本年9月18日~23日開催EMO Hannover 2023の見どころを紹介
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2023年07日14日(金)
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ドイツ工作機械工業会(VDW)は7月5日、ドイツ・フランクフルトにあるクラシックカーのための総合施設Klassikstadt(クラシックシュタット)で「EMO Hannover 2023 Preview」を開催した。本年9月18日~23日にドイツ・ハノーバー国際展示会場で4年ぶりにリアル開催される「EMO Hannover 2023(「EMOハノーバー2023)」の見どころを紹介するもので、ドイツ本国のほか日本など世界30ヵ国から、70名超のジャーナリストが参加した。
ここでは同プレビューイベントの概要を通じて、EMOハノーバー2023の見どころを紹介したい。
プレビューイベントの会場となったクラシックシュタット
オープニング・スピーチを行うVDW報道・広報部長のSylke Becker氏
EMOハノーバー2023のハイライト
プレビューではまず、VDWの現EMOハノーバー マネージングディレクターのヴィルフリート・シェーファー(Wilfried Schaefer)氏と次期マネージングディレクターのマルクス・へーリングス(Marks Heerings)氏が、インタビュアーの質問に答える形で、EMOハノーバー2023の見どころを紹介した。
EMOハノーバーは「製造業のイノベーション(Innovate Manufacturing)」をテーマに掲げているが、EMOハノーバー2023では産業界が現在直面する課題に対処するための「未来への洞察(Future Insights)」として、「ビジネスの未来(The Future of Business)」、「コネクティビティの未来(The Future of Connectivity)」、「生産におけるサステナビリティの未来(The Future of Sustainability in Production)」の三つの未来にフォーカスする。
ビジネスの未来では、新たな市場、新たなビジネスモデル、ビジネスチャンスに焦点を当てる。高齢者も長く働けるような働き方改革につながるビジネスモデルの構築のヒントにもなる。
コネクティビティの未来では、インダストリー4.0(Industry 4.0)、産業IoT(IIot)、デジタル・ビジネスモデル、予知保全、機械学習、コネクティビティ、相互運用性、人工知能(AI)・拡張・仮想現実アプリケーションなどの動向を取り上げる。今回、工作機械の情報を簡単にデータ化し収集するインターフェイスの規格「umati(universal machine technology interface)」のスタンドでは、工場内や工場間の効果的なネットワーキングの基盤として、機械・プラントエンジニアリング業界向けの接続イニシアチブの最新開発状況を紹介することを目的とした、大規模なライブ・デモンストレーションが行われる。機械の状態監視データを活用することで最適な予兆保全が図れるなど、サプライヤーとしてはデータを活用することによる新しいサービスの提供の形が、ユーザーとしてはデータが新しいビジネスモデルにどう活用できるかを考える場となる。
生産におけるサステナビリティの未来では、今日の最も喫緊の課題の一つで、すでに投資の計画立案にも取り入れられているテーマである、サステナビリティの統合について取り上げる。エネルギーの効率化に焦点を当て、生産のあり方を提示する。
7月現在、出展社についてもまだ募集中で、サステナビリティ、協働ロボット(コボット)など、トピックスごとにパッケージブースで提供できる。
来場者はまた、www.emo-hannover.deのチケットストアでオンライン登録すると「マッチメイキング」オファーを受け取り、そこでプロフィールと関心のあるテーマを入力することによって、同じテーマを扱う出展企業とのマッチングが可能になる。
見どころを紹介するシェーファー氏(左)とへーリングス氏(右)
EMOハノーバー2023に見るumatiの進展
工作機械やロボット、射出成形機などの情報を簡単にデータ化し収集するインターフェイスの規格「umati」の現状、EMOハノーバー2023で披露される内容に関して、umatiの規格策定の中核を担うVDWマネージングディレクターのアレクサンダー・ブルース(Alexander Broos)氏による基調講演が行われた。
汎用・拡張・セキュア性が高いため世界標準になりつつある通信規格「OPC UA」を通信プロトコルとして採用し、umatiという共通の言語・辞書を用いることで、さまざまな機械同士が互いに連絡を取ることができる。EMOハノーバー2023の中心テーマであるコネクティビティの未来、ビジネスの未来、サステナビリティの未来において、umatiは主導的役割を果たす。コネクティビティの未来はもちろんのこと、ビジネスの未来において、新たな金であり石油であるデータをカスタマーとシェアすることで、より上位のビジネスを獲得できる。また、サステナビリティの未来では、umatiによる効率向上、省資源、CO2低減、さらにはコスト削減が図れる。
