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第198回 人とくるまのテクノロジー展2015開催、環境保全と信頼性向上に貢献する表面改質技術

 自動車技術会は5月20~22日、横浜市西区みなとみらいのパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2015」を開催、環境や安全関連などのテーマを中心に各種の次世代技術の出展がなされた。ここでは同展での出展技術のうち、環境、特に燃費改善など環境保全に関わる技術を紹介したい。

トヨタ自動車のブーストヨタ自動車のブース 自動車メーカーでは、トヨタ自動車が昨年12月に市場に投入した燃料電池車(FCV)「MIRAI」を出展、高圧水素タンクや小型化と世界トップレベルの出力密度を実現する燃料電池FCスタックのカットモデルを置いて、究極のエコカーの姿を提示した。また、マツダが4代目となる新型ロードスターを展示、世界一の高圧縮比(14.0)を達成し、燃費と低中速トルクを従来比で15%改善した新世代高効率直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.5」の搭載と、軽快なシフトフィールと大幅な軽量・コンパクト化を実現したFR用6速トランスミッション「SKYACTIV-MT」の採用などで、走りの愉しさと省燃費性能を両立する先進の内燃機関技術を示した。

エコカーのエンジンの耐久性を支える表面改質技術

大豊工業のブース大豊工業のブース ハイブリッド車などエコカーでは、エンジンのオン・オフが頻繁に行われるためエンジン油の油膜の形成が難しく、従来なじみ性を受け持っていた鉛成分が環境面から使えない。この状況下で、クランクシャフトの回転を支えるエンジンベアリングの耐摩耗性を確保する狙いから、固体潤滑剤を分散させた樹脂層を施した鉛フリーの固体潤滑オーバレイエンジンベアリングが大豊工業や大同メタル工業などで出展された。

各種ピストンリングを展示(日本ピストンリグ)各種ピストンリングを展示(日本ピストンリグ) また、 燃焼ガスのシール機能やエンジン油のコントロール機能、ピストンで受けた熱をシリンダへ逃がす伝熱機能、ピストン姿勢のサポート機能を持つピストンリングでは、希薄エンジン油下での耐摩耗性や耐久性を高めつつ低フリクション化を図る対策の一つとして、潤滑性を高めるDLCコーティングがピストンリング各社(リケン、日本ピストンリング、TPR)で適用され始めている。中でも、水素含有DLCで問題にされるエンジンオイル中の添加剤によるDLC膜の摩耗促進の心配がなく、硬質で摩耗に強い水素フリーDLCコーティングが採用されている。

カシマコートをコーティングした部品などカシマコートをコーティングした部品など さらに、ミヤキは硬質アルマイトに潤滑機能を付加した「カシマコート」を紹介。この技術は、1次電解で生成させたアルマイト(陽極酸化)皮膜の微細孔に二硫化モリブデンを電気誘導させて析出させる。この二硫化モリブデンが微細孔の中に溜まっていくことで潤滑性を高め、耐摩耗性の高い皮膜が形成される。ロッカーアームにおいては、鉄からカシマコート処理されたアルミへと変更された際に、その自己潤滑性によってベアリングが不要となり、大幅な軽量化とコストダウンに成功したという。

トランスミッション・金型の信頼性を高める固体潤滑コーティング

二硫化モリブデン系の固体潤滑コーティングを施した「外径コーティング軸受」二硫化モリブデン系の固体潤滑コーティングを施した「外径コーティング軸受」 近年、自動車に対する低燃費・高出力の要求は益々強くなってきており、トランスミッション用軸受では、軽量化による自動車の低燃費化からアルミニウム製トランスミッションケースが採用され、熱を含むケースの変形などから、トランスミッション内の軸受嵌め合い面で摩耗損傷が発生する場合がある。運転時に軸受外輪が僅かずつ回る外輪クリープと呼ばれる現象によるもので、この外輪クリープによりトランスミッションケースと軸受外輪との間に摩耗が生じ、ギヤの噛み合いずれによる異音発生、回転不良などトランスミッションの不具合の原因となる。このため、外輪クリープの発生メカニズムの解明とそれに基づいた安価で抜本的な防止対策が求められていた。これに対し不二越では、軸受の外輪外径に二硫化モリブデン系の固体潤滑コーティングを施した「外径コーティング軸受」を開発、ハウジング摩耗を抑制することでクリープ防止の溝を不要にしつつ、トランスミッションの不具合を防ぎ信頼性を高めている。

ナノコート・ティーエスとH.E.F Durferrit Japanのブースナノコート・ティーエスとH.E.F Durferrit Japanのブース DLCコーティング関連では、H.E.F Durferrit Japanとナノコート・ティーエスが共同出展。DLCコーティングの処理品などを展示したほか、A5052アルミ合金ボールと多層膜のDLCコーティング「セルテスDC2500」を施したディスク試料の摩擦摩耗試験を行った結果をパネルで発表した。その上で、セルテスDC2500はアルミ合金に対して優れた耐凝着性と耐摩耗性を示しており、アルミ飲料缶製造における各種塑性加工金型や自動車部品の塑性加工金型に多く実用されていることなどを解説した。

 グローバル戦略や研究・開発・人材戦略など日本の自動車産業が発展する上での課題は多いが、今回の来場者数(86939名)が示すとおり、自動車産業が日本経済の屋台骨を支えていることは間違いない。今回紹介したようなフリクション低減による燃費改善技術をはじめ、日本がリーダーシップをとる自動車分野を牽引し続ける、革新的な技術が絶えず求められている。