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島貿易、トライボロジー試験機を用いたDLCなど硬質薄膜関連の試験評価を推進

1ヶ月 2週 ago
島貿易、トライボロジー試験機を用いたDLCなど硬質薄膜関連の試験評価を推進

 英国PCS Instrumentsは、Imperial College LondonのHugh Spikes教授が率いるトライボロジー研究グループが開発した潤滑油や燃料油の各種特性を分析するための試験評価技術を基板技術として、1987年に設立された。以降、トライボロジー試験装置のグローバルリーダーの一つとして、油膜厚さ試験機「EHD」、トラクション試験機「MTM」などの各種トライボロジー試験機を自動車や潤滑油をはじめとする産業分野や大学・公共機関などの研究分野に提供している。

 日本国内では、島貿易が国内総代理店としてPCS Instruments製トライボロジー試験機の利点を活かした試験アプリケーションの拡大を進めている。

 ここでは特に、潤滑油介在下でのDLCコーティングなど硬質薄膜の摩擦摩耗特性評価で適用実績の多い、トラクション試験機「MTM」、さらには近年開発された高荷重トラクション試験機「ETM」の概要と、それらを用いたトライボロジー試験評価事例について紹介する。

 

潤滑油介在下での薄膜の特性評価に有用なトライボロジー試験機

 

トラクション試験機MTM

 MTM(図1)は、世界中で300台以上の販売実績がある、実験室向けのコンパクトなベンチトップタイプのボールオンディスク型摩擦摩耗試験機で、500以上の文献で採用されており、簡単なトレーニングで使用できるため、新規ユーザーにも扱いやすい仕様となっている。

 試験機ごとの測定誤差が少なく繰返し性の高い結果が得られるほか、独立駆動するモータにより、すべり率200%以上を再現できる。また、操作性の良さや豊富なアクセサリにより、幅広い試験条件を再現できる。さらに、オプションの3Dマッパーを採用することによって、トライボフィルムの形成を、接触部電気抵抗測定では油膜切れの挙動を確認することが可能となっている。

 仕様は以下のとおり。
・最大荷重:~75N
・接触面圧:~1.25GPa(標準試験片)、~3.1GPa(試験片による)
・最大速度:4000mm/sec
・すべり率:-10000~10000%
・温度範囲:室温~150℃(オイルクーラ使用時10℃~)
・サンプル量:35mL
   
 

図1 MTM本体(左)と試験部(右)
  高荷重トラクション試験機ETM

 ETM(図2)は、軸受鋼(SUJ2)相当の試験片で、3.2GPaの高面圧を再現することができるボールオンディスク型摩擦摩耗試験機。
オプションの3Dマッパーを採用することによって、トライボフィルムの形成から破壊までを観察することが可能となっている。Fluid Extraction System(FES)自動ドレインシステムでは、試験後のサンプルを漏れなく回収し、作業工程を簡便化することによって、クリーニング時間の短縮につながる。

 仕様は以下のとおり。

・荷重範囲:100~1650N
・接触面圧:~3.5GPa(標準試験片)、~7.1GPa(タングステンカーバイド試験片)
・最大速度:3500mm/sec
・すべり率:—10,000~10,000%
・温度範囲:室温~150℃(オイルクーラ使用時10℃~)
・サンプル量:30mL
   

図2 ETM本体(左)と試験部(右)

 

トライボロジー試験用の各種DLC試験片

 DLCコーティングは、その低摩擦特性、高い耐摩耗性、化学的安定性、生体適合性、さらには意匠性などから、自動車や金型分野をはじめ様々な産業分野で適用が拡大してきている。

 特に自動車分野においては、エンジン部品を中心に広く採用されており、それら部品の潤滑油剤を検討する上では現在、DLCを被覆した表面に対する、各種潤滑油添加剤の諸機能を評価することが求められてきている。DLCコーティングは、sp2結合量およびsp3結合量と水素含有量から、低硬度で水素フリーのa-C膜、高硬度で水素フリーのta-C膜、水素含有量の多いa-C:H膜まで様々な種類があり、また、内部応力を低減させ密着性を高める目的で多層化が図られ、さらに離型性など各種の特性を付与する目的で金属ドープなどがなされている。こうしたDLC膜と潤滑油添加剤との関係性においては例えば、摩擦調整剤の一つであるモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を配合したエンジン油を用いて摺動させた場合に、水素含有DLC膜において摩耗が促進されることが報告されている。

 こうした中、PCS Instrumentsでは、様々なDLC膜の表面で潤滑油・潤滑油添加剤を評価したいとのニーズの高まりを受けて、低硬度の水素フリーDLC膜(a-C膜)「Graphit-iC」および高硬度の水素含有DLC膜(a-C:H)「Dymon-iC」をそれぞれ、高速度工具鋼(ハイス鋼)M2ならびに軸受鋼52100に施したボールおよびディスクを用意している(図3、表1)。
 

図3 DLC試験片

 


 

MTMを用いた、MoDTC介在下でのDLC膜の摩擦摩耗特性へのポリマー系摩擦調整剤の影響の評価

 Crodaでは、MTM試験機と上述の2種のDLC被覆ボール(sp3結合量50%、40%水素含有DLCボール(Dymon-iC)および水素フリーCrドープDLCボール(Graphit-iC))、さらには相手材となる鋼製ディスクを用いて摩擦摩耗試験を実施、2種のDLC表面における自社のポリマー系摩擦調整剤(PFM)の潤滑性能を比較評価している1)。供試油には、①5W-30欧州ACEA C3エンジン油、②5W-30油+0.5%MoDTC(Mo含有:400ppm)、③5W-30油+0.5%MoDTC(Mo含有:400ppm)+0.5%PFM1、④5W-30油+0.5%PFM1、⑤5W-30油+0.5%グリセロールモノオレイン酸塩(GMO)、⑥5W-30油+0.5%MoDTC(Mo含有:400ppm)+0.5%GMOを用いた。

水素含有DLC(sp3結合量50%、水素含有量40%)ボール/鋼製ディスクの摩擦摩耗試験結果

 水素含有DLCボール/鋼製ディスクの摺動において、5W-30欧州ACEA C3エンジン油(①リファレンス油)は、境界潤滑領域において0.11という高い摩擦係数を示したが、摩耗量は水素含有DLCボールで4000μm3、鋼製ディスクで12600μm3と大きくはなかった。

 リファレンス油にMoDTCを0.5%添加した供試油②では、速度領域0.1~0.03m/sで摩擦係数が0.09まで低下した一方で、摩耗量はMoDTCの介在によって水素含有DLCボールで10000μm3、鋼製ディスクで70000μm3と大幅に増えた。

 5W-30油にGMOを0.5%添加した供試油⑤では、リファレンス油①に比べると摩擦係数がわずかに低く(0.10)、MoDTC添加油に比べても0.1m/s以上の高速度領域において低い摩擦係数を示した。一方、摩耗量は、鋼製ディスクでは5300μm3とリファレンス油①に比べ減ったものの、水素含有DLCボールでは6700μm3と増えた。

 MoDTCを含むオイルにGMOを配合した供試油⑥は、リファレンス油①にGMOを0.5%配合した供試油⑤と同様の摩擦係数を示した。また、摩耗量においても、MoDTCのみを配合した供試油②に比べて水素含有DLCボール、鋼製ディスクともに減少し、鋼製ディスクでは12600μm3へと減少した。

 水素含有DLCと鋼製ディスクとの摺動において、摩擦調整剤としての効果が最も大きかったのが供試油③および供試油④のCroda製ポリマー系摩擦調整剤(PFM)で、極低速度領域においては摩擦係数の顕著な低下は認められなかったものの、混合潤滑領域において極めて低い摩擦係数を示した。

 PFMのみが配合された供試油③では、摩耗量が水素含有DLCボールにおいて90%も低減し、鋼製ディスクにおいても50%以上低減した(図4)。

 図5に示すとおり、水素含有DLCボールで高い摩耗量が認められたMoDTC配合油においても、Croda製ポリマー系摩擦調整剤PFMと組み合わせることで水素含有DLCボールにおいても、鋼製ディスクにおいても、摩耗量が80%以上低減する結果となっている。
 

図4  PFMの配合による摩耗量低減

 

図5 MoDTC配合油へのPFM添加による摩耗量の大幅な低減
水素フリーDLC(sp2結合、Crドープ)ボール/鋼製ディスクの摩擦摩耗試験結果

 水素フリーDLCボール/鋼製ディスクの摺動において、リファレンス油①は低速度領域において水素含有DLCボール/鋼製ディスクの摺動での摩擦係数0.11よりもわずかに大きい値を示した(μ=0.12)。摩耗量も水素含有DLCボール/鋼製ディスクの摺動での結果に比べて大きく、水素フリーDLCボールで125000μm3、鋼製ディスクで50000μm3となった。

 MoDTC配合の供試油②では、MoDTCの水素フリーDLCボールの摩擦への影響は認められなかったものの、水素フリーDLCボールでの摩耗量は230000μm3と大幅に増えた。一方で鋼製ディスクの摩耗は32000μm3とMoDTCの配合によって小さくなった。

 GMOを配合した供試油⑤が極めて高い摩擦摩耗特性を示し、摩擦係数はリファレンス油①に対し境界潤滑領域で10%低減、混合潤滑領域で10%以上低減した。摩耗量は水素フリーDLCボールで11500μm3とリファレンス油①に対して90%低減し、鋼製ディスクで45500μm3と10%低減した。

 GMOを配合した供試油にMoDTCを添加した供試油⑥はリファレンス油と同様の摩擦摩耗特性を示した。このことから、GMOとMoDTCは性能を相殺する形で機能すると考察される。

 PFMを配合した供試油③は、リファレンス油①よりも高い摩擦係数を示す結果となった。また、摩耗量は水素フリーDLCボールで176000μm3とリファレンス油①に対して45500μm3と40%増加し、鋼製ディスクでも52000μm3と微増した(図6)。

