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紀陽銀行、東研サーモテックの脱炭素の取組みに対して融資を実行

2年 3ヶ月 ago
紀陽銀行、東研サーモテックの脱炭素の取組みに対して融資を実行

 紀陽銀行は、東研サーモテックの脱炭素社会実現に向けた取組みに対して融資を実行すると発表した。

 東研サーモテックは、自動車用部品や建設機械部品等の金属熱処理事業を営む国内大手の熱処理事業者で、ガスや電気の使用量削減による二酸化炭素排出量削減に向け、装置メーカーとの共同開発を行うなど、脱炭素社会の実現に向けた取組みを行っている。

 今回、同行と同社は、東研サーモテック 橋本工場における二酸化炭素排出量抑制および生産性向上のための設備ライン増設にかかる融資契約を締結した。この取組みにより導入される設備は、橋本工場の既存設備に比べ熱処理時の二酸化炭素排出量を30%以上削減することが可能になるという。
 

東研サーモテック橋本工場

 

admin 2022年8月9日 (火曜日)
admin

日鉄エンジニアリング、インドネシアに溶融亜鉛めっきラインを竣工

2年 3ヶ月 ago
日鉄エンジニアリング、インドネシアに溶融亜鉛めっきラインを竣工

 日鉄エンジニアリング( https://www.eng.nipponsteel.com/ )は、インドネシアのPT.ALEXINDO社より受注した溶融亜鉛めっきライン「Continuous Galvanizing Line:CGL」を竣工、このほど引渡しを行った。

 本設備は、耐候性・耐久性に優れた建材用55%AL-Zn溶融亜鉛めっき鋼板を製造する設備であり、日鉄エンジニアリングがインドネシアに納入したCGLでは3基目となる。プロジェクト実行にあたっては、同社と当社グループ会社である日鉄設備工程(上海)が一体となり、試運転調整まで一貫してトラブルなく円滑に完了したという。

 また本設備は、同社独自に開発した最新型ワイピング装置「NSblade」を備えており、低速厚目付から高速薄目付まで、広範囲にわたり高精度な目付量の制御が可能となっている。NSbladeは、高速通板時に発生しやすくなるスプラッシュとエッジオーバーコートを効果的に抑制することができ、溶融亜鉛めっき鋼板の品質改善に寄与する。

 日本製鉄グループのエンジニアリング会社として、鋼板処理分野の設備技術と開発力に強みを持つ同社は、国内外でCGLの実績を積み重ねている。

CGLに設置されているNSblade

 

admin 2022年8月4日 (木曜日)
admin

東芝、μmサイズの微小な欠陥を広い撮像視野でリアルタイムに可視化する検査技術

2年 3ヶ月 ago
東芝、μmサイズの微小な欠陥を広い撮像視野でリアルタイムに可視化する検査技術

 東芝は、生産ラインでの外観検査において製品が高速に搬送される中、製品表面のμmサイズの微小な欠陥(キズなど)を広い撮像視野でリアルタイムに可視化・判別する光学検査技術「OneShotBRDF®」を開発した。本技術は微小欠陥の有無に加え、深さも推定することが可能。

 この技術は、製品表面からの光の方向を色で識別して(データ化し)μmサイズの微小欠陥を判別する。搬送中の製品を高精度に撮像できる「ラインカメラ」に対応し、光学フィルターを変更することで、凹凸の3Dデータを取得することも可能。また、同社独自の画像解析技術と組み合わせることで、取得画像から微小欠陥を自動判別することもできる。

 本技術の特徴は、搬送方向とそれに直交する幅方向で、機能を分離したことにある。搬送方向には、光の方向に応じて色を対応させる光方向識別機能を持たせる。幅方向には、全視野を取得する機能を持たせる。これにより、全視野で欠陥を鮮明化することができるようになったという。

OneShotBRDF技術をラインカメラに適用

 同社は、上記機能を実現するために、搬送方向は平行光で、幅方向は拡散光となる独自の照明と、ラインカメラのレンズの前に設置したストライプ状の多波長開口で光学系を構成した。欠陥のない平滑な被検物に照明を照射すると、光は搬送方向には平行を保ったまま正反射される。それらの光は、多波長開口の幅方向に一様な色の中心ラインを通過し、すべて同じ色として撮像される。一方、被検物に欠陥がある場合、照明光はさまざまな方向に散乱する光となる。多波長開口は搬送方向には色が変化するフィルターとなっているため、それらの光は多波長開口の搬送方向へも広がり、光の方向に応じて異なる色となって撮像される。つまり、欠陥は平滑な周囲とは異なる色となり、鮮明化される。また、照明は幅方向には拡散光となっているため、レンズの有効径に制限されることなく、広い視野で撮像することができる。

 この技術を用いることにより、ラインカメラの広い視野にわたって微小な欠陥を色で鮮明に識別することができるようになった。さらに、取得画像の各画素をRGB色空間でのベクトルとして扱う独自の解析技術により、微小な欠陥を自動で識別できるようになる。これらにより、生産ラインにおいて搬送される製品を、リアルタイムで高精度に外観検査することができるようになる。

通常のカメラでは難しい表面状態の識別も色の違いで可視化

 同社は今後、本技術をシステムに組み込み、システム全体としての有効性を高め、さまざまな生産工程への早期導入を目指す。さらに、AI技術に基づく画像処理と組み合わせ、適用範囲の拡大を進める。

admin 2022年8月4日 (木曜日)
admin

厚地鉄工、ブラスト装置の拡販で2022国際ウエルディングショーに出展

2年 3ヶ月 ago
厚地鉄工、ブラスト装置の拡販で2022国際ウエルディングショーに出展

 厚地鉄工( http://www.atsuchi-ascon.co.jp/ )は、主力商品であるブラストキャビネットを中心にサンドブラスト、エアブラスト装置の拡販を開始した。その一環として、7月13日~16日まで東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された溶接・接合技術の専門展「2022国際ウエルディングショー」に出展、ブラストキャビネットやバキュームブラスターによる錆取りや溶接焼け取りの実演を行うなどして多くの来場者を集めた。

2022国際ウエルディングショーにおける厚地鉄工のブース

 ブラストキャビネットでは、強力な噴射力を発揮する直圧式の汎用手動機「BA-1」を展示。同装置は使いやすいコンパクトタイプで、同社独自の機構により加圧されたエアによって噴射力の強いブラストができる。これにより、ブラスト加工時間の大幅な時間短縮が可能になる。小さなブラスト装置内に集塵機、レギュレーター、エアフィルター、エア加減弁などの周辺機器を搭載して省スペース化。錆や塗装剥がし、難物の鋳造品・鋳物砂の除去、高硬度金属のブラスト処理など幅広い分野に対応できる。

直圧式汎用手動機「BA-1」​

 BA-1の技術を応用して開発された台車テーブル式エアブラスト装置「BAS-4T」は、重量物・長尺物のスケール除去を行えるとして来場者に訴求した。同装置はレール付き架台と回転テーブルを備えており、加工対象物の搬入・搬出の効率化や作業の安定化が可能となる。重量物・大型品や精度が要求される金型のブラスト処理、精密鋳造品の砂落としやスケール除去に適した処理として紹介を行った。

台車テーブル式エアブラスト装置「BAS-4T」

 出展ブースの中央で実演を行ったバキュームブラスター「AV-2EH」は、研掃・回収・選別・集塵の4機能を備え、移動不可能な加工物を養生することなく、その場でブラスト処理することが可能。投射材が高圧の圧縮空気とともにノズルから噴射され、加工物の表面をブラストする。噴射と同時に発生した粉塵や微小破片物はガンホルダー内部からの強力なバキュームでサイクロンに回収されるため、外部に飛散することなく衛生的で安全・環境に配慮した作業を実現する。また、同装置は様々な作業状態や条件をリサーチした上で開発されており、狭いスペースや車両積載による作業、高い建造物の作業など、広範囲のブラスト処理に対応できる装置を取り揃えている。

バキュームブラスター「AV-2EH」

 2022国際ウエルディングショーでは、今回紹介したような装置の出展を中心に行ったが、同社の強みは「ブラスト装置全般に渡り、基本計画から施工、メンテナンスまでの提案(厚地徹三社長)」としており、創業から85年に渡って蓄積されたノウハウの部分だ。今回の展示会出展を契機として、細部まで行き届いたサービスやメンテナンスを含めた「ASCON」ブランドのさらなる浸透を図る。

admin 2022年8月2日 (火曜日)
admin

北海道大学、アルマイトの超高速はく離法を開発

2年 3ヶ月 ago
北海道大学、アルマイトの超高速はく離法を開発

 北海道大学大学院工学院修士課程の宮本和哉氏、同博士後期課程の岩井 愛氏、同大学大学院工学研究院の菊地竜也准教授の研究グループは、アルミニウムの不動態皮膜「アルマイト(ナノポーラスアルミナ)」を安全な方法によって超高速剥離する技術の開発に成功した。

 アルマイトはナノサイズの小さな細孔が無数に配列したナノポーラス構造を持つことから、様々なナノテクノロジーへの応用に関する研究開発が世界各国で活発に行われている。本研究で開発した新規のアルマイトはく離法は、エチレングリコールと塩化ナトリウムからなる安定・安全な溶液にアルマイト形成アルミニウムを浸漬し、わずか0.5秒間電気を流すことにより、アルマイトを超高速はく離する技術。

 さらに、はく離したアルマイトをリン酸水溶液に浸漬すると、アルマイト底部の不動態バリヤー層が優先的に溶解し、アルマイト上部から下部まで細孔が貫通した「細孔貫通膜(スルーホールメンブレン)」を作製することができた。この超高速はく離技術を用いることにより、最先端ナノテクノロジーへのアルマイトの応用と工業化が極めて容易になるものと期待される。

