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日本トライボロジー学会、第67期会長に牧野武朗氏(三菱重工業)

1年 8ヶ月 ago
日本トライボロジー学会、第67期会長に牧野武朗氏(三菱重工業)kat 2022年07日25日(月) in

 日本トライボロジー学会(JAST)は5月24日、Web会議システムを利用したオンライン方式により「第66期定時社員総会」を開催した。今回は第67期役員の選任についても決議がなされ、第67期新会長に三菱重工業 シニアフェロー 総合研究所 技師長の牧野武朗氏が選出された。

牧野武朗・JAST第67期会長

 

 JAST第66期定時社員総会は新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、Web会議システムを利用したオンライン方式により開催。社員総会の議事は、議長である第66期会長の九州大学 教授の杉村丈一氏によって進められ、2022年度事業計画・収支予算ともに可決・承認された。

 総会では第67期役員選任の議案についても同意が得られ、これを受けて第67期第1回理事会が開催され、三菱重工業 牧野武朗氏が第67期会長に選出されたもの。

 牧野氏はJAST新会長就任にあたって、「当会では、“会員サービスの充実による会員メリットの向上”、“世界における日本のトライボロジーのプレゼンス向上”、“学会運営の効率化と財政の健全化”という運営方針を掲げて、杉村 第65期・第66期会長のリーダーシップのもとで活動してきたが、今期もこの運営方針を堅持しつつ、会員各位の意見もいただきながら、運営の改善に力を注いでいきたい。昨今のCOVID-19、さらにはウクライナ情勢、地球温暖化問題など、我々を取り巻く様々な情勢の中で、科学技術で社会を支える者の一員としてトライボロジストである我々は、安全・安心ということを強く意識していき、そしてそれをゴールとして行われることの重要性にあらためて思いを致す必要がある。低炭素社会の実現に向けては、需要側における省エネ、供給側における高効率化は、大変重要な要素。我々トライボロジストの知を結集し、低炭素社会実現のための諸課題に立ち向かう必要があり、当会が一つの社会的役割を果たしていければと考える。会員には積極的に当会の諸活動に参加していただき、様々な視点から、どんどん新しい提案をしていただきたい」と抱負を語った。

kat

THK、ロボットの関節機構に適した回転モジュールの受注を開始

1年 8ヶ月 ago
THK、ロボットの関節機構に適した回転モジュールの受注を開始kat 2022年07日22日(金) in in

 THKは、ロボットの関節機構に適したモジュール型のアクチュエータとして、回転モジュール「RMR」の受注を開始した。

ロボットの関節機構に適した回転モジュール「RMR」

 

 回転モジュールRMRは、剛性に優れた同社製のクロスローラーリングを回転機構の主軸受とし、さらにロボットの関節部には欠かせない減速機、モータ、エンコーダ、ブレーキなどの要素を一体化した、ロボットの関節機構に適したアクチュエータ。ロボットの関節部に必要なメカ要素がすべて備わっているため、そこにアーム部品や直動モジュールを自由自在に組合わせることで、幅広い設備に適したユーザー独自のロボット設計が可能となる。

 近年、ロボット活用の場面は急速に多様化する一方で、要求される仕様に対して既製のロボットがマッチしないケースが少なくない。既製ロボットがハイスペックすぎたり仕様要求を満たせずに大掛かりな改造が必要だったりと理由は様々だが、THKでは、ロボットの導入効果の最大化を図るべく、ユーザー自身でロボットに必要な仕様を合理的に設計・構築できるよう、回転モジュールRMRの提供を開始する。

 RMRをアーム部品、直動モジュールと単に組み合わせるだけでなく、回転部の軸数、アームのリーチ長、可搬重量など様々な仕様に合わせて自由自在にメカ要素を設計し、理想に適したロボット構築が簡単に行える。また、ロボットの設計・構築まで手が回らないユーザーには同社グループで、希望の要求仕様に合わせて制御機器まで含む装置の提案を幅広く行っていくことも可能となっている。

 RMRのラインナップは#10 #30 #50 #70の4種類。FA自動化工程に加え、物流業界や三品業界(食品/医薬品/化粧品)での活用ニーズも見込まれるほか、あらゆる市場の自動化ニーズに貢献する。

 RMRの特徴は以下のとおり。
・一体型モジュール:減速機、モータ、エンコーダ、ブレーキなどの要素をモジュールとして一体化にすることで、一から部品選定/設計/組立をする必要がなくなり、その分の工数を削減できる

・高許容モーメント:剛性に優れた同社製のクロスローラーリングを回転機構の主軸受とすることで、大きなモーメントを負荷できる

・中空構造:中空構造により配線ケーブルやチューブ等の取り回し性が高く、構造の簡略化/省配線化に優れている

・ドライバ別置き:制御ドライバはRMRとは別置きにし、本体全長をよりコンパクトに設計。また、RMR本体と制御ドライバをそれぞれ独立させることで配置の自由度が向上

kat

ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt」2022年7月号「特集1:建設機械」「特集2:フルードパワー機器」発行!

1年 8ヶ月 ago
ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt」2022年7月号「特集1:建設機械」「特集2:フルードパワー機器」発行!admin 2022年07日21日(木) in in

 ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt(ベアリング&モーション・テック)」の第36号となる2022年7月号が7月25日に小社より発行される。

 今号は、「特集1:建設機械」、「特集2:フルードパワー機器」で構成。

 特集1「建設機械」では、オイルの状態の常時監視などICTの活用で建設機械の安定稼働に貢献するサービスソリューションから、建設機械用油圧作動油規格の最新動向、建設機械用生分解性グリースの最近の動向までを広く紹介する。

 特集2「フルードパワー機器」では、横置き冷媒圧縮機の起動時における油吐出特性の評価から、高圧可変容量形油圧ピストンポンプの技術、高粘度指数圧縮機油による空気圧縮機の省燃費化と高効率化までを広く紹介する。

特集1:建設機械

◇ICT 活用で建設機械の安定稼働に貢献するサービスソリューション・・・日立建機 岩崎 史十、秋田 秀樹
◇建設機械用油圧作動油規格の最新動向・・・建設機械施工協会 浜口 仁
◇建設機械における生分解性グリースの最近の動向・・・出光興産 小泉 志郎 氏、早川 敦也 氏、山本 徹朗 氏に聞く

特集2:フルードパワー機器

◇横置き冷媒圧縮機の起動時における油吐出特性について・・・三菱電機 森山 貴司
◇高圧可変容量形ピストンポンプ・・・不二越 鈴木 健吾
◇高粘度指数圧縮機油による空気圧縮機の省燃費化と高効率化  エボニック ジャパンに聞く

連載

注目技術:第31回 FOOMA JAPAN 2022に見るbmt関連技術
あるコスモポリタンの区区之心 第7回 アルゼンチンの老舗カフェにて・・・紺野 大介
Q&A「浄油技術」の基礎知識 第7回 オイルサンプリング方法による分析結果への影響・・・RMFジャパン テクニカルサポートDiv

トピックス

日本トライボロジー学会、2021年度学会賞 授賞式を開催

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ジェイテクト、特殊環境用軸受が素粒子ミュオンの生成に貢献

1年 8ヶ月 ago
ジェイテクト、特殊環境用軸受が素粒子ミュオンの生成に貢献kat 2022年07日11日(月) in

 ジェイテクトの特殊環境用軸受「EXSEV®-WS」が、大強度陽子加速器施設(J-PARC)において、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所が開発するミュオン回転標的に採用された。同社の高耐熱・高耐久性を誇る特殊環境用軸受の性能が、J-PARCが取り組む安定的なミュオン生成に貢献している。

EXSEV-WS

 

 ミュオンとは、電子と同じような性質を持ちながら約200倍の質量を持つ素粒子。1936年に宇宙線の中で発見された。ミュオンは透過性の高さからこれまでに火山やピラミッド、原子炉などの透視に成功するなど、ミュオン透視技術は大きな注目を集めている。

 J-PARCにおいては、加速した陽子ビーム(原子を構成する粒子のうち正の電荷をもつ陽子が細い流れのように並進したもの)を黒鉛製のミュオン回転標的に照射することで、世界最高の質と強度を誇るミュオンを生成し、物質の構造を解明する物質生命科学や物質の根源を探求する基礎物理学に関わる研究に活用されている。

 ミュオン回転標的におけるミュオンの生成は高温・真空・高放射線場という過酷な環境下で行われるため、これまでの先行研究ではミュオン回転標的に使用される軸受が1年以内に破損するという問題があった。そこで、J-PARCでは2014年、ミュオン回転標的にジェイテクトの特殊環境用軸受EXSEV®-WSを採用。現在に至るまで長期にわたって、ミュオン回転標的の安定的な稼働に貢献している。

 この結果を受け、J-PARCと国際共同研究を行っているスイスのポールシェラー研究所(PSI)でもEXSEV®-WSを採用、2021年12月には1年間の安定的なミュオン回転標的の連続運転を達成した。

 EXSEV®-WSは、耐荷重性に優れており、高温・真空環境下にも適した軸受で、保持器を用いず、二硫化タングステン系自己潤滑複合材のセパレータによって玉を等間隔に保持。セパレータに含有された二硫化タングステンは耐熱350℃と耐熱性が高く、優れた潤滑寿命を有している。

<特殊環境用軸受EXSEV®-WSのスペック>
・潤滑剤に二硫化タングステン系固体潤滑剤を採用することで耐熱性・耐荷重性が要求される真空環境に適応

・圧力:105Pa(大気圧)~10-5Pa(高真空)

・温度:-100℃~350℃

・ミュオン回転標的に採用されたEXSEV®-WSの寸法
 d(内径):17mm、D(外径):40mm、B(幅):12mm

J-PARCのミュオン生成エリア:保守エリアの床面(橙色)から2.4 m低いビームラインにミュオン回転標的は設置される。左下から右上に向かう陽子ビームの経路上に設置されたミュオン回転標的でミュオンが生成され、四方向(写真撮影時は三方向のみ)の紫色の電磁石で実験室に取り出される

 

J-PARCのミュオン回転標的:陽子ビームによって黒鉛標的上に発生する熱や損傷を回転で分散させている

 

kat

THK、製造業向けIoTサービスでプライベートクラウドの対応を開始

1年 8ヶ月 ago
THK、製造業向けIoTサービスでプライベートクラウドの対応を開始kat 2022年07日08日(金) in

 THKは、製造業向けIoTサービス「OMNIedge(オムニエッジ)」のプライベートクラウドの対応を開始する。ユーザー専用のクラウドサーバーを用いることで、特定ユーザーのみが閉域網でアクセスできるセキュアな環境が構築できるほか、専用SIMによる無線通信なのでLAN配線の煩わしさがなく、棟内工事は一切要らず、短期間での導入が可能。

