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NTNテクニカルサービス、自動ピッキング用フィーダを開発

11時間 41 分 ago
NTNテクニカルサービス、自動ピッキング用フィーダを開発kat 2025年12日29日(月) in

 NTNの連結子会社であるNTNテクニカルサービス(NTS)は、製造現場の加工・組立工程向けに省スペース性と高速性を両立した、自動ピッキングを実現するパーツフィーダ「ROBOCLE(ロボクル)」を開発した。ROBOCLEは、2021年に同社が開発した「TRINITTE(トリニッテ)」に新開発のピッキングアクチュエーターを組み合わせることで、設置スペースを削減し、専門知識不要で多様なワーク形状の自動ピッキングを実現する。

 既存商品である高速ピッキング対応のTRINITTE、省スペース性を追求した「CHOXY(チョクシー)」、両商品の特長をバランス良く両立した新商品「ROBOCLE」の3種類のピッキング用フィーダの提案を進め、製造現場の省人化・効率化に貢献していく。NTSでは、2028年度にROBOCLE で2.5億円/年、CHOXYで 1億円/年の売り上げを目指す。

 労働人口の減少や生産性向上を背景に、製造現場ではワークの投入や整列などのピッキング作業の自動化が進められている。NTNは1970年代より、加工機へのワーク供給用パーツフィーダを開発・販売しており、現在では国内トップクラスの市場シェアを誇る。

 従来のパーツフィーダはワーク形状に応じて部品の段取り替えが必要だが、多品種少量生産が進む中、段取り替えなしで多様なワークをピッキングできるパーツフィーダが求められていた。

 こうしたニーズを受けてNTSは、2021年にピッキングロボット用フィーダ「TRINITTE」を開発した。TRINITTEは回転円盤上にワークを配置し、カメラとピッキングロボットを連携させることで、ワークの形状や姿勢に関わらず安定したピッキングを実現する。現在、電子機器部品や自動車部品などをはじめ、さまざまな分野で導入されている。

TRINITTEのシステム構成例

 

 TRINITTEは高い評価を得ているが、ピッキングロボットの設置スペースや、一定以上の性能を持つロボット、さらにティーチングに関する専門知識が必要な点が導入の障壁となっていた。

 NTSでは今回、より多くのユーザーにTRINITTEと同様に多様なワークの自動ピッキングを提供できるよう、省スペース性などを実現したROBOCLEを開発したもの。

 ROBOCLEは、TRINITTEと新開発のピッキングアクチュエーターを組み合わせたピッキング用フィーダ。従来のTRINITTEとピッキングロボットを用いた構成では設置スペースやティーチングの知識が必要なため、導入が難しかったユーザーに最適な商品で、TRINITTEが本体周辺にピッキングロボットを配置するのに対し、ROBOCLEは本体中心部に新開発のアクチュエーターを搭載するため、設置スペースを約25%削減しながらスムーズなピッキングを実現するほか、専用ユーザーインターフェースにより、専門知識がなくてもティーチングが可能。特長は以下のとおり。

・省スペース:システム中心にピッキングアクチュエーターを配置した設計を採用。TRINITTEの周囲に産業用ロボットや協働ロボットなどのピッキングロボットを取り付けることなく省スペースで設置が可能。TRINITTEとピッキングロボットを組み合わせた設置スペース(ロボット可動域を含む)と比較し、約25%削減

・高速性:「回る×取る」動作が同期し、スムーズなピッキングを実現。ピッキング[つかむ]→プレイス[置く]までの最小サイクルタイム約2秒

・簡単設定:高度なロボット知識やスキルなしで操作が可能な、現場で使いやすいピッキングシステムで、専用のユーザーインターフェースを提供することにより簡単に設定が可能。

ROBOCLEの構成例

 

 また、CHOXYは累計5000 台以上の納入実績を誇る「モノドライブ2ウェイフィーダ」と直線コンベア、ピッキングロボットを組み合わせたピッキング用フィーダ。TRINITTEやROBOCLEと比較して最も省スペースかつ操作設定がシンプルで、手軽にピッキングの自動化を実現したいユーザーに最適な商品となっている。

 CHOXYでは1台の直進フィーダでワークを安定整列させた後、直線コンベアで協働ロボットなどのロボット近くに搬送し、ロボットがピッキングする。ワーク品種や動作モードの切り替えなどの設定も簡単で、専門知識がなくても導入・運用できるユーザーセルフ運用に対応している。特長は以下のとおり。

・シンプルな構成:モノドライブ2ウェイフィーダと直線コンベア、ピッキングロボットとの組み合わせによるシンプルかつ安価なピッキングシステム

・省スペース:コンパクトな構成で省スペース化を実現

・ユーザーセルフ運用への対応:シンプルな構成・設定により、ユーザーセルフ運用が可能

モノドライブ2ウェイフィーダ

 

CHOXYのシステム構成例

 

 NTSはTRINITTE、ROBOCLE、CHOXYの3種類のピッキング用フィーダを用いて、ユーザーの使用環境やニーズに応じた最適な商品を提案し、多様なワークの自動ピッキングと製造現場の省人化・効率化に貢献していく。

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NTN、ポータブル異常検知装置の販売を拡大

14時間 42 分 ago
NTN、ポータブル異常検知装置の販売を拡大kat 2025年12日29日(月) in

 NTNは、「NTNポータブル異常検知装置」の販売を拡大している。本商品は設備の振動測定、ベアリング(軸受)の異常検知や損傷部位の推定が可能なコンパクトサイズのデバイス。設備の安定稼働に向けた予知保全の重要性が高まる中、高速・高精度な測定性能と、設置の簡便性や高い実用性などが評価され、幅広い業種で導入が進んでいる。同社は、本商品と関連するサービスの提供を通じて、製造現場における保全業務の効率化や突発的な故障に伴うダウンタイムの削減に貢献していく。

NTNポータブル異常検知装置

 

 同社は、電動機械(電動機、ポンプ、送風機、搬送機械)、プラント設備、工作機械、一般産業機械の設備保全、出荷検査などへの本商品および関連サービス、またこれらに起因する補修用軸受の適用を進め、2028年度に3億円/年の販売を目指す。

 近年、製造業やインフラ分野では、設備のダウンタイムの最小化に向けて、計画的な保全活動の強化や補修部品の早期確保など故障リスクを低減する取り組みが進められている。加えて、労働人口の減少を背景に、熟練者の経験に依存している設備の異常確認手段をデータ解析などのデジタル技術によって非専門的な方法に置き換えたいというニーズも高まっている。

 NTN ポータブル異常検知装置はこれらのニーズに対応する商品として、2020年に販売を開始した。製鉄や食品、製紙、化学、繊維などの製造業や機械加工分野に加えて、電力・ガス・水道やプラントを含むインフラ分野などの幅広い業種で、電動機、ポンプ、工作機械などの測定に活用されている。

