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日本ベアリング工業会、新会長に鵜飼英一NTN社長

4ヶ月 3週 ago
日本ベアリング工業会、新会長に鵜飼英一NTN社長kat 2024年07日02日(火) in

 日本ベアリング工業会(JBIA)は、市井明俊前会長(日本精工社長)の任期満了に伴い、鵜飼英一NTN社長を新会長に選出した。任期は、2024年6月~2026年6月の同会総会まで。

 日本ベアリング工業会は、ベアリング(転がり軸受および同部品)を製造する法人により構成された団体で、技術標準化、不正商品対策、環境対策、中小企業対策などさまざまな課題について、業界として対応している。

 鵜飼新会長は、「日本ベアリング工業会の会長として、ベアリング業界全体の健全な発展に向け、取り組みを進めていく」と語っている。

鵜飼新JBIA新会長

鵜飼英一氏
1957 年生まれ。1980 年エヌ・テー・エヌ東洋ベアリング(現NTN)入社。入社後は、国内外の製作所において品質保証・製造部門などで経験を積み、2011年に執行役員、2014年より常務執行役員、アセアン・大洋州地区総支配人を経験。2017年に取締役、2021年4月より現職(代表執行役 執行役社長)。

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日本トライボロジー学会、トライボロジー会議 2024 春 東京を開催、学会賞受賞者を表彰

4ヶ月 3週 ago
日本トライボロジー学会、トライボロジー会議 2024 春 東京を開催、学会賞受賞者を表彰kat 2024年07日02日(火) in

 日本トライボロジー学会(JAST)は5月27日~29日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで、「トライボロジー会議 2024 春 東京」(実行委員長:日立製作所・小山田具永氏)を開催、900人強が参加した。
 

実行委員長の小山田氏

 

 今回は、「機械要素」、「潤滑剤」、「摩擦材料・固体潤滑」、「表面・接触」、「摩擦」、「流体潤滑」、「表面処理・コーティング」、「バイオトライボロジー」、「疲労」、「分析・評価・試験方法」、「境界潤滑」、「摩耗」、「バイオトライボロジー」、「シミュレーション」のテーマによる一般講演と、「トライボロジー技術へのAIの活用」、「トライボロジー界面における最新の計測・解析技術の進展」のテーマによるシンポジウムセッション、技術賞受賞講演と論文賞受賞講演で、全177件の発表が行われた。
 

表面処理・コーティングの一般講演のようす

 

 28日には特別フォーラムが開かれ、寺田 努氏(神戸大学)が「ウェアラブルデバイスが切り拓く人間とコンピュータの新たな関係」と題して講演を行った。
 

特別フォーラムのようす

 

 28日にはまた、「2023年度日本トライボロジー学会賞」表彰式が行われ、ベアリング、潤滑関連では、以下などが表彰された。

論文賞

「しゅう動特性に及ぼすHFO冷媒の影響(第1報)―冷媒雰囲気下のしゅう動特性および金属新生面への吸着特性―」設楽裕治氏(ENEOS)、森 誠之氏(岩手大学)…本論文はトライボロジー特性における冷媒分子構造の影響を新生面への吸着特性と分子シミュレーションによって表面化学・トライボ化学の面から検証したもので、工学的に意義深く、冷凍システムや冷凍機油の技術確立への貢献が期待できるとして評価された。
 

左から、設楽氏、梅原徳次JAST前会長、森氏 技術賞

「低フリクションハブベアリングⅢ用グリースの開発」川村隆之氏・関 誠氏・近藤涼太氏(NTN)…本技術はタイヤの回転を支えるハブベアリングの回転トルクを大幅に低減させるために必要なグリース技術で、ハブベアリング以外の一般の転がり軸受にも量産適用可能でありカーボンニュートラル社会への貢献が大いに期待されるとして評価された。
 

左から、梅原JAST前会長、川村氏

 

「金属系添加剤非含有のディーゼルエンジン油の開発」清水保典氏・甲嶋宏明氏・葛西杜継氏(出光興産)…金属系添加剤非含有の開発油は、DPF搭載車の燃費悪化の抑制や廃棄物の削減など、省燃費・省資源への貢献が期待できることに加え、運輸業界における運転手不足や高齢化、2024年問題など、急務となっている業務効率化に対し、DPFトラブルに起因する労働環境の悪化の改善による貢献も期待できるとして評価された。
 

左から、梅原JAST前会長、清水氏、甲嶋氏、葛西氏


「超高速にトライボロジー現象を解明できるAI分子シミュレータおよび潤滑剤のバーチャルスクリーニング技術」小野寺拓氏・設楽裕治氏・柴田潤一氏・緒方 塁氏(ENEOS)…本技術は従来の不可能を可能にするAI分子シミュレータを世界に先駆けてトライボロジー課題へと適用し、摩擦界面の現象解明に留まらずマテリアルズ・インフォマティクス(MI)による材料スクリーニングへと発展させたもので、実験コストを抑えるとともに迅速な要因解明や材料選定に資することができ、トライボロジー分野だけでなく触媒や電池などMIの適用が盛んな他分野での材料設計にも汎用的に活用できるとして評価された。
 

左から、梅原JAST前会長、小野寺氏、設楽氏、柴田氏、緒方氏奨励賞

「マイクロEHL解析と内部応力解析による表面損傷への影響因子の解明」柳澤穂波氏(日本精工)…本研究は転がり軸受表面に生じる損傷に関わる影響因子の解明を試みたもので、これまで測定が困難であった表面損傷の影響因子が、数値シミュレーション技術により明らかにされた。この成果は軸受長寿命化、エネルギー効率化への取り組みの飛躍的な加速につながる重要な知見と考えられるとして評価された。

「転がりすべり接触下における潤滑剤からの水素発生に及ぼす油種の影響」江波 翔氏(日本精工)…本研究は転がりすべり接触下における潤滑剤からの水素発生の影響因子を調べ、水素発生メカニズムを考察したもので、潤滑剤からの水素発生に関する有益な知見が得られている。本成果は白色組織はく離の対策技術や寿命予測技術の開発に貢献し、軸受の信頼性向上が期待されるとして評価された。
 

左から、柳澤氏、梅原JAST前会長、江波氏

 

「着色剤による転がり軸受内のグリース挙動の可視化」小畑智彦氏(NTN)…本研究は狭小すきま通過時に分裂する特殊な着色剤微粒子の凝集体をグリースに添加し、軸受運転時の凝集体の微細化に伴うグリース色の変化を利用してグリース挙動を可視化したもので、転がり軸受でのグリース流動およびその時の流動履歴を高精度に推定できる技術である。得られた成果は低トルク化が要求される軸受の内部設計およびグリース開発に貢献すると期待されるとして評価された。

「X線回折環分析装置による転動接触疲労の評価」嘉村直哉氏(NTN)…本研究では、転動接触面から得られるX線回折環の回折強度分布の変化が転動疲労進行と相関することを確認し、これを定量化して疲労度のパラメータとして利用した。従来の手法では疲労が進行した領域で推定精度が低下するが、本手法では疲労度の評価精度を高めることが可能である。本研究成果は、転がり軸受の疲労度推定精度の向上に寄与し、機械のライフサイクル延長の観点で重要な転がり軸受再使用の可否判断といった用途での活用も期待されるとして評価された。
 

左から、小畑氏、梅原JAST前会長、嘉村氏

 

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「染谷常雄先生を偲ぶ会」が開催

4ヶ月 3週 ago
「染谷常雄先生を偲ぶ会」が開催 in kat 2024年07日02日(火) in

 昨年7月14日に逝去した染谷常雄・東京大学名誉教授を偲ぶ会が5月25日、東京都目黒区のホテル雅叙園東京で、約70名の参列のもと開催された。染谷氏が在職した東京大学および武蔵工業大学(現 東京都市大学)の各研究室OBと、同氏が主宰した「ISO/TC123平軸受国内委員会」、日本機械学会RC分科会が合同で企画・開催したもので、発起人は畔津昭彦氏(東海大学)と飯山明裕氏(山梨大学)、三原雄司氏(東京都市大学)、三田修三氏(東京都市大学)、橋爪 剛氏(オイレス工業)。染谷常雄氏の令室・房子氏と、長男で東京大学副学長の隆夫氏を迎え、橋爪氏が司会進行を務めて、染谷常雄氏の業績やエピソードを語った。

会場のようす

 

司会進行を務める橋爪氏

 初めに発起人代表の畔津氏が挨拶に立ち、「染谷先生のご葬儀後に、東大OBを代表して私と、武蔵工大OBを代表して三原雄司先生、ISO/TC123を代表して山本隆司先生が染谷先生のご自宅を訪問してご焼香させていただいた。その際に、染谷先生と深いつながりを持つ多くの方々が集まって思い出を語る『偲ぶ会』を開きたいという話になった。逝去され1年が経過したが、本日無事に開催できることとなり関係各位に厚くお礼申し上げたい。教え子にとって染谷先生は、我々の首根っこを捕まえて“あれをやれ、これをやれ”というタイプの先生ではなく、丁寧にアドバイスはするが、後は自主性に任せる方だった。我々は、自ら研究に没頭する先生の背中を見て研究を続けることができた。ご冥福を祈りたい」と挨拶した。

