警察庁のまとめによると、わが国の2008年交通事故死者は前年比約10%減の5,155人だった。「2010年までに5,500人以下」という政府目標を前倒しで達成した。分析では、飲酒やスピードの出しすぎによる死亡事故が2?3割減少、後部座席シートベルトの着用率向上が奏功したとしている。
2007年6月14日に「改正道路交通法」が成立し、2008年6月1日から後部座席のシートベルト着用が、運転席・助手席と同様に義務化されている。
提供:タカタ 一般的な3点シートベルトは緊急時ロック式巻き取り装置(ELR、Emergency Locking Retractor)と呼ばれる装置を内蔵、衝突の衝撃で乗員の上半身が前のめりになるとその分のベルト引き出しをセンシング、それ以上ベルトが引き出されないようロックをかける。
自動車の衝突時にベルト(ウェビング)のたるみをとり除くことにより、乗員が前方に動き出す前に確実に固定し乗員の保護性能を向上する目的で装備されているプリテンショナー(図1、Pretensioner)という機構も標準装備となってきている。
提供:東海理化 プリテンショナーの作動には通常火薬を用い、火薬が爆発する際に発生するガスの力でウェビングを引き込む。衝突後10?15m/秒でプリテンショナーの作動が開始し、巻き取りは数m/秒内に完了する。
リトラクターの回転シャフトにトーション・バーを用いて、衝突時にそのバーを捻ることでウェビングを数cm引き出し、乗員の身体にかかる負担を軽減する「フォース・リミッター」(図2)という装置が働くタイプもある。
近年では、走行中に車間距離が不足するとシートベルトが軽く引き込まれ、追突が避けられないような状態でシートベルトが強く引き込まれる、センサー+モーター内蔵の「モーターライズドシートベルト」(タカタ)や、従来の衝突時に働く「プリテショナー&フォースリミッター機構」に、「モーターによるベルト巻き取り」を加えることにより衝突時の初期拘束性能が向上した、プリクラッシュセイフティシステム対応の「モーターリトラクタ付シートベルト」(東海理化)など、さらに先進安全的なシートベルト機構も登場してきている。
シートベルトは安価ながら効果が高いシステムといわれる。警察庁では2009年の目標を交通事故死者5,000人以下としているが、この信頼性の高いメカニズムを利用することで、不測の事故による生命の危機がいくらかでも減少できるよう、シートベルト装着率のさらなる向上を期待してやまない。