 本商品を用いることで設備の軸受の損傷を早期に発見し、補修用の軸受に迅速に交換したことで設備の突発的な停止を防止できたなど、高い評価を得ている。

 2022年からは海外での販売も開始、特に経済成長が著しいアジア地域で販売を伸ばしている。

 NTNポータブル異常検知装置によるソリューション事例としては、以下などが挙げられる。

工作機械(内面研削盤 高周波スピンドル)の事例

・加工精度が低下した内面研削盤の高周波スピンドルをNTN ポータブル異常検知装置を用いて測定

・測定結果より軸受転動体の損傷の疑いが検出されたため、軸受交換を提案

・同社の補修軸受に交換後、再度測定した結果、振動値が大幅に低下したことを確認

・軸受交換の効果と、軸受交換作業が正常に行われたことをデータで確認

インフラ分野(上下水道 ポンプ設備)の事例

・軸受部の温度異常が発生したため、NTN ポータブル異常検知装置を用いて測定

・測定結果より、軸受そのものには異常がないため、別の原因があることを指摘

・同社にて設備図面を確認した結果、使用軸受が不適切であり、軸受以外の他の部品が摺動して発熱し、その熱が軸受に伝わった可能性を指摘

・異常の要因を切り分け、真の原因究明や設備の構造上の課題を突き詰め改善

 NTNでは、本商品の販売に加えて、設備保全業務におけるユーザーの困りごとを解決する各種サービスの拡充にも取り組んでいる。2023年には、これまで培ってきた軸受に関するノウハウ・専門知見を活用し、ユーザーの測定データの詳細分析と状態診断、それに加えて推定原因や推奨事項を提案する診断レポートサービスを開始した。さらに、本商品のレンタルサービスや、軸受および本商品の取り扱いや測定結果の診断方法を学べる講習会の開催、当社従業員による出張測定など、多彩なサポートサービスも提供している。

 NTNは中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalの重要施策の一つとして、アフターマーケット・ビジネスの拡大を掲げており、2035年度には全売上高に占めるアフターマーケット・ビジネスの比率40%を目指している。この目標の実現に向け、NTNでは商品の選定から納入、使用、監視、分析、交換、保守管理に至るまで、軸受の運用全体を支援する軸受ライフサイクルマネジメントの強化に注力している。

 同社は今後も、NTNポータブル異常検知装置の販売や関連サービスの拡充に加え、軸受の状態監視を可能にする各種商品・サービスの開発、軸受の不具合原因の調査を含む分析サービスの提供などを通じて、軸受に関するあらゆる課題の解決に取り組み、NTNのブランド価値のさらなる向上と、アフターマーケット・ビジネスの一層の拡大を図っていく。

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NTN、iPS心筋細胞を効率的に精度よく配置するバイオプリンティング技術を開発

15時間 29 分 ago
NTN、iPS心筋細胞を効率的に精度よく配置するバイオプリンティング技術を開発kat 2025年12日29日(月) in

 NTNは、創薬分野における新たなバイオプリンティング方式として独自開発した「微細塗布装置」を用いて、iPS細胞由来心筋細胞(iPS心筋細胞)を実験用プレート上に効率的に精度よく配置(播種)する技術を開発した。従来の人手作業による配置を自動化することで、創薬実験の効率化や信頼性の向上、細胞の使用量削減に貢献する。

 微細塗布装置は、針の先端に付着させた数pL(ピコリットル:1兆分の1L)の液剤を1回あたり0.1秒と高速かつ±15μm(マイクロメートル:1000分の1mm)以下の精度で定位置に適量塗布する装置。自動車部品や半導体などの分野で多数の採用実績がある。同社では、その高速かつ定位置・適量の塗布技術を生かし、本商品のライフサイエンス分野への応用を進めている。特長は以下のとおり。

・定位置塗布:数pLの極少量の液剤を±15μm以下の繰り返し位置決め精度で目標位置に塗布

・高粘性対応:100Pa・sまでの高粘度な液剤の塗布が可能

・高速:1回あたり0.1秒の高速塗布

微細塗布装置の基本構成

 

 同社では今回、創薬実験において、iPS心筋細胞の働き(拍動)を検出するため、微細塗布装置を用いて細胞を実験用プレートに精度よく配置することに成功した。これは、大阪大学大学院 工学研究科 NTN次世代協働研究所による成果を含む。

 細胞を用いた機能評価試験や薬効評価は、作業者の違いなどにより、同じ実験を同じ条件で行っても再現性を確保することが難しいとされている。本技術においては、細胞濃度や塗布針の位置・形状・表面粗さなど実験結果に影響するパラメーターやアルゴリズムを独自に特定・制御することで、定位置・適量配置を実現した。これにより、実験結果の信頼性・再現性の向上に貢献する。

 微細塗布装置を適用した創薬実験例としては、以下などが挙げられる。

・多電極アレイ上へのiPS 心筋細胞の精密配置による細胞外電位の検出実験
 直径3~6mm×深さ10~13mmの多数の凹み(マルチウェル)の底に電極を設けたプレート(多電極アレイ)上の電極上に適量のiPS心筋細胞を配置し、心臓の拍動など細胞の電気的な活動を測定する創薬実験において、電極上にiPS心筋細胞の必要量のみを定位置に配置し、より正確な細胞の拍動の測定が可能となった。

・マルチウェルプレート上へのiPS心筋細胞の配置による薬剤評価実験
 直径3~6mm×深さ10~13mmの多数の凹みを設けたプレート(マルチウェルプレート)を用いて、一度に大量の薬剤評価を行う手法(ハイスループット評価系)において、一定量のiPS心筋細胞を各凹みに高密度かつ高速に配置することで小さな心筋組織の構築が可能となった。正確で再現性の高い薬剤反応の測定ができるだけでなく、細胞への負荷を抑える配置方法により高い細胞生存率を確保する。

 微細塗布装置を創薬実験に用いるメリットは以下のとおり。

・定位置・適量配置:細胞をセンサー上など狙った場所に適量を正確に配置し、細胞の働きを正確に検出し、正確な実験結果の取得が可能

・効率化と再現性:細胞配置の自動化により、人手作業によるバラつきがなく効率的かつ再現性の高い実験が可能

・細胞の節約:必要な量だけを正確に配置することで、高価な細胞を無駄にすることなく使用量を削減

 NTNは創薬市場に向けて微細塗布装置の提案を進めるとともに、病気などで機能を失った組織や臓器を再生させる再生医療における本商品の適用を進め、ライフサイエンス分野の事業化を加速させていく。

 NTNは、持続的成長に向けてライフサイエンスを含む六つの研究分野を新たなターゲットとし、外部研究機関と連携しながら、事業化に向けた取り組みを推進している。2024年4月には「未来創造開発本部」を設立し、新領域におけるマーケティングから開発・研究、生産を同一部門で運営することにより、市場・顧客ニーズに合致した新商品・サービスの創出に取り組んでいる。

 今後も各研究分野の開発活動を加速し、さまざまな社会課題の解決を進めることで、持続可能な「なめらかな社会」の実現を目指していく。

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NTN、軸受診断エッジアプリケーションの販売を開始

16時間 12 分 ago
NTN、軸受診断エッジアプリケーションの販売を開始kat 2025年12日29日(月) in

 NTNは、ベアリング(軸受)の状態を簡単に診断可能な軸受診断エッジ
アプリケーション「Bearing Inspector」の販売を本年11 月より開始した。

 Bearing Inspectorは、軸受近傍に設置した振動センサーからデータを収集し、簡単かつ迅速に軸受の状態を診断できるソフトウェア。軸受仕様や設備の運転情報などの詳細な設定は不要で、同社以外の軸受の診断も可能となっている。生産現場において、設備データをリアルタイムで収集・分析することで、不具合や故障を早期に検知し、お客さまの計画的かつ適切なメンテナンスを実現する。

