の密着力を評価できる。本技術の普及のため学会発表や解説記事の執筆がなされており、2022年5月にISO4821すべり軸受-潤滑状態でのDLCコーティング部品の動的接着試験方法として発行された。本技術の確立によりDLC膜の研究・開発が促進され、機械の効率化によるCO2削減やメンテナンス費の削減、性能の向上が期待される。

技術賞を受賞した馬渕氏

 同じく技術賞で高徳誠氏(JCU 総合研究所)ら4名が業績「ポリイミドへの無電解めっき技術の実用化」で受賞。スマートフォンに代表される小型携帯情報端末には、薄くて折り曲げ可能なフレキシブル回路基板(FPC)が多用されており、絶縁層としてのポリイミドフィルム上に銅の導体層を形成したフレキシブル銅張積層板(FCCL)をもとに製造されている。FCCLの一種であるスパッタ材は、スパッタリング法によりポリイミド上に直接NiCr/Cuシード層を形成し、その後硫酸銅めっきにて導体層を形成している。スパッタ材はポリイミド/導体層界面が極めて平滑で微細配線形成に有利であるが、高価である課題を抱えていた。一方、安価なシード層形成方式として無電解めっき法がある。ポリイミド上無電解めっきプロセスで長年実用化を妨げていたのは熱負荷後の密着強度の低下である。本技術では、その原因がめっき触媒をポリイミド表面に吸着させるためのアルカリ改質層の厚みにあることを明らかにし、めっき触媒にカチオン系末端基を有する塩基性アミノ酸Pd錯体を用いることで10nm以下の薄い改質層へもめっき析出が可能となった。また、これに伴い密着強度は市場要求の150℃168時間後0.4kN/mを達成した。さらに、FPC製造時の配線はく離問題も改質層ナノレベル化が有効であることを明らかにし、量産技術の確立に貢献した。その後、生産性向上のためロール・ツー・ロール式無電解めっき装置の開発に取り組み、めっき触媒のローラー転写・めっき析出、めっき皮膜欠陥が課題であったが、めっき液硫によるフィルムの非接触ターンで解決している。

技術賞を受賞した高徳氏

 受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞

・安住和久氏(北海道大学 大学院工学研究院 特任教授)
業績「金属の表面処理に関する実験的および理論的研究」

功績賞

・横井昌幸氏(元 大阪府立産業技術総合研究所)
・高島敏行氏(北海道科学大学 顧問、北海道科学大学 名誉教授)

論文賞

岡井和久氏(JFEスチール)、中野博昭氏(九州大学)
業績「亜鉛めっき鋼板の耐白錆性に及ぼす化成皮膜成分複合化の影響」
(表面技術 第72巻 第5号 295~302ページ)

技術賞

・馬渕豊氏(宇都宮大学)、池原賢亮氏(日産自動車)、保田芳輝氏(堀場製作所)
業績「AEを用いた潤滑下におけるDLC膜の密着力評価方法の開発」

・高徳誠氏・松本守治氏・宮田実香氏・福本ユリナ氏(JCU)
業績「ポリイミドへの無電解めっき技術の実用化」

進歩賞

・松本歩氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 助教)
業績「無電解プロセスによるシリコンの表面処理と高感度レーザー分析への応用」
(表面技術 第69巻 第12号 628~632ページ ほか)

技術功労賞

・及川悦男氏(日本プレーテック)
・蘇武岳彦氏(日鉄テクノロジー 研究試験事業所)
・西本信幸氏(東洋鋼鈑 下松事業所 品質統括部)
・大山隆雄氏(JFEスチール 表面処理研究部)
・池田真二氏(メテック 生産部)
・原英樹氏(元 サーテックカリヤ)

会員増強協力者

・井上泰志氏(千葉工業大学 工学部)
・蒲生西谷美香氏(東洋大学 理工学部)
・坂本幸弘氏(千葉工業大学 工学部)

 

admin 2023年3月6日 (月曜日)
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