OMNIedgeプライベートクラウド構成図


 OMNIedgeは、現場で稼働している装置の機械要素部品にセンサを後付けして、部品の状態を数値化し、予兆検知を実現するIoTサービス。対応部品は直動案内機器「LMガイド」、ボールねじ、アクチュエータなどの直動部品をはじめ、モーター、ポンプなどの回転部品とラインナップを展開してきた。今回、ユーザー専用のプライベートクラウドに対応することで、より強固な高いセキュリティと拡張性をリーズナブルな価格で確保しながら、多台数で運用できる環境の提供を開始する。

 ユーザーが社内でIoTサービスを本格展開する場合、セキュリティに対する要望は依然として高く、その一方では、自社に見合うシステムの構築は容易ではなく、また費用面での負担も少なくないという問題があった。そこでTHKでは、運用面の課題解決に加えOMNIedgeのメリットを最大限に享受してもらえるよう、ユーザー専用に安全性をより強固にしたプライベートクラウドの対応を拡げていく。さらには、専用サーバーならではの拡張性として、他の類するIoTデータも同時に集積できる機能の搭載も今後展開していく予定だ。

 OMNIedgeをすでに導入しているユーザーでは今後、複数の生産ラインへの多台数展開が考えられるが、その場合、より強固なセキュリティの高さに加えて、既存の社内ネットワークに影響を及ぼさないか、導入・設置はスムーズに進められるかなど、様々な課題が懸念される。

 そこでTHKでは、“より強固な高いセキュリティを保ちながら多台数を社内に展開でき、かつ、OMNIedgeのクラウドサービスのメリットである「製造ゼロ待ちチケット」、「IoTリスク補償」という二つの「あんしん特典」も同時に受けられるようにしたい”というユーザーの要望に対応すべく、プライベートクラウドへの対応を開始する。また、環境構築のために発生するユーザーの工数を非常に少なくできるほか、費用面においても年間にかかる費用はできるだけ抑え、将来的な拡張性も視野に入れた長期にわたる運用を可能とする。

OMNIedgeプライベートクラウド(LTE通信)における導入/運用時のメリット

 

 同社では引き続き、導入ユーザーから寄せられる多くの評価と要望を反映しつつ、ユーザーにとって最適なソリューションサービスの拡大を図り、製造現場の持続的な生産性向上に貢献していく。今後の展開としては、IoTで必要となる様々なシステムへの対応(データ収集用デバイスの追加、エッジサーバ拡充、および生産管理や設備監視アプリケーションへの接続・追加など)やローカル5Gへの対応(大規模で広範囲の多台数設備やシステムを、安全で通信障害の影響を受けにくく、柔軟なIoTネットワークの構築への対応)を予定している。

今後の展開:IoTで必要となる様々なシステムへの対応、ローカル5Gへの対応


 

kat

木村洋行、直接潤滑方式LEG油膜軸受の提案を強化

1年 8ヶ月 ago
木村洋行、直接潤滑方式LEG油膜軸受の提案を強化 in kat 2022年07日07日(木) in

 木村洋行(https://premium.ipros.jp/kimurayoko/)では、キングスベリー社の日本販売代理店として、同社製の直接潤滑方式LEG油膜軸受を長年取り扱っている。同軸受は発電所などエネルギー関連設備で数多く採用されているが、エネルギー需給がひっ迫する中にあって、発電所で稼働する回転機械の効率を向上できる同軸受への注目も高まってきている。

 ここでは、同軸受の提案・適用拡大を進める木村洋行に、キングスベリー社の直接潤滑方式のスラスト軸受「LEG(Leading Edge Groove)スラスト軸受」の特徴と適用のメリットを中心に話を聞いた。

 

LEGスラスト軸受の構成および機能

 LEGスラスト軸受は、主にティルティングパッド(またはシュー)、ベースリング、オイルフィードチューブ、レベリングプレートから構成される(図1)。

図1 LEGスラスト軸受の構成

 

 パッドは、低炭素鋼表面に、スズを主成分とするホワイトメタル合金を鋳込んだものが標準材質となる。表面温度が160℃付近に達するとホワイトメタルが溶出し始め、軸受としての機能が損なわれるため、LEGスラスト軸受では運転時のパッド表面の最高温度が120℃以下となるよう、撹拌抵抗の低減や低温油膜の形成につながる様々な工夫がなされている。また、パッド本体に温度センサを取り付けてパッド表面温度を常時モニタリングし、閾値を超えた際にアラームを出す予兆保全システムが組まれることも少なくない。

 LEGスラスト軸受は一方向回転での使用を前提に設計されているため、パッドそれぞれの前縁部に給油溝(LEG)を設けることで、給油溝から直接パッド表面を潤滑できる機能を有する。また、キングスベリーのパッド底面にはピボットと呼ばれる球面形状の支点を設けており、これにより各パッドが自動でティルティング(調心)し、均等に荷重を受けようとする。通常はパッド有効長の50%の位置にピボットが設けられている(センターピボット)が、LEGの場合は前述のとおり一方向回転を前提としているため、パッド有効長の60%の位置にピボット(オフセットピボット)が設けられている。これによって、スラストカラーとパッドの間に「くさび型の油膜」がより形成されやすくなる。

 ベースリングは、パッドとレベリングプレートを適切な位置で保持し、ベースリング背面の環状の給油溝とパッド表面のLEG溝を接続するオイルフィードチューブによって、ベースリング側からパッド表面に潤滑油を直接給油する。

 上下2 段のレベリングプレートは、ロータにミスアライメントがある場合でも軸方向に動作してパッドの軸方向位置を補正するため、後述するイコライジング機能をベアリングに持たせることができる。

 こうした独自の構成要素と後述する機能によって、従来の油槽式と比較してLEGスラスト軸受は以下の特徴を有する。

・最も高温になりやすいパッドの75%/75%位置の表面温度が、荷重と回転スピードに応じて、油層式より8~28℃低下

・負荷能力が15~35%向上

・潤滑油量が最大60%低下するため、損失馬力も45%低減

 

LEGスラスト軸受適用のメリット イコライジング機能

 キングスベリー型スラスト軸受の最大の特徴は「イコライジング機能」を有することである。イコライジング機能とは、ミスアライメントが原因でスラスト軸受の各パッドに掛かる荷重に差異が生じた場合でも、上下2 段のレベリングプレートが動作することでパッドの軸方向位置を調整し、

 各パッドに掛かる荷重を平均化して、パッドの片当りを防止する機能のことをいう(図2)。
実際の回転機械では、横軸ロータのたわみや、スラストカラーとハウジングとのミスアライメントをゼロにはできない。そのため、イコライジング機能を持たないミッチェル型スラスト軸受の場合はレベリングプレートがないため軸方向の厚さ寸法を抑えられるものの、理論上はスラスト軸受全体として許容可能な荷重でも、片当たりによって特定のパッドに荷重が集中すると、このスラスト軸受は過負荷によって損傷する可能性がある。

図2 上下2段のレベリングプレートによるイコライジング機能

 

 これに対してイコライジング式のキングスベリー型は、構成部品に上下2段のレベリングプレートを含むため軸方向の厚さ寸法は増すものの、レベリングプレートによるイコライジング機能の効果で特定のパッドに荷重が集中せず、すべてのパッドの負荷レベルを平均化できるメリットがある。このイコライジング機構とティルティングパッドの機能が相まって、0.13°までのミスアライメントが許容可能となっている。

 ただし、イコライジング式であればスラスト軸受とロータのミスアライメントは許容できるが、非イコライジング式と同様にロータとスラストカラーの直角度が引き続き重要であることには留意が必要である。

 イコライジング式のキングスベリー型と非イコライジング式のミッチェル型では、前述のようにそれぞれ違いがあるため、回転機メーカーの設計者は両方式のメリットとデメリットを理解した上での軸受選定が必要である。

 

LEG方式

 油槽式軸受では、軸受箱内を潤滑油で満たすことで油膜を形成させているが、油膜部分以外にも油膜軸受の機能としては不要な部分にまで過剰な油量が必要とされ、また高速回転時の撹拌ロスが大きい(損失馬力が大きい)。さらなる高速化を図り損失馬力を低減した高効率な装置を作る必要性から、スラストカラーとパッドの間に必要量の潤滑油のみを給油する直接潤滑方式が、キングスベリー社のLEG方式、欧州で開発されたスプレー方式として、それぞれ開発された。

 キングスベリーが開発したLEG軸受は、低温の潤滑油がパッド前縁側のLEG溝から直接給油され、回転とともにスラストカラーとパッドの間に均一に効率的に油膜が形成される(図3)。このため、油槽式に比べて給油量が少なくて済み、また、撹拌抵抗を小さくできるため損失馬力を大幅に低減できる。油槽式と異なりオイルシールリングも不要となり、ここでも撹拌抵抗を低減している。

 

図3 LEG直接潤滑方式

 

 軸受ハウジング下部に設けられた大きな直径の排油口からパッド後縁部の高温の残留油を積極的に排出するとともに、LEG溝からは冷却された低温の潤滑油が直接供給されるため、パッドの温度を低下させることができる。その結果、パッド温度が低くなる分だけ軸受の許容荷重を増やすことが可能となっている。

 LEG方式では軸受ハウジングの外部にオリフィスを設けて油量を調整している一方、欧州で開発されたスプレー式は、オリフィスの機能を持ったスプレーノズルによってスラストカラーに対して潤滑油を吹き付け、パッドとの間に潤滑油膜を形成する方式をとる。給油量の削減やメカロスの低減については効果が見込めるが、スプレーノズルから低温の油が供給されても、パッド後縁部の高温の残留油によってパッドの表面温度が下がりにくくなる可能性がある。また、スプレー方式ではノズル穴がオリフィスの機能を持つためにノズルの穴径が小さく、潤滑油の管理レベル次第では油中の異物による目詰まりの発生が懸念される。これに対して、LEG方式ではオイルフィードチューブの径が大きいため目詰まりが発生することもない。

 従来の油槽式の軸受をLEGスラスト軸受に交換することで、同じ軸受サイズのままでも給油量と損失馬力の低減、メタル温度の低下を実現でき、結果的に軸受負荷能力を飛躍的に向上できる。回転機械の効率化による省エネルギー性能の向上とランニングコスト低減など、回転機械の付加価値向上が図れる。こうした軸受の油槽式からLEG直接潤滑式へのアップグレードによって、既存の回転機械の性能向上を図ることも有効である。

 ただしその際、油槽式の軸受ハウジングをそのまま使用すると排油口がハウジング上部に設けられているため、せっかくLEG式に軸受のアップグレードをしても必要な排油がなされず、油槽式のように潤滑油を軸受箱内で溜め込んだままとなり、直接潤滑式のメリットを活かせなくなる。従って、LEG直接潤滑式の性能を活かすためには、軸受ハウジングの小改造が必要となる。

 