 同社は2024 年1 月から、Edgecross コンソーシアム(ECC)が提供する産業用IoTプラットフォーム「Edgecross」に対応した「Bearing Inspector for Edgecross」を販売してきたが、ECCの活動終了に伴い同商品の販売を2025年10月末をもって終了した。

 同社ではこれに代わり、一部機能を追加し、プラットフォームを限定せずに、より幅広いシステム環境下で使用できる軸受診断エッジアプリケーションBearing Inspectorの販売を開始したもの。

 近年、省人化や生産性向上を背景に、生産設備の計画的な保全や補修部品の早期確保など故障リスクを低減する取り組みが進められている。加えて、労働人口が減少する中、熟練者への依存を減らし、これらの保全活動を効率的に実施するため、デジタル技術の導入が求められている。

 こうしたニーズを受けNTNでは、、商品の選定から納入、使用、監視、分析、交換、保守管理に至るまで、軸受の運用全体を支援する軸受ライフサイクルマネジメントに注力し、軸受の異常を検知する商品・関連サービスの拡充に取り組んでいる。

 Bearing Inspectorは、製造現場でリアルタイムにデータの収集・分析からフィードバックまでを行う情報処理の手法であるエッジコンピューティングに対応しており、特定の設備の軸受を常時監視して予期せぬ故障を防ぐとともに、点検作業の負担を減らしたいというユーザーに最適な商品となっている。同社独自の診断技術による「誰でもプロの診断」、かつリアルタイム監視により、「止まらない現場」を実現する。特徴は以下のとおり。

・軸受のリアルタイム診断:軸受の診断結果を3~5秒ごとに更新。わずかな時間に現れる変化も捉えることができる

・軸受情報の設定が不要:診断対象の軸受情報や運転状況の設定が不要で、NTN以外の軸受の診断も可能。振動センサーの故障や設置不良・脱落などにより診断が不能となるリスクを防ぐため、振動センサー異常を検知する機能を搭載(改良点)。

・シンプルな出力:軸受の診断結果を、正常な状態から警告までの4段階で出力。最大16カ所で収集したデータを同時に診断して、画面表示できる。監視画面(UI)を見直し、操作性と視認性を向上(改良点)。

・インターネット接続が不要:導入、運用にあたりインターネット接続は不要で、データを外部に出したくない場合や、ネットワーク環境が整っていない場合でも利用できる。

 NTNでは、Bearing Inspectorをユーザーがより簡単に早く導入できるよう、以下の初期設定サービスも提供する。

・ユーザーの設備構成や測定環境(センサー、ロガー、PC など)に合わせたアプリ設定をNTNが代行、導入負担の軽減とスムーズな運用開始を支援

・Web打ち合わせによる設定提案

・設定代行作業(アプリのチャンネル、フォルダ、処理プロセスなど)

・設定ファイルと設定内容に関するレポートの提出

・設定ファイル提供後3カ月間のサポート(設定関連の質問・トラブル対応)

 NTNの以下の正規販売代理店から購入できる。

販売代理店:https://www.ntn.co.jp/japan/corporate/distributor/index.html

 

Bearing Inspector構成例

 

Bearing Inspectorによる診断プロセス

 

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NTN、インド市場への戦略的投資により等速ジョイント事業を強化

17時間 16 分 ago
NTN、インド市場への戦略的投資により等速ジョイント事業を強化kat 2025年12日29日(月) in in

 NTNは、インド市場における事業成長の加速とグローバル競争力の強化を目的として、連結子会社NTN NEI Manufacturing India(NNMI)のバワール工場において、等速ジョイント(CVJ)内部部品の現地調達化およびR&D体制の構築に向けて戦略的な投資を実施している。

 インド市場は、自動車をはじめ、鉄鋼やエネルギー、建設機械など産業機械各分野においても著しい成長を遂げており、世界有数の経済成長国として、当社にとって極めて有望かつ戦略的な重点市場となっている。特に自動車分野では、乗用車販売台数の増加に加え、EV化や高効率化の進展によりCVJをはじめとする自動車部品についても高度な技術要求が高まっており、現地における開発・供給体制の強化が急務となっている。

 NTNは2005年にインドにおける事業を開始し、自動車向けCVJやアクスルベアリング(軸受)、産業機械向けベアリングをインド市場向けに供給している。CVJについては、NNMIのバワールおよびチェンナイの2工場で生産を行い、主に日系自動車メーカー向けに供給することで市場シェアを着実に拡大してきた。

 今回の投資では以下の施策を実施している。

・CVJ 商品の現地内製化推進:NNMIのバワール工場にCVJ内部部品の加工設備を新設。現地調達率を60%から85%へと向上させ、納期の短縮とコスト競争力の強化を図る

・R&D体制の構築と技術対応力の向上:インド国内に設計・試験設備を導入するとともに人員を拡充し、CAE解析や耐久試験などの技術対応を現地で完結できるR&D体制を構築。本年4月から現地による技術対応を開始しており、来年には試作から評価試験までを現地で対応できる体制を整備する。迅速な対応と技術提案力、顧客サポート力の向上を図る

・EV 対応商品の開発強化:静粛性・高効率・軽量化など、EV特有のニーズに対応する高機能CVJ商品の開発を進め、インド市場への展開を加速

 NTNでは、インドにおいて、自動車分野に加え、鉄道車両、風力発電、工作機械などの産業機械向けにも軸受を供給しており、これらの分野でも需要が拡大している。特に鉄道分野においては、電食対策として絶縁軸受のニーズが高まっており、NTNの「メガオームシリーズ」は高品質な絶縁性能を持つ商品として注目されている。また、これらの技術はEV用モーターなどへの応用も可能で、今後の市場拡大が期待される。

 NTNは今後も、コスト・納期・技術サービスの充実を通じて競争力を強化するとともに、高効率化や軽量化などの技術ニーズに対応した高付加価値商品の開発・供給を推進し、インド事業のさらなる拡大と、持続可能なモビリティ社会および各種産業機械市場の発展への貢献を目指していく。

NTN NEI Manufacturing India(バワール工場)

 

エンジンやモーターの動力をタイヤに伝える
等速ジョイント(CVJ)


 

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NTN、手首関節モジュールとソフトウェア・AIを連携した外観検査ソリューションを提案

17時間 35 分 ago
NTN、手首関節モジュールとソフトウェア・AIを連携した外観検査ソリューションを提案kat 2025年12日29日(月) in

 NTNは、手首関節モジュール「i-WRIST」のさらなる用途拡大を目指し、画像処理システムメーカーやロボットシステムインテグレーターと連携した協業体制を構築する。

 同社のハードウェアによる制御技術に加え、ソフトウェアやAIを活用し、製造業の外観検査におけるユーザーの多様なニーズに対し最適なソリューションを提案することで、生産現場の自動化や工数削減、品質の向上に貢献していく。

 同社が開発したi-WRISTは、独自のリンク機構による、人の手首のような滑らかな動きと、高速・高精度な角度制御を実現したロボット・モジュール商品。先端にカメラやディスペンサーなどのエンドエフェクターを搭載し、外観検査やグリース塗布などさまざまな工程の自動化を実現する。