アルマイト(ナノポーラスアルミナ)の安全な超高速電解はく離法

 

admin 2022年7月28日 (木曜日)
admin

ジェイテクトサーモシステム、半導体・オブ・ザ・イヤー2022 製造装置部門 優秀賞を受賞

2年 4ヶ月 ago
ジェイテクトサーモシステム、半導体・オブ・ザ・イヤー2022 製造装置部門 優秀賞を受賞

 ジェイテクトサーモシステム(https://www.jtekt-thermos.co.jp/)は、産業タイムズ社主催の第28回半導体・オブ・ザ・イヤー2022において、製造装置部門で「SiCパワー半導体用ランプアニール装置」が評価され優秀賞を受賞した。

 今回同社が受賞した製造装置部門の優秀賞は、最新のエレクトロニクス製品の開発において最も貢献した製品を称える賞。対象製品は2021年4月~2022年3月までに新製品(バージョンアップ等含む)として発表された製品・技術で、①半導体デバイス、②半導体製造装置、③半導体用電子材料の3部門から選出される。

 受賞したSiCパワー半導体用ランプアニール装置は、パワー半導体製造用として開発されたランプアニール装置。従来機種では国内シェア70%を有し、主にオーミックコンタクトアニール処理などに用いられている。今回開発したRLA-4100シリーズは、チャンバーおよび搬送部に真空ロードロックを採用、金属膜の酸化を抑制し製品特性を向上しながら処理時間を33%短縮した(従来機比)。

SiCパワー半導体用ランプアニール装置「RLA-4100シリーズ」

 

 同社では、今後飛躍的に成長が見込まれるSiCパワー半導体用の熱処理装置に対して、本ランプアニール装置に加え、SiCパワー半導体の熱処理に欠かせない活性化炉、酸窒化炉についてもさらなる製品強化を行っていく。
 

kat 2022年7月11日 (月曜日)
kat

ジェイテクトファインテック、低歪熱処理技術を確立

2年 4ヶ月 ago
ジェイテクトファインテック、低歪熱処理技術を確立

 4月1日にジェイテクトグループ企業3社(宇都宮機器、日本ニードルローラー製造、トキオ精工)が合併した新会社であるジェイテクトファインテック(https://www.jtekt-ft.co.jp/)は、従来からの熱処理技術をもとに、熱処理の精度を高める低歪熱処理技術を確立した。

 薄板(鋼板)を加工した製品は、強度を高めるために熱処理を施す場合がある。熱処理では850℃前後で焼入れした後に急冷する際に均一に冷却ができないことより膨張量と収縮量に差が生じ、熱処理歪(そり、うねり)として焼入れ後の寸法精度に影響を与える。

 ジェイテクトファインテックは今回、その熱処理歪を抑制し膨張量と収縮量の差を最小限にした低歪熱処理技術を確立したもの。

 低歪熱処理技術には、熱処理炉の仕様と不可欠な要素技術の双方を成立させることが重要となる。

 新しい熱処理炉の主な仕様・要求特性としては、①高い生産性の確保、②多品種小ロット生産への対応、③薄板(板厚1mm前後)への対応、④高い省エネ性(変成炉不要)、⑤多様な熱処理への対応があり、これらへの対応とこれまでに培った低歪熱処理技術を基盤に、「3室ストレートスルー焼入れ炉」を採用した。

 また、不可欠な要素技術として、①加熱温度と時間、②焼入れのタイミング、③加熱中の炉内雰囲気、④適正な荷姿、⑤焼入れ油の性状・特性という五つの要素技術開発を行い、あらに新たな知見を加味するとともに、各協力メーカーとの技術開発によって、低歪熱処理技術を確立した。

 

 今回の取組みの効果は以下のとおり。
 
・既存熱処理炉と比較して熱処理後の歪量を約1/10に抑制し真円度を向上することで、後工程の旋削や研削を省くことが可能更に新熱処理炉は熱処理で生じるスラッジの発生が無く洗浄工程を省くことも可能

熱処理後の歪量が従来比1/10

 

・既存熱処理炉では変成ガスを排出する変成炉を使用していたが、今回の低歪熱処理技術では変成炉が不要となりCO2排出量を約70%削減でき環境負荷物質の低減に貢献

既存炉の比較


 

kat 2022年7月11日 (月曜日)
kat

HEFグループ、樹脂製筐体のEMC対策で電磁波シールドPVDコーティングの提案を強化

2年 4ヶ月 ago
HEFグループ、樹脂製筐体のEMC対策で電磁波シールドPVDコーティングの提案を強化

 自動車において電動化・電子化が急激に進む中で安全性・快適性・省エネルギー化の点で電磁ノイズ問題の解決、つまりEMC(電磁両立性)対策が必要不可欠な取組みとなっている一方で、自動車の燃費向上、電費改善の点から軽量化を目的に多くの車載部品で樹脂化が急激に進展、それら樹脂製筐体において電磁波シールド(電磁波遮蔽)性を付与する技術が強く要求されている。

 ここでは、15年以上前から物理蒸着(PVD)法による電磁波シールドコーティング「PROCEMTM」を開発している仏HEFグループの日本国内における取組みについて、HEFグループで日本におけるマーケティング・技術支援を行うHEF DURFERRIT JAPAN社長のジュリアン グリモ氏と、受託加工を手掛けるナノコート・ティーエス社長の熊谷 泰 氏に話を聞いた。

左から、グリモ氏、熊谷氏

 

電子化が進む自動車におけるEMC対策の必要性

 EMC(電磁両立性Compatibility)とはEMI(電磁妨害Interference/エミッション問題)とEMS(電磁妨害感受性Susceptibility)を両立させることをいうが、一方で有効利用される電波が、他方ではノイズになるということが問題を複雑にしており、電子化が進む自動車において、安全性・快適性・省エネルギー化を考える上で、電磁ノイズ問題の解決、つまりEMC対策は必要不可欠な取組みとなっている。

 内燃機関を持つ自動車で約3万点、電気自動車で約1万点といわれる自動車部品において、電子部品の占める割合は年々高まってきている。電子化が進む自動車には内燃機関車で100個程度のECU(電子制御ユニット)が使われ、これらのECUは車載LANによってネットワーク化されており、車載LANは電動パワーステアリング(EPS)などのパワートレイン系・シャーシ系、ドアコントロール機器などのボディ制御系、ナビゲーション機器などのマルチメディア系、エアバッグなどの安全系に分類される。一方で、自動車の燃費向上、電費改善の点から軽量化を目的に、パワートレイン系、ボディ制御系、マルチメディア系、安全系の多くの部品において樹脂化が急激に進展しており、それら樹脂製筐体において電磁波シールド(電磁波遮蔽)性を付与する表面改質技術が強く要求されている。

 ユーザーの課題をトライボロジーの総合力で解決する「トライボロジー研究センター」である仏HEF社では、15年以上も前から、特に日本の電子機器メーカーにおいて樹脂製筐体に電磁波シールド性を付与したいとのニーズに応え、物理蒸着(PVD)法による電磁波シールドコーティング「PROCEMTM」を開発しているが、近年、HEFグループのナノコート・ティーエスの石川事業所(石川県能美市)において、PROCEM膜の受託加工を開始。自動車の電動化、さらには先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に向け、搭載点数の進む電子部品で要求の強い、電磁波シールド性に関する日本国内での各種ニーズに対し、迅速に細やかに対応している。

電磁波シールドPVDコーティング

 HEFが開発したPVDコーティングPROCEMは、樹脂や複合材料に電磁波シールド機能を付与するための導電性の多層金属膜である。

 導電性コーティングは、筐体設計を基本的に変えることなく樹脂製筐体への電磁波シールド機能を付与するために用いられている方法の一つで、自動車用電装機器は酷寒から灼熱までの広い温度範囲で使われるばかりでなく、耐振動性や耐水性など、一般の電子機器よりもはるかに高いレベルの特性・信頼性が求められる。このため、車載機器においてはEMC問題の解決だけでなく、耐食性、はんだ付け性など多様な要求性能への適合が突き付けられている。

 PROCEMコーティングは、自動車電装機器で要求される電磁波シールド仕様(ノイズ減衰性能)をクリアするだけではなく、薄膜のため成膜前後の筐体の寸法変化や重量変化がなく、マスキングが必要な部分の仕上がり具合などの問題を同時に解決できる。

PROCEM膜の概要

 電磁波シールドの原理は、電磁波の反射減衰(10MHz~5GHz)や吸収減衰(F>5GHz)などのメカニズムによって電磁波エネルギーを滅衰させるもので、電磁波を減衰させることにより精密機器への悪影響が回避される。

 PROCEMは、銀ベース、銅ベース、アルミベースの導電性多層膜構成とすることで電磁波シールド機能を付与するコーティングで、ナノコート・ティーエス 石川事業所では、スパッタリング+プラズマCVDのハイブリッドプロセスを用いた成膜温度90℃以下の低温処理が可能なHEF製の中型成膜装置「TSD 550」(図1)を導入して、受託加工を実施している。銀ベースや銅ベースのコーティングでは腐食が発生しやすいが、多層膜構成とすることで塩水噴霧試験150時間以上に耐える耐食性の高い膜としている。

 電磁波シールド性を表す代用物性値として、抵抗率が用いられ、抵抗率の小さいものほど電磁波シールド性が高くなる。PROCEM膜では体積抵抗率1~5×10-6Ωcmという低い体積抵抗率、つまり高い電磁波シールド性を実現している(表1参照)。