挨拶する畔津氏

 染谷氏は1931年、千葉県東葛飾郡鷲野谷という無医村に生まれ、時折やってくる医者の自動車から漏れたガソリンの良い香り(芳香族成分)に魅了され、東京大学工学部機械工学科に入学し内燃機関の研究を始めた。1955年に大学院で川田正秋教授の研究室に入り研究を続けたが、幼少からのドイツへの憧れをばねに交換留学生の試験を受けて合格、同年11月シュトゥットガルト工科大学に留学し、半年後にカールスルーエ工科大学に移って本格的な研究を進めドイツの工学博士号を取得した。帰国後に再度日本でも博士号を取得し1973年に東大工学部教授に就任、1991年3月に東大を定年退官した。その後、同年4月に武蔵工業大学の教授に就任し10年間、研究・教育活動を続けた。その後も研究と社会活動を継続してきたが、2023年7月に逝去した。

 メインの研究課題は、カールスルーエ工科大学で始めた滑り軸受に関する研究。滑り軸受の中での軸心の軌跡をコンピュータを駆使して計算して触れ回り運動を明確にする研究を進め、ドイツで博士号を取得した。二番目が、東大に戻って始めた、軸受を2方向から加振する自作の実験装置を用いた、軸受油膜の動特性と回転軸の振動の研究。これにより東大で博士号を取得し、また日本機械学会論文賞を受賞した。三番目が、武蔵工大での三原氏との共同研究となる、エンジン主軸受の油膜圧力分布を測る「薄膜圧力センサ」の研究開発。生涯を通じて滑り軸受からトライボロジー、さらには内燃機関へと研究を進め、集大成として2020年に『滑り軸受』(養賢堂刊)を出版した。一方、燃焼に関する研究も幅広く行い、科学研究費補助金重点領域研究「燃焼機構の解明と制御に関する基礎研究」では、国内の第一線の内燃機関研究者ほぼすべてを束ねてプロジェクトを成功に導き、1993年に成果報告書『Advanced Combustion Science』(Springer社刊)を出版した。

 また、研究と並行して多くの社会貢献への取り組みを続けたが、中でも生涯を通じて滑り軸受の国際標準化(ISO/TC123)に努めた。1995年に日本機械学会平軸受調査班班長としてISO規格準拠のJIS原案作成に取り組んだ後、日本をISO/TC123の発言権のあるPメンバーに昇格させて標準化を推進、複数のSCの幹事国を獲得し、さらには親委員会の幹事国となってISO/TC123国際議長に就任し国際標準化を強力に推し進めた。

 染谷氏に続きISO/TC123国際議長を務めた山本隆司氏(東京農工大学名誉教授)は献杯の挨拶に立ち、「染谷先生の著書『滑り軸受』の巻頭言に見られる先人の尽力・功績に対して敬意を払う染谷先生の姿勢は、研究者としての高潔な人柄を彷彿とさせるものがある。染谷先生からさまざまな指導をいただいたJIS・ISOなどの標準規格作成活動は、先生の教育・研究分野に並ぶ、大きな活動分野。先生の国際標準活動における業績を偲ぶ際、「飲水思源」という四字熟語が最もふさわしいと思う。染谷先生の先人への敬意を払う姿勢と、標準化に従事した、まさに井戸を掘る取り組みは、軌を一にしている。一方で、染谷先生がご高齢ながら標準化活動に邁進されたことはご家族の支えがあってのことで、皆さまのご協力にも心から感謝を申し上げたい」と語った。

献杯の挨拶を行う山本氏

 東大OB代表として挨拶した田中 正氏(元大同メタル工業)は、その人柄から染谷氏を偲び、ドイツの著名なDr. Pischingerの名前を間違って発音した際に小声で正確なドイツ語の発音を教えてくれたことや、声楽もたしなんだ染谷氏が名古屋で開催されたOB会で三田氏とともにシューベルト作『美しき水車小屋の娘』を合唱した思い出、さらには奥方の健康面のアドバイスに対し忠実に従うなど家族に対する究極のやさしさなどについて語った。また、研究活動だけでなく国際標準化活動に積極的に従事したことに触れ、2016年のISO/TC123ロンドン国際会議で国際議長退任の挨拶を行った後、ドイツ代表が欧州だけでなくアジアを含め全世界的な視野で推進した染谷氏の国際標準化活動への尽力と成果に対し感謝の言葉が述べられ、参加者全員によるスタンディングオベーションへと展開したエピソードなどを紹介した。

エピソードを語る田中氏

 武蔵工大OB代表では東京都市大学教授で現在ISO/TC123国際議長を務める三原雄司氏が、染谷氏が東大在籍のころから構想していた薄膜センサの研究を進めるよう念仏のように言われ、中古の成膜装置を東大OBの会社から譲り受けてトラックで運んだことや、研究がうまくいかず大学を辞めるか迷っていた矢先に開発・実験が成功し慌てて博士論文を書いたこと、薄膜圧力センサをようやく開発し薄膜センサの研究で得た基礎技術を共同で特許申請したが、ホンダ、トヨタが連名で特許申請するのは初めてと言われながらも2010年に特許が成立した、といったエピソードを紹介した。染谷氏が強く希望していた薄膜センサ研究から多くの研究成果が生まれ、数々の受賞をして多くの成果を得て、今なお電気自動車や水素エンジンの開発など社会に貢献し続けていることを報告しつつ、染谷氏の指導に対し感謝の意を述べた。

思い出を語る三原氏

 ISO/TC123からは笠原又一氏(元オイレス工業)が、日本機械学会平軸受調査班でISO規格準拠のJIS原案作成に取り組む中で、ISO規格に承服できない部分があったのを機に、日本がISO/TC123のPメンバーとなり標準化を推進、六つのSCのうち三つのSCの幹事国、さらにはTC123親委員会の幹事国の認証を受けた経緯を語った。また、国内委員会を支援する日本滑り軸受標準化協議会を設立、アジア・太平洋地域8カ国に対し研修会や出張セミナーを実施、熱心な教育者としての本領を発揮してアジアでの標準化への関心を一気に押し上げたことを紹介。2018年のベルリン国際会議の席上で日本をPメンバーに後押しした元DIN軸受担当Herbert Tepper博士が「ISO/TC123が50周年を迎え我々がこうして集まることができたのは滑り軸受と標準化のエキスパートでオーソリティーの染谷先生のお陰」とその功績を讃えたエピソードを語った。

挨拶する笠原氏

 ISO/TC123からはまた、Kim Choong Hyun博士(Korea Institute of Science and Technology)が、染谷氏のお陰で韓国がISO/TC123のメンバーになれたことに感謝の意を述べつつ、2008年に学士会館で開かれた会合で染谷氏のISO/TC123関連のプロジェクトに関するガイダンスを聞いたのが初顔合わせで、以来、温かく親切に接してもらったことや、Kim氏の担うプロジェクトなどに関して染谷氏が積極的に協力・支援し成功に導いてくれたたことなどの思い出を語った。「染谷先生は、滑り軸受のプロフェッショナルとして世界の滑り軸受産業の発展に寄与し、また、その生涯をかけてISO/TC123の活動を世界的に推進し、発展させてきた」と称賛しつつ、染谷氏の冥福を祈った。 

挨拶するKim氏

 家族代表として挨拶に立った長男・染谷隆夫氏は、父親の背中を追ってきた氏が、2020年に刊行した『滑り軸受』の執筆に関して90歳で200頁を超える執筆をした集中力と根気を目の当たりにしたことや、『滑り軸受』の続巻の執筆に意欲的な構想があったこと、2021年に体調を崩して東大近くの病院に入院することになったが意識がはっきりとしていて海外出張で体調を崩さないよう心配されたことなどを追想。その生前最後の日(逝去日)に遡って従四位の叙位・瑞宝章中綬章叙勲が行われ、同時に位階が授与されたが、功労に関する多くの資料を関係各位が提供してくれたことに触れつつ、「皆さまからの父のエピソードを聞いて、皆さまのお陰で父が研究者として充実した人生を送れたものと実感している」と謝意を述べた。

挨拶する染谷隆夫氏

 最後に東大OB会の羽山定治氏(羽山技術士事務所)のハーモニカによる伴奏で、参加者全員が『仰げば尊し』を合唱し、偲ぶ会は閉会した。

羽山氏のハーモニカによる伴奏(上)で参加者全員が合唱(下)

 

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日本滑り軸受標準化協議会、第39回総会を開催、新会長に持丸昌己氏(オイレス工業)