 製造現場においては労働人口の減少や省人化を背景に各工程の自動化が進んでいるが、自動車のEV化・電動化に伴い、複雑な形状を持つ大型ダイカスト品の生産が増加する中、特に外観検査の工程においては、検査ポイントが多いワークに柔軟に対応できる外観検査の自動化ニーズが高まっている。

 今回構築する協業体制では、人の目に代わりワーク欠陥を抽出する画像処理技術に、i-WRISTの高速かつ高精度なモーション制御による柔軟な撮像姿勢を生かし、画像処理に適した撮像条件に対応する設備を組み合わせることで、優れた外観検査ソリューションの提供が可能となる。

 NTNは、協業企業それぞれの専門性を生かしたシステム提供の枠組みを整備することで、ユーザーの設備に関する要望やワーク情報、検査条件、導入時期や予算などの情報をもとに、システム提案から設備構成の検討、画像処理の検証、シミュレーション、サンプルテスト、AI判定など設計から検証までを一貫して連携対応し、i-WRISTを活用した最適なソリューションを提案していく。

手首関節モジュール「i-WRIST」を活用した外観検査装置

 

連携により最適なソリューションを提案

 

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ブレイブラ、保持器なしアンギュラ型自律分散式転がり軸受 量産対応を開始

1週 ago
ブレイブラ、保持器なしアンギュラ型自律分散式転がり軸受 量産対応を開始 kat 2025年12日22日(月) in

 ブレイブラ(https://breybra.com)はこのほど、空スペース(http://coo-space.comhttps://breybra.com)の協力のもと、7902サイズ(内径15mm×外径28mm×幅7mm)のアンギュラ自律分散式転がり軸受「ADBⓇ」の生産を新たに開始した。これまでの自転車向けやスケートボード向けなどに加えて、一般産業機械向けにADBを拡販していく狙いで、ブレイブラでは、現状は月産1000個程度の生産を目安としているが、要望に応じて生産体制を拡張可能としている。まずは、月100個程度のコンスタントな売り上げを目指す。

7902サイズのアンギュラADB


 

 空スペースが考案し特許を保有する自律分散式転がり軸受(Autonomous Decentralized Bearing、ADB)は、ベアリングの常識であった保持器を完全に排除し、外輪に設けられた特殊な「分散起点」と呼ばれる凹部により回転時に球同士が非接触になる次世代のベアリング技術。

 保持器なしで球同士の非接触回転が可能になったことで、多くの球を充填することができ、従来ベアリングでは実現が難しいレベルの低摩擦・超高速回転、耐荷重性能、潤滑フリーと長寿命を実現する。

 ブレイブラは2022年に設立、それまで市販ベアリングの改造で販売対応されていたADBについて、空スペースの協力のもとで初めて608サイズ(内径8mm×外径22mm、幅7mm)のADBの量産化に成功。以降、スケートボード用や競技ヨーヨー向け、自転車向けなどでADBの適用を進めてきた。

 自転車向けADBの開発をユーザーと協力して行う中で7902サイズのADBを完成し、今回、量産に踏み切ったもの。

 30km程度のロードレースにて4%以上の記録更新を達成しているが、ブレイブラでは、同ADBがモーターなど一般機械産業用途に対しても広く適用できるものと見て、一般販売へと進むことを決めた。

 ADBの分散機構を安定して機能させるために、外輪は深溝玉軸受と同様の形状のままアンギュラ化したベアリングとなっており、素材は内外輪ステンレス、ベアリング球としてステンレスを用いたタイプと、ベアリング球として窒化ケイ素を用いた高性能グレードの、二つのタイプを用意。シールドは非接触ゴムシールを採用している。

 ステンレス鋼球品は3500円、セラミック球品は4400円で、1個からの注文に対応。また本製品と同形式のADBについて、外径12~40mmまでの注文を最小ロット400個から対応している。

アンギュラADB

 

 ブレイブラの内藤雅仁社長は、「少しでも性能や耐久性を求める用途に窒化ケイ素のタイプを検討いただきたい。また、数量やコスト重視の用途であればステンレス球タイプが最適で、十分な性能を提供できると考えている」と述べ、今後の展開などについては、「今回発売を開始した7902サイズに限らず、広いサイズ帯にわたりADBの提供が可能で、用途に応じた製造対応も可能となっているので、軸受で課題を抱えているユーザーなどからの相談をお待ちしている。ADBの低抵抗、高速回転、高耐久性を実感していただき、広く技術や社会の発展に寄与できれば幸い。サイトでは1個からでも気軽に購入できるようになっているので、まずはお試しいただければと思う」と語っている。
 

内藤氏

 

 また、空スペースの河島壯介社長は、「内藤社長は、ADBの本質を良く理解し、今までさまざまな機種での製造にチャレンジし成果を上げてきたが、今回の対応範囲の拡大によって設備用途などで成約されることを期待している。また、ホームページなどでADBを分りやすくPRしていただいており、感謝している。保持器なしでボールを分散させる技術により摩擦の大幅低減による機械装置の省エネ・損傷対策が図れ、ボール数の増加によって耐荷重性付与や省スペース化が図れるADBは、各種産業におけるボトルネックを解消し、日本の産業競争力の向上に寄与できる。引き続き、ブレイブラとの協業のもと、日本の産業競争力増強に向けて多くの利点を有するADBの普及を進めていきたい」とコメントしている。
 

河島氏


 

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東京理科大学・佐々木研究室、第39回トライボサロンを開催

1週 2日 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第39回トライボサロンを開催kat 2025年12日20日(土) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://www.tribo-concierge.com/topics/296/)の第39回目が12月20日、東京都葛飾区の同大学 葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。
 

開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室のメンバーに限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。

 第39回目となる今回のトライボサロンでは、ダウ・ケミカル日本の大宮 尊氏が、ポルトガルのコインブラ大学での自身の博士課程研究である「ドープDLCと機能化コポリマーを組み合わせた新規潤滑システム」について、話題提供を行った。エンジン油中のZnDTP(金属添加剤)の配合を低減させつつエンジン部品の境界潤滑領域での摩擦摩耗特性の向上を図ることを目的に、化学的に不活性であるDLCコーティングの表面に新たな反応性を付与すべくドーパントとしてシリコン(Si)を導入し直流マグネトロンスパッタリング(DCMS)で成膜したSiドープDLCと、SARA ATRP法によって自ら合成した機能化コポリマーPLMA-b-PDMAEMAを組み合わせた新規潤滑システムを開発した。トライボロジー試験の結果、摩擦・摩耗低減効果が認められ、機能化コポリマーの構成要素の分子吸着挙動の解析やトライボロジー試験後のToF-SIMSおよびシンクロトロンXPS、FIB-TEMによる表面分析の結果、機能化コポリマーがSi-DLC表面上でN-Si化学吸着を起点としたトライボフィルムが形成され、摩擦摩耗特性が改善されたと総括した。

 このほか、車両データ・走行データなどの入力データからオイル性状という出力データを導く潤滑油劣化予測システムの開発や、成膜条件・ターゲット特性などの入力データから硬度・ヤング率・膜厚などの出力データを導くDLC成膜の予測システムの開発、イオン液体とドープDLCの組み合わせによる新規潤滑システムの開発などの話題を提供した。

 トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://www.tribo-concierge.com/topics/296/

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ニッペコ、第2回トライボロジー技術セミナーを開催

2週 5日 ago
ニッペコ、第2回トライボロジー技術セミナーを開催kat 2025年12日10日(水) in

 ニッペコ(https://www.nippeco.co.jp/)は12月3日、東京都千代田区の東京商工会議所で、「第2回トライボロジー技術セミナー〜トライボロジーでつながる未来〜」を開催、ユーザーやサプライヤーなど約60人が参加した。今回で2回目の開催となる本セミナーのコンセプトは、①グリース・潤滑技術とトライボロジー技術のさらなる発展につなげる場、②多くの業種のユーザーとの交流・技術創出の場、③同社が長年にわたりお世話になっているユーザー・原材料関連サプライヤーへの感謝・お礼を込めての情報発信の場、とすること。

会場のようす


 当日はまず開会にあたって同社 山口芳基社長が挨拶に立ち、二つのエピソードを紹介した。一つ目は、山口社長が会長を務め創立70周年を迎えた日本グリース協会の創立記念祝賀会(本年10月に開催)が開催されたことで、その席で米国グリース協会(NLGI)の統計では2022年から2024年にかけてグリース世界需要が約120万tから約110万tに減速しているものの、10万tの落ち込みはほぼ中国、北米、欧州の需要が占め、日本は1%程度しか低下しておらず7万t超の需要を維持できていることに対し、「ひとえにグリースユーザーのおかげ」と感謝の意を述べた。二つ目は、同じく創立70周年を迎えた日本トライボロジー学会(JAST)の佐々木信也会長(東京理科大学 教授)に創立70周年記念祝賀会での記念講演の依頼から交流を深めたことで、これを機に両会で日本のトライボロジーのマーケットを広げる共創を始めるきっかけとなったことに対し「出会いの重要性」を強調した。「本日は、カーボンニュートラル実現につながるユーザー各位の取り組みと、ニッペコの近年の新たな取り組みに関する発表がなされた後に、懇親の場も設けている。全会を通じて、グリースメーカーである当社と、ユーザーやサプライヤーの交流によって、新しいビジネスへの共創につなげられれば、うれしい」と述べた。
 

開会挨拶を行う山口社長


 続いて、以下のとおり講演が行われた。

「鉄道車両用潤滑剤の脱炭素化に向けた取り組み」鈴村淳一氏(鉄道総研)

 鉄道車両用潤滑剤の脱炭素化に向けた方向性として、使用済み油の再生利用、更油周期の適正化、バイオマス原料の適用などが考えられる。遠心分離により使用済み車軸軸受油は、比較的容易に再生できる可能性があるとした。更油周期の適正化に資する潤滑油の評価・診断技術およびオンラインセンサを適用した油分析による機器の状態診断/監視技術は、油の廃棄量削減や機器の非解体検修、車両故障の防止が期待でき、脱炭素化に貢献できる、とした。
 

講演する鈴村氏

 

「適切な装置管理を支える~潤滑剤の“劣化”を見極める要素技術開発の取り組み~」和田山勝也氏・岩間由華氏(IHI)

 適切な管理項目・管理基準を設けて潤滑剤の状態を簡便に正しく測ることで、設備の品質維持・向上、管理コストの低減といった管理上のメリットが得られる。例えば潤滑剤中の水分量が摩耗に及ぼす影響について基礎的な調査を行った結果、予想よりも少ない水分量で影響が生じることが分かった。また、熱分析により、グリース試料のちょう度を推定できる可能性があることが分かった。同社では、分光センサなどを用いて潤滑剤の状態を監視し、異常検知、予兆保全、品質管理への活用に取り組んでおり、今後は機械学習を取り入れ活用の場を広げたい、とした。
 

講演する和田山氏

 

講演する岩間氏

 

「アイシングループのカーボンニュートラルに向けた技術開発の取り組み」平塚一郎氏(アイシン)

 ニッペコのグリースがスムーズで静かな可動を目的に使われているアイシンのサンルーフ、ドアロック、パワースライドドアなどの製品技術について紹介がなされたほか、同社のカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、技術開発力とものづくり力、グループの三つの強みを生かした鋳造用バイオ成型炭、ペロブスカイト太陽電池発電システム、水蒸気SOEC(固体酸化物型電解セル)システムなどの開発事例を紹介した。最後にグリースとカーボンニュートラルの話題に触れ、水素製造環境下で使用できるグリースが求められている、とした。
 

講演する平塚氏

 

 続いて、ニッペコの原 規公氏、井出優希氏よりそれぞれ、「バイオマスグリース BIOLUB® GS-SPのご紹介」、「フッ素グリースの真価~過酷な環境に応える潤滑技術~」と題して、同社製品・技術の紹介がなされた。

 植物由来オイルの基油とリチウム石けん増ちょう剤からなるBIOLUB® GSに、さらにバイオマス由来の極圧添加剤を加えて極圧性をアップさせたBIOLUB® GS-SPが、耐久性を実現しつつカーボンニュートラルに寄与するバイオマスグリースとして直動案内機器に採用されたことや、食品機械用潤滑剤の規格NSF H1を取得しており食品機械用グリースとして使用が可能なこと、さらに、バイオマスマークを取得済みのBIOLUB®シリーズがPAO基油/リチウム石けん増ちょう剤グリースに比べ同等の性能を有しつつCO2排出量を約70%削減できると報告。

講演する原氏


 

 また、機器や設備への高性能化要求が高まる中で、低トルク性や低温性、耐薬品性など各種の優れた特性から厳しい環境下で幅広く使われるフッ素グリースにおいても、低トルク性と低揮発性の両立、低温性と低揮発性の両立、金属対金属の潤滑性の改善、高湿環境下での潤滑性の改善、低アウトガス性の向上といった、より高度な要求性能が突きつけられている。これら課題に対応する、レンズ曇り対応、極低温対応、金属対金属対応、高湿環境対応、真空設備部向けの各種フッ素グリースの技術について紹介した。
 

講演する井出氏

 

 講演終了後に挨拶に立った営業本部 部長の沢田 茂氏は「今回のセミナーでは、最新のトライボロジー技術を中心に発表いただいた。皆様にとって有意義な時間となっていれば幸いと思う。今後も当社は、より良い情報の発信と学びの場の提供に努めていく所存なので、引き続き、皆様のご支援、ご参加をお願いしたい」と述べ、閉会した。
 

閉会の挨拶を行う沢田氏

 

 当日はまた、環境対応型グリースや射出成形金型用グリースなど、ニッペコの新しい製品技術に関するポスターセッションが行われた。

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東京理科大学・佐々木研究室、白層討論会を開催

2週 5日 ago
東京理科大学・佐々木研究室、白層討論会を開催admin 2025年12日10日(水) in

 東京理科大学・佐々木研究室は12月5日、東京都葛飾区の同大学 葛飾キャンパスで「摩擦下における鋼の白色組織形成と疲労摩耗メカニズムに関する討論会(白層討論会)」を開催した。当日は佐々木信也教授の趣旨説明の後、以下の講演が行われた。