高速性能

 センターピボットのキングスベリー製を含む油槽式軸受やスプレー式の直接潤滑軸受は両方向回転に対応しているのに対し、LEGスラスト軸受は一方向回転での使用を前提に設計している(軸受速度によっては正回転の許容荷重の約60%で逆回転運転にも対応)。しかし、オフセットピボットを用いて正回転一方向の用途に特化したLEGスラスト軸受は、撹拌抵抗が極めて小さくパッド温度を低く抑えることが可能なことなどから、特に高速回転向けの用途で高い優位性を示す(図4)。

 図4に示すように、周速が上がるにつれて、油槽式軸受ではスラストカラーとパッド間の油膜部分から生じる機械的ロス(Film Shear)に、撹拌抵抗など荷重支持に必要のない機械的ロス(Parasitic Loss、図5参照)が加わり、損失馬力が大きくなる。これに対して機械的ロスが荷重支持に必要なFilm Shear のみとなるLEGスラスト軸受は、高速回転時の損失馬力が小さい。直接潤滑方式のメリットは、油膜とは関係のない無駄な機械的ロスといえるParasitic Lossを大幅に減らせることである。

 

図4 高周速時のLEGスラスト軸受と油槽式軸受との損失馬力の比較図5 Parasitic Lossが発生する油槽式軸受の各部位

 

 コンプレッサなど両方向回転が必要で周速が高くないアプリケーションでは油槽式軸受を選定し、高速・省エネの装置ではLEGスラスト軸受を選定するというアプローチも必要とされる。これは、周速が速い用途では前述のParasitic Lossが大きくなるのに対し、周速がさほど早くない用途ではParasitic Lossがさほど大きくないためである。

 キングスベリーのLEG式は一方向回転用途に特化しているのに対し、スプレー式はその構造上両方向回転にも対応できるため、3.1節のイコライジング機能に関する説明と同様、回転機メーカーの設計者は両方式のメリットとデメリットを理解した上での軸受選定が必要である。


用途拡大に向けた製品ラインナップの拡充

 上述の様々な特徴を有するLEGスラスト軸受のほか、同様の直接潤滑方式であるLEGジャーナル軸受(図6)、直接潤滑方式であるもののLEG式と異なり両方向回転対応のBPGジャーナル軸受、主にポンプ向けのCH自己潤滑軸受ユニットなど多様なラインナップによって、発電所関連のガスタービンや蒸気タービン、ポンプ、コンプレッサ、減速機、掘削機、船舶用タービンなど、キングスベリーの軸受製品は広範囲に適用されている。

 

図6 LEGジャーナル軸受

 

 さらなる用途拡大にあたっては、面圧を上げたい、同じサイズで性能を高めたい、同じ性能でコンパクト化を図りたいといった各種のユーザーニーズに対応する必要があるが、パッド表面の標準材質となるホワイトメタルの温度上限(120℃前後)によって、軸受の運転温度条件が制約されてしまう。そのため、使用条件に応じて、Vespel®(デュポン社製ポリイミド樹脂)など耐熱性の高いスーパーエンジニアリングプラスチックを表面に用いたパッド(図7)や、耐食性の高いステンレス製のパッドなど、ユーザーのカスタマイズの要求に対応している。 
 

図7 Vespel樹脂製パッドのスラスト軸受  今後の展開

 キングスベリーは創業100年以上の老舗企業ながら、技術開発を怠ることなく、回転機械の性能向上につながる軸受の開発を日々継続している。木村洋行では引き続き、キングスベリーの軸受が、高速回転条件で使用できるなど、各種の運転条件に対応できる軸受であることをアピールしていく。

 木村洋行ではキングスベリーからの技術支援も得ながら、サービス面においても長年にわたり綿密なサポートを行っている。キングスベリーでは面圧、周速、シャフト径といった運転条件に基づく軸受性能の計算データを蓄積し、木村洋行を通じてユーザーに提供しているが、キングスベリー社内の豊富な設備による実験・検証によって計算プログラムをアップデートしており、実際の運転結果に近い、精度の高い計算データを提供できるようになっている。

 木村洋行では引き続き、高速条件対応などの高性能の油膜軸受製品を紹介するとともに、より良いサービスを提供していくことで、回転機械メーカーの製品開発に貢献していく考えだ。

kat

日本精工、直動転がり案内の状態監視・診断アプリケーションを開発

1年 8ヶ月 ago
日本精工、直動転がり案内の状態監視・診断アプリケーションを開発kat 2022年07日04日(月) in

 日本精工(NSK)は、各種生産設備を中心に、幅広く使用されている直動転がり案内「リニアガイド」向けに状態監視・診断アプリケーション「ACOUS NAVI for Linear Guides」を開発した。2021年4月に市場導入した軸受およびボールねじ向けの状態監視・診断アプリケーションに加えて、リニアガイドの状態監視・診断アプリケーションを本年6月30日から販売開始した。

 近年、機械装置や製造ラインの状態を監視し、異常を早期に発見しトラブルを未然に防ぐ予知保全の実現に期待が高まっている。半導体・液晶製造装置、自動車製造設備、搬送用ロボット、工作機械などの各種生産設備を中心に幅広い用途で使用されているリニアガイドは、製造装置の機能・性能を支える重要部品で、この稼動状態を監視し異常や故障の原因となる予兆を初期段階で検出する技術が求められている。

 稼働時間の経過とともに機械要素部品の損傷・劣化の度合いが次第に進行し、機械設備の故障・異常が発生する。このため機械設備の予知保全には、機械要素部品の損傷や劣化を早期に捉えることが有効となる。

 NSKでは長年の研究開発により、軸受、ボールねじ、リニアガイドの損傷や劣化のメカニズムを基に、その予兆を捉える独自の振動診断技術を確立しており、損傷や劣化を捉え、予知保全に貢献している。

機械設備の損傷・劣化の進行イメージ

 

 NSKの状態監視・診断技術「ACOUS NAVI(アコースナビ)」は機械要素部品の稼働状態を監視し損傷や劣化の予兆を捉えて診断するソフトウェアで、パソコンや専用のハードウェアに組込まれるアプリケーションとしてユーザーに提供している。今回、軸受、ボールねじ、リニアガイドの状態監視・診断を行う三つのラインアップが完成したもの。

 開発された「ACOUS NAVI for Linear Guides」は、リニアガイドのスライダ近傍に取り付けた振動センサーの信号から、リニアガイドのフレーキングを検知・診断するアプリケーション。リニアガイドの異物侵入などによるフレーキングの発生を独自の振動データ処理技術によって検知・診断する。

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イグス、しゅう動部品用の丸棒に4種類の新材質を追加

1年 8ヶ月 ago
イグス、しゅう動部品用の丸棒に4種類の新材質を追加kat 2022年06日30日(木) in

 イグスは、すべり軸受などを構成する高性能ポリマー材質「イグリデュール樹脂」の丸棒のラインアップに、高温環境に対応する「イグリデュールAC500」と弾性のある「イグリデュールA250」、耐薬品性に優れる「イグリデュールH3」、アルミシャフトとの組み合わせで長寿命を実現する「イグリデュールE」の4種類の材質を新たに追加した。ラインアップ拡大により、無潤滑・メンテナンスフリーの試作品や特殊部品を機械加工する際の材質オプションが広がることになる。

イグリデュール丸棒の4種類の新材質

 

 食品・包装業界向けにはイグリデュールAC500とイグリデュールA250を投入する。イグリデュールAC500は、FDAとEU 10/2011に準拠、食品に接触する特殊ブッシュ、ローラーやその他しゅう動部品の製造が可能。250℃までの高温環境に対応するため、特に焼成ラインの摺動部品に適している。耐薬品性も高く、食品業界の洗浄剤使用環境下でも適用できる。また、イグリデュールA250は特に、ベルトコンベアで使用されるナイフエッジローラーの製造に最適。ナイフエッジローラーとして使用すると低摩擦の無潤滑運転が可能で、必要駆動力とベルトの電力消費量を削減できる。FDAとEU 10/2011に準拠しており、食品との直接接触に関する認可を受けている。

 また、イグリデュールH3は耐薬品性の部品製造に使用できる。主に刺激性の強い媒体との接触や、燃料ポンプなどの用途に向けて開発された材質で、耐久性と低吸湿性に優れ、過酷な用途で長寿命かつ確実に機能する。

 さらに、イグリデュールEは、アルミシャフトとの組み合わせで、振動を減衰させるすべり軸受を製造でき、機械や装置の精密でスムースな動きをサポートする。繊維産業、包装産業、印刷産業、自動販売機などの直動・回転運動において、優れた摩耗特性を発揮する。

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ジェイテクト、BEV向けプラネタリギヤ用針状ころ軸受保持器の樹脂化で型技術論文賞を受賞

1年 8ヶ月 ago
ジェイテクト、BEV向けプラネタリギヤ用針状ころ軸受保持器の樹脂化で型技術論文賞を受賞kat 2022年06日30日(木) in in

 ジェイテクト 研究開発本部 材料研究部 有機材料研究室の村田順司氏は、受賞論文:「BEV向けプラネタリギヤ用針状ころ軸受における保持器の樹脂化」で、型技術協会主催の第32回型技術協会「型技術論文賞」を受賞した。

 型技術協会では、型技術ならびに型産業のより一層の発展を図ることを目的に「型技術協会賞」を設け、1991年より「功績賞」「技術賞」「型技術論文賞」、1996年より「奨励賞」を設置。特に優れかつ貢献度の高い型に関する技術等に対して、毎年顕彰を行っている。

 型技術論文賞は、会誌『型技術』に掲載された特に優れた論文等の著者に贈られ、有用性・発展性・開示性・革新性に重点を置いた選考が行われる。また、従来の論文としての学術性に加え、型技術全般への貢献度を重視したより広い観点からの審査が行われる。

 自動車市場ではCO2を削減するためにBEV(電気自動車)の普及が進んでおり、電費の向上が課題の一つとなってる。その中で、BEVに用いられる転がり軸受にも電費向上への寄与が要求され、軽量化や潤滑技術の向上が進められている。

 ジェイテクトでは、BEVに搭載される遊星式eAxleのプラネタリギヤ内部に使用される針状ころ軸受の保持器の材質を金属から樹脂に変更することで、軸受の20%軽量化を実現した。

 保持器に樹脂を用いることで設計自由度を高め、保持器ところ間の空間を広げて油を外径側に流れやすくするなど、軸受内部の油流れを制御する新機能を付与し、潤滑油量が少なくても十分な潤滑性と冷却性を有する軸受を開発することに成功した。

 

受賞者の村田順司氏


 

左:開発品  右:従来品

 

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ジェイテクト、研削盤砥石軸の低動力静圧軸受で愛知発明賞を受賞