 PFM配合の供試油にさらにMoDTCを配合した供試油④では何と、大幅な摩擦摩耗特性の改善が見られた。摩擦係数はリファレンス油①に比べ20%以上低減した0.10以下で、摩耗量は水素フリーDLCボールで48000μm3とリファレンス油①に対して45500μm3と40%低減したが、鋼製ディスクにおいては59000μm3と20%増加する結果となった(図7)。
 

図6 PFM配合油では水素フリーDLCボールの摩耗が増加

 
 

図7 MoDTC配合油へのPFMの添加により水素フリーDLCボールの摩耗が大幅に低減

 

今後の展開

 MoDTC配合油が水素含有DLC膜の摩耗を促進させる問題に対しては上記の研究以外にもMTM試験機を活用した数多くの研究が進められており、ある種のジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)などの表面活性添加剤がトライボフィルムを形成しDLC膜の摩耗を抑制するといった研究2)なども近年発表されている。

 高荷重トラクション試験機ETMもまた、トラクション試験機MTMと同様に潤滑油・グリースの評価を中心に適用が進められている。電動車両においても減速機が重要な基幹技術となることから、減速機のような高面圧用途でのETMを用いたEHD摩擦の計測評価といった研究3)も始まってきている。

 環境負荷低減の意識の高まりとともに、日本国内においても洋上風力をはじめとして風力発電装置用潤滑・グリースやDLCコーティングの研究も活発化してきており、こうした高面圧で稼働する風力発電主軸用軸受などにおける、ころ表面のDLC膜とグリース添加剤とのトライボケミカル反応による超低摩擦機能の発現といった事象なども、ETMによって試験評価が可能と見られている。

 PCS Instruments製トライボロジー試験機の国内総代理店を務める島貿易では、表面改質分野でのMTMの適用提案をさらに進めるとともに、こうした高面圧用途での軸受や減速機などでのETMの試験アプリケーションの開拓に努めていく。

参考文献
1) John Eastwood:LUBE MAGAZINE,NO.139,JUNE(2017)33-40.
2) Mao Ueda, Amir Kadiric, Hugh Spikes:Wear of hydrogenated DLC in MoDTC-containing oils, Wear 474-475 (2021) 203869.
3) Jie Zhang, Hugh Spikes:Measurement of EHD Friction at Very High Contact Pressures, Tribology Letters (2020) 68:42.

kat 2024年9月30日 (月曜日)
kat

東京理科大学・佐々木研究室、第23回トライボサロンをハイブリッド開催

1ヶ月 3週 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第23回トライボサロンをハイブリッド開催

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第23回目が9月28日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす

 
 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第23回目となる今回のトライボサロンでは、「HiPIMSを用いた水素フリーDLC膜の成膜技術に関する研究」のタイトルで、東京都立産業技術研究センター・徳田祐樹氏を講師に話題提供が行われた。

 講演では、高硬度・高平滑性の両立が求められるDLCコーティングの成膜技術として、大電力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)に着目。最適な磁場強度の制御による母材へのカーボン粒子のイオン化率向上による高硬度化などの研究を紹介し、HiPIMSを用いた水素フリーDLCの高硬度・高平滑性の両立の可能性を示した。

 なお、トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

kat 2024年9月28日 (土曜日)
kat

ブルカージャパン、大阪でAFMミーティング「AFMを用いた電池特性評価技術」を開催

2ヶ月 1週 ago
ブルカージャパン、大阪でAFMミーティング「AFMを用いた電池特性評価技術」を開催

 ブルカージャパン ナノ表面計測事業部は10月17日13:00~17:00、大阪市淀川区のアットビジネスセンターPREMIUM新大阪(正面口駅前)905号室で、AFMミーティング2024<関西>を開催する。テーマは「AFMを用いた電池特性評価」。

 AFMユーザーによる最新の研究成果や、測定のための技術など、特に電池関連の研究者に役立つプログラムとして企画。トークセッションでは、周りに相談できないさまざまな疑問や質問などトピックスを募集しており、測定のヒントやコツなど、参加者の困りごとに答える機会としている。トークセッションの準備として、事前に参加予定者からの質問を、登録フォームへのご記載にて受け付けている。

 概要とプログラムは以下のとおり。

定員:60名

対象:ブルカーに限らずAFMを使用している、または検討しているユーザー、測定技術に興味のある方、これから携わりたい方など

申込み:こちらから

プログラム:13:00開始 (12:30受付開始)

・13:00~13:05    開催挨拶 ブルカージャパン ナノ表面計測事業部 統括部長 鈴木大輔 氏

・13:05~13:35 「原子間力顕微鏡を用いた蓄電池の電極と電解液の界面における物性と反応機構のin-situ解析」自然科学研究機構分子科学研究所 主任研究員 湊 丈俊 氏…蓄電池の開発において、材料の物性の理解は重要であるが、充放電中の蓄電池内部における材料の状態を解析することは容易ではない。原子間力顕微鏡は、充放電中の蓄電池内部の材料物性や反応機構を直接解析できる手法で、高い空間分解能を持つことから、これまで不明であった物性や反応機構を解析できる。本講演では、原子間力顕微鏡を用いた蓄電池の解析における最近の展開などを紹介する。

・13:35~14:05 「Liイオン電池合材電極の電子伝導解析」産業技術総合研究所 電池技術研究部門 研究グループ長 前田 泰 氏、研究員 蒲生浩忠 氏…Liイオン電池では、個々の活物質粒子までの電子・イオン経路が重要だが、従来のマクロスコピックな解析だけでは、これを評価することが困難。産総研では、AFMベースの電気伝導測定により、電極内部の導電ネットワークの評価を試みている。本講演では、液系Liイオン電池や全固体電池の合材電極を対象とした測定例を紹介するほか、三次元シミュレーションとの組み合わせによる電極内部の導電パスに関する解析事例についても紹介する。

・14:05~14:35 「走査型拡がり抵抗顕微鏡法を用いたLIB電極の電子伝導性解析」コベルコ科研 物理解析センター 解析部 主任部員 常石英雅 氏…リチウムイオン電池の電極は活物質、導電助剤、バインダー、電解質で構成されており、電池特性向上のために非常に複雑に設計されている。SPMはそれぞれの部材の通電状態を評価できる唯一の分析手法であり、設計に対する効果を直接的に可視化することが可能となる。今回は主に液系リチウムイオン電池の電極シートを題材に、SSRMによって得られた抵抗マッピング像を用い、その定量値や位置情報を活かした解析事例を紹介する。

・14:35~14:55 「原子間力顕微鏡を用いた二次電池の局所領域の特性評価 ~基礎から応用~」ブルカージャパン ナノ表面計測事業部 アプリケーション部 
アプリケーションエンジニア 寺山剛司 氏…現在、液系リチウムイオン電池のエネルギー密度の向上や課題に対応するため、全固体電池、次世代二次電池、革新型蓄電池の研究開発が進められている。しかしながら、各種次世代二次電池にも克服すべき課題が存在し、解析のために原子間力顕微鏡が用いられている。本講演では二次電池向けの原子間力顕微鏡の測定モードの原理から最新の事例などを紹介する。

・14:55~15:30 休憩:情報交換(お茶とお菓子を用意)

・15:30~16:20 座談会「みんなで話そう電池特性評価」AFMを用いた電池特性評価の課題や期待をパネリストと意見交換できるプログラム。質問・相談を登録フォームより受付中。
モデレーター:自然科学研究機構分子科学研究所 湊 丈俊 氏
パネリスト:各講演者

・16:20~16:40 「ブルカー製品の案内とお知らせ」ブルカージャパン ナノ表面計測事業部 営業部

kat 2024年9月13日 (金曜日)
kat

JASIS2024開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

2ヶ月 1週 ago
JASIS2024開催、表面試験・評価・分析機器などが展示

 日本分析機器工業会と日本科学機器協会は9月4日~6日、千葉市美浜区の幕張メッセ 国際展示場で、分析機器・科学機器の総合展示会「JASIS2024」を開催した。展示会では、407社・機関、1214小間(昨年354社・機関、1096小間)の出展と「新技術説明会」、「トピックスセミナー」などの講演が多数催された。リアル展示会への来場者は21918名(昨年16115名)だった。表面試験・評価機器関連では以下のような展示があった。

JASIS2024の会場のもよう

 エビデント(https://www.olympus-ims.com/ja/)は、限界見本をそのまま覚える拡大観察・欠陥判定外観AIによって、欠陥の自動検出・自動分類が可能なデジタルマイクロスコープ「DSX1000+NuLMiL」を紹介した。不良部分を塗りつぶすだけで直感的・効率的に欠陥を学習、学習結果に基づき取得した画像から不良箇所を自動で判定。NG限度見本との類似度設定でOK/NGを調整、R&Dから量産まで適用できる。また、微細観察・粗さ測定において業界最高峰レベルの測定性能を実現するとともに、「実験トータルアシスト」によって実験計画表の作成からデータ取得、解析、分析、レポート作成までの作業を効率化できる3D測定レーザー顕微鏡「OLS5100」を展示した。表面粗さ測定に最適なレンズ選択をアシストする「スマートレンズアドバイザー」で、測定結果の信頼性を向上できる。測定結果の異常値をリアルタイムで可視化する「ヒートマップ表示」も搭載。

エビデントのブースのようす

 大塚電子( https://www.otsukael.jp/ )は、測定する人も場所も選ばずに、瞬時に対象物(フィルムやガラスなどの透明材料)の三次元情報として、光の波の情報全て(光波動場)を独自の波面センサーで取得して、可視化する光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。観察および測定対象(以後、対象)から生じる光波動場を、結像素子を介さずに波面センサーに記録して、任意の面の像を計算処理で生成する。視野700×700μm、深さ1400μmの三次元情報を対象にフォーカスを合わせることなく2秒未満(標準)で取得して、取得した三次元情報を、後から無段階で任意面を再生できる(デジタルリフォーカシング)。また、防振に優れた独自設計のため設置環境をあまり気にしないで済む。

