提供:在日米国大使館 バラク・オバマ氏が第44代米国大統領に就任した。環境対策を兼ねた「グリーン雇用」のため、今後10年間で1,500億ドル(約15兆円)を投資する方針を表明しているが、中でも「科学技術・イノベーション政策」として、基礎研究への投資拡充を掲げていることは、腰をすえた科学技術振興政策として期待したい。
すでに公表されているオバマ政権の科学技術政策メンバーとしては、科学技術担当大統領補佐官に環境・エネルギーを専門とするハーバード大学教授のジョン・ホルドレン氏を、大統領科学技術諮問委員会共同議長として同氏と、1989年にノーベル生理学医学賞を受賞しているハロルド・バーマス氏、ゲノム専門のマサチューセッツ工科大学教授のエリック・ランダー氏を指名した。また、海洋大気局局長に環境・海洋を専門とするオレゴン州立大学教授のジェーン・ルブチェンコ氏を、エネルギー省長官に1997年にノーベル物理学賞を受賞しているスティーブン・チュー氏を指名している。この顔ぶれからも基礎研究の充実と次世代へのイノベーションに向けたオバマ大統領の強い意志がうかがえる。
「脱石油」を中心とする風力発電など代替エネルギーの技術開発のほか、ES細胞、iPS細胞などライフサイエンス研究など、われわれのテーマとする人と環境に貢献する技術の創生と、それらに基づく雇用の創出にむけた動きからは目が離せない。
ところで、オバマ氏の選挙中に、ミシガン大学機械工学科のジョン・ハート准教授が、ナノ・リソグラフィーを用い1億5000万本のカーボンナノチューブ(CNT)を使ってオバマ氏の顔を作った。ハート氏は「カーボンナノチューブはその電気特性と熱特性など次世代材料として期待度の高い材料だが、商業的利用に、大量のナノチューブをまとめる効果的な方法が必要」と語ったというが、オバマ大統領の科学技術信仰政策への期待がこめられたセリフであろう。カーボンナノチューブはMEMS(微小電気機械、マイクロマシン)など微細・微小なメカの潤滑要素としても注目されている。
わが国でも先ごろ、米国はじめ各国にならいグリーン・ニューディール政策の模索を表明しているが、こうした基礎研究の強化とも歩調をそろえた、堅実で力強い取り組みであってほしいものだ。