1年 9ヶ月 ago
ジェイテクト、研削盤砥石軸の低動力静圧軸受で愛知発明賞を受賞kat 2022年06日24日(金) in in

 ジェイテクトは、愛知県発明協会主催の令和4年度愛知発明表彰において、研削盤の砥石軸に使用される低動力静圧軸受の特許技術(特許登録番号:特許第6455177号)が評価され、「愛知発明賞」を受賞した。受賞者は同社 研究開発本部 加工プロセス研究部の大和宏樹氏。

表彰式のようす、写真左より、愛知県発明協会 深谷 紘一 会長、
大和宏樹氏、研究開発本部 副本部長 林田一徳氏

 

 愛知発明表彰は、愛知県の発明奨励・振興を図ることを目的に、発明協会の独自事業として昭和55年度から実施。技術者・研究開発者のモチベーション向上などを目的に、毎年6月に表彰式が行われ、県内の優秀な発明者が表彰される。

 研削盤の砥石軸に使用される静圧軸受は、他の方式の軸受と比べて回転精度と減衰性に優れ、長寿命という特徴がある。近年、生産性向上の観点から研削盤の砥石回転速度が高速化しており、それに伴って発生する静圧軸受の動力損失を低減する技術が求められていた。

研削盤の砥石軸に使用される静圧軸受

 

 ジェイテクトでは、流体解析等で動力損失発生の主要因が、軸受内に発生する循環流れに生じる乱流であることを解明。この解析結果を踏まえ、軸受内部の回転軸につれ回る順流を、軸受底部の逆流と分離することで流れを整流化し、さらにその流れを層流にした低動力静圧軸受を新たに開発した。開発技術では、従来の静圧軸受の特徴を損なうことなく高速回転時の動力損失を24%低減した。

 本技術を研削盤に搭載することで、省エネに加えて熱変位量を抑制し、冷却装置の小型化による機械フロアスペース削減に貢献する。また、本技術を搭載した研削盤は、日本機械工業連合会主催の優秀省エネ機器・システム表彰において、経済産業大臣賞を受賞している。

低動力静圧軸受(特許技術の概略図)

 

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日本滑り軸受標準化協議会、第35回総会を開催

1年 9ヶ月 ago
日本滑り軸受標準化協議会、第35回総会を開催kat 2022年06日22日(水) in

 日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は6月16日、東京都千代田区のTKP 東京駅セントラルカンファレンスセンターで「2022年度 第1回総会(通算 第35回総会)」をハイブリッド形式(集合&ウェブ配信)により開催した。

 当日は、開会の挨拶に立った林 洋一郎 会長(オイレス工業)が、「本総会は、コロナ禍にあって2年半ぶりのリアル開催となる。中国のゼロコロナ政策やウクライナ情勢など今後の経済に与える影響は計り知れず未だ過渡期にあるといえる厳しい状況が続いているが、状況を注視しながら、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の標準化活動をできる限り支援できるよう、取組み方・進め方について熟慮していきたい。今回のリアル開催のように対面での情報交流は非常に重要で、いろいろな切り口で意見を交わすことのできる重要な機会である懇親会も早い時期に復活させられればと考えている。すべり軸受メーカーとそのユーザー企業、大学・研究機関のアカデミアという三者で育んできた当会の交流を維持しつつ、それぞれにメリットのある標準化作業を進めるとともに、引き続き、特別講演や懇親会などを通じて、標準化以外の活動・情報交換も拡充していきたい」と述べた。
 

挨拶する林PBSA会長

 

 続いて、日本機械学会ISO/TC123 平軸受国内委員会 森下 信 委員長(横浜国立大学 名誉教授)が、「引き続き、PBSAから標準化に関する提案をいただき、それらを積極的に取り入れ規格制定につなげていく流れを整備していく。当委員会としては今後も、ISO/TC123国際会議の場において、日本としての立場を明確にするための活動支援をいただいている責任をきちんと果たしていく」と語った。
 

挨拶する森下委員長

 

 総会ではまず、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の2021年度の活動報告と2022年度の活動計画について、国内幹事の橋爪剛氏(オイレス工業)から報告がなされた。2021年度の活動計画としては、新規規格制定議案である①発熱・変形を考慮した軸受計算技術の国際標準化、②回転機械の安定問題に関する国際標準化、③MoS2を応用した表面改質技術の国際標準化、④DLCを応用した表面改質技術の国際標準化に関する進捗状況などが報告された。また、2022年度の活動計画として、省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託の1テーマである「環境配慮型の水潤滑用軸受材料に関する国際標準化」への取組みや、本年10月あるいは11月にフランスで開催を予定しているTC123国際会議への参加について報告した。

 続いてPBSAの2021年度の活動報告と2022年度の活動計画について、PBSAでは会計を務める橋爪氏より報告がなされ、2022年度の活動計画として、第2回総会を来年3月に開催し理事会を必要に応じて開催する予定のほか、本年10月~11月にフランス・ポアティエで開催予定のISO/TC123国際会議の支援や、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会活動の支援、PBSAおよび同会員に寄与する講演会・研究・調査などの実施、標準化作業を円滑に進めるための会員が活用しやすいホームページの更新・整備、さらには新規規格開発のために参考となる他TC規格などの購入などの予定について報告された。

 総会終了後には、「医療機器マテリアル」と題して東京医科歯科大学 塙 隆夫 教授による特別講演がなされた。講演では、人工股関節を中心とした材料・表面改質技術について紹介。人工股関節のコバルト・クロム合金製あるいはセラミックス製の骨頭と超高分子量ポリエチレン製のライナーとの摩擦に伴う摩耗を抑制する表面改質技術や、人工股関節のステムと大腿骨をセメントレスで結合させるプラズマ溶射などの表面改質技術などが紹介された。
 

講演する塙氏

 

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ジェイテクト、樹脂材料のトライボロジー研究で仏Prix HIRN 2022を受賞

1年 9ヶ月 ago
ジェイテクト、樹脂材料のトライボロジー研究で仏Prix HIRN 2022を受賞kat 2022年06日20日(月) in

 ジェイテクト 研究開発本部 材料研究部 トライボロジー研究室の国島武史氏が受賞研究タイトル「Tribology of PA66 or fiber-reinforced composite/steel under grease lubrication」(グリース潤滑下において鋼と接触するPA(ポリアミド)66および繊維強化樹脂材のトライボロジーに関する研究)で、フランスÉcole Centrale de LyonおよびCentre National de la Recherche Scientifique(CNRS)の研究機関である、Laboratoire de Tribologie et Dynamique des Systèmes(LTDS)との共同研究において、フランスの機械およびトライボロジー分野の学会であるle Groupe Scientifique et Technique Tribologie de l’Association Française de Mécanique(AFM)から、「Prix HIRN 2022」を日本人として初めて受賞した。

受賞者の国島武史氏

 

 Prix HIRNは、フランスの大学・研究機関で行われた、摩擦や摩耗および潤滑などを対象とした科学技術であるトライボロジーに関するPhD(博士)研究の中で、前年の最も優れた研究に対して贈られる賞。AFMが1992年より毎年実施しており、今年で30回目となる。

 2018年6月~2021年5月にジェイテクトは、LTDSのPhilippe KapsaシニアリサーチャおよびVincent Fridrici准教授らのグループと共同で、グリース潤滑下において鋼とPA66を用いる異種材を組み合わせたしゅう動形態における、摩擦摩耗メカニズムおよび、しゅう動面のトライボ化学反応などのトライボロジー挙動に関する研究を重ねた。その成果として、これまで解明されていなかった、グリース潤滑下における樹脂と鋼の高面圧接触における特有なトライボロジー挙動について、そのメカニズムを体系的に解明することができたもの。

 本研究成果は、材料開発やしゅう動面設計の基礎基盤で、例えば鋼材のウォームシャフトと樹脂材のウォームホイールから構成される、電動パワーステアリング(EPS)減速機の次世代開発に活用される。今後ジェイテクトでは、本研究成果を活かし、EPSの小型化による燃費向上や高出力化による大型車の自動運転化の実現などへの貢献を目指していく。

グリース潤滑下における樹脂と鋼の高面圧接触におけるトライボロジー挙動の解明

 

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NTN、センサ内蔵し高度な状態監視を実現する軸受を開発

1年 9ヶ月 ago
NTN、センサ内蔵し高度な状態監視を実現する軸受を開発kat 2022年06日17日(金) in in

 NTNは、センサ、発電ユニットと無線デバイスを軸受に内蔵し、温度・振動・回転速度の情報を無線送信する「しゃべる軸受®」を開発した。センサを軸受に内蔵しているため、装置の外側にセンサを取り付けて状態を検出する場合に比べて、より高感度で高度な状態監視と早期の異常検知を実現できる。

しゃべる軸受
※写真はサンプル品で、実際の商品では電子回路基板は保護材で覆われる


 

 製造現場においては、生産効率の向上に向けて設備の稼働状態を監視し、そのデータに基づいて的確かつ計画的にメンテナンスや部品交換を行うことで、設備のダウンタイム(稼働停止時間)をできるだけ抑えたいとの強い要求がある。さらに、近年ではDXやIoT技術の進展に伴って、場所や時間の制約を受けない装置の遠隔監視や自動モニタリング、入手した状態監視情報の活用による製造品質の安定化や向上へのニーズも高まっている。

 同社では、こうした状態監視のニーズに対し、軸受のセンシングなどに取り組んできており、特に風力発電分野においては、2014年には大型風力発電用軸受の状態監視、データ解析に関してNEDOプロジェクトにも参画し、現在、状態監視システム(Condition Monitoring System、CMS)については多くのユーザーが契約している。ほかにも、工作機械主軸用「センサ内蔵軸受ユニット」、「産業用IoTプラットフォーム向け軸受診断アプリ」、「NTNポータブル異常検知装置」などを開発し、軸受の状態監視に必要なセンサの選択、解析ソフトの開発など、先行して技術を高めてきた。

 同社が今回開発した、しゃべる軸受は、寸法と負荷容量を変更することなく、標準軸受(主要寸法・形式が国際的に標準化された転がり軸受)にセンサ、発電ユニット、無線デバイスを内蔵。回転に伴って発電する電力により、センサや無線デバイスを動作させ、センサ情報を自動で無線送信する。センサを軸受に内蔵しているため、センサを設備に外付けする場合よりも感度良く軸受の状態を検出し、早期に異常を診断することが可能となっている。また、寸法と負荷容量が標準軸受と同一であるため、既存設備に使用されている軸受からの置き換えも可能な上、電源供給やデータ送信のためのケーブルも不要で、容易に軸受の状態監視を実現できる。

 同社では今後、本開発品のテストマーケティングを開始し、具体的なニーズの探索と市場への提案を進めていく。まずは、生産設備で多く使用されている深溝玉軸受の商品化を進めた後、適用する軸受の種類や品番などを段階的に拡大していく予定だ。

 同社は、中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2において、「モノ」から「コト」への業態の変革に向け、サービス・ソリューション事業の強化に取り組んでいる。本開発品により高度な状態監視の実現に貢献し、適切な交換時期を通知するなどの状態監視サービスの提供を通じてサービス・ソリューション事業の展開、それに連動した補修軸受の販売拡大にも取り組んでいく。
 