大塚電子「MINUK」

 協和界面科学( https://www.face-kyowa.co.jp/ )は、主力の接触角計を紹介したほか、自動摩擦摩耗解析装置「TSf-503」を展示した。同装置は天秤構造を採用したことで不要な力を検出せず、正確な摩擦の波形取得を実現した。標準繰返し測定は最大12回まで往復運動をして静・動摩擦係数測定を行う。また同装置は、往復測定か往路のみの測定かを選択でき、往路測定の場合は天秤を自動でピックアップし原点位置まで復帰する。連続静摩擦測定では、設定した移動速度、距離、回数で連続測定を実施する。さらに、4種類の荷重(100g~1000g)で静・動摩擦係数を測定し、荷重による影響を比較することもできる。

協和界面科学「TSf-503」

 新東科学( https://www.heidon.co.jp/ )は、比較的安価で幅広い摩擦摩耗試験に対応した「トライボギア TYPE:14FW」を紹介。同品はテーブル速度、移動距離、往復回数を設定することができるため、さまざまな条件下で試験が可能となる。また、同品はアタッチメントを様々に変更できることから、摩擦摩耗試験だけでなく、簡単な引っ張り試験やスクラッチ試験などに対応している。オプションのトライボソフトを使用すればデータの管理、解析を簡単に行うことができる。さらに、同社は摩擦摩耗試験機の専門メーカーとして70年以上の実績を強みに摩擦摩耗試験の受託試験を行っている。様々なシーンに適合した試験機を取り揃えているとともに摩擦摩耗に特化した多様なノウハウにより精確な受託試験が行えることを訴求した。

新東科学「トライボギア TYPE:14FW」

 THK(https://www.thk.com/jp/ja/)は、分析機器など高精度の位置決めが要求されるアプリケーション向けに開発した、8条列を採用しながらもISO 規格に準拠した標準寸法で、世界標準のLMガイド「SHS」と寸法互換が可能な超低ウェービングのボールリテーナ入りLMガイド「SPHシリーズ」を披露した。超低ウェービング・高剛性ボールリテーナ入りLMガイドSPR/SPSで採用した小径ボールをよりサイズダウンして有効ボール数を増やし、剛性とのバランスを取りつつ、SPR/SPSとほぼ同等のnm単位の超低ウェービング性能を実現している。また、分析装置・実験装置への試料のハンドリングを行い24時間の無人での分析や実験を実施できる、ヒト型双腕ロボット「NEXTAGE Fillie」やロボットハンド「ならいハンドTNH」、「コンビネーションモジュール」を用いた自動化システムを提案した。

THK「SPHシリーズ」(写真奥側)

 パーク・システムズ・ジャパン(https://www.parksystems.com/jp)は、200mmウェハーを切り出さずにそのまま評価できる研究用原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX200」を初披露した。①低ノイズフロアと低い熱ドリフトによる再現性の高い測定、②スキャンレート50Hzでも鮮明な画像が得られる高速イメージング性能、③11 µmと小口径のレーザービームスポットのためカンチレバー長が非常に短いプローブを利用でき、共振周波数2MHzを用いた高速測定などさまざまな計測が可能、④より広いサイズをとらえつつ線幅0.87μmの高解像度が可能、⑤ヘッド衝突の保護機能・環境センサー機能を有する新世代AFMコントローラー、⑥200mmウェハーからクーポンサイズの試料までをカバー、⑦プローブタイプの自動認識、⑧プローブの自動交換、⑨カンチレバー上の自動レーザービームアライメント、⑩200mmウェハー全体像観察のためのマクロ光学系、など多くの機能を搭載。

パーク・システムズ・ジャパン「Park FX200」

 ブルカージャパン ナノ表面計測事業部( https://www.bruker-nano.jp )は、スループット2倍の高速測定モード、200mm×300mmの広い試験領域を実現、ポリマー薄膜のナノスケール試験の精度向上、コンビナトリアル材料科学のスループット向上、300mm半導体ウェハーのマルチ測定分析などが可能なナノインデンターシステム「Hysitron TI 990 TriboIndenter®」を展示した。新しいPerformech IIIコントローラー、高度なフィードバック制御モード、次世代nanoDMA IV動的ナノインデンテーション、XPM II高速機械特性マッピングなど測定・解析プロセスのあらゆる面で最新技術を採用。ユニバーサル・サンプル・チャックの使用でほぼすべてのサンプルを取り付けることができ、より広い試験領域での測定が可能。

ブルカージャパン「Hysitron TI 990 TriboIndenter®」

 ヤマト科学システムは、分光技術を用いた最新の計測・分析技術として、誰でも簡単・迅速・高精度に非破壊で計測できるスマート膜厚計「SM-100P/SM-100S」を紹介した。同品は、分光器の小型化やバッテリー駆動により本体が1.1 kgと軽く、ネックストラップ付きで装置の落下を防止しつつ容易に持ち運びができる。また、シンプルで直感的なインターフェースの採用によって専門知識が不要な簡単測定(プローブをサンプルに当てるだけ)に加え、反射分光法の採用によって最薄0.1 μmまで検量線不要で測定が可能となる。測定対象の膜が透明であれば、プラスチック・ガラスなど基材を選ばずに測定が可能。単層膜専用「SM-100S」と、最大3層までの多層膜を測定可能な「SM-100P」をラインアップしている。

ヤマト科学システム「SM-100シリーズ」

 

admin 2024年9月13日 (金曜日)
admin

高機能トライボ表面プロセス部会、第24回例会を開催

2ヶ月 1週 ago
高機能トライボ表面プロセス部会、第24回例会を開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)は9月6日、岐阜県岐阜市のハートフルスクエアーG/岐阜市生涯学習センターで第24回例会を開催した。

 今回は上坂代表幹事から開会の挨拶と岐阜大学工学部附属プラズマ応用研究センターの紹介がなされた後、以下のとおり、講演が行われた。

挨拶する上坂氏

・「立方晶窒化ホウ素のイオンビームアシストMBE成長: 結晶多型と電気伝導性の制御」平間一行氏(日本電信電話 NTT物性科学基礎研究所)…①イオンビームアシストMBE法によるcBN薄膜のヘテロエピタキシャル成長において、Ar+照射によるsp3結合の選択的な形成が可能、②BN薄膜の成長相図構築と成長モデルの提案として、FAr+/FB>1:sp3 cBN成長、の式を示し、イオンの役割としてはcBN相の形成とt-BN相の優先的なエッチングがある、③典型的な結晶欠陥と熱的安定性については、低い成長温度では積層欠陥による双晶が形成し、N2雰囲気1300℃まではcBN構造は安定、それ以上ではsp2結合相に構造相転移する、④cBN薄膜上のダイヤモンド成長とn型SiドープcBN薄膜の電気伝導性制御を実証した、と総括した。

講演する平間氏

「層間すべりと化学作用を伴う水潤滑下のhBNの低摩擦特性」齊藤利幸氏(ジェイテクト)…層間すべりと化学作用を伴う水潤滑下のhBNの低摩擦特性に関して、①水潤滑下でhBNは低摩擦・低摩耗を示す、②hBNの層間すべりは低入射XRDでも確認可能、③定量可能な量のアンモニアが摩擦により生成される、④hBNの摩耗は機械な作用が大きい、⑤実用の一案としてはhBN配合材も想定可能、と総括した。

講演する齊藤氏

・「プラズマCVD法を用いた高品質cBNコーティングの合成とその応用」堤井君元 氏(九州大学)…高密度プラズマとフッ素の強い化学作用を用いればcBN生成に強いイオン衝撃は必ずしも必要なく、最小で数eV~10eVの平均イオンエネルギーでもcBNは生成できる。弱いイオン衝撃化で得られる低残留応力cBN膜を用いれば密着性の良い薄膜が形成可能で、WC-Co上では中間層挿入や化学親和層形成が望ましく、バイオ応用も期待される。高結晶性cBN 膜によって電気的応用が可能となりつつあり、現状の多結晶は電子エミッターと誘電体応用が、もし単結晶が可能になれば半導体応用が期待される。今後の課題として、①イオン衝撃を必要としないcBN 膜の形成法、②高品質・大面積バルク単結晶cBN基板の作製法、③長期的視野、分野活性化、支援(人>資金>スペース)、④生成条件の再現性、装置依存性、を挙げた。

講演する堤井氏

「電子ビーム励起プラズマCVD法によるcBN膜コーティング」髙島成剛氏(中日本炉工業)… 現在のcBN切削工具は焼結体のみで、大きさ、形状が制限されるため、cBN膜コーティングによる切削加工の高速化・多様化の実現を目指した。しかし、cBN成膜はダイヤモンド合成と同様に高温高圧状態が必要なため、高密度なプラズマ源が必要、成膜時にイオン衝突を必要とし、膜中に巨大な内部(圧縮)応力を蓄積するため密着性が乏しく、はく離が発生するという課題があった。これに対し、電子加速電圧を変えることで最適な電子エネルギーを選択でき高密度なプラズマを生成できる電子ビーム励起プラズマ(EBEP)CVD装置を用いて、ホウ素膜とBN傾斜膜の中間層の形成による密着性の確保(ホウ素膜:cBN膜の膜応力の緩和、BN傾斜膜:ホウ素膜とcBN膜の密着性確保)を実現した。厚膜化の要求に対しては、膜厚(BN傾斜膜+cBN膜)の成膜時間依存性をクリアする成膜温度制御によって成膜時間を短縮、基材の温度制御によって50GPa以上の高硬度化と60N以上の密着力を実現している。

講演する髙島氏当日のもよう

 

admin 2024年9月13日 (金曜日)
admin

SURTECH 2025会場内「トライボコーティング/試験評価機器ゾーン」出展募集中!申込締切は10/15‼

2ヶ月 1週 ago
SURTECH 2025会場内「トライボコーティング/試験評価機器ゾーン」出展募集中!申込締切は10/15‼

 

 当社は2025年1月29日~31日に開催される「SURTECH 2025」会場(東京ビッグサイト東3ホール)内に、コストバリューの高い特設ゾーン「トライボコーティング/試験評価機器ゾーン」を設置します。

