本作は、第4回「このミステリーがすごい大賞」(このミス)大賞を受賞した、現役医師・海藤 尊原作の同名小説を映画化したもの。成功率60%といわれる心臓手術「バチスタ手術」を26例連続達成していた東城大学付属病院の専門集団「チーム・バチスタ」だが、あるとき、その手術が3例連続で失敗するという事態に。それは、手術室という密室の事故か殺人か?心療内科医の田口公子(竹内結子)は内部調査を担当、事故として調査を終了しようとしたが、厚生労働省から派遣された変わり者の役人・白鳥圭輔(阿部 寛)が現れ、二人はコンビを組みチーム・バチスタのメンバーを再調査する。
「バチスタ手術」の学術的な正式名称は「左心室縮小形成術」。拡張型心筋症に対する手術術式の一つで、肥大した心臓を切り取り小さくし、心臓の収縮機能を回復させるもの。このバチスタ手術も心臓を停止させ心臓への血流を遮断して行うため、人工心肺を取り付ける場面が出てくる。
人工心肺は、空気圧などにより駆動する血液ポンプ(人工心)により全身への血液循環を行いつつ、人工肺により肺のガス交換(酸素の取入れと二酸化炭素の排出)を行う。血液ポンプでは近年、ポンプの駆動軸を非接触で耐摩耗性に優れた動圧軸受で支え、長期安定性に優れるメカニカルシールで血液の駆動部への流入を抑制、パージ液でポンプの冷却とポンプ内に漏入した血液の凝固防止やモータなどの冷却を行うものも開発されてきているという。
本作では、原作で心療内科医の主人公・田口公平を田口公子というほのぼの系の若い女性に変えるという大胆な脚本となっており、ひねくれ者の白鳥とのやりとりがよりコミカルに描かれている。部外者の彼女がチーム・バチスタを調査し、バチスタ手術というものを学習していく感覚は我々に近い。恐る恐る手術の様子を観察している。緊張したシーンの続くなか、彼女の走り書きする「ゆるキャラ」観察絵日記は、場の空気を好転させるほほえましい要素となっている。