 また、シールド性能はdB(デシベル)を使って表現する。電磁波がどの程度減衰したかを相対的に表現する数字で、シールド前の電界強度とシールド後の電界強度の比(減衰量)を対数で表現したものとなる。

 シールド性能(dB)=20×log(シールド後の電界強度/シールド前の電界強度)

 多くの場合、減衰効果の狙いは60~80dBで、例えばシールドによって電磁波が1/1000になった場合を—60dB(シールド率99.9%)、1/10000になった場合を—80dB(シールド率99.99%)と表記する。自動車用機器で要求される電磁波シールド効果が周波数により—35~—55㏈なのに対して、PROCEM膜では周波数により—65~—125㏈という減衰効果を実現して、自動車電装機器の電磁波シールド仕様を十分にクリアしている(図2)。参考までに、銅ベース、アルミベース、銀ベースの各PROCEM膜の減衰効果を図3に示す。
 

図1 ナノコート・ティーエス石川事業所に設置した
中型成膜装置「TSD 550」

 

表1 PROCEM膜の仕様


 

図2 PROCEM2膜の減衰効果

 

図3 銅ベース、アルミベース、銀ベースの各PROCEM膜の減衰効果

 

めっきに対する利点

 樹脂製筐体への電磁波シールド機能を付与する手法としては、HEFが開発したPVDコーティング以外に、電磁波シールドめっきや電磁波シールド塗料などを処理する手法もあるが、電磁波シールドめっきと比較した場合、電磁波シールドPVDコーティングPROCEMには以下のような利点がある。

①主な樹脂基材およびコンポジット基材に直接成膜できる
 めっき処理では、樹脂表面とめっき皮膜との密着性を高める目的で、樹脂表面に凹凸を形成する物理的効果と官能基を生成させる化学的効果を付与するためのエッチング処理がなされるが、現時点でABS樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂など限られた樹脂を対象とした専用エッチング液しか市場にないため、めっき処理が可能な樹脂基材が制約されている。

 これに対して、PROCEM膜では、ABS・PC・ポリアミド(PA)・ポリメチルメタクリレート(PMMA)・ポリアリルアミン(PAA)・ポリイミド(PI)・ガラス繊維など、ほとんどの樹脂基材およびコンポジット基材に対して、めっき皮膜に比べて密着性が極めて高く耐食性も極めて高い電磁遮蔽被膜をダイレクトに成膜できる。

②ドライコーティングのため環境にやさしい
 めっき処理ではエッチング工程における六価クロムなど環境負荷の大きい物質が使用されるのに対して、PROCEM膜はスパッタリングにより成膜される、環境負荷が極めて小さいドライコーティングである。

③薄膜のため高精度・軽量性を保持
 めっき皮膜では電磁波シールド機能を付与するのに数十μmと厚膜にする必要があるのに対して、PROCEM膜では膜厚1~2μmの薄膜で電磁波シールド機能を付与できるため、樹脂製筐体への成膜前後の寸法変化がなく、また、重量変化もほとんどない。

電磁波シールドPVDコーティングとDLCコーティングとの複合処理

 HEFでは複合多層膜のため密着性に優れ高負荷でもはく離を起こさない、耐摩耗性や潤滑性に優れたダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング「CERTESS™(セルテス)DLCシリーズ」をラインナップしている(表2)。

表2 主なCERTESS(セルテス)DLCシリーズ

 

 車載機器では電動化の進展とともにセンサー類の搭載が増大してきているが、センサーは走行の安全性や快適性を守るべく、自動車の振動や塵埃といった悪環境、広い温度範囲でも正確に動作する必要があり、ナノコート・ティーエス 石川事業所では、センサー類の表面に電磁波シールドPVDコーティングPROCEMを施すとともに、最表面に耐摩耗性など高耐久性を付与するDLCコーティングCERTESSを複合処理することにも対応。センサー類の高い動作信頼性を実現できる。

今後の展開

 電磁波シールドPVDコーティングPROCEMは高い電磁波シールド性とともに高耐食性を有し、薄膜のため高精度で軽量といった多くの特徴を持つことから、自動車カーナビ筐体(図4)などの車載電装機器のほか、電話コネクターや軍事用暗視カメラ(図5)、歯医者用レントゲン撮影機など各種の産業分野で採用されている。

図4 自動車カーナビ筐体

 

図5 軍事用暗視カメラ

 

 上述のとおりナノコート・ティーエス 石川事業所において、すでにPROCEM膜の受託加工が開始されているが、自動運転に向けて電子機器の搭載が急激に進む自動車にあって、軽量化を目的に採用の進む樹脂製部品への電磁波シールドコーティングに対するニーズは多種多様になっていくものと思われる。

 同社およびHEFでは、電磁波シールドPVDコーティングPROCEMの、めっきなど他の電磁波シールド手法と比べた際の高い生産性や高い精度(高品質)、軽量化への寄与、環境負荷の低減といった多くのメリットを日本国内の電子機器メーカーや成形材料メーカーなどに訴求するとともに、多様なアプリケーションでの成膜・試験データを蓄積しつつ、DLCコーティングとの複合化など各種ユーザーニーズに対応できる電磁波シールドPVDコーティングの手法を確立していくことで、電磁波シールド用途のドライコーティングの市場を拡大していく。

kat 2022年7月7日 (木曜日)
kat

奥野製薬工業、ガラス基板への無電解銅めっきプロセスで第18回JPCA賞を受賞

2年 4ヶ月 ago
奥野製薬工業、ガラス基板への無電解銅めっきプロセスで第18回JPCA賞を受賞

 奥野製薬工業(https://www.okuno.co.jp/)は、パナソニック環境エンジニアリング(https://panasonic.co.jp/hvac/peseng/)と共同で開発した、液相析出法(Liquid Phase Deposition:LPD法)により金属酸化物の密着層(中間層)を製膜したガラス基板に対して高いめっき密着性が得られる無電解銅めっきプロセス「PLOPX」で、日本電子回路工業会より「第18回JPCA賞(アワード)」を受賞した。

JPCA Show 2022 奥野製薬工業ブースでのPLOPXプロセスの紹介

 

 ガラスは平滑性と絶縁性が高く、信号の伝送特性にも優れるため、2.5D実装に必要なインターポーザ材料として利用が検討されている。一方で、無電解銅めっき膜とガラス基板との密着性を高める手段としては従来、機械的表面改質手法でガラス基板の表面に微細な凹凸を形成する粗化によって、ガラス基板の凹部内に無電解銅めっき膜の一部を埋め込んで、そのアンカー効果により密着性を高める方法がとられてきた。しかし、ガラス基板の粗化によるアンカー効果によって無電解銅めっき膜とガラス基板との密着性を高める方法は、無電解銅めっき膜の高周波導電性が低下するため、高性能の高周波用電子部品の製造には適さないという問題があった。

 これに対し両社で開発した本プロセスは、ガラス基板と銅めっき層の中間層として、LPD法により金属酸化物の密着層を製膜することで、ガラスを粗化することなく銅めっきすることを可能としたもの。全プロセスを湿式法で処理することを特徴としており、大量生産および生産効率の向上につながる。開発プロセスは今後、5G、6Gに向けた高速通信システム材料としての展開が期待されている。

kat 2022年6月30日 (木曜日)
kat

DLC工業会、2022年定時会員総会と功労賞授賞式を開催

2年 4ヶ月 ago
DLC工業会、2022年定時会員総会と功労賞授賞式を開催

 DLC工業会( http://dlck.org/ )は6月17日、オンライン会議システムを利用したリモート方式により「2022年定時社員総会」を開催した。当日は、中森秀樹会長(ナノテック 代表取締役社長)を議長に選出して議事が進行された。

議事進行を行う中森会長

 議事においては2021年度事業報告、決算報告が行われた後、2022年度事業計画(案)、同予算(案)について審議、満場一致で可決された。事業計画では、技術委員会が中心となりオンライン会議システムを利用して講演会を開催すること、「DLC膜性能評価試験の規格適合性を証明する制度」による規格適合性確認マークの発行を行うこと、同工業会とニューダイヤモンドフォーラム(NDF)が共同して経済産業省のDLC国際標準化に関わる委託事業を受託し必要な業務を実施することなどを確認した。引き続き、理事・監事選任について審議が行われ、会長に中森氏が再任された。

 また、当日の席上では「DLC工業会功労賞」の授賞式が行われ、ウエキコーポレーションが受賞。DLCの普及やDLC工業会の活動に大きな貢献をしたことが認められた。木本伊彦社長に代わり参加していた大竹和彦顧問が賞状と盾を受け取った。

中森会長と大竹氏

 同工業会の現時点での正会員は、ナノテック、リックス、アルテクス、トッケン、平和電機、ナノテックシュピンドラー、フロロコート、ウエキコーポレーション、レスカ、ウォルツの10社。特別会員は大竹尚登氏(東京工業大学)、大花継頼氏(産業技術総合研究所)、平栗健二氏(東京電機大学)、平田 敦氏(東京工業大学)の4名となっている。

admin 2022年6月29日 (水曜日)
admin

高機能トライボ表面プロセス部会とドライコーティング研究会、合同研究会を開催

2年 4ヶ月 ago
高機能トライボ表面プロセス部会とドライコーティング研究会、合同研究会を開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)とドライコーティング研究会(事務局:近畿高エネルギー加工技術研究所(AMPI))は6月23日、岐阜県岐阜市の岐阜大学サテライトキャンパスで合同研究会を開催した。前者は第18回例会、後者は第61回研究会となる。

開催のようす

 