 摩擦摩耗特性・潤滑特性に優れるコーティングを指す「トライボコーティング」技術(ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などのドライコーティングや熱処理、微粒子ピーニング処理など)を扱う企業、ならびにトライボコーティング被膜・改質層の試験評価機器(インデンター、摩擦摩耗試験機、スクラッチ試験機、膜厚計、表面形状測定機など)を扱う企業にご出展をいただき、摩擦摩耗や潤滑の表面課題を抱えるSURTECH来場者に対し、多面的・包括的に表面ソリューションを提供、トライボロジー問題へのワンストップサービスを提供するゾーンです。

 つきましては、本特設ゾーンへのご出展をいただきますよう、ご検討をお願いいたします。

◇主催:株式会社メカニカル・テック社

◇出展期間:2025年1月29日~31日(金)

◇会場 :東京ビッグサイト東3ホール SURTECH 2025会場内

◇SURTECH2025予定来場者数 :45,000名(※同時開催展を含む)

◇募集する出展対象企業

・摩擦摩耗特性・潤滑特性に優れる「トライボコーティング」技術を提供する企業

・トライボコーティング被膜・改質層の試験評価機器を提供する企業

◇出展料

・小ブース 展示台:幅990mm×奥行700mm展示壁面:高さ2700mm  165,000円(税込)

・大ブース 展示台(小ブース×2):幅1980mm×奥行700mm展示壁面:高さ2700mm  298,000円(税込)

小ブース イメージ

※展示台ではサンプルやカタログ展示、PC・モニターなどでの動画放映が、展示壁面では小ブースでポスターA0サイズ1枚相当、大ブースで同2枚相当の展示が行えます。

※※出展料には下記備品が含まれます。

・壁面パネル (H2700mm x W990mm)

・展示台  (W990mm x D700mm x H750mm)

・スポットライト ・社名板 ・2口コンセント (500W)

・パンチカーペット 設置

◇募集ブース数:20社分

◇申し込み締め切り:2024年10月15日

お申込みはこちらよりお願いいたします(googleフォーム)。

問い合わせ先

株式会社メカニカル・テック社 TEL:03-5829-6597 E-Mail:info@mechanical-tech.jp
 

kat 2024年9月12日 (木曜日)
kat

メカニカル・サーフェス・テック2024年8月号 特集「表面改質の測定・評価」8月26日発行!

3ヶ月 ago
メカニカル・サーフェス・テック2024年8月号 特集「表面改質の測定・評価」8月26日発行!

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2024年8月号 特集「表面改質の測定・評価」が当社より8月26日に発行される。

 今回の特集「表面改質の測定・評価」では、ナノ粒子ミストデポジション法によるITO薄膜の製造と膜生成過程におけるその場観察について、200mm試料を切り出さずにそのまま評価できるリサーチ用AFMと評価事例について、化粧品メーカーにおけるエイジングケア化粧品の効果と分光測色計による評価・検証について、プラズマCVD法およびアークPVD法により成膜したDLCの各膜構造の違いによる機械的性質(硬度)と静摩擦係数および動摩擦係数に及ぼす影響について、各種の表面課題にソリューションを提供する表面設計コンソーシアムの表面改質の複合技術について紹介する。

特集:表面改質の測定・評価

◇ナノ粒子ミストデポジション法による透明導電性薄膜の大気下でのグリーンな製造・・・東北大学 蟹江 澄志、ニコン中積 誠、鬼頭 義昭、西 康孝、奥井 公太郎、鈴木 涼子

◇200mm試料をそのまま評価できるリサーチ用AFMと評価事例・・・パーク・システムズ・ジャパン 金 鍾得 氏 に聞く

◇エイジングケア化粧品の効果と分光測色計による評価・検証・・・プレミアアンチエイジング 林田 元治 氏、コニカミノルタジャパン 西本 昌弘氏 に聞く

◇DLCコーティングの機械的特性と静・動摩擦係数の低減による産業用途への最適化・・・東研サーモテック 髙橋 顕

◇表面分析・試験により不具合原因を抽出、複合処理で解決する表面設計コンソーシアム・・・編集部

連載

注目技術:TOF-SIMSを用いた、スパッタ二硫化モリブデンコーティング中の水分移動度とトライボロジー特性の検証・・・テキサス大学

第4回 チェコのワイン編: 南モラヴィアの大草原とモラヴィア・ワイン・・・横浜国立大学 梅澤 修

トピックス

日本熱処理技術協会 2024春季講演大会を開催
島貿易、粉体の摩擦特性/強度の試験装置の取り扱いを開始

admin 2024年8月20日 (火曜日)
admin

ナノ科学シンポジウム2024が10月18日に開催

3ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2024が10月18日に開催

 ナノテクノロジーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)に特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2024 : NSSJ2024)」(https://nanoscientific.org/nss_japan/main)が10月18日10時~17時30分に、東京大学 浅野キャンパス 武田ホール(東京都文京区弥生2-11-16)で開催される。

 主催は東京工業大学 物質理工学院 中嶋・梁研究室と関東学院大学 材料・表面工学研究所、パーク・システムズ・ジャパンで、協賛はNanoScientificとヤマトマテリアル、Ark Station、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

 シンポジウムHP(https://nanoscientific.org/nss_japan/registration/2024/KDLRY-8463)から参加登録できる。参加費は無料。

 

 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、SPMの登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウムで、2020年から開催され5回目となる今回は、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表がなされる。

・小林 圭氏(京都大学)「液中AFMによる固液界面物性計測と探針増強ラマン分光装置の開発」

・梁 暁斌氏(東京工業大学)「原子間力顕微鏡によるナノ応力分布とナノ導電性の可視化」

・久保田賢治氏(三菱マテリアル)「AFM、QCM-Dおよびエリプソメトリーを用いた銅めっき添加剤吸着状態の解析」

・町田友樹氏(東京大学生産技術研究所)「二次元結晶のファンデルワールス接合によるモアレ超格子の作製と観測」

・吉田昭二氏(筑波大学)「光波駆動STMを用いた時空間ダイナミクス計測」

・前田 泰氏(産業技術総合研究所)「走査型広がり抵抗顕微鏡による全固体電池の解析:電極内部の電子伝導」

・内橋貴之氏(名古屋大学)「高速原子間力顕微鏡で探る一分子ダイナミクス」

kat 2024年8月15日 (木曜日)
kat

島津製作所、走査型電子顕微鏡大手のTESCAN社と業務提携

3ヶ月 1週 ago
島津製作所、走査型電子顕微鏡大手のTESCAN社と業務提携

 島津製作所は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEM)大手メーカーであるチェコ共和国のTESCAN GROUP, a.s.(以下TESCAN社)と業務提携契約を結んだ。島津製作所の主力である分析計測製品のラインアップにTESCAN社のSEMを加え、今秋に日本国内で発売を開始する。

 TESCAN社はSEM製造のパイオニアの1社だという。同社の本社があるチェコ共和国ブルノ市は電子顕微鏡に関わる企業や科学機関が集中しており、最先端の研究が活発となっている。TESCAN製品の堅牢性および操作性には定評があり、世界80ヵ国で累計4000台以上の販売実績がある。SEMの日本市場は2022年度で170億円規模で、近年は前年度比10%超で成長しているという。

 一般的に利用されている光学顕微鏡では、光の波長より小さな物は観察できないが、SEMは光より短い波長の電子線を使うことでnm単位で高解像度の表面観察が可能で、あらゆる科学技術の研究で必須かつ基本の観察分析装置となっている。ただし「電子線を試料に照射し、試料から発生する電子を検出して試料表面の形態や組成の違いを観察する」という原理のため、帯電しやすい非導電性の試料では観察が難しくなり。TESCAN社のSEMは試料の導電性によらず、常に最適な解像度とコントラストの観察画像が得られる。

 TESCAN製品による「表面観察分析」と島津製作所の分析計測機器による「成分分析」は補完的な役割を果たすため、組み合わせることで信頼性の高い一貫した分析システムを構築できるという。島津製作所は、TESCAN社との業務提携を通じて、構造生物学やナノテクノロジー、エネルギー材料、金属・鉄鋼材料などの研究開発に従事する顧客に付加価値の高いソリューションや研究プラットフォームを提供していく考え。

admin 2024年8月13日 (火曜日)
admin

新東工業、医療・食品で求められるクリーンな環境での表面処理の加工サービス

3ヶ月 1週 ago
新東工業、医療・食品で求められるクリーンな環境での表面処理の加工サービス

 新東工業株式会社( https://www.sinto.co.jp/ )は、電子部品、精密機器、医療機器等クリーンな環境下でのものづくりを支える「クリーンプロセスラボ」を開設し、クリーンな空間での表面処理加工サービスの提供を開始した。

 市場規模の拡大が見込まれる電子部品や医療機器の分野では、空気中の微生物や微粒子が不良発生に大きく影響するため、空気清浄度(空気のきれいなレベル)が一定以上確保された空間での製造が要求される。しかしながら、同社が展開するマイクロブラスト(上付け)やバレル研磨などの表面処理は、噴射材や研磨材を使用するため微粒子が浮遊する可能性が高く、これまでクリーンな環境下での使用は不向きとされてきた。

 そこで、今回、同社独自のステンレス加工技術および表面処理技術を用いて、空気清浄度の国際統一規格「ISO 14644-1」のClass7に相当し、電子部品、光学機械、精密部品や医療機器の製造を可能にした「クリーンプロセスラボ」を立上げ、クリーンな環境下での表面処理の加工サービスの提供を開始した。またISO 14644-1のClass6の要求事項を満たした洗浄工程も併設し、表面処理加工から洗浄、検査、梱包までワンストップでサービスを提供することを可能にした。

クリーン度クラスのイメージ

 

admin 2024年8月13日 (火曜日)
admin

日本熱処理技術協会、2024春季講演大会を開催

3ヶ月 3週 ago
日本熱処理技術協会、2024春季講演大会を開催

 日本熱処理技術協会(JSHT)は5月27日、28日の2日間、東京都目黒区の東京工業大学 大岡山キャンパスで「第97回(2024年春季)講演大会」を開催、約300名が参加した。今回は、河上・赤見記念講演1件と特別記念講演1件、研究発表奨励賞対象講演(Jセッション)13件、一般講演7件、シンポジウム「ショットピーニング処理の有する無限の可能性」での基調講演1件と依頼講演8件の発表がなされた。