白層討論会のもよう

「水素可視化による金属研究へのアプローチ」物質・材料研究機構(NIMS) 板倉明子氏…近年、水素エネルギー利用が拡大する中で、水素が金属材料へ及ぼす影響を“その場で可視化”する技術の重要性が高まっている。従来は、水素透過挙動や拡散係数の評価に間接的手法が多かったが、板倉氏は電子顕微鏡内に水素導入系を組み込んだ 「オペランド水素顕微鏡」を開発し、材料内部の水素分布や時間依存性を直接取得するアプローチを紹介した。装置はSEMをベースに電子誘起脱離イオン(DIET)検出系と温度・圧力制御系を統合し、試料表面から放出される水素イオンを空間分布として取得する。SUS304を対象とした測定では、約65時間にわたり520枚(2048×2048px)の水素分布画像を連続取得し、粒界や相界面に沿った透過の偏り、オーステナイト/マルテンサイトで異なる吸蔵挙動などが明瞭に観察された。また、高純度水素フィルター開発やバナジウム合金の透過実験では、SEM像と水素マップを対応づけ、粒径・組織の違いが透過量へ及ぼす影響を検証した。補助的に銀デコレーション法も用い、水素チャージ時間に応じた析出分布変化を観察している。さらにCr2O3皮膜など耐食処理層が水素吸蔵を抑制する可能性も示された。板倉氏は、本技術が金属のみならずセラミックスにも展開可能であり、今後は溶接部の局所透過や軽金属への応用、装置小型化による実用材料評価へと発展するとまとめた。

「転がり軸受案内の白色組織はく離に関する研究とグリース・鋼材開発」ジェイテクト 材料研究部 金属材料研究室 金谷康平氏…白色組織(WEA)を起点とする早期はく離は、電装補機用軸受などで1990年代から報告され、そのメカニズムはいまだ統一的な理解に至っていない。本講演では、ジェイテクトが蓄積してきた水素起因説に基づく体系的な解釈が示された。高温・静電気・振動などによりグリース中の水分や炭化水素が分解し水素が発生、すべり接触で露出する鋼の新生面から水素が侵入する。侵入水素は応力集中部に偏在し局所塑性すべりを誘発、微小き裂や針状組織を形成し、進展するとWEA・巨大き裂に至るという流れである。水素雰囲気試験の結果、転動中に外部雰囲気から直接水素が侵入するのではなく、主な水素源はグリース由来であることが判明した。また、水素発生量と摩耗量の間には高い相関が認められ、界面反応を抑制するグリース設計が耐白色層性向上の鍵となる。さらに鋼材側では、残留オーステナイトや結晶粒界など有害なトラップサイトによる拡散性水素の増加を抑制し、微細析出物によって無害化水素を増やす材料設計が有効であることが示された。耐久試験では、微細炭窒化物を多量に析出させた鋼が従来材を大きく上回る寿命を示し、WEA起因はく離に対する有望な材料として位置付けられた。

 当日は、九州大学大学院 工学研究室 田中宏昌氏が「軸受の疲労摩耗に及ぼす水素の影響」と題した発表を行う予定だったが、前2件の講演後の討論が白熱したこともあり短縮版として発表、次回の同討論会でフルレンジの発表を行うこととなった。

 

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トライボロジー試験機SRVのユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告

4週 ago
トライボロジー試験機SRVのユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告kat 2025年12日01日(月) in

 パーカー熱処理工業(PNK、https://srv-pnk.jp/)は11月14日、東京都葛飾区の東京理科大学で、揺動(オシレーション)セットアップおよび回転(ローテーション)セットアップと、オシレーション・ローテーション両方の動きを模擬できることなどから、潤滑剤や自動車向けトライボロジー試験機のデファクトスタンダードとなっているOptimol Instruments Prüftechnik(Optimol)製のトライボロジー試験機「SRV®」について、「2025年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会」(トライボロジー特性のデファクト標準に関する研究会(主査:東京理科大学・佐々木 信也 教授)協力)と「SRVユーザーズミーティング2025」を開催した。

 当日はまず、2025年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会が行われた。SRVのユーザーである13の企業・機関が、同じ試験条件(荷重、ブロック温度、周波数、ストローク、上部試験片(φ10mmボール)、潤滑剤、下部試験片(φ24mm×7.9mmディスク))で、標準試験(DIN 51834準拠)、グリースEP試験(ASTM D5706準拠)、FZGスクリーニング試験(DIN 51834-4準拠)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)耐はく離荷重評価試験の四つの試験を実施、SRV試験機と試験方法の信頼性や確かさを検証した。

 試験開始後30秒~60分の摩擦係数の標準値をプロットした「標準試験」では、2024年度のラウンドロビン試験の結果と比べ、企業・機関間でのばらつきが少ない結果となった。面相度の異なる試験片を使用しての「グリースEP試験」では、面が粗い試験片で焼付き荷重が概ね700N以下だったのに対し、面が滑らかな試験片では概ね1000N以上の焼付き荷重を示した。また、2種のギヤ油を用いて6企業・機関で実施した「FZGスクリーニング試験」では、多くの企業・機関で油種の差が見られなかったものの、焼付き荷重の値が大きくばらつく結果となった。潤滑油介在下で水素含有DLCと水素フリーDLCを対象に6企業・機関で実施した「DLC耐はく離荷重評価試験」では、企業・機関間でのOK荷重の値にばらつきが見られたものの、いずれも水素含有DLCが大きな荷重に耐え、水素フリーDLCでは比較的低荷重ではく離する結果となった。

 SRV国内ラウンドロビン試験は、SRV国際ラウンドロビン試験に比べて試験回数や試験時間などの条件を緩和し、より気軽に参加しやすくしている。

2025年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会のようす

 

 続くSRVユーザーズミーティング2025の話題提供として、PNKの佐藤雅之氏とオンラインで参加したSRV®試験機製造元の独Optimol社 Managing DirectorであるGregor Patzer氏が、最新機種SRV®5に関して、①Data logger(サンプリングレート)の活用方法、②高分解能信号分析測定(HRA)モードのCOF hysteresisの活用方法、③新しい試験を始める際の試験条件設定についての考え方、④DLCはく離の早期検出のためのアコースティックエミッション(AE)測定の有用性、⑤SRV向けに設計された薄板試験片や円柱試験片など特殊形状の試験片を把持でき温度制御も可能な新しいホルダー「ヴァリアブロック」について紹介した。

佐藤氏によるSRVユーザーズミーティング2025の話題提供のようす

 

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トライボロジー試験機SRVのユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告

1ヶ月 1週 ago
トライボロジー試験機SRVのユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告kat 2025年11日19日(水) in

 パーカー熱処理工業(PNK、https://srv-pnk.jp/)は11月14日、東京都葛飾区の東京理科大学で、揺動(オシレーション)および回転(ローテーション)と、オシレーション・ローテーション両方の動きを模擬できることなどから、潤滑剤や自動車向けトライボロジー試験機のデファクトスタンダードとなっているOptimol Instruments Prüftechnik(Optimol)製のトライボロジー試験機「SRV®」について、「2025年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会」(トライボロジー特性のデファクト標準に関する研究会(主査:東京理科大学・佐々木 信也 教授)協力)と「SRVユーザーズミーティング2025」を開催した。