 高機能トライボ表面プロセス部会は、自動車の低燃費化・高性能化などへの高機能トライボ表面の寄与が増してきていることを背景に、自動車関連・コーティング関連企業や、大学・研究機関などが参加しての分野横断的な議論を通じ、低摩擦/高摩擦、耐摩耗性などに優れた高機能トライボ表面のためのプロセス革新に向けた検討を行う場として、2014年に設立された。

 また、AMPIでは所有する各種のレーザ装置やプラズマ装置を利用した加工技術や表面改質技術の研究開発、中小企業の技術支援、という二つのミッションを通じニーズとシーズを常に探っているが、ドライコーティング研究会はこうした観点からAMPIを母体にして、ドライコーティングなどの技術について研究会を開催することで、産官学問わず幅広い有識者の参加により、専門家の講演や保有技術の紹介など、活発な情報交換や勉強会の場を提供している。

 今回の合同研究会では、高機能トライボ表面プロセス部会の上坂氏とドライコーティング研究会の殖栗成夫氏(AMPI)の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演が行われた。

 

挨拶する上坂氏

 

挨拶する殖栗氏

 

「DLCコーティングに及ぼす潤滑油添加剤の影響」大久保 光氏(横浜国立大学)…脂肪酸油中の超低摩擦現象の研究では、周波数応答原子間力顕微鏡(FM-AFM)による固液界面構造の可視化によって超低摩擦の要因を調査。DLC膜の種類によっては超低摩擦現象が発現しないこと、水素終端の有無が超低摩擦に影響すること、超低摩擦が多層の吸着膜により発現していることが示唆された。また、MoDTC(Molybdenum dithiocarbamate)油中の異常摩耗現象の研究では、ラマン分光分析と膜厚計測をin-situ計測(装置から試料片を外さずに測定)できるIn-situ Raman-SLIM摩擦試験機での評価によって、特定の領域でMoDTCの分解生成物がDLC膜上で形成され同じ領域でDLC膜の構造が変化していること、DLC膜の構造を評価する指標ID/IGが増加=グラファイト化していること、ToF-SIMSを援用することでMo-Cの生成を確認、Mo-Cの生成量がDLC膜の構造変化、異常摩耗の原因となっていることなどを推定した。さらに、添加剤の反応に乏しく摩擦摩耗特性の向上が困難なa-C:H膜に最適な潤滑油添加剤の適用に向けた研究では、反応機構が表面活性に依存せずDLC膜構造を破壊しないナノカーボン添加剤として多層フラーレン(MLF)を添加した、潤滑油環境下における各種DLC膜を比較試験しそれぞれのトライボロジー現象について検証、MLF添加によりa-C:H/a-C:Hの摺動で超低摩擦現象(μ=0.01)や膜のはく離抑制効果、大幅な摩擦低減・摩耗低減効果が確認されたことを報告した。

講演する大久保氏

 

「UBMスパッタ法およびAIP法を活用した成膜技術~金属ガラス膜・窒化ホウ素膜の研究事例~」小畠淳平氏(大阪産業技術研究所)…約80%の高いイオン化率と1μm/h以上の高い成膜速度を実現できるカソ―ディック真空アーク(CVA)法によって立方窒化ホウ素(c-BN)膜を形成するためのターゲット開発では、アーク放電で割れない耐熱衝撃性に優れたホウ素(B)を主成分とするターゲット材開発を目標として、放電プラズマ焼結(SPS)法によってBを主成分とし炭素繊維を分散・添加した焼結体を作製。焼結実験を通じ、CF添加の機能について検討した結果、焼結体に耐熱衝撃性(アーク放電耐性)が付与されることが確認された。作製したB-CF焼結体からなる実機用試作ターゲットを用いた成膜実験を実施、c-BN膜の合成に必要なh-BN膜を得るにはN2ガス分率を増大させアーク電流を減少させるのが有効であること、c-BN 膜を得るのにh-BN膜が得られる成膜条件で高い負のパルス基板バイアス電圧を印加したがc-BN が主成分の膜が得られなかったためより高いエネルギーをイオンに付与する必要があることなどの知見を得た。また、新たな熱ナノインプリント材料の開発を目的として、アンバランスドマグネトロンスパッタ(UBMS)法を用いてTi-Cu基金属ガラス膜を形成した研究では、アルゴン(Ar)含有量の多い膜ほど、優れた熱ナノインプリント成形結果を示したことを報告した。

講演する小畠氏

 

「FCVA成膜方法による水素フリーDLC(ta-C)の特徴と応用」川上達哉氏(ナノフィルムテクノロジーズ ジャパン)…特許技術であるFCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)成膜技術と、同技術を用いたドロップレットが極めて少なく高硬度、低摩擦、可変膜厚、低温成膜、優れた密着性などの特徴を持つ水素フリーDLC膜、ta-C(Tetrahedral Amorphous Carbon)について紹介した。FCVAの特徴として、パーティクルが除去されイオン化された炭素のみで成膜できること、基材にバイアスをかけることでイオン粒子のエネルギーレベルを任意に可変できるため室温で一原子ずつち密に成膜でき膜質を制御できること、FCVAで生成されるコーティングスピーシーズが高エネルギーで均一なピークエネルギーを有するため、室温下で高密度・高硬度・高密着性の薄膜を提供できることを挙げた。また、一般的なDLC 膜のsp3構造が50%以下なのに対し、FCVAによるta-C膜では最大で88%に及び、ビッカース硬度5000の高硬度、約3.3g/cm2とダイヤモンド並みの高密度、低摩擦係数、耐食性、耐摩耗性などの特徴を持つことなどを紹介した。ta-C膜の主要応用事例として、精密金型や自動車部品、アルミ切削工具などの事例を示したほか、ta-C膜以外の差別化技術として、FCVAにより成膜するナノ結晶窒化クロム(CrN)セラミックスコーティングMiCC®を紹介。MiCCが高硬度で低い摩擦係数、高い耐食性、低い表面エネルギーなどの特徴を有し、半導体封止パッケージ金型成形などに適用されていることなどを示した。

講演する川上氏

 

「ステンレス鋼に成膜した多層DLC膜の機械的特性と摩耗特性」西本明生氏(関西大学)…オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性や加工性、非磁性などの長所を保持しつつ、弱点である硬さ・耐摩耗性を向上させる表面改質技術として、同ステンレス鋼に各種の多層DLCコーティングを施し種々の機械的特性を比較調査した。異なるガスを用いてSi-DLC/DLC膜を多層に成膜し、機械的特性への影響を比較調査した研究では、膜の数が4層に増加すると硬さ・密着性が向上し、CH4ガスのDLC膜よりもC2H2ガスのDLC膜の方が硬さ・密着性・低摩擦特性が向上すること、膜数増加による摩擦係数への影響が見られないことが明らかになった。また、1層あたりの膜厚が異なるSi-DLC/DLC膜を多層に成膜し、機械的特性への影響を比較調査した研究では、Si-DLCとDLCの膜厚比が1:1で膜数が4層であるDLC膜が最も耐久性に優れていること、基材側に厚い膜を形成させた多層DLC膜の方が耐摩耗性などの特性が向上すること、膜厚が小さくなりすぎると著しく特性が悪化することが明らかになった。さらに、アクティブスクリーンプラズマ窒化(ASPN)とDLCコーティングの複合処理による機械的特性を調査した研究では、ASPN処理後にバフ研磨を行ったDLC膜の耐摩耗性が最も高いこと、ASPN処理材ではDLC膜の完全はく離荷重が増加すること、ASPN処理材で良好な密着性が得られること、DLC膜の密着性は残留応力差が小さいほど良好になること、すなわちASPN処理を適用することでDLC膜の密着性が改善されることが明らかになった。

講演する西本氏

 

 最後に上坂氏より、このほど新設され自身がセンター長を務める岐阜大学 工学部 附属プラズマ応用研究センターの紹介がなされた。“共同研究等により研究成果の社会実装および社会人教育を通じて、地域産業界の発展に貢献する”という同大学の地域連携に関する理念のもと設立された“ワンストップ・プラズマトライセンター”を掲げるプラズマ応用研究センターが保有する、MVP(Microwave sheath-Voltage combination Plasma)プロセス装置、大気圧プラズマ装置、EBEP処理装置、HiPIMS(High Power Impulse Magnetron Sputtering)成膜装置など豊富な設備を紹介しつつ、各種保有設備の利用しての産学共同による研究を呼び掛けた。

岐阜大学 工学部 附属プラズマ応用研究センターの紹介

 

kat 2022年6月29日 (水曜日)
kat

メカニカル・サーフェス・テック2022年6月号 特集「金型の表面改質」「窒化処理」6/24に発行

2年 5ヶ月 ago
メカニカル・サーフェス・テック2022年6月号 特集「金型の表面改質」「窒化処理」6/24に発行

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2022年6月号 特集「金型の表面改質」、キーテク特集「窒化処理」が当社より6月24日に発行される。

 今回の特集「金型の表面改質」では、電気自動車のボディ、バッテリー、モータに関する今後の材料・加工技術について、プラスチック用金型において離型課題に特化した表面処理技術の概要ついて、プラスチック成形金型向けプラズマ窒化とPVDコーティングの複合処理について、成形不良検知などにおいて適用されるAI外観検査ソリューションについて紹介する。

 また、キーテク特集「窒化処理」においては、大電流電子ビーム源を励起源として用いる窒化処理装置の概要とアプリケーションについて、環境にやさしい塩浴軟窒化プロセスの概要と特徴、その適用事例について紹介する。