 27日は西本明生 大会実行委員長(関西大学)の開会挨拶に続いて、Jセッションの講演が行われ、真空浸炭焼入れやプラズマ窒化、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)成膜などに関する13件の研究成果が発表された。

開会挨拶を行う西本大会実行委員長

 

Jセッションのようす:
日産自動車・郭新新氏「真空浸炭焼入れによる肌焼鋼の結晶粒度と衝撃強さに及ぼす影響」

 

 また、河上・赤見記念講演として、2019年度の同協会「技術功績賞(林賞)」を受賞した大林巧治氏(アイシン)が「水焼入れに憧れ,鑑みて ―焼入れのメカニズムと本質―」と題して、これまでの焼入技術の取り組みや熱処理CAE、油焼入れと水焼入れ、温度分布・熱処理変形の制御、水系焼入れの団体焼入れへの適用による波及効果などについて講演を行った。

河上・赤見記念講演を行う大林氏

 

 さらに、特別記念講演として、第65回本多記念賞を受賞した三島良直氏(東京工業大学名誉教授・日本医療研究開発機構 理事長)が「金属系構造材料の特性向上に資する材料設計手法の探求」と題して、L12型金属間化合物を例に、耐熱高強度金属系構造材料の組織制御による強化や実用耐熱合金開発への応用などについて講演を行った。

特別記念講演を行う三島氏

 

 続いて、中部支部主催のイノベーション活動として31チームが参加した第3回熱処理コンテストの総合結果が報告された。一般構造用圧延鋼材SS400にそれぞれ工夫を凝らした熱処理やコーティングを施し、ロックウェル硬さ(HRC_150kg)とビッカース硬さ(HV_300g)の合計が競われ、3522HV(3117HV+41.2HRC)の硬さを実現し優勝したアイコクアルファ「楽ラク熱処理チーム」から取り組みに関する紹介がなされた。

第3回熱処理コンテストで優勝したアイコクアルファ「楽ラク熱処理チーム」の発表のようす

 

 その後、2023年度協会賞表彰式、60周年記念特別功労賞の表彰式、研究発表奨励賞の表彰式が行われた。Jセッション13件から若手研究者および技術者の研究発表を奨励することを目的として35歳以下の優秀な発表者を表彰する「研究発表奨励賞」には、最優秀賞に東京工業大学・益川琢磨氏らの「Fe-Ni合金のマルテンサイト変態に及ぼす外部拘束の影響」が、優秀賞には九州大学・大瀧真登氏らの「SUS304の温間加工によるオーステナイトの熱的安定化」と中日本炉工業・田中隆太郎氏らの「アクティブスクリーンプラズマ窒化における処理温度が窒化層形成および鋼の寸法に与える影響」が受賞した。

2023年度協会賞表彰式のようす:技術功績賞(林賞)受賞の山本科学工具研究社・山本 卓氏(右)と奥宮正洋JSHT会長(豊田工業大学)

 

研究発表奨励賞表彰式のようす:右から山本亮介審査委員長(ジェイテクトサーモシステム)、優秀賞受賞の田中氏、優秀賞受賞の大瀧氏、最優秀賞受賞の益川氏、奥宮JSHT会長

 

 28日には、CVD法によるコーティングや微小球反発試験による硬さ評価など7件の一般講演に続いて、日本熱処理技術協会とショットピーニング技術協会との連携企画である「ショットピーニング処理の有する無限の可能性」をテーマとしたシンポジウムが開催され、ショットピーニング技術協会会長の當舎勝次氏による基調講演「ショットピーニング処理の歴史と様々なピーニング効果」や「微粒子ピーニングによる食品の付着抑制等と抗菌性」など8件の依頼講演が行われた。

 両日とも、「企業技術情報展示会」が併設され、アイ・アール・システム、堀場製作所、アプロリンク、山本科学工具研究社、新東工業、ティーケーエンジニアリング、光産業創成大学院大学(アステック開発)、日本電子工業、パルステック工業、不二製作所の10社が出展した。

企業技術情報展示会のようす

 

kat 2024年7月29日 (月曜日)
kat

東京理科大学・佐々木研究室、第22回トライボサロンをハイブリッド開催

3ヶ月 3週 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第22回トライボサロンをハイブリッド開催

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第22回目が7月27日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第22回目となる今回のトライボサロンでは、「高強度鋼の転がり疲れにおけるき裂形成」のタイトルで、横浜国立大学・梅澤 修氏を講師に話題提供が行われた。

 講演では、転がり軸受の高サイクルの転がり接触疲労におけるき裂の形成過程や、浸炭歯車におけるピッチング疲労におけるき裂形成過程(トライボフィルムの形成・寄与をまじえて)、さらには、電気自動車(EV)などで求められる高速回転・高面圧・高静粛性を実現するための歯車の疲労強度向上で要求される、鋼の窒化処理・浸炭窒化処理への期待と課題などについて紹介した。

 なお、トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

kat 2024年7月29日 (月曜日)
kat

島貿易、粉体の摩擦特性/強度の試験装置の取り扱いを開始

3ヶ月 3週 ago
島貿易、粉体の摩擦特性/強度の試験装置の取り扱いを開始

 島貿易(https://www.shima-tra.co.jp/)はこのほど、ハイテクノライズ(マークテック子会社)の粉体摩擦試験装置「MKPF-S100型」(図1)と粉体強度試験装置「MKPS-A100型」(図2)の取り扱い(装置販売および、これら装置による受託試験)を開始した。ここでは、粉体試験装置2種の概要・特徴と、応用例などについて紹介する。
 
 

図1 粉体摩擦試験装置「MKPF-S100型」

 

図2 粉体強度試験装置「MKPS-A100型」

 

粉体試験装置の概要 粉体摩擦試験装置

 粉体摩擦試験装置MKPF-S100型(図3)は、粉体層の容積を一定に保ちながら行うJIS-Z8835(一面せん断試験による限界状態線(CSL) および壁面崩壊線(WYL)の測定方法)準拠の摩擦試験装置。サーボシリンダによって垂直方向に圧密して形成させた粉体層を垂直方向に加圧した状態で、リニアアクチュエータによって水平方向に横滑りさせたときに生じるせん断応力をロードセルによって高精度に測定する。粉体層の充填性/応力緩和評価や、平面と粉体の付着性・摩擦性評価、ロット間における物性評価などに利用できる。

 特長は以下のとおり。

・1mLのサンプル(試料粉体)でも測定可能

・測定部全体での加温が可能なためムラがなく正確

・一回の測定で、摩擦、付着、圧縮といった多くのパラメーターを取得できる

・底面を任意の基板に変更して測定可能

 図4にせん断応力の測定データ例を示すが、摩擦係数(図4表中のtanθ)が高いほど摩擦力が強く、粉体の流動性が悪いことを示す。また、図5に応力伝達率と応力緩和率の測定データ例を示すが、応力伝達率は壁面摩擦の程度を測定しており、摩擦力が大きいと応力伝達率は低くなる。一方、応力緩和率は粒子の付着特性を測定しており、数値が高いほど粉体の充填性が悪く、付着力が高いことを示す。
 

図3 粉体摩擦試験装置「MKPF-S100型」の機構

 

図4 せん断応力の測定データ例

 

図5 応力伝達率および応力緩和率の測定データ例

 

粉体強度試験装置

 粉体強度試験装置MKPS-A100型(図6)は、粒子を微小な針で加圧することによって粒子が潰れる際の極微小な力を測定できるJIS-Z8844(微小粒子の破壊強度および変形強度の測定方法)準拠の装置。ステージ(試料台)と、精密ばねで支持した接触針(平面圧子)との間に粒子を挟み、ステージを動かして粒子を押し込んでいった際の、粒子の圧壊力、圧壊に要する変形量などをレーザー変位計で検出、粒子の硬さを高精度で測定する。

 特長は以下のとおり。

・3μm以上の小さい粒子が測定可能

・1mN以下の圧壊力でも明確なピークが得られる(10nN~10N)

・温調ステージ(~150℃)で温度依存性を評価可能

 図7に粒子圧壊力の測定データ例を示すが、どの程度の力で粒子が破壊するかという、粒子の極微小な圧壊力を計測するほか、圧壊に要する変形量などのデータも取得できる。また、粒子の圧壊点がない場合でも、バネのみの変位値と粒子がある場合の変位値を算出して、粒子の変形量を測定できる。
 

図6 粉体強度試験装置「MKPS-A100型」の機構

 

図7 粒子圧壊力の測定データ例

 

粉体材料への応用例

 

粉体摩擦試験装置の応用例

 粉体摩擦試験装置MKPF-S100型は、材料均一性の評価、バインダー等の添加による材料特性の評価などに応用できる。リチウムイオン電池用電極は、電極活物質などを含む粉体を圧縮成形して製造されるが、粉体の流動性が電極の生産効率や性能に影響するため、流動性を判断する摩擦力(摩擦係数)の評価は重要となる。

 また、金属3Dプリンティング用の粉体材料においては、造形効率や造形品の品質に関わる、荷重がかかった条件での流動性の評価や、充填性/密度の均一化を目的とした付着力の評価などに応用できる。

粉体強度試験装置の応用例

 電池材料の電極のロールプレス等の工程において、活物質の硬さの不足によって割れが発生してしまうと、電池容量の低下/材料劣化につながる。粉体強度試験装置MKPS-A100型は電池活物質(正/負)の硬さ評価に応用できる。

 全固体電池材料ではまた、積層された正極、固体電解質、負極がプレスされた際に固体電解質が割れてしまうと、導電パスが切れ不具合品となってしまう。こうした場面で、粉体強度試験装置MKPS-A100型は固体電解質の硬さ/変形量の評価に応用できる。

 

受託測定サービス

 島貿易とハイテクノライズでは、ユーザーの試験測定ニーズに合わせて最適な粉体試験装置を提案するほか、装置納入後も装置本来の制度を維持し正確なデータを取得できるよう、点検、診断、校正作業などのトータルサポートを行っていく。