umatiのパートナー企業はすでに、ドイツに次いで、スイス、イタリア、日本と増えつつあり、その数は300社以上となっている。
EMOハノーバー2023のumatiスタンドでは、umatiを活用した大規模なライブ・デモンストレーションが行われる。工作機械だけでなくロボットや三次元形状測定機、3Dプリンターなど、umatiがその適用領域を広げてきていることを示しつつ、各機械の稼働状況が見える化できることをアピールする。
umatiの現状について講演するブルース氏
90秒ピッチ/ミニ展示会を通じた出展各社の製品・技術紹介
プレビューイベントではまた、EMOハノーバー2023の42 ヵ国1750社超 (7月5日現在)の展示企業を代表して、約30社による1社あたり90秒というピッチが行われたほか、同展示企業各社によるミニ展示会が併設され、EMOハノーバー2023で披露される製品・技術の一端が紹介された。ここではbmt関連の企業展示の一部を紹介したい。
イグス
イグスは、リサイクルへの簡単なデジタルアクセスを提供する「Chainge」オンラインプラットフォームを紹介。同社は循環型スタートアップ企業cirplusに投資し、ユーザーが不要になったケーブル保護管(イグスの商標では「エナジーチェーン」)について、他社製ケーブル保護管を含めてリサイクルできる同オンラインプラットフォームを構築している。イグスのミニブースでは、工具不要で開閉できる頑丈なケーブル保護管「エナジーチェーンE4Q」のリサイクル品も展示。性能・耐久性は新品と遜色ないレベルを実現、サステナブル需要の高まりから新品と同等の価格でも受注は増加傾向にあるという。エナジーチェーンでのリサイクル品の比率が高まる中、すべり軸受についてもリサイクルを検討し、ドイツ・ケルン本社内にある300m²を超えるすべり軸受の試験施設において耐用年数予測につながるデータを蓄積するための耐久試験を実施中という。
イグスのスタンド
DMG森精機
EMOハノーバーの展示会場に巨大な街「DMG MORI CITY―The home of technology」を設け、最大4台の刃物台を搭載するターレット型の複合加工機、横型MCや5軸フライス盤から、プロセス統合までを披露する。ハイライトは、①プロセスの統合:複数のプロセスを1台の工作機械に統合することで、生産性の向上と資源の節約、CO2排出量の削減を実現、②自動化:プロセスの生産性が向上し、年中無休で生産される部品の品質が保証され、機械の稼働時間が長くなり、サステナビリティが向上する、③デジタルトランスフォーメーション(DX):ワークフローを改善し、新たな機会を創出し、消費電力を削減することで、競争上の優位性を確立、など。
DMG森精機によるピッチ
オークマ
新世代CNC「OSP-P500」を欧州で初披露する。①デジタルツインの革新:機械も制御も創る同社ならではの精緻なモデルとリアルな制御で、機械および加工を忠実に再現。現場の作業をデジタルで支援する「デジタルツイン」、②操作性の革新:初心者でも超簡単、熟練技術者の現場力を活かす「スマートオペレーション」、③加工の革新を支える2倍の演算性能:精密加工と快適な稼働を提供「スマートコントロール」、④脱炭素ソリューション:高生産性・高精度と環境対応を機械が自律的に両立、⑤強固なセキュリティ機能:ネットワークにつないでも安全、安心。安定稼働と資産を守る、の五つのソリューションでユーザーの生産性の向上と、ものづくりを取り巻く社会課題の解決に貢献する。
オークマのスタンド
FLACO
水で希釈して使用する水溶性切削油(クーラント)のミキシングと濃度管理、供給を行う可搬式装置「FLACO KSSシリーズ」を紹介。クーラントは通常、濃度7%で設定した場合でも、機械を稼動してもしなくても水の蒸発により濃度が濃くなり8%、10%と変化する。同装置では、設定濃度に維持できるよう水を自動で継ぎ足すなど性能の安定したクーラントを工作機械に供給することで、①NG品を出さない安定した加工プロセスを実現、②工具の摩耗を低減し工具寿命を延長、③エマルションの分離、転相、沈殿物の発生がなく工具損傷のリスクが少ない、④菌の増殖を抑えクーラントの寿命延長を実現するとともに、作業者を保護する、⑤自動供給バルブなどの採用で定量供給を実現、工作機械の周囲を清潔に保つことができる、など加工効率の向上とコスト削減、作業環境改善という付加価値を提供する。
FLACOによるピッチ
Hofmann
接触モニタリング、衝突モニタリング、ドレッシング(目直し)モニタリングなどの機能によって、研削プロセスの信頼性を高めるアコースティック・エミッション・システム「AE 9000」を紹介。
接触モニタリングはAE信号の評価によって、研削砥石とワークが接触しているかどうかを確認。これによって砥石の空振りを避け、無駄な研削動作・加工時間の増大につながらないようスピンドル動作を正しく制御する。
衝突モニタリングは、AE信号が設定した閾値を超えた際にアラームを発し加工サイクルを停止。機械とワークに損傷を与えることを防止する。
ドレッシングモニタリングは、AE信号によってドレッシングの状態があらかじめ設定された要求形状のための均一な信号であることを確認、不必要なドレッシングプロセスを避けることができる。
Hofmannのスタンド
プレビューの全参加者