5ヶ月 ago
日本滑り軸受標準化協議会、第39回総会を開催、新会長に持丸昌己氏(オイレス工業) in kat 2024年06日19日(水) in

 日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は6月11日、東京都千代田区のTKP 東京駅セントラルカンファレンスセンターで「2024年度 第1回総会(通算第39回総会)」をハイブリッド形式(集合&ウェブ配信)により開催した。
 

開催のようす

 

 当日は開会の挨拶に立った林 洋一郎 会長(オイレス工業)が、「私が会長に就任して6年が経過したが、そのうち4年がコロナ禍で、その影響を受け、ISO/TC123委員会も対面での活動が制限されてしまった。また、PBSAの総会も、最初は書面のみの回覧、それからウェブ方式を経て、現在も続けているハイブリッド方式の開催へと変化してきた。全体的に活動が制限されてきたように思う。私自身は本総会をもって会長を退任し、後任には持丸理事が総会の承認をもって就任することが決まった。会員各位の長年のご支援、ご協力に感謝したい。昨年10月にISO/TC123国際会議を日本・京都で開催し、この際に試験的に同時通訳を採用し、その有効性は確認され、その結果に関しても日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会で記録として残している。しかしながら同時通訳の費用を支援したPBSAとしては、予算面で大幅なマイナスを計上することとなった。さらに海外支援に関しても、航空運賃や宿泊費の値上がり等もあり、マイナスが膨らんだ状況となった。経済産業省より今回大幅に増額のご支援をいただくこととなり大変感謝している。しかしそれでもなお、PBSAの収支バランスが取れない状況のため、この対策に関しては後ほど全体説明の中で私から説明したい。また、先日無事終了した「染谷常雅先生を偲ぶ会」に関しても、国内委員会から、韓国のISO/TC123メンバーであるKim氏の参加費等の支援要請があり、PBSAとして支援したが、事前の会合の中で電気自動車の軸受に関する研究の話題が各国で増えてきているという情報も得られ、国際協調の重要性、国際会議に参加して情報を得ることの重要性を改めて感じた。今後も積極的に継続していきたい。本総会の終了後は、カシオ計算機 開発本部 品質統轄部 統轄部長 小山 睦氏から「G-SHOCKの品質」という演題で講演をいただく。私の幼馴染でカシオ計算機の現社長でかつてG-SHOCKの商品企画を担当していた「G-SHOCKの育ての親」である増田裕一氏からは、一緒に遊ぶ折にG-SHOCKの魅力を度々PRされてきたので私自身も購入し、長持ちなので今に至るまで釣りやダイビングの折に使用している。今回の講演会も非常に興味深い。ルビーの軸受が使われるなど腕時計は我々の滑り軸受が関わるところが少なくないが、違う業態の品質試験・管理がいかに行われているのかをうかがい、活発な質疑応答をしていただければと思う」と述べた。
 

挨拶する林PBSA会長

 

 続いて、来賓の経済産業省 産業技術環境局 国際標準課の青山直充氏が「ISO/TC123国際標準化活動に協力をいただき感謝している。国際標準化の活動について、経産省としては今後も予算面で支援していく。今回支援の予算が増額されることとなったが、PBSAが注力する標準化にかかわる人材の育成の予算が含まれたものとなっている。経産省でも、我が国の標準化人材の情報を可視化することで、企業や団体において外部人材の活用を促進し、また、我が国の標準化人材のプレゼンスを向上させることを目的として、標準化人材のデータベースである「標準化人材情報Directory(STANDirectory)」をリリースしているが、国際標準化を担うための若手人材の育成に引き続き尽力してほしい」と挨拶した。
 

挨拶する青山氏

 

 さらに、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会 委員長の片桐武司氏(大同メタル工業)が挨拶に立ち、「日頃のPBSAのご支援に対し、また、昨年度の京都でのISO/TC123国際会議での非常に多大なご支援に対し、感謝している。2024年度の国内委員会の計画については後ほど山田幹事から説明があるが、引き続き費用面での支援をいただきたい。円安の影響からドイツ・ベルリンで行われるISO/TC123国際会議への参加においては渡航費も宿泊費も高騰しており、宿泊費に関する日本機械学会の規定にある金額は、円安だからといって増額されることがない。その部分でご支援をいただくことになるものと思う」と述べた。
 

挨拶する片桐氏

 

 総会ではまず、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の2024年度の活動計画について国内幹事の山田 晃氏(大豊工業)が、11回の国内委員会と1回の国際委員会に参加することや、省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託の1テーマである「環境配慮型の水潤滑用軸受材料に関する国際標準化」への取組み状況や、「テーマ名:軸受の廃棄・リサイクルの国際標準化(SC6)」(プロジェクトリーダー:笠原又一氏)と「テーマ名:水潤滑用の軸受材料の国際標準化(SC7)」(プロジェクトリーダー:笠原又一氏)という新規規格制定および改正提案の2024年度に規格化を目指す状況、本年11月13~15日にドイツ・ベルリンで対面方式により開催されるISO/TC123国際会議、同国際会議にかかる費用に関するPBSAへの支援要請などについて報告した。
 

ISO/TC123平軸受国内委員会の活動報告を行う山田氏

 

 続いてPBSAの2023年度の活動報告と2024年度の活動計画について、PBSA会計の橋爪 剛氏(オイレス工業)より報告がなされ、2023年度の活動報告として、2023年6月と2024年3月の2回の総会と書面理事会が開催されたこと、国際会議が2023年10月に京都で対面形式にて開催された際の旅費・同時通訳の費用等をPBSA が支援したこと、第1回・第2回総会で計3件の講演会を設けたことが報告され、さらに2022年度会計報告がなされた。2024年度の活動計画としては、第2回総会を2025年3月に2回開催し、理事会を必要に応じて開催する予定のほか、本年11月にドイツ・ベルリンで開催されるISO/TC123国際会議の経産省予算の不足分の支援や、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会活動の支援、PBSAおよび同会員に寄与する講演会・研究・調査などの実施、標準化作業を円滑に進めるための会員が活用しやすいホームページの更新・整備、さらには新規規格開発のために参考となる他TC規格などの購入などの予定について報告された。
 

PBSAの活動報告を行う橋爪氏

 

 また、PBSA予算の今後の収支バランス改善に向け林会長から、総会の開催回数の見直しや、PBSAライブラリの流用、活動報告書の印刷から電子データ化への移行(国内委員会とPBSAとの議論が必要)、会費増額、会員増強といった経費削減に関する案が出され、この案にとどまらず引き続き議論・検討を進めてほしい、との要請がなされた。

 

 本日付けで理事会互選によりPBSA会長に就任した持丸昌己理事(オイレス工業)が挨拶に立ち、「明日から会長の重責を務めることになったPBSAは、ISO/TC123平軸受国内委員会のサポートを行う団体。ISO/TC123平軸受国内委員会は、国内さらには海外の他のTCの活動の参考になるような、非常に活発でまとまりのある団体であり、素晴らしい組織だと思っている。PBSAは、国内委員会の活動をサポートする団体であり、引き続き予算面で厚く支援して滑り軸受の国際規格・標準化活動を推進していきたい。その一方で、PBSAの収支バランスを改善するための経費の削減案を理事会で諮って進めていきたい。今後ともPBSAに対するご支援、ご協力をお願いしたい」と挨拶した。
 

挨拶する持丸PBSA新会長

 

 また、林会長の退任に伴いPBSAオブザーバーから会員に就任した冨田博嗣氏(オイレス工業)は、「持丸新会長より引き継ぎ、ISO/TC123 SC6の議長を務めることになった。PBSAの活動については良く分からない部分もあり、理事の方々に教えていただきながら取り組んでいきたい。また、SC6では新しい規格として静圧気体軸受の用語の準備委員会を設けることを鋭意進めていく予定なので、PBSAのご協力をお願いしたい」と挨拶した。
 

挨拶する冨田氏

 

 総会終了後には、カシオ計算機 開発本部 品質統轄部 統轄部長 小山 睦氏が「G-SHOCKの品質」と題して講演を行った。“落としても壊れない丈夫な時計を作りたい”という構想のもと生みの親である伊部菊雄氏が「5段階の衝撃吸収構造+点接触の心臓部浮遊構造」を確立し、10mからの落下にも耐える初代G-SHOCKの開発に至ったストーリーや、“世の中にないもの、品質、規格を創造、異業種を参考にしつつそれを超える”という長年受け継がれたスピリットから、現時点で202項目に及ぶ独自開発の品質試験と、品質試験のための耐衝撃性(ハンマー衝撃)試験、加速落下衝撃試験、静電気試験、耐泥性試験、振動試験といった独自開発の試験機、それら試験機を設置した「時計品質保証実験室」を一般公開することでG-SHOCKの品質・ブランドプロモーションへと活用していること、さらにはISO/TC123に関連して時計業界の国際標準化活動の概略などについて、紹介がなされた。
 