 また、装置販売だけでなく、ユーザーから試験体を預かって上記の粉体試験装置を用いた受託測定も行う。樹脂材料から金属材料、セラミックス材料、医薬材料、食品、電池材料などの多種多様な材料粉体の物性を粉体試験装置で評価しデータを提供して、粉体の物性評価の支援を行っていく。

 粉体の摩擦や強度の測定での困りごとは島貿易まで、ぜひ相談していただきたい。

kat 2024年7月25日 (木曜日)
kat

DLC工業会、2024年定時会員総会と功労賞授賞式を開催

4ヶ月 1週 ago
DLC工業会、2024年定時会員総会と功労賞授賞式を開催

 DLC工業会( http://dlck.org/ )は6月14日、東京都港区の航空会館で「2024年定時社員総会」を開催した。当日は、中森秀樹会長(ナノテック 代表取締役社長)を議長に選出して議事が進行された。

 議事においては2023年度事業報告、決算報告が行われた後、2024年度事業計画(案)、同予算(案)について審議、満場一致で可決された。事業計画では、「DLC工業会確認マーク発行制度」による規格適合性確認マークの発行を行うこと、経済産業省(三菱総合研究所経由)のDLC国際標準化に関わる委託事業を受託し必要な活動を行うことなどを確認した。また、今年11月に京都でISO/TC107の国際会議を開催、わが国開催でロビー活動を強化し、今後のISO規格を日本主導で行えるよう働きかけていく。

 任期満了に伴う理事・監事選任では中森会長が再選。中森会長は「今回のISO/TC107の日本開催をきかっけに工業会の活動を活発にしたい。予算も限られるため自主事業に力を入れていく。また、現在のDLCの三つのISO規格はトライボロジー的要素からつくられているが、今後は医療における生体適合性や半導体分野、エネルギー産業に活用する保護膜としてのDLCの規格について検討していきたい」と述べた。

中森会長

 また、当日の席上では「DLC工業会功労賞」の授賞式が行われレスカが受賞。DLC試験方法のISO規格発行にあたり多大なる貢献をしていることや、同工業会の講演会などに貢献していることが認められた。レスカを代表して挨拶を行った宝泉俊寛氏は「今回はこのような栄誉ある賞をいただき、ありがとうございました。弊社は試験機メーカーでコーティングの摩擦・摩耗や密着性の評価を行っているが、DLCについても試験・評価を行っており工業会に携わらせていただいている。今後もDLCの評価について良いものは良い、悪いものは悪いといった判断ができる試験方法を提供していきたい」と述べた。

宝泉氏と中森会長

 同工業会の現時点での正会員は、ナノテック、リックス、アルテクス、トッケン、平和電機、ナノテックシュピンドラー、フロロコート、ウエキコーポレーション、レスカ、ウォルツの10社。特別会員は大竹尚登氏(東京工業大学)、大花継頼氏(産業技術総合研究所)、平栗健二氏(東京電機大学)、平田 敦氏(東京工業大学)の4名となっている。

admin 2024年7月12日 (金曜日)
admin

機械要素の表面課題を複合処理で解決する表面設計コンソーシアム

4ヶ月 1週 ago
機械要素の表面課題を複合処理で解決する表面設計コンソーシアム 編集部 1.はじめに

 表面設計コンソーシアムは2022年7月、複雑な表面課題にソリューションを提供しつつ、今後求められる表面課題に対応する複合処理の技術開発をする目的で設立された。創設メンバーは、微粒子投射技術を有する不二WPCと、多様なコーティング技術を持つ日本電子工業、熱処理技術を提供する武藤工業、金型の設計・製造を手掛ける昭和精工に加えて、豊富な分析評価技術を保有する神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)、理論構築を担う横浜国立大学、事務局・広報を務めるメカニカル・テック社。

 本格稼働を開始した表面設計コンソーシアムは本年6月19日~21日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕される「第29回 機械要素技術展[東京]」の不二WPC/表面設計コンソーシアムの共同ブース(ブースNo.E58-18)において、共同受注によるビジネス創出に向けて、共創により可能になる複合処理についてアピールする。

 本稿では、表面を設計することの難しさと、各種の表面課題にソリューションを提供する、同コンソーシアムの共創による表面改質の複合技術について、事例をまじえて紹介する。

2.「表面を設計する」ことの重要性と、コンソーシアムの役割

 表面に優れた機能を与えるには、ベース素材の材料設計技術や表面改質技術、その上に被覆する薄膜制御技術、さらには最表面のテクスチャ制御技術までをトータルに高度なレベルで協調させる「設計」が必要である(図1)。

図1 表面設計のイメージ

 金型や機械部品の不具合は、損傷がかなり進んだ段階で発覚することが多いために、一部が欠損していたり、摩滅や腐食が進行したりしていて「はじめに何が起きたのか」を明らかにするのが容易でない場合がよくある。摩耗・摩擦・チッピング(微小な欠け)・はく離・凝着・焼付き・かじり・変寸・曲げ疲労・転動疲労・面疲労など、はじめに起きる損傷過程を突き止めることで、効果的なソリューションの提供につなげることができるが、証拠が不十分であったり、時間やコストを十分にかけられなかったりすることも多く、容易ではない。

 現象が複雑・動的でメカニズム解明が容易でないといったこうした表面技術分野において、生産技術に関わる企業からのニーズ・オーダーに対して1機関で表面設計ソリューションを開発・提供することは難しい。これに対し表面設計のスペシャリスト集団である表面設計コンソーシアムは、情報が分散しがちで目標が不明瞭になりがちといった、ものづくり企業を取り巻く環境の変化や課題に対して、ワンストップで情報を集約・統合し目標の明確化と技術の統合を図り技術の高付加価値化につなげることのできる、産官公地域連携の新しい形である、と言える。

3.表面改質の複合技術による、最適な表面設計ソリューションの提案

 表面設計コンソーシアムは、熱処理やコーティングなど単一の技術では対応できない表面に関わるユーザーのニーズ・オーダー(表面課題)に対し、計測・評価を経た根拠のある合理的で最適なバリューコストを高める表面設計ソリューションや、各種の表面損傷に対して寿命予測が可能な表面設計ソリューションを開発し提供する、表面技術のスペシャリスト集団である。同コンソーシアムでは、図2のような形で表面設計ソリューションの提供を進めていくが、中でも「ソリューションラボ」(不二WPCのオープンラボ、https://www.fujiwpc.co.jp/open-lab/)における調査・分析業務が重要となる。コンソーシアム保有技術からなる複合技術によって最適な表面設計を実現することで、ユーザーにコストプライスではなくバリュープライスを認めてもらうことが重要である。充実した分析・試験設備を保有するソリューションラボ(表1)は、バリューを評価してもらうための中心的なスペースであり、ユーザーとともに実際の不具合品を見ながら故障解析を行い複合技術による最適化提案を行うほか、これから必要となる技術開発のための単体試験・実証試験が行え、複合技術による技術提案ができる場と位置付けられている。

図2 取引の流れ表1 ソリューションラボの保有設備4.複合技術の事例:WPC処理と硬質皮膜の組み合わせによるパンチの寿命向上

 コンソーシアムメンバーの保有技術の複合化による表面課題の解決事例を一つ紹介する。

 六角ボルト穴加工用の工具鋼パンチは激しい摩耗損傷に曝される。そこでこのパンチに窒化チタン(TiN)コーティングを施すことにより寿命を約5倍に延長することができた。

 しかしながらTiNコーティングを施したパンチでは寿命は長いものの、突発的な欠けによって損傷するため、高サイクル加工では瞬時に大量の不良品が発生してしまう。つまり品質管理が困難と言える。逆に言うと、TiNコーティングを施していないパンチでは寿命は短いものの、凝着や摩耗によって損傷が進行するため交換時期が予測でき、品質管理が容易となる。

 従来の表面設計では、耐摩耗性を重視するあまりにパンチの基材である工具鋼の硬さを硬くし、さらにその上に硬質薄膜を付与することが多い。しかしその代償として疲労強度や靱性が劣化し、脆性的な欠けや疲労破壊を誘発しやすくなってしまう。これに対し推奨される表面設計は、基材の材料特性を向上させる表面改質を施した上で、硬質薄膜を形成させることである(図3)。

図3 従来の表面設計(左)と推奨される表面設計(右)

 硬質薄膜形成によって基材の疲労強度は劣化する。これは脆い硬質薄膜に発生するマイクロクラックが基材へと進展するためである(図4)。つまり、硬質薄膜形成は耐摩耗性を向上する反面、疲労強度を低下させてしまう。

図4 TiN被覆による合金工具鋼(SKD61)の疲労強度の低下

 これに対し、基材の表面改質処理としてWPC処理(金属製品の表面に微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させることで表面が改質する技術)を施すと、疲労強度が向上する。これは主として、WPC処理によって基材表面に大きな圧縮残留応力が付与されるためである。

 図5に示すとおり、基材(SKD61、下から二番目の曲線)にTiNコーティングを施すと疲労強度が低下する(一番下の曲線)が、WPC処理(図中のFPB)によって疲労強度が向上した基材(一番上の曲線)にTiNコーティングを施しても疲労強度の劣化はわずか(上から二番目の曲線)であり、依然として高い疲労強度を示す。また、TiNコーティングを溶解除去すると、もとのWPC処理材の疲労強度に戻る。

図5 WPC処理によるTiN薄膜形成による疲労強度低下の抑制

 このことからWPC処理によって付与される圧縮残留応力は硬質薄膜形成後も有効に維持されていると考えられる。
このように、WPC処理と硬質薄膜を適切に組み合わせることによって、耐摩耗性と疲労強度や靱性をバランスよく向上することができる。

 表面設計コンソーシアムの保有技術や複合処理で可能になることなど、詳細は同コンソーシアムのウェブサイト(https://surfacedesignconsortium.com/)をご覧いただき、お問い合わせいただきたい。

