ASTEC/SURTECH2020など開催、表面改質や表面試験・評価技術が一堂に会す
「ASTEC2020 第15回先端表面技術展・会議」や「SURTECH2020 表面技術要素展」、「nano tech2020 第19回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」など13の展示会が、1月29~31日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催、47692名が来場した。
ASTECとSURTECHでは、DLCコーティングやセラミックコーティング、めっきなどの表面改質技術、摩擦摩耗試験機やスクラッチ試験機、表面張力・形状・粗さ測定機などの表面試験・評価機器などの展示が見られ、各分野における最先端技術の展示を行った。このほか、3Dプリンタやアディティブマニュファクチャリング(AM技術)の最新技術や周辺技術が一堂に会した「TCT Japan2020」、「脱炭素社会を目指したエネルギーマネジメント」をテーマに開催された「ENEX2020」、「Smart Energy Japan2020」、「電力・ガス新ビジネスEXPO 2020」、IoTビジネスを加速するセンシング・ネットワークの最新テクノロジーを集めた「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2020」など多彩なイベントが同時開催された。これら展示会において表面改質と表面試験・評価関連では以下の出展が見られた。
大塚電子は、顕微分光を用いた微小領域での絶対反射率測定により、形状のある実サンプルのDLC膜の厚みを測定時間1秒/ポイントの高速で高精度に測定できる顕微分光膜厚計 「OPTM series」を展示した。今回披露したリニューアルタイプでは、コントロールボックス内の市販部品を小型化し、基板実装できるものは顕微膜厚ヘッドに実装し内製基板化したことで、コントロールボックスの削除と外部配線の簡素化を達成、設置スペースの削減を実現した。また、ランプの長寿命化を行うことでメンテナンス頻度を抑えることができ、メンテナンス性の向上を実現。さらに、誰でも簡単に精度よくオートフォーカス条件を作成できる機能、“オートフォーカス条件自動作成機能”を開発し、オートフォーカス機能の改良を実現できた。簡単に解析できる“楽々解析ウイザード”を搭載している。
大塚電子「OPTM series」
協和界面科学は、インクやコーティング材の泡安定性の評価やめっき液中の活性剤の劣化状況の管理、潤滑油の高温化における浸透性の評価などの目的で使用される表面張力計「DyneMaster」シリーズの実機を展示した。今回は、新たに開発した液体膜(泡膜)の持続性(安定性)評価を簡易に行える「液膜安定性評価」を紹介。この評価法は実試料では明らかに差があるにもかかわらず、従来測定法では差が見られない場合などに有効。また、従来測定法よりも試料が少量で測定ごとの洗浄も簡易なため、短時間で繰返し測定を行うことができる。洗浄剤、化粧品、塗料、食品、電子、機械などの起泡性、消泡性、泡膜持続性等の泡トラブル評価に適しているという。
協和界面科学「DyneMaster」
コニカミノルタは、熟練の目視に近似した感度を持ち誰でもOK/NGの判断を可能とする、コーティング膜表面などの微細キズ・汚れ評価を実現する外観検査システム「ProMetricYシリーズ」を紹介した。人の目と近似した感度を持つ高精度カメラで、ペルチェ素子を用いた高冷却機能による低ノイズを実現、高コントラスト性能と併せて極微細な欠陥も検出できる。また、高いコントラスト分解能12bit (4096)により、識別しにくい欠陥も検出可能なほか、最大2900万画素(6576×4384)という高分解能により微小な欠陥も検出できる。最近は4300万画素(8040×5360)のモデルも登場した。また、目の感度に近いフィルターあるいはIR感度タイプも選択できる。
コニカミノルタ「ProMetricYシリーズ」
三洋貿易は、米・Rtec instruments社のモジュール交換型多機能摩擦摩耗試験機「MFT-5000」を紹介。同試験機は、ブロック・オン・リングやピン/ボール・オン・リング、高速往復摺動試験、四球試験を標準として様々な試験に対応可能な装置。フロアスタンド型を採用しており、高荷重(5000N)、高回転領域(8000rpm)まで対応する。また、インラインで白色干渉計も搭載可能で、試験中、試験後の表面状態を試験直後にそのまま測定できる。データ収集速度は100KHz以上が可能だという。研究開発からASTMなどの試験法にも対応している。さらに、特殊試験として超高温・低温・湿度環境への対応やブレーキシミュレーション試験などへの対応が可能とした。
三洋貿易「MFT-5000」
新東科学は、摩擦摩耗試験機専門メーカーならではのノウハウと経験を活かした受託試験、荷重域0.1g~100kgや加熱・冷却・真空などあらゆる条件下での試験に対応する特注試験機の設計・製造をPRしたほか、実機を使用してのデモ測定も行った。今回は、同社摩擦摩耗試験機「トライボギア」のスタンダードモデル「TYPE:40」、一つの試験片で荷重を変えた摩擦摩耗試験が1回の測定で可能になる最上位機種「HHS2000S」、誰でもどこでもどんな角度でもスキルや経験を必要としないポータブル摩擦計「TYPE:37i」、肌触りや感触、なじみ感を数値化することができる触感計「TYPE:33」を展示するなど、同社の摩擦摩耗試験機の幅広いラインナップを示す展示となった。
新東科学のブース