使用構成例

 

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人とくるまのテクノロジー展 2022が開催、bmt技術が集結

1年 9ヶ月 ago
人とくるまのテクノロジー展 2022が開催、bmt技術が集結kat 2022年06日16日(木) in in

 自動車技術会は5月25日~27日、横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2022」を開催した。3年ぶりのリアル開催となる同展は、484社/1055小間の規模で開かれ、3日間で43665名が来場した。ベアリング&モーション技術(bmt)関連では、以下のような展示がなされた。

人とくるまのテクノロジー展 2022のもよう

 

 イグス(https://www.igus.co.jp/)は、自動車しゅう動部品の軽量化による燃費・電費改善のための無潤滑樹脂ベアリング「ドライテック・ベアリング」によるソリューションを提案した。車載機器においてはドアヒンジやスライドドア、サンルーフなど、回転運動や直線運動を伴う箇所での無潤滑化(メンテナンスフリー)や静音化などからドライテック・ベアリングが多数採用されているが、今回は射出成形では難しい、あるいは不可能な複雑形状の部品を短時間で一体造形できる、しゅう動部品に特化した高機能ポリマー製の「3Dプリント品」を展示した。3Dプリント品は試作品ごとに金型を用意する必要がないため、自動車で要求の強い大幅な開発サイクル短縮とコスト削減に貢献できる。同社では3Dプリント用樹脂の配合や溶解・固化のプロセスを工夫することで射出成形品の強度や性質と同等、さらにはより高い3Dプリント品を造形できるノウハウを蓄積しており、最近では、耐久性、耐摩耗性を備えた複雑な形状の3Dプリント部品を、最大4種類の材質を使ったマルチマテリアルプリントで実現できる技術も開発。3Dプリント品は同社ホームページ上で簡単に注文できる。

イグス しゅう動部品に特化した高機能ポリマーで造形した「3Dプリント品」

 

 HEFグループは、HEF DURFERRIT JAPAN、TS 群馬、TS TUFFTRIDE、ナノコート・ティーエスの共同で出展。今回は、ナノコート・ティーエス(https://www.nanocoat-ts.com/) 石川事業所ですでに受託加工を開始している、自動車電装機器の樹脂製筐体への電磁波シールド物理蒸着(PVD)コーティング「PROCEM™」を紹介。自動車電装機器の電磁波シールド仕様を十分にクリアしているほか耐食性が良好で、電磁波シールドめっきと比較した場合の利点として、①めっき処理が可能な樹脂基材に制約があるのに対し、PROCEM膜では、ABS・PC・ポリアミド(PA)・ポリメチルメタクリレート(PMMA)・ポリアリルアミン(PAA)・ポリイミド(PI)・ガラス繊維など、ほとんどの樹脂基材およびコンポジット基材に対して、密着性が極めて高い電磁波シールド被膜をダイレクトに成膜できること、②環境負荷が極めて小さいドライコーティングであること、③めっき皮膜では電磁波シールド性を付与するのに数十μmと厚膜にする必要があるのに対して、PROCEM膜は膜厚1~2μmの薄膜で電磁波シールド機能を付与できるため、樹脂製筐体への成膜前後の寸法変化・重量変化がないことなどをアピールした。

HEFグループ 「PROCEM」膜を施した樹脂製カーナビ筐体などのサンプル

 

 NTN(https://www.ntn.co.jp/)は、電気自動車向けの軸受ソリューションを展示した。「2021年“超”モノづくり部品大賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞した、モータの高速回転に対応する「EV・HEV用高速深溝玉軸受」は、保持器の材料を見直すことで強度を高めるとともに、保持器と転動体が直接触れるポケット部の形状を工夫することで遠心力による変形を最小化し、使用条件によってはdmn値220万の高速回転対応を実現できる。EV・HEV用高速深溝玉軸受としてはまた、この開発保持器と窒化ケイ素セラミックス製の転動体を組み合わせた「耐電食深溝玉軸受」も紹介した。このほか、新開発の樹脂保持器の採用や軸受内部設計の最適化によって世界最高水準の低昇温性(耐焼付き性)と低トルク性を実現したトランスミッション/デファレンシャル用の「低昇温・低トルク円すいころ軸受」、シールリップのすべり接触部に円弧状(半円筒状)の微小突起を等間隔に設けた新開発の接触タイプシールを採用することにより回転トルクを従来品比で80%低減し、非接触タイプシールに匹敵する低トルク効果を実現した「超低フリクションシール付玉軸受」、軸受の外輪外径面の一部に逃げ部を設ける業界初の手法で、進行波型クリープの停止を実現した「クリープレス軸受」などを紹介した。

NTN 「電気自動車向けの軸受ソリューション」

 

 ジェイテクト(https://www.jtekt.co.jp/)は、「第72 回自動車技術会賞 技術開発賞」を受賞した「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」の搭載モジュールを展示した。自動車の電動化、先進運転支援システムの急速な普及に伴う車両電源の負荷軽減のため、出力性能に優れたキャパシタを採用するケースが増える傾向にあるが、高耐熱リチウムイオンキャパシタは、実用・市販化されたキャパシタの中で、最もエネルギー密度に優れるリチウムイオンキャパシタの電解液の改良に加え、電解液と電極材料の相性を考慮した組み合わせとすることにより、世界で初めて自動車車室内の温度要求である—40~+85℃の動作温度範囲を実現した。同キャパシタを活用した電源システムを自動車車室内に搭載する場合、冷却・加熱装置が不要となるため、車両搭載性やシステム効率が飛躍的に改善される。さらに自動車だけでなく、鉄道や大型農建機などの電動化、再生可能エネルギーの短周期の電力変動吸収などにも活用できる技術として高く評価され技術開発賞受賞となったもの。

ジェイテクト 「高耐熱リチウムイオンキャパシタ搭載モジュール」と開発者の三尾巧美氏

 

 大同メタル工業(https://www.daidometal.com/jp/)は、多種多様なエンジン軸受で使用されている樹脂コーティング「DLA02」、「DLA03」、「DLA04」を中心に同社のコーティング技術を紹介した。アルミ軸受合金上の樹脂コーティング有無での耐摩耗性の検証では、コーティングなしの場合に比べ摩耗量を約90%低減できた結果を報告。また、新たなアプローチとして、将来ニーズを想定し樹脂コーティングを超える耐摩耗性・耐食性を追求した開発中のDLCコーティングの技術を披露した。同社のDLC コーティングは製法の工夫によりコーティング下地の変形に追従できるよう物性を最適化。アルミ軸受合金上のDLCコーティング有無での耐摩耗性の検証では、DLC コーティングなしの場合に比べ摩耗量を約98%低減できた結果を報告した。このほか、独自焼結技術をベースにした高性能アルミ吸音材「NDCカルム」を紹介。アルミ粉末を多孔質に焼結、2~3mmの板厚で優れた吸音特性を実現するほか、一般の吸音材にはない耐水性、耐食性、耐熱性を持つ。アルミ板より軽量で、しかも金属的強度を有するため機械加工も容易にでき、部品としての供給も可能。

大同メタル工業 「DLA02」を被覆したシャフトなどのサンプル

 

 大豊工業(https://www.taihonet.co.jp/)は、「第72 回自動車技術会賞 技術開発賞」を受賞した「高筒内圧エンジン用Bi 合金オーバレイ軸受」を展示した。本開発品は、すべり軸受のオーバレイとして世界で初めてBi-Sb(ビスマス・アンチモン)合金を用いており、従来の純Bi オーバレイで課題となっていた耐疲労性と耐酸化性を、Sb との合金化により飛躍的に向上。さらにSb添加量の最適化により異物ロバスト性にも寄与している。これらの技術をディーゼルエンジンの軸受に用いることで、信頼性と低燃費を両立し、新排気・燃費規制に対応できる。このほか、高シール性・低電気抵抗で優れた耐食性・導電性を有する「燃料電池バイポーラプレート」や、モータの高効率化に貢献する「モータコイル冷却シャワー」と「モータコイル冷却パイプ」、電子機器筐体の軽量化に貢献する「電磁波遮蔽樹脂カバー」など次世代車向けソリューションを紹介した。

大豊工業 「高筒内圧エンジン用Bi 合金オーバレイ軸受」

 

 東芝マテリアル(https://www.toshiba-tmat.co.jp/)は、絶縁体のためインバータ制御下のEVモータ用軸受の電食リスクを解消する「窒化ケイ素セラミックスベアリングボール」を展示した。スチールボールに比べ高強度・高硬度・軽量で耐摩耗性に優れ、長寿命化を実現する。電食不良リスクを解消するだけでなく、窒化ケイ素はスチールの半分以下の密度のため軽量で回転時にかかる遠心力が小さくなることから高速回転が可能なほか、スタート時のレスポンスが向上し、省エネ化に貢献できる。さらに、窒化ケイ素は高硬度で耐摩耗性に優れており、長寿命化を実現する。スチールボールベアリングの数倍以上の寿命を誇り、過酷な環境下や交換が困難な用途に最適とアピールした。

東芝マテリアル 「窒化ケイ素セラミックスベアリングボール」

 

 日本ピストンリング(https://www.npr.co.jp/)は、高硬度で耐摩耗性・低摩擦・耐凝着性に優れるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施したピストンリングを展示した。DLCコーティングは平滑表面のためフリクションを低減するとともに、自己潤滑性と高い耐摩耗性を兼ね備えたa-C/ta-C比率の最適膜で、近年では耐久信頼性を向上させた厚膜タイプの開発にも成功している。単体評価でのフリクション低減効果と耐スカッフ性、さらには国内ガソリン機関・国内ディーゼル機関での実機評価での摩耗量低減効果を提示。エンジンの熱効率アップに貢献できることをアピールした。また、シリンダライナ内周面に微細なディンプルを形成することでピストンリングとの間の流体潤滑による摩擦力を低減してエンジンの燃費向上を実現する「ディンプルライナ」を紹介した。実機による燃費評価結果(重量車燃費基準による計算結果)では、大型ディーゼルエンジンで0.7%減、中型ディーゼルエンジンで0.6~1.7%減、小型ディーゼルエンジンで3.2%減の燃費効果が確認されており、すでに量産中の商用ディーゼルエンジンに採用されている。

日本ピストンリング 「DLCコーティングリング」

 