特集:金型の表面改質

◇電気自動車に求められる材料と加工技術・・・日産自動車 藤川 真一郎
◇プラスチック用金型の機能を向上させる表面処理技術・・・ユケン工業 青松 明宏
◇大型プラスチック成形金型向けプラズマ窒化とPVDコーティングの適用・・・エリコンジャパン 大崎 隆史
◇AI外観検査ソリューションによる成形不良検知など顧客価値の創出・・・コニカミノルタジャパン 大久保 卓哉 氏、加藤 高基 氏に聞く

キーテク特集:窒化処理

◇光輝窒化を可能とする窒化法の開発と実用化・・・プラズマ総合研究所 原 安寛、原 民夫
◇環境対応塩浴軟窒化プロセスの特徴と適用事例・・・HEF DURFERRIT JAPAN/TS TUFFTRIDE グウェン ボロレ

連載

注目技術:FOOMA JAPAN 2022に見る表面改質および関連技術・・・出展各社

トピックス

サーモテック2022が5年ぶりに開催、熱処理装置や関連装置・技術が集結
人とくるまのテクノロジー展2022開催、表面改質技術なども展示
日本トライボロジー学会、2021年度学会賞を発表

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admin 2022年6月22日 (水曜日)
admin

JCU、スタンプ式めっき処理の装置と薬品を開発

2年 5ヶ月 ago
JCU、スタンプ式めっき処理の装置と薬品を開発

 JCU( https://www.jcu-i.com/ )は、トヨタ自動車からスタンプ式めっき処理の技術供与を受け、従来のめっき電解槽に浸漬するプロセスに比べ約8倍の速さで硫酸銅めっき処理を実現できるテスト装置と硫酸銅めっきプロセスを開発、兼松( https://www.kanematsu.co.jp )を通じて装置とプロセスの一体販売を開始する。

硫酸銅めっきテスト装置

 同処理は、部材に銅被膜を形成する硫酸銅めっき処理において、めっき電解槽を使わず、スタンプのように必要な部分だけにめっき処理を施すことから、環境負荷を大幅に低減できるうえ、処理速度においても従来プロセスより優位性がある。

 ESG(環境、社会、ガバナンス)視点での経営基盤構築を進めるJCUは、表面技術処理用薬品および装置の両方を製造・販売する強みを活かし、スタンプ式めっき処理装置とそれに適した硫酸銅めっきプロセスの開発を進めてきた。銅イオンを優先的に透過する固体電解質膜を装置のヘッド内に装着し、本装置専用の硫酸銅めっきプロセスを開発することで、従来プロセスに比べめっき液の使用量を大幅に削減できるだけでなく、高速でのめっき処理を実現した。また、密閉された装置内でのめっき処理であるため、外部からの異物の混入リスクがなく、空気中に薬品成分が飛散しないことで処理環境の改善にもつながる。用途としては電子部品などの製造などを想定している。

スタンプヘッドの構成図

 

admin 2022年6月22日 (水曜日)
admin

トーソー・SMD、スパッタリングターゲットの生産能力増強

2年 5ヶ月 ago
トーソー・SMD、スパッタリングターゲットの生産能力増強

 東ソーグループのトーソー・SMD(本社:米国オハイオ州)は、スパッタリングターゲット製造設備の生産能力増強を決定した。

 東ソーの高機能材料事業で取り扱うスパッタリングターゲットは、半導体・フラットパネルディスプレイ・太陽電池などのエレクトロニクス分野における薄膜形成材料として使用されており、今後もさらなる需要の拡大が見込まれている。

 同社は、半導体市場における薄膜形成材料の供給能力不足を受けて、2021年7月に生産能力増強に着手。その後、想定を超える需要拡大が見込める状況となったことから、生産能力をさらに増強することで、高まる顧客要請に対応し、安定供給体制の確立を図る。

admin 2022年6月22日 (水曜日)
admin

サーモテック2022が5年ぶりに開催、熱処理装置や関連装置・技術が集結

2年 5ヶ月 ago
サーモテック2022が5年ぶりに開催、熱処理装置や関連装置・技術が集結

 日本工業炉協会は6月1日~3日、東京都江東区の東京ビッグサイトで「サーモテック2022 第8回 国際工業炉・関連機器展」を開催、7カ国・地域から175社(国内164社、海外11社)が出展、小間数は前回開催に並ぶ409小間となり、3日間で9121名(前回は11053名)が来場した。4年に一度の同展は、通常であれば2021年に開催が予定されていたが、コロナ禍による東京オリンピック・パラリンピック延期の影響で会場調整を行った結果1年延期された。会期中、金属熱処理関連では以下のような展示がなされた。

 オリエンタルエンヂニアリング( http://www.oriental-eg.co.jp/ )は、独自に開発した二つのセンサにより真空浸炭炉内雰囲気の適正制御を実現する雰囲気制御付き真空浸炭炉「NEOVIA」を紹介した。水素センサにより浸炭ポテンシャルと窒化ポテンシャルを自動制御することで処理品炭素濃度、窒素濃度を精密に制御することができる。さらに、量、形状、混載にかかわらず処理品面積を自動検知し、適正添加ガス量を自動制御する。また酸素センサ制御により、スーティングや鋭角部のセメンタイト析出を防止する。熱処理の初心者でも簡単に最適な処理パターン、炭素濃度、硬さ分布が得られる浸炭シミュレーションソフトを標準装備している。

オリエンタルエンヂニアリングのブース

 ジェイテクトサーモシステム( https://www.jtekt-thermos.co.jp/ 、光洋サーモシステムより社名変更)は、高効率でフレキシブルな生産性と熱処理歪の大幅低減を実現する浸炭炉「Smart FLEC®シリーズ」を紹介した。各種の生産形態と浸炭方法に対応し、バッチ処理および連続処理のガス浸炭炉「Smart FLEC® G」、1個流しの超高速浸炭装置「Smart FLEC® One」に加えて今回は、バッチ処理・連続処理対応の真空浸炭炉「Smart FLEC® V」を披露した。同社の従来ガス炉に比べCO2排出量を50%低減できるとともに、ユニット構造の採用により需要変動対応が可能となっている。このほか、状態監視による定量的な劣化データ取得により故障予兆をとらえ計画保全につなげる工業炉向け故障予兆検知システム「K-Predis」を紹介した。熱処理炉のライフサイクルコスト(LCC)削減と突発停止の回避を実現するとともに、製造時の省エネ・CO2排出量削減に寄与できる。

ジェイテクトサーモシステム 「K-Predis」

 新コスモス電機( https://www.new-cosmos.co.jp/ )は、熱処理炉など各種工業炉のガス漏れ検知に最適な「自己診断型ガス検知器」を紹介した。従来のガス検知器が故障しやすい高温・高湿な炉内の雰囲気測定に最適で、自己診断機能の搭載により検知器が正常に作動しているかどうかを自動で判断できる。サンプリング過程で除湿をすることでドレンやヤニの発生を低減し、警報器の故障を防ぐ。また、フローセンサで配管内のガス流量を常にチェックし、配管の目詰まりやガス検知器の故障を監視。炉を稼働する際に、サンプリング配管にチェックガスを通気し、ガス検知器が正常に動作することを自己診断して、正常動作を確認した後に、バーナーに着火する。

新コスモス電機 「自己診断型ガス検知器」

 中外炉工業( https://chugai.co.jp/ )は、各種熱処理装置のラインナップを披露したほか、トヨタ自動車と共同開発をした水素バーナを紹介した。水素バーナは、①水素燃料の特性を活かしたバーナ構造とすることで二酸化炭素排出量ゼロ、②水素と空気をバーナ内で並行に流して緩慢燃焼とし、火炎温度を下げることで低NOx性能を実現、③空気と燃料が別々に供給されるため燃焼中に逆火が起こらず安全に燃焼させることが可能、などの特徴を備えている。また、顧客の熱処理設備の様々な数値を遠隔監視・データ管理により予防保全や予知保全を行うIoTシステム「CRism®」、高性能センサで燃焼状態を常時監視し、空気比管理のDX化を加速させる酸素センサ「Lamuda-i®」についての紹介も行った。

中外炉工業のブース

 DOWAサーモテック( https://www.dowa.co.jp/thermo-tech )は、使用するガス量やCO2排出量を最少化するとともに、グリーンエネルギーやアンモニアバーナー・水素バーナーを組み合わせることで、CO2をほとんど排出させない操業が可能な浸炭焼入炉「Z-TKM」を紹介した。従来と同等の熱処理品質を維持するとともに、炉内の駆動機構レスにより安定操業を実現できる。同社熱処理設備「TKMシリーズ」と完全互換性があるため、既設ラインに導入が可能。また、独自の操業支援システム「D-IP」により簡単操作・簡単メンテを実現できる。このほか、レーラー線図を指標として窒化ポテンシャルKNを高精度に自動制御し窒化化合物層の構造を任意に選択できる「DNTNプロセス」を紹介した。雰囲気制御+降温制御により、一般鋼においても高いγ'相分率を得ることが可能で、より深い硬化層も得られる。γ'相分率が高いことから、各種疲労試験においてガス軟窒化と比べた際の疲労強度の向上が確認されている。

DOWAサーモテック 「Z-TKM」

 パーカー熱処理工業( https://pnk.co.jp/ )は、次世代型自動制御ガス窒化システム「NITRONAVI®」と窒化・軟窒化炉で同システムを利用した「PICONite®処理」の概要を披露した。同処理によって自動で表面相制御による機械的特性の改善を図ることができる。たとえば、鋼表面を化合物層レス、γ’相リッチ、またε相リッチへと選択的に制御することによって耐疲労性や耐摩耗性の改善など、ユーザーが望む表面の形成が可能となる。また、グローバルで納入実績が多数ある真空浸炭装置「ICBP FLEX」、同装置をコンパクト化した「ICBP NANO」を紹介。環境負荷が小さい浸炭炉としてカーボンニュートラルに貢献できる点を訴求した。さらに、コールドウォールで炉体からの放熱がなく、またフレームカーテンを用いないため設備周辺の作業環境にも優れている点をアピールした。このほか、同社が販売を手掛けるDLCコーティング装置「CarboZenシリーズ」や振動摩擦摩耗試験機「SRV®5」の紹介を行った。