5.おわりに

 表面課題の解決においては、情報と技術の整理と統合がとても重要である。
 繰返しになるが、金型や機械部品の不具合は、損傷がかなり進んだ段階で発覚することが多いために、一部が欠損していたり、摩滅や腐食が進行したりしていて、はじめに何が起きたのかを明らかにするのが容易でない場合がよくある。はじめに起きる損傷過程を突き止めることで、効果的なソリューションの提供につなげることができるが、証拠が不十分であるなど、容易ではない。

 こうした問題に対応するために、表面設計コンソーシアムでは、独自のサービスとして「ソリューションラボ」を開設し、表面設計のスペシャリストであるメンバーが集まって、ユーザーと一緒に原因の調査を行う。ソリューションラボには、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡、粗さ計、硬さ計、残留応力測定装置などの各種測定装置が完備されており、ユーザーの情報や測定・分析の結果をもとに、さまざまな角度かディスカッションして、考えられる原因の絞り込みと改善のための表面設計プランを提案していく。さらに必要に応じて、より高度な分析機器を用いた調査や検証実験、実機評価試験にも対応する。

 表面設計コンソーシアムではこのように、情報を整理・統合して、現象を正しく判断をするとともに、メンバー各社が持つさまざまな技術・ノウハウを統合して、根拠のある合理的な表面設計ソリューションを提供することを目指している。

 機械要素から、金型、切削工具に至るまで、表面に関する困りごとがあれば何でも気軽に、表面設計コンソーシアムに相談いただきたい。まずは、本年6月19日~21日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕される「第29回 機械要素技術展[東京]」の不二WPC/表面設計コンソーシアムの共同ブース(ブースNo.E58-18)まで、是非とも足を運んでいただき、表面課題に関するディスカッションができれば幸いである。
(月刊ソフトマター2024年6月号より転載)

admin 2024年7月12日 (金曜日)
admin

ヤマハ発動機、水素ガスに対応する溶解炉と熱処理炉を備えた実証施設を新設

4ヶ月 1週 ago
ヤマハ発動機、水素ガスに対応する溶解炉と熱処理炉を備えた実証施設を新設

 ヤマハ発動機は、水素ガスに対応する溶解炉と熱処理炉を備えた実証施設を森町工場(静岡県周智郡森町)に新設する。2025年より、水素ガスによるアルミ合金溶解技術の開発・検証をはじめ、施設・設備等に関わる総合的な実証実験を開始する。2026年末には水素ガスによるアルミ合金の溶解および鋳造部品の熱処理に関する技術開発を完了し、2027年以降、同社グループの国内外鋳造工場に順次導入していく計画。

 この実証実験は、製品ライフサイクル全体のCO2排出量のうち、スコープ1( 自社による直接排出(製品の製造や燃料の燃焼))の最少化を目指した取り組みの一つ。二輪車や船外機等の鋳造部品の製造では、現在、アルミ合金を溶解するための熱エネルギーに都市ガスなどの化石燃料を使用している。その代替エネルギーを探求する中で、大きな熱量を要する溶解工程の電化はエネルギー効率という点で不向きという判断から、同社ではスコープ3(製品の使用や配送・輸送などによる排出)の選択肢の一つとしても研究を進める水素エネルギーに着目した。

 実証実験では、水素ガスを用いた場合の品質への影響を検証するほか、水素バーナーによる温度制御等の開発を進める。また、グリーン水素を製造する装置と、外部加熱を使わずに合成メタンを製造するメタネーション装置(CO2と水素を触媒で反応させ、合成メタンを製造する装置(静岡大学との共同研究))についても導入を検討しており、水素ガスを安価に製造する設備や、排気ガス中のCO2を再利用する技術開発にも取り組む。

 同社は「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」で、2050年までに事業活動を含むサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを目指している。また、スコープ1、2においてはグループ会社を含む各製造拠点におけるカーボンニュートラル実現の目標を2035年に前倒しし、各種の取り組みを加速させている。

 

admin 2024年7月12日 (金曜日)
admin

大同特殊鋼、自動車部品の熱処理に対応した連続式真空焼鈍炉の初号機を受注

4ヶ月 1週 ago
大同特殊鋼、自動車部品の熱処理に対応した連続式真空焼鈍炉の初号機を受注

 大同特殊鋼( https://www.daido.co.jp/ )は、自動車部品の熱処理に対応した連続式真空焼鈍炉の初号機を発売し、浜名部品工業から受注した。

 本設備は、ヒーター加熱式を採用することで、エネルギー源を電気のみとし、化石燃料を一切使用しない熱処理炉。CO2排出係数がゼロのカーボンフリー電力を使用することで、顧客のCO2排出量ゼロを可能とする。また、従来の雰囲気焼鈍炉では、化石燃料由来の炉内雰囲気を必要としていたが、炉内を真空にすることで従来の設備と同等以上に酸化および脱炭を抑制しながら、雰囲気ガスの使用量をゼロとしている。

 同社はこれまでも、主に磁石製造などにおける焼結工程向けに、連続式真空熱処理炉を販売している。本設備の提案にあたり、同社が培ってきた真空技術を鍛造部品や電磁鋼板といった自動車部品の焼鈍工程向けに応用した。今回の受注は、本設備による完全カーボンニュートラル熱処理の提案が、CO2排出量削減に取り組む自動車部品サプライヤーに評価されたものだという。

 また、同社は工業炉のカーボンニュートラルを推進する技術として、今回の「電化×真空」のほかに、「水素バーナー+炉内雰囲気のCO2分解」の開発を進めており、「カーボンニュートラルSTC炉」の2027年以降の販売開始を計画している。

連続式真空焼鈍炉(イメージ図)

 

admin 2024年7月12日 (金曜日)
admin

産総研など、脳動脈瘤治療用ステントの抗血栓性コーティングを開発

4ヶ月 1週 ago
産総研など、脳動脈瘤治療用ステントの抗血栓性コーティングを開発

 産業技術総合研究所(産総研)生命工学領域連携推進室 寺村 裕治 連携主幹(細胞分子工学研究部門 分子機能応用研究グループ 研究グループ付)は、ジャパン・メディカル・スタートアップ・インキュベーション・プログラム(JMPR)、N.B. Medicalと共同で、脳動脈瘤治療用ステントのための新規抗血栓性コーティングを開発した。

 血液と接触する医療機器において、血栓の発生を抑制することは重篤な合併症を回避する重要な要素。血管内に異物を留置するため、ステントを使用した患者は常に血栓性合併症のリスクにさらされている。そのため抗血小板剤の服用が必須となる。また、血栓発生のリスクを低減するために、これまで多くの抗血栓性コーティングが研究されてきた。従来のコーティングは、タンパク質の非特異的吸着を抑制することで抗血栓性を発揮するという原理が主流だったという。タンパク質吸着の抑制は同時に細胞の接着を阻害することも意味する。そのため従来技術において、抗血栓性と細胞接着性はどちらかを向上させるともう一方は低下する相反関係にあった。

 一方で開発した新規抗血栓性コーティングでは原理が異なる。この技術は、血中の非凝固系タンパク質を優先的に吸着することで、ステント表面から生じる血液凝固反応が抑制される。タンパク質の吸着を抑制するのではなく制御する本技術では、抗血栓性を発揮すると同時に細胞接着性が向上している。細胞接着性の向上によって、ステントが血管に取り込まれる速度を増加する。ステントが血管内に早期に取り込まれることは、治療の早期完了を意味する。

 開発成果は、さまざまな候補分子において検証を行い、その中で3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をステント表面にコーティングすることで、従来の抗血栓性ポリマーと同等以上の抗血栓性を発揮しつつ、細胞の接着性の向上が認められた。

図1 コーティング材料の化学構造とステント表面の模式図

 コーティングが有する抗血栓性をヒト血液との接触試験によって確認した。血液に接触させた後、ステントと血液を分析して抗血栓性を評価した。その結果を図2に示す。コーティングなしのステントは血栓に覆われているのに対し、コーティングありのステントは血栓がほとんど付着していない。また血液中の血小板数は、血小板が凝集して血栓化が進行したことで、採血直後の血液を100%とするとコーティングなしのステントと接触した血液は約50%まで減少していた。一方で、コーティングありのステントと接触した血液では血小板の減少はほとんど確認されなかった。

図2 抗血栓性の評価結果
(a)ステントの電子顕微鏡画像 (b)血液中の残存血小板比率
**p<0.01はこの結果が偶然である確率が1%未満であり、統計的に非常に有意であることを示している。

 さらに細胞の接着性について、従来の抗血栓性コーティングにおいて臨床で最も実績のあるポリマーコーティング(MPCポリマー)との比較を行った。ステントと同材料の基板で血管内皮細胞の培養を行った。顕微鏡で観察したところ、新規コーティングをした表面では従来コーティングをした表面よりも8倍以上多く細胞が接着していた(図3)。

図3 細胞接着の評価結果:蛍光顕微鏡観察画像

 また、ブタによる大動物実験によってコーティングの安全性も確認した。ブタの血管にコーティングステントを1週間留置し、ブタの状態とステントを留置した血管を評価した。その結果、ブタの健康状態に異変はなく、ステントを留置した血管に異常がないことも血管造影によって確認した(図4)。

図4 コーティングステントを留置したブタ血管の画像
正常に血流が維持されている。ステントによる血管損傷や血栓の発生、コーティングによる体への影響などもない。

 以上の結果の通り、今回開発されたコーティングは抗血栓性と細胞接着性を両立したステントを可能にする。この技術が示した抗血栓性により、ステント治療で課題とされてきた血栓性合併症のリスクを低減する。さらに細胞接着性が向上したことで、ステントの血管内皮化を促進し、血管への取り込みが早まる可能性を示した。ステントの血管内皮化において、まず周囲の細胞がステントに接着していくことから始まる。接着した細胞は徐々に広がり、ステントを覆う。そして最終的に細胞によって覆いつくされ、ステントが血管内に完全に取り込まれることで治癒が完了する。以上の通りステント治療において、細胞接着が生じなければ治癒が開始されないため非常に重要な過程になる。細胞接着性の向上によって治癒が促進されれば治療期間が短縮化し、抗血小板剤の減薬が可能となることで患者の負担が軽減されるだけでなく医療費の削減にも貢献できる。

admin 2024年7月12日 (金曜日)
admin

ブルカージャパン、7月17日、18日に名古屋で表面計測・機械物性計測技術セミナーを開催

4ヶ月 3週 ago
ブルカージャパン、7月17日、18日に名古屋で表面計測・機械物性計測技術セミナーを開催

 ブルカージャパン ナノ表面計測事業部は7月17日、18日の両日、名古屋市中村区ウインクあいち(愛知県産業労働センター)1303会議室で、最新ナノインデンター/摩擦摩耗試験機/三次元表面形状評価/CMP評価機の実機を見ながら測定技術が一度に学べるセミナー「表面計測・機械物性計測技術セミナー」を開催する。