東陽テクニカは、米国KLA社製の薄膜機械特性評価装置「G200X ナノインデンター」を展示した。DLCなどの硬質材料からゴムや粘着剤などのソフトマターまで、あらゆる薄膜の機械的特性評価試験(動的粘弾性測定やスクラッチ試験など)に1台で対応する。μNオーダーから最大10Nまでの広域荷重での測定に対応するほか、最速1点1秒以下で硬度・ヤング率の高速マッピングを実現。また、高分子材料の過熱環境下でのクリープ評価や加熱粘弾性評価にも対応。さらに、ナノスクラッチ試験によるサブミクロンの膜厚のはく離・耐摩耗性評価や、押込み試験による薄膜の破壊靭性評価も可能。
東陽テクニカ「G200X ナノインデンター」
中日本炉工業は、加圧冷却式真空熱処理炉「NVF-30P」の実機を披露した。冷却時に加圧することにより焼入性能が向上。冷却時の冷却ガス循環効率を向上したことにより、硬度むらが発生しにくくなっている。ダイス鋼やハイス鋼などの工具鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼の焼入れ、焼戻し処理をはじめ、オーステナイト系ステンレス鋼の固溶化処理、析出硬化系ステンレス鋼の析出硬化処理、チタンをはじめ各鋼種の焼鈍し処理などの熱処理に適した装置だという。また、AIを活用した真空熱処理レシピ生成システム「DiMA」のデモ機も紹介。現在のところ販売は未定だという。
中日本炉工業のブース
ナノテックは、 DLC膜を機能別、用途別に分類した「ICFコーティング(真性カーボン膜)」を紹介するとともに、大電力パルススパッタリング(HiPIMS)法によって水素フリーICF膜を660nm/minの超高速で成膜できるRoll to Roll装置の実機を展示した。同社ではDLCコーティングをはじめとするドライコーティングについて、自社製成膜装置による受託コーティングと装置販売を行っていることをアピールした。また同社では、薄膜や材料の機械的特性試験やDLC膜の品質管理や国際標準化による分類に適した分光エリプソメトリー測定などの表面分析サービスを行っており、同サービスの豊富な経験を活かしてそれぞれのDLC基準片・試験片の販売を行っていることを紹介した。
ナノテックのブース
ブルカージャパンは、ナノサイエンスAFM(原子間力顕微鏡)「JPK NanoWizard 4 XP」を紹介した。材料と高分子化学のためのAFMで、ナノメカニクス、電気化学から電気、磁気測定までを網羅。クローズドループ原子分解能とXY100μmの広範囲スキャンレンジで、最速3秒/1画像のスキャンスピードを備え、AFMヘッドにはクローズドループスキャンとディフレクションシステムを搭載し、またデジタルVortris™2コントローラーが低ノイズにて高速による信号処理を行う。プローブとサンプル表面の触圧をリアルタイムで測定しフィードバックをするピークフォース・タッピングモードを搭載。測定パラメータの設定はほぼ不要で、触圧を最小にコントロールでき安定した測定が可能。脆くやわらかいサンプル、粘着性の高い試料であっても、長期にわたり安定的に高解像度の画像が得られる。
ブルカージャパン「JPK NanoWizard 4 XP」
堀場製作所は、コーティング成膜の際などに表面の成膜温度を計測管理できるオンライン放射温度計「IT-480 Series」を展示した。複数台での計測により温度ムラや均一性の確認が可能で、無償で使える便利なソフトで8台までのデータを一括管理できる。小型のため取付けスペースをあまり必要とせず、インライン用途でも適用できる。また、ドライコーティングのプロセスや工業炉による熱処理プロセスなどの管理に適用できるコンパクトプロセスガスモニタ「MICROPOLE System」を紹介した。スパッタリング装置の残留ガス計測や、スパッタリング装置のリークモニタリング、CVD装置クリーニング後の残留ガスモニタリングなど、PVD・CVDなどの薄膜形成工程においてチャンバー内の不純物や残留ガスを計測することで、品質・歩留りの向上に貢献できる。
堀場製作所「IT-480 Series」
レスカは、各種ペーストや粘着材料、粘着テープ、粘着フィルムなどの粘着力測定を行うタッキング試験機「TAC1000」を紹介。これまで個人差による誤差が大きかったデータを定量的に評価することが可能になるという。測定プローブをサンプルに押し付け、引き上げる過程での粘着力を測定する。ダブル温調により試料片をホットプレートで裏面から予備加熱を行った状態で測定面に加熱されたプローブを侵入させることで、設定温度と実際に評価される試験面の温度を一定化させることができる。また、ホットプレート加熱を停止させることで、常温状態の試験片に対し加圧と同じ時間のみ加熱を行い粘着力計測を行うことができるため、加熱加圧成型における金型との離型性計測や、複写機におけるトナーの定着ベルトに対する離型性を計測することが可能となっている。加圧時間が最短10msecで可能なため、瞬間的な接触により生じる粘着力の計測も可能。
レスカ「TAC1000」
会期中の1月31日にはセミナー会場で、東京理科大学の佐々木信也教授のモデレータのもと、トライボロジーに関する先端企業の専門家10社が参加してのパネルディスカッション「トライボロジーにおけるオープンイノベーションの課題と将来」が開催された(主催:潤滑通信社)。
テーマ1「オープンイノベーションを支える開発支援環境の構築」ではエリオニクス、協和界面科学、新東科学、東陽テクニカ、ナノテックがパネリストとして参加し、テーマ2「トライボロジーの新たなビジネスモデル」ではアントンパール・ジャパン、三洋貿易、島貿易、トリニティーラボ、レスカがパネリストとして参加して、討論を行った。
パネルディスカッションのもよう
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2020年2月10日 (月曜日)