 当日はまず、「2025年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会」が行われた。SRVのユーザーである13の企業・機関が、同じ試験条件(荷重、ブロック温度、周波数、ストローク、上部試験片(φ10mmボール)、潤滑剤、下部試験片(φ24mm×7.9mmディスク))で、標準試験(DIN 51834準拠)、グリースEP試験(ASTM D7421準拠)、FZG歯車試験のスクリーニング試験(DIN 51834-4準拠)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜の耐はく離荷重評価試験の四つの試験を実施、SRV試験機と試験方法の信頼性や確かさを検証した。

 試験開始後30秒~60分の摩擦係数の標準値をプロットした「標準試験」では、2024年度のラウンドロビン試験の結果と比べ、企業・機関間でのばらつきが少ない結果となった。ラップ試験片とグラウンド試験片の2種を使用しての「グリースEP試験」では、グランド試験片で焼付き荷重が概ね700N以下だったのに対し、ラップ試験片では概ね1000N以上の焼付き荷重を示した。また、2種のギヤ油を用いて6企業・機関で実施した「FZGスクリーニング試験」では、多くの企業・機関で油種の差が見られなかったものの、焼付き荷重の値が大きくばらつく結果となった。潤滑油介在下で水素含有DLC被膜と水素フリーDLC被膜を対象に6企業・機関で実施した「DLC被膜の耐はく離荷重評価試験」では、企業・機関間での耐はく離荷重の値にばらつきが見られたものの、いずれも水素含有DLCが大きな荷重に耐え、水素フリーDLCでは比較的低荷重ではく離が発生することが確認された。

 SRV国内ラウンドロビン試験は、SRV国際ラウンドロビン試験に比べて試験回数や試験時間などの条件は緩やかではあるものの、国内ラウンドロビン試験のタイトなスケジュールやデータ加工の手間など、参加企業・機関の負担は少なくない。PNKでは引き続き、今回のラウンドロビン試験の問題点や今後の課題などを抽出しつつ、参加企業・機関の負担をできるだけ軽減することで、2026年度の国内ラウンドロビン試験で試験結果のばらつきを抑えるとともに、国内ラウンドロビン試験への参加企業・機関数を増やせるように努めていく。

2025年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会のようす

 

 続く「SRVユーザーズミーティング2025」の話題提供として、PNKの佐藤雅之氏とオンラインで参加したSRV試験機製造元である独Optimol社のGregor Patzer氏が、最新機種SRV®5に関して、①Data logger(サンプリングレート)の活用方法、②高分解能信号分析測定(HRA)モードのCOF hysteresisの活用方法、③新しい試験を始める際の試験条件設定についての考え方、④DLCはく離の早期検出のためのアコースティックエミッション(AE)測定の有用性、⑤SRV向けに設計された薄板試験片や円柱試験片など特殊形状の試験片を把持でき温度制御も可能な新しいホルダー「ヴァリアブロック」について紹介した。

佐藤氏によるSRVユーザーズミーティング2025の話題提供のようす

 

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bmt2025年11月号「特集:半導体製造プロセス」、「キーテク特集:3Dプリンティング」11/25発行!

1ヶ月 1週 ago
bmt2025年11月号「特集:半導体製造プロセス」、「キーテク特集:3Dプリンティング」11/25発行! in admin 2025年11日19日(水) in in

 ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt(ベアリング&モーション・テック)」の第57号となる2025年11月号が11月25日に小社より発行される。

 今号は「特集:半導体製造プロセス」、「キーテク特集:3Dプリンティング」で構成。特集「半導体製造プロセス」では、半導体製造においてプロセスの動きを支えるベアリング&モーション技術と、性能向上や品質管理に寄与する計測技術について紹介する。
 
 また、キーテク特集「3Dプリンティング」では、食の未来を形づくる3Dフードプリンター技術と大阪・関西万博での実証について、また、PEEK樹脂の造形も可能にした材料×機械の共創による樹脂3D造形の取り組みについて、紹介する。

特集1:半導体製造プロセス

◇半導体製造装置の市場・技術動向・・・日本半導体製造装置協会 小林 章秀 氏に聞く

◇超薄型ボールベアリングの特長と半導体製造プロセスにおける適用・・・木村洋行 足立 健太 氏、湯口 俊介 氏に聞く

◇半導体製造プロセスの品質管理に寄与する原子間力顕微鏡の最新技術・・・パーク・システムズ・ジャパン 金 鍾得 氏、鈴木 基純 氏に聞く

◇光技術を用いた最新の計測・分析技術と半導体分野への適用・・・大塚電子 新家 俊輝 氏に聞く

キーテク特集:3Dプリンティング

◇食の未来を形づくる3Dフードプリンター技術と大阪・関西万博での実証 第1回・・・山形大学 古川 英光、貝沼 友紀

◇材料×機械の共創による樹脂3D造形の市場拡大・活性化に向けた取り組み・・・大塚化学 稲田 幸輔 氏、グーテンベルク 梶 貴裕 氏 に聞く

連載

注目技術:カーボンニュートラル実現に寄与する、バイオマスグリース封入直動案内機器・・・日本トムソン 齋藤 公英 氏、吉田 史隆 氏に聞く

トップインタビュー No.024・・・ジェイテクト 小野﨑 徹氏に聞く

あるコスモポリタンの区区之心 第27回 政治家と古典音楽とディレッタント・・・紺野 大介

トピックス

JAST、トライボロジー会議 2025 秋 函館を開催

三洋貿易、トライボロジー試験の受託ビジネスを開始

メカニカル・テック社、講演会・交流会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」を開催

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NTN、鵜飼CEO がチュニジア産業・鉱物・エネルギー大臣と駐チュニジア日本国大使を表敬訪問

1ヶ月 2週 ago
NTN、鵜飼CEO がチュニジア産業・鉱物・エネルギー大臣と駐チュニジア日本国大使を表敬訪問kat 2025年11日12日(水) in

 NTNの鵜飼英一CEOは10月6日、本年5月にNTNの子会社で欧州・アフリカ地区で事業を展開する NTN Europeがチュニジア自動車用ショックアブソーバーを製造する La Tunisie Mecaniqu(LTM社)に資本参加したことを受けて、チュニジア共和国にてファトマ・タベット・シブーブ・チュニジア産業・鉱物・エネルギー大臣と、大菅岳史・駐チュニジア特命全権大使を表敬訪問した。

 面談の中で、NTNからは会社概要をはじめ、ショックアブソーバーを含む自動車アフターマーケット・ビジネスのグローバル展開やチュニジア進出の背景について説明。

 シブーブ大臣からは、NTN のチュニジア進出に対し歓迎の意が表されるとともに、今後の事業展開に対する力強い支援の言葉を寄せられるなど、前向きで建設的な対話が行われた。
さらに大菅大使とは、チュニジアにおける日系自動車関連メーカーの進出状況や同国が強みとする産業分野について情報交換を行った。

 今回の訪問は、NTNが進めるチュニジアにおけるショックアブソーバー製造プロジェクトに関連し、現地政府や関係機関との関係強化を図る貴重な機会となった。

 また、チュニジア滞在では、LTM社およびその親会社である Al Badrグループを訪問し、製造現場を確認するとともに、今後の事業展開に向けて両社の従業員との対話も実施した。
NTNでは、今回の訪問を契機として、チュニジアにおけるショックアブソーバーの製造プロジェクトを加速させ、自動車向けアフターマーケット・ビジネスの拡大を図るとともに、アフリカ地区における事業展開をさらに推進していく考えだ。