パーカー熱処理工業のブースパーカー熱処理工業「窒化処理のサンプル」

 山本科学工具研究社( https://www.ystl.jp/ )は、ブリネルやロックウェル、ビッカースといった各種硬さ試験法に使用される試験機の測定結果が正常であるかどうかを確認するための基準的試験片「高精度硬さ基準片」の紹介を行った。熱処理において硬さ管理は重要な品質管理の一種である。硬さ試験におけるISO9000シリーズ等の各種認証には、JIS・ISOに準拠した硬さ試験機の管理が必須となり、その一つに硬さ基準片を用いた管理がある。同社の硬さ基準片は、優れた質(硬さ均一性、JIS・ISOに基づいた普遍的な値、硬さ値の高い安定性)が国際的に認められており、硬さ試験機の始業前点検や間接検証に数多く使用されている。同社では、新しい反発硬さ試験eNM用の硬さ基準片およびナノインデンテーション用基準片など多数の試験片を取り揃えている点をアピールした。

山本科学工具研究社のブース

 横河電機( https://www.yokogawa.co.jp/ )は、熱処理アプリケーション向けに、データ収集システム「SMARTDAC+ AI」による「設備・品質らくらく予兆検知」ソリューションを紹介した。過去の記録データを活用し、同社の記録計/データロガー本体(SMARTDAC+ GX/GP/GMシリーズなど)でAIによる予兆検知を行う。これまで熟練担当者しか感じ取ることができなかった、バーナー故障や配管詰まり、炉の密閉性異常など、熱処理設備の異常や製品品質の低下の兆候をヘルススコアで数値化し、常に状態を監視することにより現場で早期に異常予兆を検知できる。通常の記録データと併せて、バッチごとの状態をヘルススコアログで記録、ヘルススコアの推移を見て必要な点検時期を予測できる。熱処理バッチ炉のアプリケーションでは、ツールより過去の温度正常データから作成したプロファイル波形をプロセス値の上下限判定値として使用、許容温度範囲からの逸脱を即座にリアルタイム検出しアラーム通知する。

横河電機 「設備・品質らくらく予兆検知」

 

admin 2022年6月13日 (月曜日)
admin

人とくるまのテクノロジー展2022開催、表面改質技術なども展示

2年 5ヶ月 ago
人とくるまのテクノロジー展2022開催、表面改質技術なども展示

 自動車技術会は5月25日~27日、横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2022」を開催した。3年ぶりのリアル開催となる同展は、484社/1055小間の規模で開かれ、3日間で43665名が来場した。表面改質関連では、以下のような展示がなされた。

人とくるまのテクノロジー展 2022のもよう

 HEFグループは、HEF DURFERRIT JAPAN、TS 群馬、TS TUFFTRIDE、ナノコート・ティーエスの共同で出展。今回は、ナノコート・ティーエス 石川事業所ですでに受託加工を開始している、自動車電装機器の樹脂製筐体への電磁波シールド物理蒸着(PVD)コーティング「PROCEM™」を紹介。自動車電装機器の電磁波シールド仕様を十分にクリアしているほか耐食性が良好で、電磁波シールドめっきと比較した場合の利点として、①めっき処理が可能な樹脂基材に制約があるのに対し、PROCEM膜では、ABS・PC・ポリアミド(PA)・ポリメチルメタクリレート(PMMA)・ポリアリルアミン(PAA)・ポリイミド(PI)・ガラス繊維など、ほとんどの樹脂基材およびコンポジット基材に対して、密着性が極めて高い電磁波シールド被膜をダイレクトに成膜できること、②環境負荷が極めて小さいドライコーティングであること、③めっき皮膜では電磁波シールド性を付与するのに数十μmと厚膜にする必要があるのに対して、PROCEM膜は膜厚1~2μmの薄膜で電磁波シールド機能を付与できるため、樹脂製筐体への成膜前後の寸法変化・重量変化がないことなどをアピールした。

 また、固体高分子形燃料電池(PEMFC)のバイポーラプレート(BPP)用に開発した、導電性、耐食性、密着性に優れたPVD コーティングを紹介した。ステンレス、チタン、アルミニウムといったBPPの基材を問わず、高い耐食性(陽極:1μA/cm2未満・アクティブピークなし、陰極:1μA/cm2未満)・導電性(100S/cm以上)と低い接触抵抗値(0.01Ωcm未満)を持つBPP向けコーティング(コーティング成分:Au、C、Cr)となっている。

HEFグループ「PROCEM膜を施した樹脂製カーナビ筐体などのサンプル」

 大同メタル工業は、多種多様なエンジン軸受で使用されている樹脂コーティング「DLA02」、「DLA03」、「DLA04」を中心に同社のコーティング技術を紹介した。アルミ軸受合金上の樹脂コーティング有無での耐摩耗性の検証では、コーティングなしの場合に比べ摩耗量を約90%低減できた結果を報告。また、新たなアプローチとして、将来ニーズを想定し樹脂コーティングを超える耐摩耗性・耐食性を追求した開発中のDLCコーティングの技術を披露した。同社のDLC コーティングは製法の工夫によりコーティング下地の変形に追従できるよう物性を最適化。アルミ軸受合金上のDLCコーティング有無での耐摩耗性の検証では、DLC コーティングなしの場合に比べ摩耗量を約98%低減できた結果を報告した。

 また、長年のエンジンベアリングの製造で培われた独自焼結技術によって生み出された、高性能アルミ吸音材「NDCカルム」を紹介した。アルミ粉末を多孔質に焼結した吸音材で、2~3mmの板厚で優れた吸音特性を実現するほか、一般の吸音材にはない耐水性、耐食性、耐熱性を持つ。アルミ板より軽量で、しかも金属的強度を有するため機械加工も容易にでき、部品としての供給も可能。また、電磁シールド性も持つ。新幹線の防音壁から建築用内装材、プレスラインや天然ガス圧縮機など機械用の防音ボックスまで広範に利用されている。自動車分野への適用例としてはマフラー(サイレンサー)内側への装着やエンジンルーム内壁への装着、車外騒音規制に対応するためのエンジンアンダーカバーへの装着(路面側への装着で反射音を減衰)などが見込まれるという。

大同メタル工業「DLA02を被覆したシャフトなどのサンプル」

 大豊工業(https://www.taihonet.co.jp/)は、「第72 回自動車技術会賞 技術開発賞を受賞した「高筒内圧エンジン用Bi 合金オーバレイ軸受」を展示した。本開発品は、すべり軸受のオーバレイとして世界で初めてBi-Sb(ビスマス・アンチモン)合金を用いており、従来の純Bi オーバレイで課題となっていた耐疲労性と耐酸化性を、Sb との合金化により飛躍的に向上。さらにSb添加量の最適化により異物ロバスト性にも寄与している。これらの技術をディーゼルエンジンの軸受に用いることで、信頼性と低燃費を両立し、新排気・燃費規制に対応できる。

大豊工業「高筒内圧エンジン用Bi 合金オーバレイ軸受」

 日本アイ・ティ・エフ( https://nippon-itf.co.jp/ )は、膜組成とプロセスに関する豊富なノウハウを持つDLCコーティングを中心にサンプル展示を行った。一般的にギヤなどの形状に密着性良くDLCを成膜することは難しいとされるが、PVD法とCVD法を組み合わせたDLCコーティング「ジニアスコートHC」は高い密着性を実現。その上で耐焼付き性を従来のCVD法によるDLC膜に対して1.6倍、耐摩耗性を2.4倍以上に向上した。「ジニアスコート HA」は、自動車部品などの耐久性をクリアする高密着力、高信頼性を実現するほか、潤滑下の摩擦抵抗低減に効果がある。

日本アイ・ティ・エフ「ジニアスコートHC・HAのサンプル」

 パルメソ( https://palmeso.co.jp/ )はウェットブラスト技術を応用して微細な粒子と水を投射することで、材料の表面から内部まで連続した強さデータを取得できる「MSE試験装置」の紹介を行った。今回は同装置によるアプリケーションの紹介に注力。自動車塗装におけるプロセス違いによる塗膜の機械的特性においては、サンプル2種を耐摩耗特性分布と靭性特性分布で表し、両分布を分析した結果、片方のサンプルが高速・低エネルギーの上、塗装品質も向上することを明らかにした。このほか、めっき前の樹脂表面改質層の強さ分析や超硬チップ表面コーティングの膜質分析と耐久性評価、自動車塗装の加速劣化試験変化などを公開した。同社では、装置販売だけでなく受託試験も行っている。

パルメソのブース

 フィルメトリクス( https://www.filmetricsinc.jp/ )は、測定ユニットと測定ステージが一体化したコンパクトな卓上型の反射・透過・膜厚測定システム「F10-RT」の実機を展示した。 同システムは、反射率・透過率を同時に測定し、膜厚、屈折率および消衰係数を簡単に解析することができる。また、USBケーブルと電源ケーブルだけの簡単な接続、光学系の調整なしで煩わしい設定も不要なため簡単にセットアップが可能となっている。主な用途は、PETやガラス基板上のポリイミドや酸化膜、反射防止コーティング、各種光学フィルムなどのフラットパネル、ガラス、メガネ、レンズなどの光学コーティング膜、薄膜太陽電池など。

