材料高騰が長期化し、設備投資が鈍化、1万円台を割る株安、100円を割る円高の続くなか、日本自動車工業会は先ごろ、米国新車販売が1,400万台に届かないとの見通しを発表した。サブプライムローン問題に端を発する景気減速、原材料高、円高、リーマン・ブラザーズの経営破綻による金融不安の連鎖などが思いのほか響いている。とはいえ北米需要がこのまま低迷が続くとは思われず、各社とも09年後半から持ち直すとの見方を示しているが、並行して立ち遅れている欧州の自動車市場開拓に向かう。
? 環境意識の高い欧州では二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出量を1990年比で20%削減する数値目標を設定、排出全体の2割強を占める交通輸送部門の排出削減を加速させるため、EU市場での自動車各社に走行1kmあたりの平均CO2排出量を140gに削減することで、欧州委員会(EU)と日本自動車工業会(JAMA)で合意している。そこで燃費のよいハイブリッド車やディーゼル車、小型ガソリン車の採用が加速すると見られているが、中でもハイブリッド車に加え苦手の小型車に注力し始めたトヨタが注目されている。
提供:トヨタ自動車 11月から発売を開始するトヨタ「iQ」は、4人乗りにもかかわらず全長2,985?×全幅1,680?、ホイールベース2,000?、排気量996ccの超小型車である。ガソリンエンジン2種類とディーゼルエンジン1種類の計3種類があり、一部タイプでの走行1kmあたりCO2排出量は規制量を大幅に下回る99g。これを実現するメカは、直列3気筒アルミブロックDOHCエンジンでのエンジンオイル粘度適正化によるフリクション低減を図る簡素なヒートマネジメント機構、エンジンとディファレンシャルギヤの位置関係を反転させギヤをタイヤとともにエンジンの前方に配置するディファレンシャルギヤ反転、空間を有効活用したエンジン配置としフロントを短縮するため高い位置に置いたステアリングギヤボックスなど、5年の開発期間を投じての徹底的なダウンサイジングを図るものだ。
? トヨタでは小型化、軽量化、コストダウンなどのメカや機械要素のノウハウは今後の小型車開発に応用していくとしており、iQが成功するかどうかが今後の小型車戦略の鍵となると見られる。
? 北米市場回復に先立ち、日系自動車メーカーが先進の環境対応技術をもって欧州市場開拓にめどをつけることを期待してやまない。