 テーマを「パワー半導体」と「評価技術」とし、各テーマ1日で実施。また、両日ともにセミナー開催前に事前予約制の個別デモを行うほか、参加者が持参したサンプルを用いて装置性能を評価できる。

 内容は以下のとおり。

7月17日 テーマ:次世代パワー半導体向け評価技術

・12:30~13:00 受付

・13:00~14:00 特別講演「次世代パワー半導体の結晶欠陥評価技術の開発~ナノインデンテーションを活用した欠陥導入と評価の事例~」姚 永昭氏(三重大学 研究基盤推進機構半導体・デジタル未来創造センター 教授)…ワイドギャップ半導体(SiC、GaN、β-Ga2O3など)は、高電力密度や低損失、高温での安定性など、従来の半導体に比べて優れた性能を持ち、近年、これらの材料を利用した次世代のパワーデバイスの研究開発が大きな進展を遂げている。しかしながら、結晶成長が困難で成長後の結晶中に転位等の格子欠陥が高密度に含まれる課題は未だに残る。格子欠陥の分布と種別を正確に取得した上で、デバイスの性能と信頼性を大きく低下させるキラー欠陥を特定し、その情報を結晶成長とデバイス作製にフィードバックすることが極めて重要である。本講演では、これらのワイドギャップ半導体の結晶評価技術の開発に焦点を当て、従来の評価手法の限界と課題を解説し、新たな手法開発の取り組みとして、放射光X線トポグラフィーをはじめ、エッチピット法、透過型電子顕微鏡(TEM)、多光子励起顕微鏡、ナノインデンテーションを活用した導入欠陥の構造解析の事例を紹介する。

・14:00~14:20 「半導体分野で活用されるナノインデンター活用事例」二軒谷 亮氏(ブルカージャパン ナノ表面計測事業部)

・14:20~14:40    「半導体分野で活用される非接触光干渉計の活用事例」秋本壮一氏(ブルカージャパン ナノ表面計測事業部)

・14:40~15:00 「卓上CMP評価機を用いたスクリーニング評価事例」塚本和己氏(ブルカージャパン ナノ表面計測事業部)

・15:30~16:30 装置デモンストレーション (各20分)
① ハイジトロン ナノインデンター TI Premier
② 3次元白色干渉型顕微鏡 ContourX-500
③ 卓上CMP評価機 TriboLab CMP

 当日の詳細と申し込みは以下まで。
https://web.gogo.jp/braker-axs/form/nagoyaws

 

7月18日 テーマ:最新ナノインデンター/トライボロジー評価/白色干渉計 評価技術の原理・事例・解析手法・成功のヒント・装置実演

・12:30~13:00    受付    

・13:00~14:00    特別講演 「次世代パワー半導体の結晶欠陥評価技術の開発~ナノインデンテーションを活用した欠陥導入と評価の事例~」姚 永昭氏(三重大学 研究基盤推進機構 半導体・デジタル未来創造センター 教授)…ワイドギャップ半導体(SiC、GaN、β-Ga2O3など)は、高電力密度や低損失、高温での安定性など、従来の半導体に比べて優れた性能を持ち、近年、これらの材料を利用した次世代のパワーデバイスの研究開発が大きな進展を遂げている。しかしながら、結晶成長が困難で成長後の結晶中に転位等の格子欠陥が高密度に含まれる課題は未だに残る。格子欠陥の分布と種別を正確に取得した上で、デバイスの性能と信頼性を大きく低下させるキラー欠陥を特定し、その情報を結晶成長とデバイス作製にフィードバックすることが極めて重要である。本講演では、これらのワイドギャップ半導体の結晶評価技術の開発に焦点を当て、従来の評価手法の限界と課題を解説し、新たな手法開発の取り組みとして、放射光X線トポグラフィーをはじめ、エッチピット法、透過型電子顕微鏡(TEM)、多光子励起顕微鏡、ナノインデンテーションを活用した導入欠陥の構造解析の事例を紹介する。

・14:00~14:20    「半導体分野で活用されるナノインデンター活用事例 」二軒谷 亮氏(ブルカージャパン ナノ表面計測事業部)

・14:20~14:40    「半導体分野で活用される非接触光干渉計の活用事例」秋本壮一氏(ブルカージャパン ナノ表面計測事業部)

・14:40~15:00    「卓上CMP評価機を用いたスクリーニング評価事例」塚本和己氏(ブルカージャパン ナノ表面計測事業部)

・15:30~16:30 装置デモンストレーション (各20分)
① ハイジトロン ナノインデンター TI Premier
② 3次元白色干渉型顕微鏡 ContourX-500
③ 卓上CMP評価機 TriboLab CMP

 当日の詳細と申し込みは以下まで。
https://web.gogo.jp/braker-axs/form/nagoyaws0718

kat 2024年6月26日 (水曜日)
kat

日本熱処理技術協会、12月2日、3日、2024年度第3回熱処理技術セミナーを開催

4ヶ月 3週 ago
日本熱処理技術協会、12月2日、3日、2024年度第3回熱処理技術セミナーを開催

 日本熱処理技術協会は12月2日、3日の両日、対面参加(定員:30名、製粉会館:東京都中央区日本橋兜町15-6)およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、「2024年度 第3 回熱処理技術セミナー-熱処理基礎講座Ⅱ-」を開催する。

 第3回熱処理技術セミナーでは、浸炭・窒化・高周波といった代表的な表面硬化熱処理技術を中心に、これらの熱処理とは不可分な金属学的現象への解説を加えて、熱処理技術を中心に据えた基礎講座プログラムで構成されている。本セミナーは、企業における人材育成に最適なプログラムとなっている。

 申込締切は11月21日(または定員に達した場合)で、以下のURLまたはQRコードから申し込みができる。参加費は正会員46200円(税込)、維持会員46200円(税込)、非会員68200円(税込)、高専、大学、大学院に所属する学生会員および非会員に適用される学生価格は9900円(税込)。

https://forms.office.com/r/dEHGcuL7mF

 

 内容は以下のとおり。

 

12月2日

・9:55~10:00「開会挨拶および注意事項」日本熱処理技術協会

・10:00~11:30「鋼の焼入性と合金元素~合金鋼の焼入焼戻しを知る基礎知識~」梅澤 修氏(横浜国立大学)…本講演では、鋼の等温(恒温)変態線図および連続冷却変態線図、焼入性について概説の上、鋼の焼入性に及ぼす炭素量および合金元素の影響、焼入・焼戻しによる強化との組織学的関係について述べる。

・12:30~14:00「拡散~鋼の熱処理における拡散現象の基礎的理解~」中田伸生氏(東京工業大学)…本講演では、熱処理、表面処理において拡散は重要な現象である。本講義では、金属を対象とした物質の拡散について概説する。特に気/固界面や相変態を含む複相間での拡散を理解するため、化学ポテンシャル勾配による拡散を理解することを目的とする。

・14:10~15:40「残留オーステナイト~形成機構と有効利用技術~」土山聡宏氏(九州大学)…本講演では、焼入れした鋼中に生成する残留オーステナイトについて、その生成機構や生成量に及ぼす鋼組成と熱処理条件の影響について述べる。また、残留オーステナイトの有効利用を目的とした最近の研究についても紹介する。

・15:50~17:20「表面硬化熱処理の基礎~表面硬化熱処理の必要性・効果・注意点~」奥宮正洋氏(豊田工業大学)…本講演では、機械構造用部品に用いられる鋼を加熱してオーステナイト組織とし、炭素または窒素を侵入させた後に焼入れして機械的性質を向上させる表面硬化熱処理に関する硬化メカニズム、得られる組織、雰囲気管理方法等について基礎的な解説を行う。

 

12月3日

・10:00~11:30「金属の高温酸化~熱力学と速度論の観点から,金属材料の表面酸化を理解する~」上田光敏氏(北海道大学)…本講演では、金属の高温酸化現象を概観するとともに、酸化現象を理解する上で重要となる平衡論(金属酸化物の化学的安定性)と速度論(酸化皮膜の成長とイオンの拡散)について概説する。

・12:30~14:00「鉄鋼材料の窒化・浸窒処理~表面組織制御の考え方~」宮本吾郎氏(東北大学)…窒化処理や浸窒焼入れ処理によって適切な表面特性を得るためには、表層組織の制御が欠かせない。本講演では、組織制御に必要となる状態図・熱力学や拡散、化合物層、拡散層生成挙動と表面硬化の関係について概説する。

・14:10~15:40「鉄鋼材料の高強度化と変形・破壊の基礎~転位論に基づく強度上昇メカニズム~」田中將己氏(九州大学)…本講演では、材料の破壊現象について、塑性変形をほとんど伴わない脆性破壊から塑性変形を伴う延性破壊について、その特徴を材料学的な見地に立ってその解説を行う。特に塑性変形(転位運動)挙動の温度依存性に着目する。

・15:50~17:20「高周波熱処理~IH 熱処理の特徴と応用~」井戸原 修氏(高周波熱錬)…高周波熱処理は急速短時間加熱、表面加熱、部分加熱を特徴とし、自動車部品など機械構造用部品の熱処理の熱処理方法として幅広く用いられている。本講演では、この高周波熱処理技術の基礎と特徴、応用について解説する。

kat 2024年6月26日 (水曜日)
kat
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33 分 22 秒 ago
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