 

講演を行う小山氏

 

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三洋貿易、実践講座「トライボロジーの基礎」を開催、7月5日、7月26日の会場・オンライン参加を継続募集

5ヶ月 ago
三洋貿易、実践講座「トライボロジーの基礎」を開催、7月5日、7月26日の会場・オンライン参加を継続募集kat 2024年06日18日(火) in

 三洋貿易は6月7日、東京理科大学 佐々木信也教授を講師に4回シリーズで開講される実践講座「トライボロジーの基礎」の第1回を開催した。

 いずれも佐々木教授による座学と実演・実習が行われる。第1回目となる今回は「摩擦・摩耗のメカニズム」をテーマに、実学としてトライボロジーを見た場合の制御対象となる課題が①摩擦の制御、②摩耗の制御、③エミッションの制御に大別されることを解説。摩擦のメカニズムについては摩擦表面と真実接触、ストライベック線図、摩擦の潤滑形態について解説した。また、摩耗メカニズムについては①凝着摩耗、②アブレシブ摩耗、③腐食摩耗、④疲れ摩耗の四つにシンプルに分類することで対策が取りやすいとした。摩擦摩耗試験にいついては、その分類(カテゴリーⅠ~Ⅲ)、形態と関連工業標準、今後のDXのための要件としては質の良いデータを多くとることがあり、データの汎用性と信頼性、天のデータから面・空間へ、感性価値の定量化など求められるトライボロジー特性に関する評価・分析装置を使うことが重要、と総括した。

佐々木教授による座学のようす

 

 座学に続いて、三洋貿易の取り扱い製品としてRtec-Instruments製を中心とした摩擦摩耗試験機の性能・特長について紹介、その後、Rtec-Instruments製多機能摩擦摩耗試験機「MFT-5000」を用いたボールオンディスク試験(回転と往復動)の実演・実習が行われた。

多機能摩擦摩耗試験機「MFT-5000」を用いた実習・実演のようす

 

 次回は6月14日で座学は「摩擦材料とその評価方法」で、実演・実習は四球試験とスラストシリンダーオンディスク試験、7月5日の座学は潤滑剤とその評価方法で、実演・実習はリングオンブロック試験とトラクション試験、7月26日の座学は表面改質とその評価方法で、実演・実習はスクラッチ試験とインデンテーション試験、表面形状・粗さ計測。

 三洋貿易では、7月5日と26日の実践講座について、会場参加についても若干の枠があるとして追加募集を行っている。会場参加が難しい場合は、オンラインでの視聴が可能。参加申し込みは、こちらまで。

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ハイウィン、コンパクト・高トルク・高精度波動歯車減速機の新シリーズを発売開始

5ヶ月 ago
ハイウィン、コンパクト・高トルク・高精度波動歯車減速機の新シリーズを発売開始kat 2024年06日18日(火) in

 ハイウィンは本年6月、コンパクト・高トルク・高精度な波動歯車減速機「DATORKER🄬」の新シリーズを日本で発売した。6月19日から東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される「機械要素技術展[東京]で初披露される。

 同社では今回、波動歯車減速機DATORKER🄬に、新しい重負荷型の「DGC/DGHシリーズ」、耐モーメント型の「DSC-Mシリーズ」、軽量型の「DLCシリーズ」を新たに追加したほか、標準型も従来よりもサイズ展開が広がっている(11、40)。

「DATORKER」の新シリーズ

 

 小型・軽量で組み立てが簡単で、各種産業用ロボットだけでなく、工作機械や半導体製造装置、歯科ミリングマシンなど幅広い精密機器に使用可能。厳しい負荷条件でも高い角度伝達特性を発揮し、産業用ロボットや工作機械などに最適。コンパクトなだけでなく、高性能で長寿命、ゼロバックラッシュで安定した高い位置決め精度と、幅広いラインナップが特徴となっている。

 主な用途は、産業用ロボット、自動化設備、半導体装置(ウエハ研磨装置・ウエハ搬送ロボット)、工作機械(レーザー加工機)、歯科ミリングマシン、など。

HIWIN波動歯車減速機「DATORKER」の仕様概要

 

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エボニック、エコヴァディスのサステナビリティ調査で最高位「プラチナ」評価を再度獲得

5ヶ月 ago
エボニック、エコヴァディスのサステナビリティ調査で最高位「プラチナ」評価を再度獲得kat 2024年06日18日(火) in

 エボニック インダストリーズは、 サステナビリティに対する取り組みにおいて、格付け機関であるエコヴァディス(EcoVadis)からプラチナ評価を獲得した。これにより、スペシャルティケミカルカンパニーであるエボニックは、過去12カ月間にエコヴァディスの調査対象となった企業の中で、上位1%に入る高い評価を受けることになった。同社のプラチナ評価獲得は、2021年、2022年に続いて3回目となる。

 

 エボニックの最高人事責任者兼労務担当取締役・サステナビリティ担当執行役員のトーマス・ヴェッセル氏は、「エコヴァディスからプラチナ評価をいただけたということは、当社のサステナビリティ管理システムの質の高さが認められたということ。またバリューチェーン全体を通じて透明性を確保するという当社のコミットメントを証明するものでもある。我々は、ステークホルダーとともに、このテーマを継続的に推進している」と述べている。

 この目標達成に向けて、エボニックは自社の生産とビジネスプロセスだけでなく、バリューチェーン全体、とりわけサプライチェーンと顧客にとっての製品のメリットや用途にも常に注意を払っている。

 エコヴァディスのサステナビリティ評価では、「環境」、「労働と人権」、「倫理」、「持続可能な資材調達」の各分野における企業のサステナビリティ・パフォーマンスが評価の対象となる。また、公開情報をもとに評価が行われる。

 エボニックは、化学業界のイニシアチブ"Together for Sustainability” (TfS:サステナビリティのための協力)の創設メンバーで、パートナー企業はサプライヤーに対し統一性のある監査と評価を実施し、さらにトレーニングを行うことで、グローバルサプライチェーンの透明性と持続可能性を高めたいと考えている。本イニシアチブのパートナーであるエコヴァディスは毎年、サステナビリティ評価を通じてTfSメンバー企業の評価を行っている。

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イグス、最高110℃に耐える3Dプリント材質を開発

5ヶ月 ago
イグス、最高110℃に耐える3Dプリント材質を開発kat 2024年06日18日(火) in

 イグスは、最高110℃の耐高温性を有する3Dプリンター用粉末状材質「イグリデュールi230」を開発、提供を開始した。本材質により、3Dプリント部品の適用が難しい高温環境での使用可能性が広がっている。

110℃の環境でも使用可能な粉末状3Dプリント材質「イグリデュールi230」

 

 少量生産品や試作部品を迅速にコスト効率よく製造するために、3Dプリントを利用する設計者が増えている。3Ⅾプリントの造形方法の中でも、粉末焼結積層造形(SLS)方式は強度が高く人気の方式である一方で、PA12のような標準的なSLS用材質は一般的に80℃を超える環境で使用すると寸法安定性が失われていた。

 周辺温度が高い環境でも使用できる3Dプリント製品の需要の高まりを受け、イグスでは今回、熱に強い粉末状3Dプリント材質「イグリデュールi230」を開発したもの。i230は、最高110℃の環境で長期間使用が可能で、DIN EN ISO 75 HDT-AおよびHDT-Bに準拠した外部認定機関の試験によって耐熱性が証明されている。

 i230は、耐熱性が高いだけでなく、耐摩耗性にも優れている。イグスの社内試験施設で実施した検証試験において、i230はPA12よりも約80%耐摩耗性が高いことが確認された。同時に、i230は室温での機械強度がPA12よりも約50%高く、曲げ試験では94MPaの圧力にも耐えるという結果を得ている。これにより、従来と同程度の部品強度を備えたより薄いすべり軸受などを実現でき、スペースと重量を減らすことが可能となる。

 i230はさらに、静電気散逸性(火災の原因などにもなる静電気の放電から機器を保護する)、PTFE無配合(他のイグス製材質と同様)などの特徴を有している。

 従来、3Ⅾプリント部品は耐久性や精度の制約から、産業分野においては評価試験や少量生産の用途に限られるとの理解が一般的だったが、イグスの3Dプリントサービスは以下の特徴により、最終製品としての部品製造が可能となっている。

① 高機能な素材
・摺動に特化したイグスの自社開発素材を使用
・標準的な3Dプリント用プラスチック(PLA/ABS)の最大50倍の耐摩耗性により高耐久を実現
・耐薬品性、FDA対応など、用途に合わせた特性を持つ素材を使用可能

② 高い精度
・射出成形、機械加工では難しい複雑な3D構造を加工可能
・2種類の素材をFDM(熱溶解積層法)で製作可能。複数部品で構成されていた箇所を、一つの部品に設計変更できる

