パーク・システムズ・ジャパン、新オフィスを開所、AFMを核に研究・産業分野への提案力を強化
パーク・システムズ・ジャパンは10月30日、新オフィス(東京都港区西新橋1-11-4)の移転開所式を開催し、顧客や関係者に新たな拠点を披露した。
移転開所式の鏡開きのようす酒樽は末広がりの縁起の良い名から人気の「末廣」(醸造元:福島県会津若松市 末廣酒造)
式典では、金 鍾得 パーク・システムズ・ジャパン社長が、物件探しから設計、工事、移転まで約2年をかけ、多くの関係者の協力を得て新オフィスを実現できたことへの謝意を表明。「皆様に気軽に立ち寄っていただき、測定や技術の相談ができる場にしていきたい」と述べ、社員一丸となって顧客の研究開発やモノづくりを支援する考えを示した。
新拠点の1階には、ガラス張りのクリーンルームを備えたデモルームを設置。研究用から半導体製造向けまで、同社のAFM(原子間力顕微鏡)を実機で確認できる。2階には執務エリアや大会議室、リフレッシュスペースを設けた。日本法人パーク・システムズ・ジャパンは2007年に設立され、現在は営業、マーケティング、技術、フィールドサービスなど、充実した体制で国内顧客を支える。
パーク・システムズは、AFMの発明に関わったSang-il Park(パク・サンイル)博士が1988年に米国でAFMの商業化を目指す企業を創業し、1997年に韓国・水原(スウォン)で設立した。その後、韓国本社を中心に世界16拠点で事業を展開し、研究用AFMに加えて、半導体・ディスプレイ向けの産業用自動計測装置、薄膜評価用の分光エリプソメーター、白色干渉計、AFM-IR、デジタルホログラフィック顕微鏡、アクティブ除振システムなどへ製品領域を広げている。本年2026年には、韓国・果川(クァチョン)に新たなグローバル本社を開設し、イノベーションと協業、そしてナノメトロロジーの未来を切り拓く拠点としている。
式典ではまた、パーク・システムズ・ジャパン営業部長の鈴木基純氏が、AFM市場で同社が4年連続で世界シェア首位を獲得していると説明。国内では日立製作所、TDK、TOPPAN、ソニー、HOYA、信越化学工業、SUMCO、キヤノンなど、海外ではIntel、TSMC、Samsungなどへの納入実績を紹介した。
挨拶する鈴木氏
AFMは、先端をナノメートルスケールまで鋭くした探針を試料表面に沿って走査し、探針と試料の間に働く原子間力を検出することで、表面の三次元形状や物性を測定する装置。光学顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)が主に像を観察するのに対し、AFMは表面をなぞるように測定するため、ナノスケールの凹凸や粗さを定量化できる。さらに、測定モードやプローブを使い分けることで、硬さ・弾性、粘弾性、電気特性、熱特性など、形状以外の物性評価にも対応する。材料科学、化学、ポリマー、ナノデバイス、ライフサイエンスなど幅広い研究分野で活用されている。
同社AFMの大きな特長が、XY方向とZ方向の走査機構を分離したスキャナー構造と、独自の「True Non-Contact™(完全非接触)」モードである。XYスキャナーにはフレクシャー機構を採用し、Z方向は電子制御で駆動することで、走査に伴う画像の歪みや軸間干渉を抑え、正確な三次元データの取得を目指す。また完全非接触モードでは、探針を試料に接触させず、原子間力の引力領域で生じる共振周波数などの変化を捉える。探針の摩耗や試料損傷を抑えられるため、柔らかい材料や微細構造を持つ試料でも、再現性の高い測定につなげられる。プローブ交換やレーザー位置合わせの自動化など、操作性の向上にも取り組んでいる。
研究用途で培ったナノ計測技術は、半導体製造の現場にも広がる。半導体デバイスの微細化に伴い、ウェハー表面の粗さ、CMP(化学機械研磨)後の形状、微細トレンチ、欠陥などを高精度かつ再現性よく評価する必要性が高まっている。同社はウェハー計測向けの自動AFMや、フォトマスク上の欠陥を検出・修正・検証するフォトマスクリペアAFMを展開。ロボット搬送などを組み合わせた自動化により、研究室での精密測定にとどまらず、製造工程でのインライン計測や品質管理を支援する。ベルギーの半導体研究機関imecとは共同開発を継続しており、先端半導体技術の評価にも取り組む。
来賓として挨拶に立った名古屋大学名誉教授の高井 治氏は、約30年前に大学でパーク社製AFMを導入した経験を振り返り、微細な位置合わせ精度がナノパターニング研究に有効だったと評価した。また、長年携わってきたエリプソメトリー技術にも触れ、パーク社が分光エリプソメーター分野を取り込んだことに技術的な縁を感じると述べた。薄膜の膜厚や屈折率を高精度に評価する光学計測と、表面形状・物性を捉えるAFMを組み合わせることで、材料やデバイスを多面的に理解できる。高井氏は、半導体の微細化や基板の大型化、高精度化を背景に、同社技術が今後さらに発展することへの期待を寄せた。
来賓の挨拶を行う高井氏
パーク・システムズ・ジャパン営業部長の鈴木氏はまた、新オフィスのデモルームを「実際の装置を見て、測定や技術について相談できる場所」として紹介した。研究開発と量産現場の双方でナノスケールの評価ニーズが高まるなか、実機デモ、技術相談、導入後のサポートを一体で提供する国内拠点の役割は大きい。今回の移転を機に、パーク・システムズ・ジャパンはAFMを核とする計測技術と周辺ソリューションを通じ、先端研究から半導体産業まで、顧客の課題解決を後押ししていく。
デモルーム見学会のようす開所式参加者の集合写真