Rtec-Instruments、インライン3Dプロファイラ搭載型の二円筒転がり疲労摩耗試験機を開発
Rtec-Instrumentsは、“ユーザーのやりたいことを実現する製品を一緒に作っていく”マーケットインの思想から、主力の多機能トライボメータ(摩擦摩耗試験機)に加えて、3Dプロファイラ(表面形状測定機)、スクラッチ試験機、インデンテーション試験機、二円筒/三円筒試験機と、製品ポートフォリオを急速に拡充してきている。
同社が今回、世界に先駆けて転がり疲労摩耗試験中の表面をその場観察できる「インライン3Dプロファイラ搭載型二円筒転がり疲労摩耗試験機」を開発したので、日本法人社長の國井卓人氏とアプリケーション&セールス マネージャーの兒島正宜氏に話を聞いた。
開発したインライン3Dプロファイラ搭載型二円筒転がり疲労摩耗試験機」を挟んで、
國井氏(写真左)と兒島氏(写真右)
二円筒転がり疲労摩耗試験機
二円筒転がり疲労摩耗試験機「TwinRoller3000」は、転がりと滑りの自由な組み合わせのもとで二つのローラー試験片が転がり接触することによって(図1)、トラクション、摩耗、転がり接触疲労の試験が行える。
それぞれが独立制御された二つの480V駆動高トルクサーボモータ(最大トルク50Nm)が搭載され、ローラー試験片の回転方向(正逆転)と回転数(最大6000rpm、φ60mm試験片使用時の回転速度は18m/s相当、標準仕様は最大3200rpm)を制御、それぞれのモーター速度の範囲内で滑り率(SRR)を自在に設定(転がり0%~、滑り率0~±200%以上)でき、ダイナミックインライントルクセンサーがローラー試験片にかかるトルクを測定する。また、エレクトロサーボドライブ(サーボモータ+スプリングブラケット)を使用して荷重を最大8000Nまで制御し負荷できる。
試験はドライ環境と潤滑油使用環境(グリース塗布)に対応。潤滑剤は滴下および循環環境での試験となる。完全に自動化されたテストプログラムと高精度な制御により、高い再現性と正確な測定を実現できる。
これまで困難とされていた回転2軸のアライメント調整をユーザー側で容易に行うことができる革新的な設計によって、さまざまな試験片サイズや形状に対して適切な接触をさせることができる。ローラー試験片のサイズは、径φ30~60mm、厚み5~30mmにフレキシブルに変更できる他、接触面に曲率を持つ試験片による点接触の試験も可能である(図2)。
自己整合インライン高解像度トルクセンサーによって表面のダイナミクスをリアルタイムで定量化できるほか、日本法人独自の設計による安全対策としてピッチング発生時には振動を検出して試験を安全に停止できるセンサーを追加した。
また、オプションでアコースティックエミッション(AE)センサーや電気接触抵抗(ECR)センサーなど、さまざまなインラインモニタリングセンサーに対応、リアルタイムでさまざまな表面ダイナミクスを定量化できる。
図3は、TwinRoller3000を用いて、転がり接触疲労の設定で、コーティングなし/コーティングありの各サンプルの摩擦試験を実施した結果を示す。未処理のサンプル(上の曲線)に比べ、同じ材料に溶射被膜を施したサンプル(下の曲線)において、転がり接触疲労(RCF)寿命の改善が確認できる。
図1 二つのローラー試験片が転がり接触するようす
図2 フレキシブルに変更できるローラー試験片サイズ
条件:荷重500N、SRR 0~0.6、温度70°C
図3 TwinRoller3000を用いた転がり接触疲労試験の結果
インライン3Dプロファイラ
「インライン3DプロファイラLAMBDA」は、共焦点顕微鏡と白色光干渉計を同じ筐体に配置しワンクリックで切り替えることが可能で、摩耗痕やスクラッチ、圧痕といった試験後の表面を高解像度で画像化するように最適化されている。以下の四つの光学技術を一つのヘッドに組み合わせたことによって、透明、ガラス、鏡、粗い、滑らか、急勾配など、コーティング表面を含むあらゆる試料表面を高いZおよびX&Y解像度で簡単に測定できる。
・白色光干渉計モード:平らな面の、特にZ方向(深さ方向)で高解像度画像を取得
・スピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡モード:急な斜面、透明、暗い、または粗い表面を高速でスキャンできる万能型3Dプロファイリング
・暗視野モード:顕著なコントラストで表面の亀裂を検出
・明視野モード:高解像度とリアルカラーの2Dプロファイルを取得
インライン3Dプロファイラ搭載型の二円筒転がり疲労摩耗試験機
Rtec-Instrumentsは、上述の二円筒転がり疲労摩耗試験機TwinRoller3000とインライン3DプロファイラLAMBDAを組み合わせたシステム(図4)の開発に、世界で初めて成功した。
3DプロファイラはX、Y直交2軸のピラー型サーボドライブで駆動することで、毎回正確な位置での表面形状測定が可能で、試験後速やかに、試験片の表面をイメージングできる(図5)。取得した画像は標準搭載のソフトウェアにより平面化、二値化、面粗さ出しなど表面疲労摩耗マイクロピッチングの画像解析(図6)が可能である。
試験の仕様はTwinRoller3000の一部を国内でアップグレードし、最大荷重:8000N、最大回転数:6000rpm(φ60mm試験片使用時の回転速度は18m/s相当、標準仕様は最大3200rpm)、SRR:±200%以上、試験油温度:~160℃、試験片サイズ:可変(φ30~60mm、厚み5~30mm、接触面に曲率を持つ試験片による点接触の試験も可能)で、オプションでオイル循環、予備加熱システム、AEセンサー、ECRセンサーが付加できる。国内追加安全設計(フルカバーアルミフレーム、ドアセンサー、漏液センサー、振動センサーほか)も提供している。
開発したシステムが高面圧、高トルク、高速での試験評価が可能なことから、同社では重機や建機などを中心に適用を進めるほか、さまざまな波形のAC/DC、電流/電圧を印加できる「電化試験モデル」へのアップグレード可能なことから、電気自動車(EV)モーターの高速回転化対応ベアリングやギヤ、ボールジョイントなどの用途も想定している。
図4 インライン3Dプロファイラ搭載型の二円筒転がり疲労摩耗試験機:二円筒転がり疲労摩耗試験機TwinRoller3000のベースに、X、Y直交2軸のピラー型サーボドライブで位置決めできるインライン3DプロファイラLAMBDAを搭載
図5 インライン3DプロファイラRAMBDAによる試験後の試験片表面のイメージング
図6 マイクロピッチングの画像解析
電化試験モデル
「電化試験モデル(Eモジュール)」は、TwinRoller3000など既存の試験方式・摺動形態を模擬しながら、装置のスリップリングを用いてさまざまな波形のAC/DC、電流/電圧を印加することで、ベアリングなどの電食反応や、試験片間に生じるインピーダンス(AC)、電気接触抵抗(DC)、比誘電率(εr)、誘電正接(tan δ)といった、多種多様なパラメーター測定により、電気化学的にトライボロジー特性を評価することが可能となっている。
kat
2024年4月9日 (火曜日)