③ 費用算出が簡単
・見積もりが不要、オンライン計算ツールで価格を提示(一部加工を除く)
・1個から必要な数だけ注文可能(最大10000個)
 

イグリデュールi230を使用した3Dプリント部品の例

 

 3Dプリントサービスは、オンライン上でCADデータをアップロードし、サイズや数量、表面処理などを選択するわずかなステップで注文が可能。

イグスのオンライン3Dプリントサービスについては以下で確認できる。
https://www.igus.co.jp/info/3d-print-3d-printing-service

オンライン3Dプリントサービスの利用については以下で確認できる。
https://iglidur-designer.igus.tools/model

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イグス、AIが無潤滑樹脂部品を提案する日本語対応アプリをリリース

5ヶ月 ago
イグス、AIが無潤滑樹脂部品を提案する日本語対応アプリをリリースkat 2024年06日18日(火) in

 イグスは、機械や設備などの画像からAIが無潤滑化につながる樹脂部品を提案するアプリ「igusGO(イグスゴー)」の日本語対応バージョンをリリースした。AIの提案をもとに従来の金属部品を樹脂部品に置き換えることで、潤滑油が不要になり、環境負荷の低減やコストカットにつながる。

igusGO

 

 igusGO は、2023年にドイツ本国でリリースされて以降、設計者のユーザーを中心に全世界で8000ダウンロードを突破している。

 金属部品が使われる機械や設備では、部品同士の摩耗や故障を防ぐために、グリースなどの潤滑油が欠かせない一方で、年間約2220万t以上の潤滑油が水や土壌に流れ、潤滑油の環境への影響が懸念されている。

 イグスは可動部におけるすべりの技術を強みに、樹脂部品(モーションプラスチック)を提供しているが、機械や設備で使われる金属部品をモーションプラスチックに置き換えることで、潤滑油が不要になり環境への負荷を下げることができる。また、定期的に潤滑油を差す作業や、潤滑不足による機械故障のダウンタイムがなくなるため、人件費やメンテナンスコストの軽減にもつながる。

 2024年にドイツのアーヘン工科大学とイグスが発表した共同研究では、無潤滑のエンジニアリングプラスチック製すべり軸受に置き換えた場合に、年間で最大1400万ユーロ(約23億円)相当の潤滑油が不要になるという調査結果が出ているという。

 今回日本語対応バージョンがリリースされたigusGOは、環境に優しく高品質・長寿命なモーションプラスチックの活用・置き換えを、ユーザーがタイムリーかつ手軽に検討できるように開発されたアプリ。日用品から家具、自動車、農工機械、包装機械まで、可動機構を持つ幅広い対象物をAIが認識し、ベアリングやリニアガイドなど、活用・置き換えの可能性があるイグスの無潤滑部品をユーザーに提案する。用途など数項目を選択するだけで、効率的に製品や採用事例を見つけることができ、そのままWebショップでの購入もしくは問い合わせが可能。

 製品検索から、問い合わせ・購入までの流れは以下のとおり。

①アプリを用いて撮影し、用途を選択

②採用事例から製品情報を確認

③Webショップで購入、もしくはヘルプデスクへ問い合わせ

igusGO 製品検索から購入までの流れ

 

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東京理科大学・佐々木研究室、第21回トライボサロンをハイブリッド開催

5ヶ月 1週 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第21回トライボサロンをハイブリッド開催kat 2024年06日15日(土) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第21回目が6月15日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第21回目となる今回のトライボサロンでは、「重工業におけるトライボロジー研究と製品開発について」のタイトルで、三菱重工業・林 慎之氏を講師に話題提供が行われた。

 講演では、ガスタービン/蒸気タービンのジャーナル軸受解析や低騒音化と強度向上を両立させる歯面形状の最適化など、三菱重工におけるトライボロジー活動について紹介したほか、日本機械学会技術奨励賞を受賞した風車用トラクションドライブ増速機の開発や、博士論文のテーマだった石炭火力発電プラントという高温環境での粉体(石炭燃焼灰)エロージョン評価、可変容量ターボチャージャの開発、燃料電池車向け電動エアコンプレッサ用空気軸受の開発、水素ステーション向け液体水素昇圧ポンプの開発など、自身の研究開発事例を中心に紹介した。

 なお、トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

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日本トライボロジー学会、第69期会長に江上正樹氏(NTN)

5ヶ月 3週 ago
日本トライボロジー学会、第69期会長に江上正樹氏(NTN)kat 2024年05日29日(水) in

 日本トライボロジー学会(JAST)は「トライボロジー会議 2024 春 東京」の会期中の5月28日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで「第68期定時社員総会」を開催した。今回は第69期役員の選任についても決議がなされ、第69期新会長にNTN 取締役の江上正樹氏が選出された。

 挨拶に立った江上新会長は、「当会では、“会員サービスの充実による会員メリットの向上”、“世界における日本のトライボロジーおよび当会のプレゼンス向上”、“学会運営の効率化と財政の健全化”という運営方針を掲げて、梅原徳次 第68期会長(名古屋大学)のリーダーシップのもとで活動してきたが、第69期も引き続き、この三つの運営方針、つまり当会の課題を踏まえて、理事の方々や事務局の支援と協力を得ながら、会員各位の意見もいただきながら、運営の改善に力を注いでいきたい。会員各位にはできる限り当会の諸活動に参加していただき、当会の活性化に向け支援・協力をいただきたい」と語った。

JASTの三つの課題を踏まえ、乾杯の挨拶を行う江上正樹JAST新会長

 

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NTN、H3ロケット打ち上げ成功への貢献でJAXAから感謝状

5ヶ月 4週 ago
NTN、H3ロケット打ち上げ成功への貢献でJAXAから感謝状kat 2024年05日24日(金) in in

 NTNはこのほど、「H3ロケット」にエンジン向けターボポンプ用軸受を全数供給し、ロケットの開発と試験機2号機の打ち上げ成功に貢献した企業として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から感謝状を授与された。

 ターボポンプは、燃料の液体水素と酸化剤の液体酸素をエンジンの燃焼室に送り込む役割を果たしている。液体水素は-253℃、液体酸素は-183℃と極低温のため、ターボポンプ内のインペラ(羽根車)に使用される軸受には、潤滑剤の凍結が懸念される。加えて、インペラは高速回転するため、軸受には優れた高速回転性能が求められている。

 H3ロケットに使用されたNTNの軸受は、極低温環境下においても高い潤滑性能を発揮する独自の固体潤滑剤を採用している。また、保持器に強化ガラス繊維を用いることで高速回転時における遠心力に耐えうる強度を確保するとともに、金属製よりも軽量なセラミック製のボールを使用し、回転時のボールの遠心力を抑えることに成功した。これにより、極低温環境下においてH3ロケットのターボポンプ用軸受として、dmn値(軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1))288万の高速回転を実現している。

 同社では今後も、航空・宇宙分野向けに必要な機能を備えた商品の開発・提供を通じて同分野の発展に貢献していく、としている。
 

ロケットエンジン向けターボポンプ用軸受

 

JAXAより授与された感謝状

 

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自動車技術会、第74回自動車技術会賞授賞式を開催

5ヶ月 4週 ago
自動車技術会、第74回自動車技術会賞授賞式を開催kat 2024年05日24日(金) in in

 自動車技術会(JSAE、会長:大津啓司氏(本田技研工業))は横浜市のパシフィコ横浜で、「2024年春季大会」会期中の5月23日に「第74 回自動車技術会賞」授賞式を開催した。

 自動車技術会賞は、1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的として設けられ、自動車技術における多大な貢献・功績に対し贈呈されている。トライボロジー関連では今回、以下のとおり表彰がなされた。

技術開発賞
「高EGR内燃機関用高耐食低摩耗ピストンシールシステムの開発」 平山勇人氏・金子格三氏・高木裕介氏・田井中直也氏(日産自動車株式会社)、篠原章郎氏(リケン(現リケンNPR))

 カーボンニュートラル実現に向けたCO2削減のためエンジン燃費改善は最重要課題。EGR率向上による排気凝縮水の増加や硫黄含有燃料により、ボア腐食環境が厳しくなっている。これらの背景から、耐食性を向上したステンレス溶射ボアを開発しが、溶射膜の表面気孔増加によるオイル消費の助長、しゅう動相手材のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を成膜したピストンリングのアブレシブ摩耗が課題だった。

 本開発では、溶射膜組織の硬質相を低減し、表面気孔が少ないオイル消費抑制表面を形成できることを見いだした。また、DLC膜の硬度を下げることで脱落したドロップレット形状に倣って変形することにより、高耐摩耗性を実現した。ステンレス溶射ボアと低硬度DLCピストンリングの組み合わせでEGR率20%を成立し、燃費を4%向上させた。本開発での知見は、EGR率30%以上の実現、腐食環境が厳しいバイオ燃料等のカーボンニュートラル燃料の拡大に適用可能な成果であることが高く評価された。

