第195回 2014日本ダイカスト会議・展示会を開催、熱処理やブラストなどの表面改質技術を多数紹介
日本ダイカスト協会( http://www.diecasting.or.jp/ )主催の「2014日本ダイカスト会議・展示会」が11月13日~15日の三日間、横浜市西区のパシフィコ横浜で開催、展示会では136企業・団体が出展した。
ダイカストとは、溶融金属を精密な金型に圧入することにより、高精度で鋳肌の優れた鋳物をハイサイクルで大量に生産する鋳造方式の一種。ダイカストの金型は熱間工具鋼などで作られ、ダイカストマシンに取り付けて、溶融したアルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金などを圧入して鋳造する。その工程はほぼ自動化されており、生産性の高い大量生産に適している。ダイカストは、他の鋳物に比べて寸法精度が高く、強度に優れ、鋳肌が滑らかで美しく、機械加工も少なくて済む。このような特徴から、金型などに多く使用されており、それに伴い様々な表面改質が適用される分野の一つ。今回の展示会でもコーティング、熱処理、ブラストなどの受託加工を行う企業や装置メーカーが数多く出展した。
オリエンタルエンヂニアリングは、プラズマCVD(PCVD)により各種セラミック膜、DLC膜を成膜した金型サンプルなどを出展した。PCVDは、一度の工程で真空を破らずに窒化などの拡散硬化処理とコーティングの複合処理が可能なことで比較的簡単に処理が可能だとした。また、新開発の膜として硬さHV4000以上で優れたトライボロジー特性、耐酸化性、耐溶損性、離形性、耐ヒートチェック性を有する「スーパーボロンコーティング」を紹介。この被膜は、PCVDによりTiNとTiAlN、TiAlBNを積層した多層膜で、アルミダイカスト金型・押出金型などの熱間加工用金型から、高張力鋼板加工用金型などの冷間加工用金型まで幅広く適用できるという。
大同DMソリューションは、素材から熱処理、コーティングを一貫して提案できる事業内容の詳細と、コアピンメーカーであるスグロ鉄工と共同で提供する短納期・高品質の鋳抜きピンの供給体制を紹介した。表面改質のラインアップでは、塩浴窒化やガス浸硫窒化、ガス軟窒化、イオン窒化などの熱処理、特殊窒化処理と微粒子ピーニングとPVDコーティングの複合処理「アミコートシリーズ」、耐ヒートチェック性と耐溶損性に優れ、ダイカスト金型に適した表面処理として「アミナイトSS」をPRした。
メックインターナショナルは、アルミ溶湯の保温性、湯流れ性を向上させ、金型への耐溶損性も向上させるアルミダイカスト用の「カーボンコーティング」を提案。炭素膜によって溶湯と鋳造型の基材が直接接触することが防止され、鋳造型への溶湯の焼付きや離型抵抗の増大を抑制できるなどのメリットから、アルミダイカスの入子、ピン、スリーブ、チップなど、アルミ溶湯が接触する部品への適用を促した。RTMは、金型の初期微小クラックの補修とともに耐久性を向上する技術を紹介した。この技術は、レーザー溶接を用いて耐熱性に優れた金属複合化層を被覆し耐久性を向上させ、独自の窒化処理技術「タイマ処理」と複合することにより耐ヒートチェック性や耐溶損性を兼ね備えた表面組織を形成する。
熱処理やコーティングで受託加工の提案が中心に行われる中、ブラスト関連では装置メーカーの出展が多く見られた。ブラストの総合メーカーであるニッチューでは、ダイカスト製品用のハンガータイプショットブラスト装置「HBF-156」の実機を展示。同装置は、投射スピード用インバータや高性能セパレータロータリースクリーンを標準装備。ブラスト室が2室装備してあり、1室で作業者がワークの着脱をしている間、区切られた別の1室でブラスト処理を行うことができるため、効率的な作業が可能。バリ取り、肌調整用ショットブラスト、打痕のない処理もハンガー型により可能であるとした。また、ステンレスカットワイヤーや合金アルミカットワイヤー、亜鉛ショットなど、様々な研削材の紹介も行った。
野村ユニソンは、モジュール型エアーブラスト装置「NU-BLAST11」の実機を展示。同装置は、製品を1個ずつ自動でブラスト加工することをコンセプトに開発されており、研削材をノズルから狙った箇所にピンポイントで投射することが可能なため、製品ごとにバラつきがなく均一に仕上がる加工を実現している。また新東工業は、ダイカスト生産現場で期待される・安全・品質・環境、さらにコストダウンを実現するショットブラスト装置の改良提案やダイカスト金型の寿命向上、ダイカスト製品の不良低減などの技術を紹介した。