 日本精工(https://www.nsk.com/jp/)は、軸受内部のグリースやシール形状の改良によりフリクションを減らすとともに保持器の改良によりグリースの攪拌抵抗を減らすことでEVの航続距離延長に貢献する「電動車向け低フリクションハブユニット軸受」を展示した。グリースでは、基油の低粘度化で転がり抵抗を低減するとともに、増ちょう剤の種類と量の最適化で撹拌抵抗を低減。また、インナ側シールでは、耐泥水性を保ちつつリップを非接触とするなどのシール形状の改良によって、シールのしゅう動抵抗を低減している。さらに、ポケット部の柱の削除など保持器の改良によりグリースの撹拌抵抗を低減している。このほか、国内の展示会では初出展となる「シームレス 2スピード eアクスル コンセプト(Gen2)」を披露した。eアクスルの小型・軽量化と高機能化を実現するとともに、トラクションドライブ減速機と高速回転玉軸受の採用により高速モータの適用を可能にし、システムを小型・軽量化できる。また、磁歪式トルクセンサと電動シフトアクチュエータの組み合わせによるシームレスな2速変速を実現し、航続距離延伸と走行性能向上に貢献できる。

日本精工 「電動車向け低フリクションハブユニット軸受」

 

 不二越(https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/)は、自動車の電動化でモータやバッテリー、インバータなど電気で制御する部品が増える中、モータ周辺で電流が発生しやすくなり軸受の内輪と鋼球の間に放電・スパークが発生して軌道部が筋状の凹凸になる「電食」により軸受回転部で異音や振動などの不具合が生じる問題に対し、軸受の軌道部に電流が流れない、あるいはスパークさせない対策を施した「耐電食対応軸受」を紹介した。大別して、軸受の鋼球の代わりにセラミックボールを用いる、あるいは外輪内径面に樹脂コーティングを施す、または外輪にインサート成形によって樹脂カバーを成形することで「電気の流れを絶縁する」アプローチと、導電グリース、導電シールを用いて「電気の負荷を蓄積させないように通電する」アプローチを処方した軸受をラインナップ。耐電食性能・用途(回転速度)に応じ、絶縁系アイテム、導電系アイテムなど、最適なソリューションを提案できることをアピールした。

不二越 「耐電食対応軸受」:左が樹脂コーティング軸受、中央がセラミック玉軸受、右がインサート成形軸受

 

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自動車技術会、第72回自動車技術会賞 授賞式を開催

1年 9ヶ月 ago
自動車技術会、第72回自動車技術会賞 授賞式を開催 in kat 2022年06日10日(金) in in

 自動車技術会(JSAE)は横浜市のパシフィコ横浜で、「2022年春季大会」会期中の26日に「第72回自動車技術会賞」授賞式を開催した。トライボロジー関連では、以下のとおり表彰がなされた。

■浅原賞学術奨励賞 「ピストンオイルリング挙動の可視化によるオイル上がりメカニズムの解明」 佐久間 亨氏(トヨタ自動車)

 将来さらなる強化が見込まれるエンジンの排気規制への対応に向けて、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PN)の発生要因の一つであるオイル消費の提言は必要不可欠となっている。しかし、オイル消費は非常に多くの因子が複雑に影響し合い発生する事象であり、メカニズムの全容解明は困難である。

 受賞者はオイル消費の主因であるオイル上がり減少に着目し、メカニズム解明に必要なオイル挙動に関する油膜厚さ、ピストンリング挙動などの各種可視化技術を構築し計測。得られた結果から、エンジン燃焼工程ごとに減少を切り分けて推察を重ね、オイルリング上面のシール性の影響を明確にするとともに、さらなるオイル消費低減手法を提案した。

 これはオイル消費の全容解明に大きく貢献するものであるとして、評価された。

左から、プレゼンターの寺師茂樹JSAE前会長(トヨタ自動車)、佐久間氏  ■技術開発賞 「低燃費と高出力を両立したホットインサイド2ウェイツインターボV6ディーゼルエンジン」 横田晋司氏・尾頭 卓氏・大塚孝博氏(豊田自動織機)、生駒卓也氏・北谷裕紀氏(トヨタ自動車)

 将来のカーボンニュートラルの実現に向けて世界で燃費規制が強化される中、本V6ディーゼルエンジンの開発では、エンジンダウンサイジングと、ピストンピンDLCコーティングや0W-20低粘度エンジンオイルの採用などによるフリクション低減、さらには低流動燃焼による冷却損失の低減によって、燃費の大幅な改善を図った。

 その一方で、ダウンサイジングしながらもディーゼルエンジンに求められる力強い低速トルクとダイレクト感、さらにはドライバーの感覚に合った爽快な加速感を実現するために、シングルターボによる過給特性とツインターボによる大給気量の高過給特性を併せ持つ可変ノズルベーン付きの2ウェイツインターボシステムと、その効果をより高めるためにVバンクの内側に廃棄システムを配置したホットインサイドレイアウトを採用した。これらにより、低燃費と高出力を高い次元で両立した点が高く評価された。

左から寺師前会長、横田氏、尾頭氏、大塚氏、生駒氏、北谷氏

 

「リチウムイオンキャパシタの高耐熱化技術」 三尾巧美氏、小松原幸弘氏、大参直輝氏、小林央人氏、西 幸二氏(ジェイテクト)

 自動車の電動化、先進運転支援システムの急速な普及に伴う車両電源の負荷軽減のため、出力性能に優れたキャパシタを採用するケースが増える傾向にある。

 本技術は、実用・市販化されたキャパシタの中で、最もエネルギー密度に優れるリチウムイオンキャパシタの電解液の改良に加え、電解液と電極材料の相性を考慮した組み合わせとすることにより、世界で初めて自動車車室内の温度要求である—40~+85℃の動作温度範囲を実現したもの。

 同キャパシタを活用した電源システムを自動車車室内に搭載する場合、冷却・加熱装置が不要となるため、車両搭載性やシステム効率が飛躍的に改善される。さらに自動車だけでなく、鉄道や大型農建機などの電動化、再生可能エネルギーの短周期の電力変動吸収などにも活用でき、カーボンニュートラル実現に大きく貢献する技術として高く評価された。

左から寺師前会長、三尾氏

 

「高筒内圧エンジン用 Bi合金オーバレイ軸受の開発」 佐藤広樹氏・須賀茂幸氏・杉谷浩規氏・児玉勇人氏・棚橋大氏(大豊工業)

 近年、ディーゼルエンジンにおける排気・燃費規制強化の対応として、高筒内圧化などの取組みが行われている。これに伴い、エンジン用すべり軸受はより過酷な条件で使用される傾向にある。今回、耐焼付き性を低下させることなく、耐疲労性を大幅に向上させた新たなすべり軸受を開発した。

 開発品は、すべり軸受のオーバレイとして世界で初めてBi-Sb(ビスマス・アンチモン)合金を用いており、従来の純Bi オーバレイで課題となっていた耐疲労性と耐酸化性を、Sb との合金化により飛躍的に向上。さらに、Sb添加量の最適化により異物ロバスト性にも寄与している。

 これらの技術をディーゼルエンジンの軸受に用いることで、信頼性と低燃費を両立し、新排気・燃費規制に対応できることが高く評価された。

左から寺師前会長、佐藤氏、須賀氏、杉谷氏、児玉氏、棚橋氏

 

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日本トライボロジー学会、2021年度学会賞 授賞式を開催

1年 9ヶ月 ago
日本トライボロジー学会、2021年度学会賞 授賞式を開催 in kat 2022年06日09日(木) in

 日本トライボロジー学会(JAST)はこのほど、「2021年度日本トライボロジー学会賞」の受賞者を発表した。ベアリング、潤滑関連では、以下のような受賞があり、オンライン開催された「トライボロジー会議 2022 春 東京」の会期中の5月24日に授賞式が開催された。

論文賞 「Estimation Method of Micropitting Life from S-N Curve Established by Residual Stress Measurements and Numerical Contact Analysis」
長谷川直哉氏、藤田 工氏(NTN)、内舘道正氏(岩手大学)、阿保政義氏、木之下博氏(兵庫県立大学)

 自動車や産業機械の内部摩擦の低減に向け、潤滑油の低粘度化が進んでいる。また、自動車などの電動機では高速化が進み、潤滑油の使用温度が上昇している。いずれも、転がり軸受においての油膜厚さの低下要因であり、ピーリング(論文中ではMicropitting と表現.突起接触部での転動疲労による微小はく離の集合体)発生を促進させるピーリング寿命は十分な油膜形成下の寿命に比べて短かく、予測が困難であった。

 本論文では、受賞者らが明らかにしたピーリングの発生メカニズムに基づいて、ピーリング寿命を精度よく推定する方法を提案している。提案法では、運転時に変化する表面粗さ(なじみ)から求めた突起接触部の応力計算値に、残留応力の測定値を足し合わせ、突起接触部に繰り返される相当応力を求める。

 次に、あらかじめ実験的に作成したS-N線図(相当応力とピーリング寿命の関係)からマイナー則を用いて累積疲労度を求めて寿命を推定する。この手順は、ピーリング寿命に影響を及ぼす、運転中の残留応力の変化と、表面処理および潤滑油添加剤によるなじみ挙動の変化を、実験を援用して考慮できる独創的な方法である。

 提案法は、ピーリングを抑制するための転がり軸受の表面粗さの設計だけでなく、表面処理や潤滑剤の適切な選定に活用できる。また、提案法の応用により、信頼性と低トルクを両立する転がり軸受の表面粗さの限界設計が可能になり、転がり軸受ユーザーのエネルギーロスの低減にも貢献できる。さらに、使用中の転がり軸受の継続使用の可否判定や転動疲労の迅速評価法にも活用できる。

上段:左から、プレゼンターの杉村丈一JAST前会長、長谷川氏、木之下氏
下段:左から内舘氏、阿保氏

 

「玉軸受のグリース潤滑における潤滑寿命の研究(第2報)―基油の浸透特性にもとづく潤滑寿命の解析―」
市村亮輔氏、小森谷智延氏、河内健氏、吉原径孝氏、酒井雅貴氏、董大明氏(協同油脂)、木村好次氏(東京大学、香川大学)

 本論文に先立つ第1報において、DIN 51821に準拠したアンギュラ玉軸受の潤滑寿命試験を実施して潤滑寿命に至る過程を調べ、運転初期のグリースの再配置により外輪端部に形成された油溜まりから付着層内の浸透によって軌道面に供給される基油の“Feed”と、そこから失われる“Loss”とのバランスが潤滑寿命を支配する主要因であるという結論を導いている。その第2報として本報では、この結論の妥当性の立証と潤滑寿命を評価する手順の導出を目的として、グリース中の浸透による基油の動きを解析した。

 まず構造の異なるウレアグリース3種類について、ろ紙を利用した浸透性試験により基油の浸透速度を評価する方法を開発し、その結果にLUCAS-WASHBURNの式を適用して、グリース中の基油の浸透性の指標として用いる等価半径を算出した。

 次いで運転開始から潤滑寿命に至る過程におけるグリースの状態を、油溜まりと付着層の等価半径の関係として表し、運転中に生ずるその変化を算定して、“Feed”と“Loss”のバランスが失われる点における等価半径を与える式を導いた。