左から、篠原氏、田井中氏、大津JSAE会長、平山氏、金子氏、高木氏

 

技術開発賞

 

「世界最高水準の伝達効率をもつ高効率固定式等速ジョイント」

 

藤尾輝明氏・船橋雅司氏・﨑原立己氏(NTN)

 カーボンニュートラルの実現に向けてCO2排出量削減が急務となる中、自動車の駆動部品である等速ジョイント(CVJ)はエンジンやモーターの動力をタイヤに伝達するための回転軸であり、高効率化の必要性が高い部品の一つである。

 そこで受賞者らは、タイヤ側に搭載される固定式CVJの従来の構造概念を大きく変え、ボールが転がる転動溝が内輪・外輪で互いに交差するとともに、隣り合う転動溝が互い違いに傾斜した独自の「スフェリカルクロスグルーブ構造」を開発した。その構造によってCVJの内部部品間に発生する力を相殺でき、世界最高水準の高効率化(従来品に対しトルク損失率を50%以上低減)と軽量・コンパクトを達成した。本技術が適用されることで、自動車の燃費・電費向上やCO2排出量削減に貢献できることが高く評価された。

左から、船橋氏、大津JSAE会長、藤尾氏、﨑原氏

 

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JSAE、長谷亜蘭氏(埼玉工業大学)をJSAEプロフェッショナルエンジニアに認定

5ヶ月 4週 ago
JSAE、長谷亜蘭氏(埼玉工業大学)をJSAEプロフェッショナルエンジニアに認定kat 2024年05日24日(金) in in

 自動車技術会(JSAE、会長:大津啓司氏(本田技研工業))は「第18回自動車エンジニアレベル認定」において、埼玉工業大学・長谷亜蘭 准教授を「JSAEプロフェッショナルエンジニア」に認定、横浜市西区のパシフィコ横浜会議センターで開催された春季大会会期中の5月23日に表彰式を執り行った。

右から、長谷氏、大津JSAE会長

 

 自動車エンジニアレベル認定は、JSAEが自動車技術者としてのレベルを技術開発能力や実務経験から認定するもので、自己研鑽と実務経験を積んでいく上での目標となるものとして、2006年から設置した。技術者および研究者が誇りと自信を持って能力向上に取り組み、さらに広く活躍することができるよう支援している。

 審査は、自動車技術に関する「継続能力開発(CPD)プログラム」と実務経験の実績をもとに実施。技術レベルは最上位のJSAEフェローエンジニアから、JSAEプロフェッショナルエンジニア、JSAEシニアエンジニア、JSAEエンジニアまでの4段階が設けられている。

 長谷氏は今回、技術項目「トライボロジー」の業務項目「研究・教育」という専門領域について審査され、JSAEプロフェッショナルエンジニアとして認定されたもの。

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日本工作機器工業会、通常総会を開催、2024年工作機器販売額2.3%増1810億円

6ヶ月 ago
日本工作機器工業会、通常総会を開催、2024年工作機器販売額2.3%増1810億円kat 2024年05日22日(水) in in

 日本工作機器工業会は5月21日、東京都千代田区の東京会館で「第32回 通常総会」を開催した。

 総会後の懇親会では、再任された寺町彰博会長(THK社長)が挨拶に立ち、2023年1月~12月(暦年ベース)の同工業会会員企業の販売額が前年同期比19.8%減の1768億3600万円だったことを報告。さらに2024年1月~12月の販売額は、工作機器の関わる工作機械や半導体製造装置、ロボットなどモノづくり関連投資が増える見通しであることから同2.3%増の1809億7000万円となる見込みであることを報告、1月の賀詞交歓会での販売額の見通しを上方修正した。

 寺町新会長はまた、「日本ではバブル崩壊以降、さらにリーマンショックを経て、リスクを把握しリスクを回避する守りの姿勢である「リスクヘッジ」に向かい、欧米、中国よりも経済回復で出遅れている感がある。今ドラマや音楽シーンで注目の集まっている昭和の時代、特に高度経済成長時代には、リスクを取る攻めの姿勢である「リスクテイク」によって劇的な成長を遂げた。人手不足なのにロボットが売れない日本はおかしい。今こそ、いかにリスクテイクによって各社が、当工業会が、産業界が成長を遂げていくかを考える必要がある」と力強く語った。

挨拶する寺町会長

 

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TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第7回 国際シンポジウムを開催

6ヶ月 ago
TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第7回 国際シンポジウムを開催kat 2024年05日22日(水) in in

 トライボロジー研究財団(TTRF)と大豊工業は4月17日、名古屋市の名古屋国際会議場で「TTRF-TAIHO International Symposium on Automotive Tribology 2024」を開催した。

開催のようす


 

 「トライボロジーの自動車社会への貢献」を全体テーマに掲げる同シンポジウムは、トライボロジー研究の進展と自動車技術への応用等に関しトップレベルの情報を交換するとともに、この分野での産学連携の現状と将来の可能性を示しその強化を図ることを目的に、2016年から開催されている。7回目となる今回は 、「Prospects for Powertrain "Lubricants" Facing Carbon Neutrality(カーボンニュートラルに向けてパワートレーンの「潤滑剤」を考える)」のテーマのもとで、基調講演のほか、潤滑剤の最新の研究開発に関する二つの技術セッションが行われた。

 開会の挨拶に立った新美俊生 実行委員長(大豊工業社長)は、大豊工業が曾田範宗氏や木村好次氏をはじめとするトライボロジー研究の第一人者の指導を受けながらトライボロジーをコア技術としてマイクログルーブ軸受や樹脂コーティング軸受といった先進エンジンベアリングを世に送り出してきたことや、同社が多くの恩恵を受けてきたトライボロジーの研究開発支援と啓蒙に寄与する目的でTTRFを2000年に設立し、以降、多数のトライボロジーの研究テーマに対し累計230万USドルの助成を行っていることを報告した。また、学界と産業界のコラボレーションの強化によって一層のトライボロジー研究の活性化を支援していく目的で2016年から本シンポジウムを開催していることを紹介。自動車業界の大変革期にあって電動化、サステナビリティ、SDGsなどトライボロジーの諸課題が厳しさを増す中で、産学連携の強化によるトライボロジー技術の一層の高度化が課題解決に寄与できるとの観点から、「本日のシンポジウムにおいても、学界と産業界の両者の活発なディスカッションを通じて、トライボロジー研究開発の促進につながることを期待している」と述べた。

挨拶する新美実行委員長


 

 続いて、Kenneth G. Holmberg氏(TTRF Director)をチェアマンに、以下のとおり基調講演が行われた。

・「Materials and Lubrication Challenges for a Sustainable Electric Vehicle Mobility: Recent Progress and Future Prospects」Ali Erdemir氏(Texas A&M University)…電気自動車(EV)の販売台数が2022年に1000万台に到達し、2040年までに6000万台が見込まれるなど市場が拡大している背景として、内燃機関(ICE)車に比べエネルギーロスが少なく環境への負荷が少ない点などを説明。ICE車からEVへの切り替えが急速に進む一方で、EVが今後自動車のメインストリームを走り続けるには、バッテリー、モータ、ドライブトレーン部品などの性能、効率、信頼性をより高める必要がある。EVのトランスミッションおよびギヤボックスに使われる潤滑や材料への要求性能はICE車における要求性能とは極めて異なるため、EVにおいては潤滑に用いられるフルードや材料の強化、熱マネージメントの強化がより求められる。EVの安全・円滑な長距離走行を実現するには、優れた潤滑性、高い耐摩耗性・耐食性・耐接触疲労特性に加えて、熱・電気特性を満足させる潤滑剤の開発が急がれる。高トルク・高速・高温といったより過酷なEVの運転状況から、既存の潤滑油ではEVの信頼性要求・熱マネージメント要求を満たせない。EVの潤滑剤ではまた、極低温~高温の急激に変化する運転条件・環境条件において電気特性やドライブトレーンの材料との適合性にミートしなくてはならない。EVの電流/電圧が変動し頻繁に放電が発生する状況での、しゅう動二面の高いトルク、高い荷重、高速、高温に対して、フルード粘度の最適化や既存のパッケージ添加剤のカスタム化も要求される。EVにおいてはトライボロジー課題と熱・電気的課題を同時に解決する材料・潤滑油ソリューションを確立する必要がある。本講演では、EVのしゅう動部品の摩擦、摩耗、潤滑に関わる課題について紹介したほか、 効率や熱・酸化安定性、材料適合性、摩耗特性などを改善可能な水系の低粘度多目的潤滑油基油などのフルードを紹介した。また、熱的・電気的に負荷がかかる条件下において、摩耗や疲労、酸化などへの耐性を高めるための機能性添加剤やトライボ材料、DLC(水素含有および水素フリー)などのコーティング/表面改質技術などについての実験データを示した。最後に次世代EVの効率や耐久性、環境適合性などに合致するナノマテリアルなどを紹介した。