フィルメトリクス「F10-RT」

 

admin 2022年6月8日 (水曜日)
admin

日本トライボロジー学会、2021年度学会賞を発表

2年 5ヶ月 ago
日本トライボロジー学会、2021年度学会賞を発表

 日本トライボロジー学会(JAST)はこのほど、「2021年度日本トライボロジー学会賞」の受賞者を発表した。表面改質関連では、以下のような受賞があり、オンライン開催された「トライボロジー会議 2022 春 東京」の会期中の5月24日に授賞式が開催された。

技術賞

「インターカレーション法によって合成した有機-無機ハィブリッド型固体潤滑剤」
大下賢一郎氏、柳睦氏、小見山忍氏(日本パーカライジング、佐々木信也氏(東京理科大学)

 冷間鍛造の分野では、1934年に発明されたリン酸亜鉛皮膜が、潤滑皮膜として現在でも広く用いられている。この皮膜は極めて優れた潤滑性を有し、ほぼすべての加工形態に対応できる万能な皮膜である。一方で、成膜に化学反応を利用するため成膜効率が悪く、成膜工程から大量の排水や産業廃棄物、CO2が排出されるなど、環境負荷が高いことが指摘されている。このような背景から、2000年以降、生産性の向上と環境負荷低減を目的に、成膜に化学反応を利用しない塗布型潤滑皮膜への移行が国内外で徐々に進んでいる。

 本技術は、層状粘土鉱物の一種であるマイカの潤滑性向上を目的に、インターカレーション法によってマイカの層間、すなわち、へき開面に、有機系潤滑成分であるアルキルアンモニウムを担持させた有機-無機ハイブリッド型固体潤滑剤である。層間に担持されたアルキルアンモニウムはマイカの層間すべり性を向上させるため、高荷重かつ表面拡大を伴う塑性加工面においてスムーズにへき開し、新生面を効率的に保護することで、焼付きを抑制する。本技術を塗布型潤滑皮膜に適用することで、潤滑性はリン酸亜鉛皮膜と同等レベルを維持しつつ、成膜時間は1/10未満に短縮され、成膜工程から排出される廃棄物も10%未満まで低減することが可能となった。

 インターカレーション法とは、層状物質の層間に化学的特性が異なる他の成分を挿入する反応の総称である。層間に担持可能な成分の候補は無数にあるが、適切な成分を選択することによって、目的に応じた機能を自在にマイカに付与できる可能性がある。インターカレーション法は近い将来、固体潤滑剤の高機能化と地球環境保全に大きく貢献することが期待されている。

上段:左から、プレゼンターの杉村丈一JAST前会長、佐々木氏、大下氏、下段:左から、柳氏、小見山氏

「トランスミッション用シール付き転がり軸受の低フリクション化技術」
水貝智洋氏、佐々木克明氏、和久田貴裕氏(NTN)

 CO2排出量削減に向け、自動車のトランスミッション用軸受には、長寿命に加えさらなる低トルク化が求められている。加えて、高速モータを用いた車両電動化の要求により、減速機用軸受には高速化への対応も求められている。本技術は、トランスミッションおよび減速機用シール付き転がり軸受の低フリクション化に関するものである。

 トランスミッション内の潤滑油にはギヤ摩耗粉などの異物が存在し、これが軸受の寿命低下を招く恐れがあるため、①接触シールを用いて異物侵入を防ぐ、②異物寿命に効果的な特殊熱処理を施すなどの対策がなされる。しかし、①はシールによる回転トルクの増加が避けられなく、かつ、高速回転下ではシールの適用限界速度を超えては利用できない。また、②は異物がない環境に比べると寿命低下が避けられない。

 本技術は、上記①に対して、接触シールの摺動面に半円筒状微小突起を設けることにより、油潤滑下でシール摺動面と内輪間に“くさび膜効果”による流体膜を発生させ、回転トルクを従来接触シール品比で80%低減し、非接触シールと同等にした。一方、突起高さは微小であるため、寿命を低下させるサイズの異物の侵入を遮断でき、異物がない環境と同等の軸受寿命を確保できる。また、本シールは、従来接触シールに比べ大幅に高い周速下でも使用できる。

 以上のように、本技術は、異物混入油中でも十分な寿命を確保しつつトランスミッション用軸受の回転トルクを低減でき、自動車の省燃費化に貢献できる。また、信頼性の向上により軸受サイズの小型化、また、自動車の軽量化に貢献できる。さらに、従来の接触シール付軸受に比べ2倍以上の周速で使用できるため、車両電動化に伴う高速化の要求にも応えることができる。

上段:左から、杉村JAST前会長、佐々木氏、下段:左から、水貝氏、和久田氏

「転動体強化による転がり軸受の高機能化技術」
橋本翔氏、小俣弘樹氏、植田徹氏、岩永泰弘氏(日本精工)

 本技術は転がり軸受の転動体を強化することにより、軸受そのものの耐久性向上を実現する材料技術である。

 近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車や産業機器の省エネルギー化の要求はますます高まっている。したがって、様々な機器に使用される転がり軸受においても、軽量化や低トルク化することで社会ニーズに応えていかねばならない。このような背景から、転がり軸受に加わる荷重や潤滑状態は一層厳しくなり、表面起点型はく離などの表面損傷が加速されることが予想される。圧痕起点型はく離に代表される表面起点型のはく離寿命は、計算寿命よりも極端に短くなるケースがあるため、この現象に対して長寿命化する技術開発が重要である。一般的には、浸炭窒化などにより、はく離が生じる軌道輪の残留オーステナイト量や残留応力を制御することが有効である。

 一方で、これまでの研究から、軌道面に形成された圧痕縁からの疲労き裂発生には、圧痕縁に作用する接線力が重要な役割を果たしていること、転動体の表面粗さが大きくなるほど軌道輪に作用する接線力が大きくなることを明らかにした。以上から、はく離が生じる部材そのものではなく、相手材である転動体を強化し、使用に伴う表面粗さの劣化を抑制することによって、軸受そのものの耐久寿命を延長させるという新たな開発指針を得た。この指針に基づき、表面に微細な炭窒化物を析出させることで耐異物圧痕性や耐摩耗性を向上した転動体を開発した。本転動体を使用した転がり軸受は、標準仕様と比較して、異物混入潤滑において約2倍のはく離寿命を有し、コストアップを抑制しつつ高耐久化することが可能である。

 本転がり軸受は自動車トランスミッション用や工作機械用などに展開されており、様々なアプリケーションの省エネルギー化に貢献している。

左から、杉村JAST前会長、小俣氏、下段:橋本氏 奨励賞

「ピコ秒レーザ加工を用いた血漿タンパク質の吸着促進による摩擦低減」
神田航希氏(東北大学)

 本研究は、血液用メカニカルシールの摺動面における摩擦増加の主因となる血漿タンパク質の変性・吸着を表面処理技術により制御し、血液中における摩擦を2桁低減させうることを実験的に明らかにしたものである。

 心疾患を有する患者に埋め込まれる補助人工心臓内部のインペラの回転を支持するメカニカルシールには、血液中における低く安定した摩擦係数の発現が求められる。このような背景において、本研究では補助人工心臓実機に搭載されるメカニカルシールの摩擦・密封特性を評価可能な摩擦試験機を設計・製作し、種々の表面性状を有するメカニカルシールの血液中における摩擦・密封特性を評価している。

 はじめに、通常観察が困難とされる血漿タンパク質を間接免疫蛍光染色法により可視化し、血漿タンパク質の吸着特性と摩擦特性の相関の把握を可能にした。続いてDLC(Diamond-like carbon)膜をメカニカルシールの摺動面に施し、変性した血築タンパク質の吸着を抑制することで血液中特有の不安定な摩擦挙動を抑制することに成功している。さらにピコ秒レーザ加工装置による表面テクスチャを摺動面に施すことで、血液中において摩擦係数が徐々に減少するなじみ現象の発現と実用上十分な低漏れ量の両立が可能であることを見いだしている。

 以上のように本研究は、血液中に多く含まれる血漿タンパク質の変性・凝集・吸着に着目し、さらに摺動面上における血漿タンパク質起因の変性タンパク質膜の形成制御により血液用メカニカルシールの摩擦・密封特性を改善することに成功している。
これは人工臓器の摺動部における摩擦の低減を可能にする設計のための重要な知見であり、血液用メカニカルシールのみならず患者のQOLを飛躍的に向上しうる次世代の人工臓器の摺動部の設計における有益な知見となるものと評価された。

「PBII & D法による塩素含有DLC膜の創製としゅう動特性向上に関する研究」
徳田祐樹氏(東京都立産業技術研究センター)

 高硬度・高耐摩耗性・低摩擦係数などの優れた摺動特性を示すDLC膜は、すでに多岐にわたる産業製品への適用が実現しており、一定の産業市場を有する技術分野にまで成長している。一方で、DLC膜のさらなる高機能化や新たな機能付与など、技術分野として求められる産業ニーズは依然として高い水準にある。これらのニーズを満たすことを目的とし、近年ではDLC膜の成膜技術の改善のみならず、新たなアプリケーションで最大限の性能を達成するための膜構造の最適化や、併用する潤滑油の最適化など、様々な試みが推進されている。