 この方法による潤滑寿命の推定結果は潤滑寿命試験の結果と良好な一致を見せ、第1報の結論に理論による裏付けを与えるとともに、潤滑寿命試験を経ずに潤滑寿命を相対的に評価する手順を提案して、潤滑寿命の長いグリースを開発するーつの方向性を示している。

上段:左から、杉村JAST前会長、木村氏、董氏
中段:左から、酒井氏、市村氏、小森谷氏
下段:左から河内氏、吉原氏

 

「潤滑油の高圧物性(第5報)―ファンデルワールス型粘性方程式の導出―」
金子正人氏(出光興産) 

 潤滑油の粘度温度特性について、WALTHERの対数対数動粘度‐対数温度線形式が広く用いられている。しかしながら、WALTHER式は常圧における炭化水素油や石油製品類の動粘度の温度特性についての実験式であり、理論解析されておらず、そのままでは高圧粘度に適用することができないことが分かった。

 そこで本研究において、新たに高圧粘度に適用できる絶対粘度温度関係式の理論構築を行うこととし、絶対粘度と温度、圧力との関係について理論解析を行った。その結果、対数対数絶対粘度は温度の2乗に負比例することが分かり、各圧力における対数対数絶対粘度と温度の2乗に関する線形式を導出した。なお、この線形式は絶対零度で粘度が収束することが分かった。

 これと並行して、理想液体の粘性について思考実験を行った。既知の理想液体の状態方程式の絶対零度体積が圧力に依存せず一定であることから、理想液体の絶対零度粘度も圧力に依存せず一定であることが予想された。この思考実験結果は、理論解析結果と一致した。さらに、対数対数絶対粘度は圧力に比例することから、圧力を組み込んだ粘度圧力温度線形式を導出した。

 この粘度圧力温度線形式は、絶対零度粘度、粘性定数および圧力定数の三つの潤滑油の固有定数からなるvan der WAALS型粘性方程式であることが分かった。また、この式は理想液体の粘性方程式と一致した。このようにして導出したvan der WAALS型粘性方程式により、潤滑油の高圧粘度の推算が可能となった。また、本研究の結果から、帰納的に「絶対零度物性は圧力に依存しない固有定数である」という概念に辿り着き、他の物性(密度、比熱、熱伝導率、屈折率、電気抵抗率等)についても、同様にvan der WAALS型物性方程式の存在が予想される結果となり、今後の展開が期待される。

左から、杉村JAST前会長、金子氏

 

技術賞  「トランスミッション用シール付き転がり軸受の低フリクション化技術」
水貝智洋氏、佐々木克明氏、和久田貴裕氏(NTN)                                            

 CO2排出量削減に向け、自動車のトランスミッション用軸受には、長寿命に加えさらなる低トルク化が求められている。加えて、高速モータを用いた車両電動化の要求により、減速機用軸受には高速化への対応も求められている。本技術は、トランスミッションおよび減速機用シール付き転がり軸受の低フリクション化に関するものである。

 トランスミッション内の潤滑油にはギヤ摩耗粉などの異物が存在し、これが軸受の寿命低下を招く恐れがあるため、①接触シールを用いて異物侵入を防ぐ、②異物寿命に効果的な特殊熱処理を施すなどの対策がなされる。しかし、①はシールによる回転トルクの増加が避けられなく、かつ、高速回転下ではシールの適用限界速度を超えては利用できない。また、②は異物がない環境に比べると寿命低下が避けられない。

 本技術は、上記①に対して、接触シールのしゅう動面に半円筒状微小突起を設けることにより、油潤滑下でシールしゅう動面と内輪間に“くさび膜効果”による流体膜を発生させ、回転トルクを従来接触シール品比で80%低減し、非接触シールと同等にした。一方、突起高さは微小であるため、寿命を低下させるサイズの異物の侵入を遮断でき、異物がない環境と同等の軸受寿命を確保できる。また、本シールは、従来接触シールに比べ大幅に高い周速下でも使用できる。

 以上のように、本技術は、異物混入油中でも十分な寿命を確保しつつトランスミッション用軸受の回転トルクを低減でき、自動車の省燃費化に貢献できる。また、信頼性の向上により軸受サイズの小型化、また、自動車の軽量化に貢献できる。さらに、従来の接触シール付軸受に比べ2倍以上の周速で使用できるため、車両電動化に伴う高速化の要求にも応えることができる。

上段:左から、杉村JAST前会長、佐々木氏
下段:左から、水貝氏、和久田氏

 

「界面制御技術を用いた水溶性切削油の高性能化」
岡野知晃氏、浅田佳史氏、服部秀章氏(出光興産) 

 本技術は、金属の切削加工において広く用いられている水溶性切削油の性能向上に関する技術である。

 水溶性切削油の要求性能は、工具-被削材間の潤滑性、消泡性、防錆性などの水系潤滑剤特有の性能に加え、近年では工場における作業者の安全性を意識した作業環境性など多岐にわたり、これらの異なる性能を高い次元で実現する必要がある。

 中でも、水溶性切削油の主要な要求性能である潤滑性および消泡性は、主成分である界面活性剤(脂肪酸アミン塩)の種類に大きく依存する。これら潤滑性および消泡性は相反する関係にあり、これらを両立することは非常に困難とされていた。本課題を解決すべく、中性子反射率測定およびFM-AFMを用いた固/液界面における吸着特性評価手法を、動的表面張力測定を用いた気/液界面における吸着特性評価手法をそれぞれ新たに確立した。特に動的表面張力測定から算出されるパラメータ(最大動的表面張力低下速度(Vmax))を用いることで、固/液界面および気/液界面での吸着性の制御がそれぞれ可能となった。このように独自に確立した吸着特性評価および評価指標を駆使して見いだした、特殊な官能基を有する新たな脂肪酸アミン塩を適用することで、潤滑性および消泡性を高い次元で両立した。以上の知見を活かし、環境対応型高機能水溶性切削油としてダフニー アルファクールEX-1(エマルションタイプ)、WX-1(ソルブルタイプ)」をそれぞれ新たに開発し、上市した。

 また、近年ではカーボンニュートラルへの取組みから、水系潤滑剤への期待が高まりつつある。本技術は水溶性切削油に限定されず、各種水系潤滑剤に適用可能であるため、今後の水系潤滑剤の開発・性能向上への貢献が期待される。

上段:左から、杉村JAST前会長、浅田氏
下段:岡野氏

 

「次世代カルシウムコンプレックスグリースの開発」
渡遅和也氏、田中啓司氏、長富悦史氏(シェルルブリカンツジャパン)                                 

 これまで、鉱業や機械産業の発展とともに様々な潤滑グリースが開発されてきた。特に使用環境または運転条件が過酷化する中で高温性能に優れるウレアグリースやリチウム複合石けんグリースが開発され、最近ではカルシウムスルフォネート複合グリースのシェアが増加傾向にある。ここ数年海外においても、カルシウムを原料とした汎用のカルシウム石けんグリースの需要増やカルシウムスルフォネート複合グリースの生産量が年々増加しており、特に欧州での需要増の傾向が強く、現在では約15%以上がカルシウムを原料としたグリースで占められている。昨今のSDGsに向けた世界の取組みの大きな変遷の中で、この傾向はますます加速されると考えられ、環境資源、環境保全、ならびに安全で取扱性にも優れたカルシウムなどの原材料を用いた高機能潤滑剤への期待はより大きくなっていくものと考えられる。

 同社ではこれまで、上述した時代背景や環境ニーズに対して、入手性、取扱性、環境適合性の観点で最適であるカルシウム原料に焦点を当て、市場で要求される高温性能を満足するグリースの研究開発を行ってきた。そこで、環境性と実用性を両立した次世代カルシウムコンプレックスグリースとしてガダスS4 Z100Aを開発し、本年商品化した。本グリースは、従来のカルシウムコンプレックス増ちょう剤の組成技術を改良することで、これまでの石けん系グリースでは使用できなかった高温領域で優れた潤滑性を長期にわたり発揮できることから、機械寿命の延長や省資源化に貢献できる。また、高温性能だけでなく、耐フレッチング性などの特徴的な性能を有することから、様々な用途への展開が期待される。

上段:左から、杉村JAST前会長、田中氏
下段:渡邊氏

 

「インターカレーション法によって合成した有機-無機ハィブリッド型固体潤滑剤」
大下賢一郎氏、柳睦 氏、小見山忍氏(日本パーカライジング、佐々木信也氏(東京理科大学) 

 冷間鍛造の分野では、1934年に発明されたリン酸亜鉛皮膜が、潤滑皮膜として現在でも広く用いられている。この皮膜は極めて優れた潤滑性を有し、ほぼすべての加工形態に対応できる万能な皮膜である。一方で、成膜に化学反応を利用するため成膜効率が悪く、成膜工程から大量の排水や産業廃棄物、CO2が排出されるなど、環境負荷が高いことが指摘されている。このような背景から、2000年以降、生産性の向上と環境負荷低減を目的に、成膜に化学反応を利用しない塗布型潤滑皮膜への移行が国内外で徐々に進んでいる。

 本技術は、層状粘土鉱物の一種であるマイカの潤滑性向上を目的に、インターカレーション法によってマイカの層間、すなわち、へき開面に、有機系潤滑成分であるアルキルアンモニウムを担持させた有機-無機ハイブリッド型固体潤滑剤である。層間に担持されたアルキルアンモニウムはマイカの層間すべり性を向上させるため、高荷重かつ表面拡大を伴う塑性加工面においてスムーズにへき開し、新生面を効率的に保護することで、焼付きを抑制する。本技術を塗布型潤滑皮膜に適用することで、潤滑性はリン酸亜鉛皮膜と同等レベルを維持しつつ、成膜時間は1/10未満に短縮され、成膜工程から排出される廃棄物も10%未満まで低減することが可能となった。

 インターカレーション法とは、層状物質の層間に化学的特性が異なる他の成分を挿入する反応の総称である。層間に担持可能な成分の候補は無数にあるが、適切な成分を選択することによって、目的に応じた機能を自在にマイカに付与できる可能性がある。インターカレーション法が近い将来、固体潤滑剤の高機能化と地球環境保全に大きく貢献することを期待している。

上段:左から、杉村JAST前会長、佐々木氏、大下氏
下段:左から、柳氏、小見山氏

 

「転動体強化による転がり軸受の高機能化技術」
橋本翔氏、小俣弘樹氏、植田徹氏、岩永泰弘氏(日本精工)

 本技術は転がり軸受の転動体を強化することにより、軸受そのものの耐久性向上を実現する材料技術である。

 近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車や産業機器の省エネルギー化の要求はますます高まっている。したがって、様々な機器に使用される転がり軸受においても、軽量化や低トルク化することで社会ニーズに応えていかねばならない。このような背景から、転がり軸受に加わる荷重や潤滑状態は一層厳しくなり、表面起点型はく離などの表面損傷が加速されることが予想される。圧痕起点型はく離に代表される表面起点型のはく離寿命は、計算寿命よりも極端に短くなるケースがあるため、この現象に対して長寿命化する技術開発が重要である。一般的には、浸炭窒化などにより、はく離が生じる軌道輪の残留オーステナイト量や残留応力を制御することが有効である。