 続いて村上靖宏氏(技術オフィス・村上)をチェアマンに、「潤滑剤の研究・開発1」のセッションが以下のとおり行われた。

・「Development of Novel Film Forming Additive Contributing to Improving Efficiency of Electric Vehicles」中村俊貴氏(ENEOS)…潤滑油はEVのe-Axleとドライブトレーンにおいて重要な要素で、潤滑油の低粘度化は弾性流体潤滑(EHL)下のマイルドな運転条件においては効果的な一方で、混合潤滑下のシビアな運転条件においてはネガティブな効果をもたらす。つまり、効率改善には、シビアな運転条件でのフリクションロスを低減させることが重要である。本講演では、開発したEVフルードに最適な新規摩擦低減剤(FM)が、特にシビアな運転条件での減速ギヤの摩擦を効果的に減らせたことを報告。MTM (Mini Traction Machine)とe-Axleギヤボックスを用いた実験によって、開発した新規FMが混合潤滑条件で摩擦を低減し、ギヤボックスの効率を改善したことを確認した。同FMの作用メカニズムを究明するために、油膜厚さを調べた結果、同FMが油膜厚さを劇的に増やす効果を有することが分かった。

・「Mechanism of Low Friction of Fullerene Added Oil Under Boundary/ Mixed Lubrication」本田知己氏(福井大学)…ZnDTPは潤滑油において酸化を防ぐ酸化防止剤として使われているが、高い環境負荷からZnDTPの使用を避ける傾向にあり、新たな多機能添加剤が求められている。この新しい多機能添加剤として、フラーレンが注目を集めている。フラーレン添加オイルが実際の装置で使われる際には、フラーレンが潤滑油の酸化反応を阻害するメカニズムを解明することが重要になる。本講演では、フラーレンの酸化防止メカニズムを解明するために、フラーレンの酸化防止機能が作用した後のフラーレン反応物の摩擦摩耗特性を評価。フラーレンの反応物が摩擦と摩耗を低減することが明らかになった。オイル中など溶媒中でのフラーレンの存在状態を確認するため、FE-SEM を用いて観察した結果、フラーレンが層状の集合体を形成していることが認められた。本研究によって、酸化防止機能に加えて酸化防止機能作用後のフラーレンの反応物が低摩擦・低摩耗の発現に寄与することから、フラーレンが多目的添加剤として高い可能性を有していることが示された。

・「Lubrication of Electric Powertrain: A Method to Predict Friction in the Mixed and Boundary Regimes」Ian Sherrington氏(University of Central Lancashire)…本講演では、EVパワートレーンの潤滑と冷却に用いられるフルードの主な要求特性について概要を示したほか、EVフルードの主な特性を評価するための最近の利用可能な試験手法について紹介した上で、メインとなる、混合・境界潤滑領域での潤滑のモデリングに関する課題について論じた。TTRF助成のもとJost Institute for Tribotechnologyで開発されたシンプルな手法を、基油、潤滑油、さらには摩擦低減剤や耐摩耗剤などの添加剤のための摩擦のモデル化に適用。本解析手法は、計測された摩擦係数を正規化し、それら数値を確立されたラムダ比(最小油膜厚さ/合成表面粗さ)へとプロットできる。事例では、種々の潤滑剤の摩擦係数データから、境界潤滑領域および混合潤滑領域における信頼性の高い摩擦の予測を行うために使用できる「マスターカーブ」が描けることを紹介した。

 さらに、平山朋子氏(京都大学)をチェアマンに、「潤滑剤の研究・開発2」のセッションが以下のとおり行われた。


・「Development of Transaxle Lubricating Oil for Electrified Vehicles」床桜大輔氏(トヨタ自動車)…自動車業界は、CO2排出量削減と地球温暖化防止を目的に電動車の開発を加速しており、電動車の電費向上は重要な技術的取り組みとなる。トランスアクスルでの損失の削減は、すべての電動車の効率を向上させる効果的な方法で、この目標を達成する効果的な方法の一つが、トランスアクスルフルードの粘度を下げることである。しかし通常、粘度を下げると金属しゅう動面の潤滑油膜厚さが不足し、摩耗や焼付きなど、耐久性の問題が生じる。本講演では、粘度低下による悪影響に対処するため、将来の電動車両の普及を見据え、電動車専用の潤滑油の新しい添加剤配合を設計した結果、従来のフルードに比べて粘度を50%低減しながらユニットの耐久性を確保した新しいトランスアクスルフルードが完成した事例を紹介した。この新しいトランスアクスルフルードにより、HEVのテストサイクル走行条件下での燃費を1.0%以上向上させるとともに、電動車トランスアクスルの重要な要素であるモーターの冷却性能を向上させることができると総括した。


・「Improvement of Performances of Lubricants Applied to Transaxles in Electric Vehicles」巽 浩之氏(出光興産)…CO2排出量削減のため、電気自動車用トランスアクスル(E-Axle)を搭載した電気自動車の普及が期待されている。E-Axle用潤滑剤にはさまざまな性能、特にユニットの保護と効率向上の観点から最も重要な、モーターの冷却とギヤやベアリングの保護性能が求められる。本研究では、これらの特徴を詳細に調査。モーターの冷却性能については、独自の試験機を設計・評価した結果、モーターの冷却性を向上させるためには、動粘度を下げ、熱伝達率を高めることが重要であることが分かった。さらに、ギヤ&ベアリング試験機による評価の結果、適切なリン系添加剤を使用することで接触面を制御でき、ギヤやベアリングの保護性能が向上することが分かった。本研究の結果、基油と耐摩耗剤を適切に選択することで、モーターの冷却性能とギヤやベアリングの保護性能に優れたE-Axle用潤滑剤を設計できることが分かった。

・「Development of Ionic Liquids (ILs) as Lubricant Additives and Control of Lubricating Properties of ILs」川田将平氏(関西大学)…イオン液体はその優れた物性から、新たな潤滑剤として期待されている。イオン液体の潤滑性能は、実験室レベルの実験において、特定の条件下で低摩擦・低摩耗を示すことが知られている。しかし、多くの潤滑システムが限界性能を追求しようという高いレベルに達しているため、イオン液体はフィージビリティスタディ(実現可能性調査)の段階から脱却できない状況にあり、イオン液体の新たな用途が必要とされている。本講演では、潤滑油添加剤としてのイオン液体の応用と摩擦制御システムへの応用について紹介。摩擦制御システムにおいて、イオン液体の電気二重層構造に着目し、境界潤滑領域における摩擦係数の安定化を目指した研究を行っていることを報告した。

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ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt」2024年5月号「特集:カーボンニュートラルとbmt」「キーテク特集:潤滑油剤・添加剤」発行!

6ヶ月 ago
ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt」2024年5月号「特集:カーボンニュートラルとbmt」「キーテク特集:潤滑油剤・添加剤」発行!admin 2024年05日22日(水) in

 ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt(ベアリング&モーション・テック)」の第48号となる2024年5月号が5月24日に小社より発行される。

 今号は「特集:カーボンニュートラルとbmt」、「キーテク特集:潤滑油剤・添加剤」で構成。特集「カーボンニュートラルとbmt」では、洋上風力発電、核融合発電、カーボンニュートラルポート実現のための停泊船への陸上電力供給など次世代エネルギーの動向とそれらを支えるbmt関連技術を広く紹介する。

 また、キーテク特集「潤滑油剤・添加剤」では、バイオマスバランス潤滑油剤によるカーボンニュートラルへの貢献や高性能基油に基づく処方による製品フットプリントの低減、振動摩擦摩耗試験機を用いた潤滑油状態監視技術などについて紹介する。

 

特集:カーボンニュートラルとbmt

◇加速する風力へのエネルギーシフト・・・日本風力エネルギー学会 松信 隆

◇カーボンニュートラルポートの形成に向けた陸上電力供給向けケーブル管理システム(CMS)の特長と適用・・・igus Martin Tiling 氏、イグス 山下 茂樹 氏、北嶋 大樹 氏 に聞く

◇核融合発電を支える加速電源の開発とビジネス展開・・・東京電子 黒岩 雅英 氏に聞く

◇直接潤滑方式LEGスラスト油膜軸受の特長と適用・・・木村洋行 北澤 潤 氏、足立 健太 氏、横田 雅也 氏に聞く

◇カーボンニュートラルに貢献する急冷焼入れ油の開発と適用・・・出光興産 山本 徹朗

キーテク特集:潤滑油剤・添加剤

◇潤滑油業界のサステナビリティニーズに対応した温室効果ガス排出量の低い潤滑油コンポーネント ・・・BASF Sabrina Stark、Frank Rittig、Edith Tuzyna、Xiao Wang、Naohisa Nakagawa

◇自動車ドライブトレイン用フルードの新しい基油技術・・・エボニック ジャパンに聞く

◇トライボ的数値を用いた潤滑油状態監視の判断基準・・・MATRILUB M. Woydt、Optimol Instruments A. Schneider、Novotny-Farkas、訳:パーカー熱処理工業 佐藤 雅之