 本研究では、DLC膜に新たな機能を付与することを目的とし、重畳型プラズマイオン注入成膜法(Plasma Based Ion Implantation & Deposition:PBII & D)を用いたDLC膜中への異元素添加技術に着目した。当該成膜法では、成膜原料に任意の元素を含んだガスを用いることで、目的とする元素を膜中に添加することができる。一方で、塩素化パラフィンなどの塩素系潤滑油を使用した摺動環境下においては、摺動界面での摩擦摩耗に伴うトライボケミカル反応により塩化物が生成され、摩擦抵抗が低減すると報告されている。このような背景を踏まえて、本研究では四塩化炭素(C2Cl4)を原料ガスとしたPBII & D法によりDLC膜を形成することで、これまでに前例のない「塩素含有DLC膜」の開発に取り組んだ。形成した塩素含有DLC膜に対し、鉄鋼材料や軽金属材料、セラミックス材料を相手材としてオイルレス環境での摩擦試験を行った結果、相手材の種類に応じて異なる摺動特性を示すことが確認された。特に、アルミニウム合金材料と摩擦をしたケースでは、摺動界面が低摩擦化するだけでなく、塩素含有DLC膜とアルミニウム合金の摩耗量がともに低減する傾向が確認された。表面観察や機器分析の結果、この摺動界面にはトライボケミカル反応により「塩化アルミニウム六水和物」が形成されていること、およびこの塩化物が潮解性を有しており、大気中の水分を吸水することで合成基油(poly-α-olefin:PAO)と同程度の粘度を有する液状物質として摺動界面に介在していることを確認した。このことから、吸水により液状化した塩化物が摺動界面において潤滑油として作用 することで、低摩擦化、高耐摩耗化を達成したと結論づけた。

 本研究成果である塩素含有DLC膜は、従来のDLC膜とは異なる摺動メカニズムを有する技術であることから、新規的なコンセプトに基づくトライボシステムの構築や、DLC膜の適用分野のさらなる拡大に貢献できると期待されている。

奨励賞受賞者一同:下段左が神田氏、右が徳田氏

 

admin 2022年6月7日 (火曜日)
admin

トライボコーティング技術研究会、令和4年度第1回研究会・総会を開催

2年 5ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、令和4年度第1回研究会・総会を開催

 トライボコーティング技術研究会は6月3日、埼玉県和光市の理化学研究所で「令和4年度第1回研究会・総会」を開催した。今回は、リアルおよびオンラインによるハイブリッド開催となった。

開催のようす

 当日は、大森 整会長(理化学研究所)の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。

・「コーティング前後におけるエアロラップ®の活用」飛田幸宏氏(日本スピードショア)…鏡面加工装置「エアロラップ」が、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、被加工材(ワーク)表面を高速で滑走させて発生する摩擦力によって磨くもの。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えることなく、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にしていることを説明。また、①異形状のワークを短時間に寸法変化少なくラッピングできること、②特殊研磨剤マルチコーンはリフレッシュ(再生)が可能で産廃処理が不要、といった特徴について述べた。さらに、コーティング前のエアロラップの効果として、磨きの時間短縮や品質安定化、面粗さ改善とともに酸化被膜や微細残留物を除去することによるコーティング密着性の向上などについて、また、コーティング後のエアロラップの効果として、コーティングの膜厚を大きく変化させずに面粗さ改善、ドロップレットの除去が可能で、コーティング寿命の向上・安定に寄与できることなどについて紹介した。

講演する飛田氏

・「微粒子投射処理の食品業界への展開:付着抑制・滑り性向上と抗菌特性」熊谷正夫氏(サーフテクノロジー)…微粒子投射技術「マイクロディンプル処理®(MD処理®)」による食品粉体の付着抑制のメカニズムとして、平坦部がなく塑性加工による凸部が存在、接触形態が面接触から点接触に変わることで実効的な接触面積が減少するという解釈が加えられたほか、MD処理により接触角(見かけの親水性、撥水性)が制御可能で、食品においては水素結合成分を小さくすることで付着が少なくなると述べた。MD処理をはじめとする表面形状の形成によって接触面積や液(水)の接触角、表面自由エネルギーなどを制御することで、食品分野における食品粉体や食品固形物の付着抑制、滑り性向上、時間短縮、洗浄性向上などのニーズに応えられると強調した。また、MD処理による抗菌・抗カビ効果やウイルス低減効果の付与について実験結果をまじえて紹介。大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果の時間変化を提示し、菌のサイズとディンプルサイズが同じオーダーで抗菌効果が発現すること、形状効果が抗菌に効いているであろうこと、耐性菌を生成しないといった効果について述べた。

講演する熊谷氏

 研究会に続いて総会が開催され、令和3年度活動報告・会計報告がなされた後、令和4年度活動計画が報告され可決・承認された。役員改選では、会長に大森 整 氏(理化学研究所 主任研究員)、副会長に熊谷 泰 氏(ナノコート・ティーエス社長)と野村博郎 氏(理化学研究所 大森素形材工学研究室 嘱託)がそれぞれ再任された。

総会のようす:再任された大森会長(左)と議事進行を務める熊谷副会長(右)

 総会終了後は、大森素形材工学研究室の見学会が行われ、専任研究員の細川和生氏の研究テーマであるマイクロ流体チップの技術について紹介がなされた。

見学会のようす

 

kat 2022年6月6日 (月曜日)
kat

島貿易、高荷重トラクション試験機をトライボロジー・ラボに新設、デモ・サンプル試験を開始

2年 5ヶ月 ago
島貿易、高荷重トラクション試験機をトライボロジー・ラボに新設、デモ・サンプル試験を開始

 島貿易(https://www.shima-tra.co.jp/products/tribology)は、東京都中央区の同社本社内にあるトライボロジー・ラボに、英国PCS Instruments社製で、無潤滑/潤滑状態での摩擦特性を評価できるボールオンディスクタイプの多機能型摩擦摩耗試験機「ETM(Extreme Traction Machine)高荷重トラクション試験機」を導入し、デモンストレーションやサンプル試験を開始した。

ETM高荷重トラクション試験機

 

 トライボロジー・ラボではPCS Instruments社製トライボロジー計測器 (MTMミニトラクション計測器、EHD油膜厚計測器、USV高せん断粘度計) を常設し、デモンストレーションやサンプル試験を実施している。2008年に開設され2015年にリニューアル、部品・消耗品庫を設置してアフターサービス体制を強化しており、2016年からはイスラエルAtlantium社製紫外線水殺菌装置(HODシステム)の実機も常設し、オペレーショントレーニングやデモンストレーションを実施している。

 今回さらに、潤滑油などの多様なユーザーニーズに対応すべく、PCS Instruments社で新たに開発されたETM高荷重トラクション試験機をトライボロジー・ラボに常設することとなったもの。

 ETMの特徴は、①一般的にベアリング材として用いられるSUJ2相当の試験片で最大接触面圧3.5GPaが再現可能、②各試験片を独立したモータで駆動させることで、すべり率200%以上が再現可能、③様々な材質、表面粗さ、硬さの試験片の選択により幅広い摺動状態が再現可能、④FES自動ドレインシステムにより試験槽のクリーニング作業が簡単・短時間で実施可能、⑤3D-SLIMオプションの採用でボール表面のトライボフィルムの形成からはく離までの過程が観察可能、など。

kat 2022年6月2日 (木曜日)
kat

日本航空電子工業、摩耗抑制するEVコネクタ用銀めっき膜

2年 5ヶ月 ago
日本航空電子工業、摩耗抑制するEVコネクタ用銀めっき膜

 日本航空電子工業( https://www.jae.com )は、電気自動車(EV)用コネクタにおいて課題となっていた電気接続部の銀めっき膜の摩耗を大幅に抑制する新技術「wearzerOTM」を開発した。当技術は、高い導電性と耐摩耗性を両立するコンタクト(端子)を実現可能にするとともに、めっき材の省資源化やめっき工程の省エネルギー化および製品の長寿命化に貢献する。今後、EV向け充電プラグや車載パワーライン系コネクタに適用し、製品化を進めていく。

 この技術は、銀めっき膜の摺動部(接点部同士が接触し摩擦を生じる部分)に特殊な界面構造を形成することによって、銀めっき膜の摩耗の原因となる銀同士の凝着を制御する。この特殊な界面設計によって、電気伝導を妨げない程度に銀めっき面同士が接触する一方、摩耗が進行しないように離脱を繰り返すため、高い導電性と耐摩耗性を両立させるコンタクトを実現することができる。

 また、同技術は、標準的な軟質銀をわずか数µm程度めっきした電気接続端子にも適用できるため、省資源化やめっき工程の省エネルギー化、製品寿命の向上に伴う廃棄物の削減など、環境にやさしいコネクタを実現することができる。

 昨今、気候変動問題の解決に向けた脱炭素化の取組みが世界中で進められる中で、EVを中心とする次世代モビリティへの社会的関心が高まっている。EV充電用コネクタにおいては、高電圧・大電流といった従来の自動車用コネクタにはない新たな性能が求められる一方、製造工程を含めた環境への配慮やサステナビリティへの貢献も不可欠になっている。

 特に、EVの普及に向けた課題である「充電時間の短縮」のためには大電流を流す必要があるため、電気接点での損失を防ぐために電気抵抗の低い銀めっきが用いられるが、銀めっき膜はやわらかいため、繰り返し嵌合などにより接点の銀めっきが摩耗し、電気特性や挿抜特性が悪化する、という問題があった。

 この問題を解決するため、業界では銀めっきの硬質化や潤滑粒子を内包した複合銀めっきの技術開発が行われてきたが、硬質化は耐摩耗性に限界があり、複合銀めっきは製造工程が複雑化し環境負荷も大きくなるという課題があったという。

wearzerOのメカニズム

 

admin 2022年6月2日 (木曜日)
admin
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40 分 54 秒 ago
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