 一方で、これまでの研究から、軌道面に形成された圧痕縁からの疲労き裂発生には、圧痕縁に作用する接線力が重要な役割を果たしていること、転動体の表面粗さが大きくなるほど軌道輪に作用する接線力が大きくなることを明らかにした。以上から、はく離が生じる部材そのものではなく、相手材である転動体を強化し、使用に伴う表面粗さの劣化を抑制することによって、軸受そのものの耐久寿命を延長させるという新たな開発指針を得た。この指針に基づき、表面に微細な炭窒化物を析出させることで耐異物圧痕性や耐摩耗性を向上した転動体を開発した。本転動体を使用した転がり軸受は、標準仕様と比較して、異物混入潤滑において約2倍のはく離寿命を有し、コストアップを抑制しつつ高耐久化することが可能である。

 本転がり軸受は自動車トランスミッション用や工作機械用などに展開されており、様々なアプリケーションの省エネルギー化に貢献している。

上段左から、杉村JAST前会長、小俣氏、下段:橋本氏


 

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島貿易、高荷重トラクション試験機をトライボロジー・ラボに新設、デモ・サンプル試験を開始

1年 9ヶ月 ago
島貿易、高荷重トラクション試験機をトライボロジー・ラボに新設、デモ・サンプル試験を開始kat 2022年06日02日(木) in

 島貿易(https://www.shima-tra.co.jp/products/tribology)は、東京都中央区の同社本社内にあるトライボロジー・ラボに、英国PCS Instruments社製で、無潤滑/潤滑状態での摩擦特性を評価できるボールオンディスクタイプの多機能型摩擦摩耗試験機「ETM(Extreme Traction Machine)高荷重トラクション試験機」を導入し、デモンストレーションやサンプル試験を開始した。

ETM高荷重トラクション試験機

 

 トライボロジー・ラボではPCS Instruments社製トライボロジー計測器 (MTMミニトラクション計測器、EHD油膜厚計測器、USV高せん断粘度計) を常設し、デモンストレーションやサンプル試験を実施している。2008年に開設され2015年にリニューアル、部品・消耗品庫を設置してアフターサービス体制を強化しており、2016年からはイスラエルAtlantium社製紫外線水殺菌装置(HODシステム)の実機も常設し、オペレーショントレーニングやデモンストレーションを実施している。

 今回さらに、潤滑油などの多様なユーザーニーズに対応すべく、PCS Instruments社で新たに開発されたETM高荷重トラクション試験機をトライボロジー・ラボに常設することとなったもの。

 ETMの特徴は、①一般的にベアリング材として用いられるSUJ2相当の試験片で最大接触面圧3.5GPaが再現可能、②各試験片を独立したモータで駆動させることで、すべり率200%以上が再現可能、③様々な材質、表面粗さ、硬さの試験片の選択により幅広い摺動状態が再現可能、④FES自動ドレインシステムにより試験槽のクリーニング作業が簡単・短時間で実施可能、⑤3D-SLIMオプションの採用でボール表面のトライボフィルムの形成からはく離までの過程が観察可能、など。

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NTN、風力発電装置向けメンテナンスを開始

1年 9ヶ月 ago
NTN、風力発電装置向けメンテナンスを開始kat 2022年06日01日(水) in in

 NTNは、風力発電に特化したメンテナンス事業を行う北拓と提携し、風力発電装置向けのメンテナンスを開始する。NTNの状態監視システム(CMS)による高精度な軸受の異常検知と不具合部位の特定技術をもとに、北拓が持つ豊富な実績やノウハウを活用し、迅速に的確な設備点検と保全対応を提供する。

 さらに、実機の損傷状況を検証することで、CMSデータ解析のさらなる高精度化や各種軸受の性能向上にもつなげていく。

 同社では北拓との提携により、ユーザーの風力発電装置の状態監視、早期異常検知、補修、交換などの運用保守業務をサポートし、設備の高効率化と安定稼働を実現するとともに、カーボンニュートラルの達成に向けて、再生エネルギーの有効活用と風力発電市場の拡大に寄与していきたい考えだ。

 風力発電装置は、悪天候によるブレード損傷や経年劣化による故障などが発生する場合があり、その際は、速やかに設備点検を実施し、適切な部品交換やメンテナンスを行う必要がある。故障につながる異常の発見が遅れると、部品や機材の手配が間に合わず、長期間にわたる稼働停止時間(ダウンタイム)が発生する。

 NTNは、2012年より風力発電装置用状態監視システム(CMS)「Wind Doctor®」の販売と本システムによるモニタリングサービスの提供を通じて、設備の異常の早期検知に貢献してきた。本システムは、風力発電装置内の軸受周辺に取り付けたセンサから振動などのデータを収集・分析することで、軸受周辺の異常を早期に検知することが可能で、さらに不具合部位も特定できるため設備点検時間の短縮にも寄与する。現地の設備診断には技能員のノウハウが必要とされていたが、Wind Doctor®を用いることで速やかな異常の把握が可能となる。

 これまではWind Doctor®の診断結果に基づいてNTNから異常報告を行った後は、ユーザーが設備点検やメンテナンスの手配を行っていた。今回の提携により、補修軸受の手配を含めた一連の業務をNTNが一括して行うことが可能となり、ユーザーの手配工数を削減できるだけではなく、異常の検知後に速やかにメンテナンスを実施することで稼働停止時間を最小限に抑える。また、メンテナンスの際にWind Doctor®のデータを活用して、これまでにない迅速で的確な処置を実現するほか、CMSデータと詳細な損傷状況を比較検証することで、データ解析技術の一層の高精度化や各種軸受の性能向上につなげていく。

 今後、風力発電装置の大型化が進み、設備の安定稼働には状態監視の精度向上と正確なデータ解析結果に基づく適切なメンテナンスが一層重要になることから、NTNでは北拓との提携を通じて、高性能な軸受の供給からCMSによる高精度な異常検知、正確かつ効率的なメンテンナンスまで風力発電装置の運用に必要となる一連のサービスをワンストップで提供できるサプライヤーとして、風力発電装置の安定稼働と市場拡大に貢献していく。

 

Wind Doctorデータ収集装置の
ナセル内での設置状態

 

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エボニック ジャパン、国立西洋美術館リニューアルオープン記念を協賛

1年 9ヶ月 ago
エボニック ジャパン、国立西洋美術館リニューアルオープン記念を協賛kat 2022年06日01日(水) in

 エボニック ジャパンは、6月4日から開催される「国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」を協賛する。

 本展覧会は1年半の休館を経て、本年4月にリニューアルオープンした国立西洋美術館が開催する大型企画展で、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館と、国立西洋美術館のコレクションから展示内容が構成される。ドイツ・ロマン主義から印象派、ポスト印象派、20世紀絵画まで100点を超える作品とともに、ヨーロッパにおける自然表現が紹介され、フォルグヴァング美術館からは、晩年のゴッホの代表的な風景画である《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院の裏の麦畑)》が初来日する。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《刈り入れ(刈り入れをする人のいる サン=ポール病院裏の麦畑)》 1889年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館 © Museum Folkwang, Essen


 エボニック インダストリーズ(エボニック)はドイツ・エッセンに本社を構え、“Leading beyond chemistry(化学のその先へ)”というスローガンとともに革新的で収益性の高い持続可能なソリューションを世界100ヵ国以上で展開している。

 エッセンの文化拠点であるフォルクヴァング美術館は、本展覧会の展示品のコレクターであるカール・エルンスト・オストハウスがドイツ・ハーゲンに1902年に設立したフォルクヴァング美術館とエッセン市立美術館が1922年に統合された経緯があるが、エボニックの前身企業の一つであるTh. Goldschmidtの創業家がそのエッセン市立美術館の設立に際し大きな貢献をしている。その設立当初からの深い関わりもあり、日本でのこの貴重な機会をサポートするため、日本法人であるエボニック ジャパンがこの大型企画展の協賛を決定したもの。

 「エボニックのミッションは、化学という枠を超えて、暮らしをより良くすること。素晴らしい作品を通じて日本とドイツという国を超えた文化交流、そして、皆さまの暮らしを豊かにするお手伝いができることをうれしく思う」とエボニック ジャパン社長のフロリアン・キルシュナー氏はコメントしている。

 本企画展の概要は以下のとおり。

・会 期:2022年6月4日(土)~9月11日(日)

・会 場:国立西洋美術館(東京・上野)

・開館時間:午前9時30分~午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで)

・休館日:月曜日、7月19日(火)
※ただし、7月18日(月・祝)、8月15日(月)は開館

・料金:一般2000円、大学生1200円、高校生800円※事前予約制

・展覧会公式サイト(https://nature2022.jp

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エボニック、エコヴァディス社サステナビリティ調査で最高位のプラチナ評価を再度獲得

1年 9ヶ月 ago
エボニック、エコヴァディス社サステナビリティ調査で最高位のプラチナ評価を再度獲得kat 2022年06日01日(水) in

 エボニック インダストリーズは、サステナビリティ・パフォーマンスについて、格付け機関エコヴァディス社(EcoVadis)から、化学業界およびその他すべてのセクターにおいて、今回の調査対象企業の中で上位1%(2022年1月1日以降に発行されるスコアカードの基準で総合得点が75~100点)に入る高い評価を受け、最高位のプラチナ評価を獲得した。同社のプラチナ評価獲得は、2021年に続いて2回目となる。

 

 エボニック サステナビリティ担当執行役員のトーマス・ヴェッセル氏は「エコヴァディス から再びプラチナ評価をいただけたということは、当社のサステナビリティ戦略が認められたということを意味する。我々はステークホルダーとの密接な対話を通じて、バリューチェーン全体におけるサステナビリティを推進している。自社の生産とビジネスプロセスだけでなく、サプライチェーン、とりわけ顧客にとっての製品のメリットや用途にも常に注意を払っている」とコメントしている。

 エコヴァディスのサステナビリティ評価では、環境、労働と人権、倫理、持続可能な資材調達の各分野における企業のサステナビリティ・パフォーマンスが評価の対象となるほか、2500以上の公開情報をもとに評価が行われる。

 エボニックは、化学業界のイニシアチブ「Together for Sustainability(TfS:サステナビリティのための協力)」の創設メンバーで、本イニシアチブのパートナーであるエコヴァディスが実施する評価を毎年受けている。TfSでは、サプライヤーに対し統一性のある監査と評価を実施し、さらにトレーニングを行うことで、グローバルサプライチェーンの透明性と持続可能性を高めることを目的として活動している。

kat
Checked
30 分 23 秒 ago
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