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admin

NTN、同軸e-Axle向け大径深溝玉軸受を開発

6ヶ月 ago
NTN、同軸e-Axle向け大径深溝玉軸受を開発kat 2024年05日22日(水) in in

 NTNは、電気自動車(EV)などの駆動源として使用される同軸e-Axle向けに、大径サイズで標準品比2倍以上となるdmn値(軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1))150万の高速回転性能と標準品比50%以上の低トルク化を実現するとともに、耐電食性も兼ね備えた大径深溝玉軸受を開発した。dmn値150 万の高速回転性能と低トルク性により、同軸e-Axleの一層の小型・軽量化、高効率化と、EVの航続距離の延長に貢献する。

 同社ではEV用同軸e-Axle のモータ向けに本軸受の提案を進め、2027年度に20億円/年の販売を目指す。

同軸e-Axle向け大径深溝玉軸受

 

同軸e-Axleにおける大径深溝玉軸受の適用部位

 

 近年、EVの航続距離の延長を目的に、小型・軽量な駆動源として同軸e-Axleが注目を集めている。同軸e-Axleはモータと遊星歯車減速機から構成され、減速機の出力軸がモータ軸の内径を貫通する構造のため、使用されるモータ支持用軸受は平行軸e-Axleに使用されるものと比べて、軸受内径が50~90mmの大径サイズとなる。

 EVのさらなる航続距離の延長に向け、同軸e-Axleはより一層の小型・軽量化と高効率化が進むことが予想されるが、その実現のため同軸e-Axle用の大径サイズの軸受にはモータの高出力化への対応や低トルク化、電食(モータからの漏洩電流でスパークが発生し、軌道面が溶融しはく離などの損傷につながる現象)への対応が求められる。

 こうした課題を解決すべく開発した同軸e-Axle向け大径深溝玉軸受の特長は、以下のとおり。

・高速回転性能:使用する転動体(ボール)の個数および保持器のポケット数を削減することで、高速回転時に保持器にかかる遠心力を低減することに成功。また、保持器について、形状を工夫したほか必要な強度に合わせた最適な材質を採用することで、高速回転時の遠心力による保持器の変形を最小化。これらにより、軸受内径50~90mmの大径サイズの軸受において標準品比2倍以上となるdmn値150万を実現した

・低トルク性:使用するボール個数を削減することで、標準品比で50%以上の低トルク化を実現

・耐電食性:絶縁体であるセラミック製のボールを使用することで、電食の発生を防止

同軸e-Axle向け大径深溝玉軸受の構造

 

標準品との比較

 

kat

NTN、EV向けに高効率・低振動ドライブシャフトの提案を開始

6ヶ月 ago
NTN、EV向けに高効率・低振動ドライブシャフトの提案を開始kat 2024年05日21日(火) in in

 NTNは電気自動車(EV)向けに、高効率固定式の等速ジョイント(CVJ)「CFJ」と低振動しゅう動式のCVJ「PTJ」の組み合わせにより、世界最高水準の高効率・低振動を実現したドライブシャフトの提案を開始する。高効率やNVH(騒音・振動・ハーシュネス)などが求められるEVに対して本商品の提案・適用を進めることで、EVの航続距離の延長と乗り心地の向上に貢献していく。

高効率固定式等速ジョイント「CFJ」(左)と低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」(右)

 

高効率・低振動ドライブシャフトの構造

 

 ドライブシャフトは、モータなどパワートレインユニットの動力(トルク)をタイヤに伝える部品で、タイヤ側の固定式CVJとパワートレイン側のしゅう動式CVJ、これらをつなぐシャフトで構成される。

 近年、開発・普及が進むEVは、航続距離の延長を目的に省電費化が進められているが、大型バッテリーの搭載や居住空間の確保を目的とした駆動ユニットのレイアウト変更に伴い、ドライブシャフトの搭載角度(CVJの取り付け角度)が大きくなるとトルク損失率が増加する傾向にあり、大きな取り付け角度においてもトルク損失率の低減が求められている。また、動力がモータに置き換わることでさらに自動車の静粛性が進み、ドライブシャフトのNVH改善ニーズが高まっている。

 同社ではこうしたニーズに対応し、高効率固定式CVJ「CFJ」と低振動しゅう動式CVJ「PTJ」を組み合わせたドライブシャフトをEVに最適な商品として提案する。

 CFJはトルク損失率の低減(高効率)において、PTJは振動につながるスライド抵抗の低減において、それぞれ世界最高水準の性能を誇るCVJで、これらを組み合わせることで、EVの航続距離の延長と低振動・静粛性といった特有のニーへの対応が可能となる。

 同社従来品から、CFJとPTJを組み合わせたドライブシャフトに置き換えた場合、トルク損失率を70%以上低減することが可能で、電費は3.19%の改善効果が得られる。なお、エンジン車におけるCO2排出量削減効果は1.71g/kmとなる。

 高効率・低振動ドライブシャフトはすでに一部のSUV向けに量産を開始しており、現在、電動車向けでも多数の引き合いがあるという。同社はリヤ用小型・軽量ドライブシャフト「Rシリーズ」や小型・軽量を特長とするCVJの「Eシリーズ」に加えて、EVやハイブリッド車(HEV)など電動車向けに航続距離の延長や乗り心地の向上に貢献する高付加価値商品として、本商品のグローバルでの提案を加速していく。

 CFJは従来の基本構造を大きく変え、内部部品にかかる力を相殺する独自の「スフェリカル・クロスグルーブ構造」を採用した固定式CVJ。本構造の適用により、トルク損失率を従来品比で50%以上低減、さらに高作動角時においてもトルク損失率の増加を大幅に抑えることが可能。世界最高水準の高効率で、国内外の自動車メーカー向けに多数の採用実績を持つ。

高効率固定式等速ジョイント「CFJ」の構造

 

低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」の構造

 

kat

NTN、自動車駆動装置の小型・軽量化に貢献する特殊熱処理技術を開発

6ヶ月 ago
NTN、自動車駆動装置の小型・軽量化に貢献する特殊熱処理技術を開発kat 2024年05日20日(月) in in

 NTNは、新たな特殊熱処理技術「HA-C」を開発、本技術により軸受の業界最高水準の高負荷容量化を実現したことで、従来よりも小型・軽量な軸受への置き換えを可能としている。本技術はまた、従来の熱処理技術では困難であった高温寸法安定性、耐異物性、耐摩耗性も高水準で両立、電気自動車(EV)用e-Axleをはじめとする自動車向け駆動装置の小型・軽量化と省エネルギー化に貢献する。

 同社ではEV用e-Axle減速機向けやHEV用減速機向けなどにHA-C適用軸受の提案を進め、2030年度に10億円/年の販売を目指す。

特殊熱処理技術「HA-C」の適用により軸受の小型・軽量化を実現
深溝玉軸受6306(大)に適用した場合、深溝玉軸受6206 (小)への置き換えが可能

 

 環境負荷低減を背景にEVやハイブリッド車(HEV)は、航続距離の延長が求められており、e-Axleや減速機などの駆動装置の小型・高速回転化や潤滑油の希薄化による省電費・燃費化が進んでいる。そのため、高負荷容量化と低フリクション化を同時に実現する玉軸受が求められている。また、高速回転環境下では発熱や摩耗が増えるため、その転がり軸受には経年寸法変化率の低減や摩耗の抑制が求められる。

 同社が今回開発した特殊熱処理技術HA-Cは、設計面での軸受形状の変更は必要なく、一般的な鋼材に特殊な熱処理技術を適用することにより、業界最高水準の高負荷容量化を実現する。本技術は材料に硬く微細な析出物を多数分散させるなどの手法により、非常に高い表面硬さと高負荷容量化を実現。本技術を適用した転がり軸受は、自動車向け駆動装置などの過酷な使用環境に対応できる。

 同社標準軸受と比較した、開発技術の特長は以下のとおり。

・高負荷容量:静的負荷容量が2倍、重荷重条件における転動疲労寿命が7倍以上に向上。高負荷容量化により、小型・軽量な転がり軸受への置き換えが可能(置き換え例:軸受外径・幅ともに約13%小型化、約45%軽量化)

・耐異物性:転がり軸受が異物を嚙みこんだ際に生じる圧痕周縁の盛り上がり量を1/2に低減し、異物混入潤滑下における転動疲労寿命が3倍に向上

・高温寸法安定性:環境温度150℃での経年寸法変化率が1/2以下に抑制

・耐摩耗性:摩耗量が1/300以下に低減

圧痕形成性(静的負荷容量)試験結果
3/8インチ窒化ケイ素球で付与した圧痕形状
(最大接触面圧:5.5GPa、左:HA-C適用品、右:標準品)
kat
Checked
5 分 23 秒 ago
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