シブーブ産業・鉱物・エネルギー相(右)と面談する鵜飼CEO(左)

 

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IIFES 2025記者発表会を開催、展示会の見どころを発表

1ヶ月 2週 ago
IIFES 2025記者発表会を開催、展示会の見どころを発表kat 2025年11日11日(火) in

 日本電機工業会、日本電気制御技術工業会、日本電気計測器工業会の主催により11月19日~21日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される「IIFES(アイアイフェス)2025」(https://iifes.jp/)に関して、11月7日に記者発表会が開催され、IIFES実行委員会実行委員長の髙栁洋一氏(東芝インフラシステムズ)から、展示会の見どころが紹介された。

 IIFESは、日本を代表するオートメーション総合展「システム コントロール フェア(SCF)」と国内最大級の計測と制御の専門展示会「計測展 TOKYO」が、2019年に一つの展示会となり誕生、4回目を迎える今回は、「ものづくりの未来が集う―革新・連携・共創―」をテーマにリアル展のみで、初出展52社・団体を含む914小間/227社・団体の規模で開催される。

 製造業と社会インフラを支える技術と情報が集結する今回のIIFESでは、要素技術からソリューションまで、計測・制御・駆動に関わる最新の技術・サービスの披露はもちろん、意思決定層が多数来場する商談の場でもある。今回はまた、充実した主催者企画・セミナーが用意されている。

 主催者企画セミナーは、現在抱えているものづくりの課題を解決・打開するために必要な革新的な技術を紹介することや、来場者や出展者に連携・共創を促進することを意識して、KEYNOTEセッションやテーマセッションを企画。

 今回の注力分野である「製造業でのAI」「製造業DX」「OTセキュリティ」をテーマに、各種のセッションを企画。製造業のAI活用セッションでは「人と、地球の、明日のために。東芝が描く成長戦略とAIで変わるものづくりの未来」と題して東芝社長の島田太郎氏などが、製造業DX・データ活用戦略セッションでは「データ主導時代の企業戦略」と題して東京大学教授の森川博之氏などが、OTセキュリティセッションでは、「ルール重視からリスク思考へ:DX・AI時代のOTセキュリティ」と題してIPA 情報処理推進機構の青山友美氏などが登壇する。

 スペシャルセッションとしては、NHKで放送中の超一流のエンジニアたちが極限のアイデアとテクニックを競う技術開発エンタメ番組「魔改造の夜」や「中国AI&スマート製造」をテーマとしたセッションも企画・実施。主催者企画展示として「魔改造の夜」スペシャルセッションで語られるモンスターマシンが展示される。
セミナーは「事前登録制・先着順・無料」。 セミナー日時等、セミナー詳細は公式サイトで確認できる(https://iifes.jp/seminar/)。

 また、IIFESならでは特色として、デモ展示・実機を見て触れる「要素技術からソリューションまで」のリアル展示が227社からなされる(出展者検索ページ:https://iifes.jp/exhibitor/)。

 髙栁洋一IIFES実行委員長は、「今回の“革新・連携・共創”のテーマのもと、本展では、地球環境問題や気候変動など世界的課題に直面する製造業における課題の解決の鍵となる生成AIやデジタルツインなどの最先端の革新技術、製造業の変革に重要なIT(情報技術)とOT(制御技術)の連携による全体最適による課題解決を提示。さらに、成長には業界や組織の枠を超えた共創が不可欠で製造現場でも従来は考えづらかった横の共創が進展してきているが、本展では、新たなエコシステムでの共創を提示する。IIFESならではの特長として、デモ展示や見て触れるリアル展示が多いことが挙げられる。IIFESの特徴でもある“工場環境を模擬した展示”もあって、要素技術からソリューションまで、会社の課題解決に役立つヒントが得られるものと思う。来場者にワクワクしてもらえる展示会として、2024年開催の前回展の4万2484人を凌駕する5万人の来場を目指す」と語った。

展示会のワクワク感を示したIIFES実行委員会の面々:右から2番目が髙栁実行委員長

 

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ナノ科学シンポジウム2025が開催

2ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2025が開催kat 2025年10日28日(火) in

 ナノテクノロジーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)に特化した「ナノ科学シンポジウム(Nano Scientific Symposium Japan 2025 : NSSJ2025)」が10月24日、東京都文京区の東京大学 浅野キャンパス 武田ホールで開催され、約80人が参加した。主催はナノ科学シンポジウム実行委員会(実行委員長:名古屋大学名誉教授・高井 治氏)で、協賛は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社、アルテア技研、日本顕微鏡学会。

NSSJ2025参加者の全体写真

 

 ナノ科学シンポジウムは、2020年から走査プローブ顕微鏡(SPM)ユーザーシンポジウムとして開催してきたが、本年からSPMの幅広い応用と技術に焦点を当てつつ、複合的に表面解析手法を用いた材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するシンポジウムへと拡大。MEMS技術、表面分析・解析技術、表面技術など多様な分野の第一線で活躍している登壇者による講演やポスターセッションを通じて、材料・表面技術とナノテクノロジーとの共創を明らかにするとともに、ナノテクノロジー支援の取り組みを発信する。

 2020年から開催され6回目となるNSSJ2025では、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表が行われた。


「傾斜探針型測長AFMによるナノ構造の寸法・形状計測」木津良祐氏(産業技術総合研究所)…講演では、本登壇者がナノ構造の寸法・形状を正確に計測するための技術として開発してきた、レーザー干渉計を組み込んだ原子間力顕微鏡(AFM)や、それによるナノスケール標準試料の校正技術、さらには傾斜探針機構を有した測長AFMについて紹介した。

「オペランド電位計測によるバンド構造の可視化:III-V族化合物半導体デバイスへの応用」石田暢之氏(物質・材料研究機構)…本登壇者は、超高真空下で動作するケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いた電位計測により、デバイス動作中のバンドプロファイルの変化を直接可視化することに成功した。本講演では、この手法を用いたIII-V族化合物半導体デバイスの評価事例を紹介した。

「マルチビームを適用した複数プローブで視る・操るナノスケールの界面構造」伊藤恵利氏(メニコン)…本講演では、コンタクトレンズのナノスケールの界面構造について、X線・中性子線・電子線・レーザー光といった量子ビームを相補的に活用し、その実態を「視る」、次にその知見を生かし「操る」ことによって、製品設計を目指す取り組みを紹介した。

「ダイヤモンドヘテロエピタキシャル成長における微細表面観察」鈴木真理子氏(Orbray)…同社ではサファイア基板上に独自のステップフロー成長技術を用いて、直径φ2インチを超えるヘテロエピタキシャル(100)ダイヤモンド基板の作製に成功している。本講演では、(111)ヘテロエピタキシャルダイヤモンド成長におけるサファイア基盤のオフ方向やオフ確度の影響について調べた結果を報告した。

「ダイヤモンドと窒化ホウ素単結晶の高圧合成と機能開発」谷口 尚氏(物質・材料研究機構)…本講演では、ダイヤモンドと窒化ホウ素の高純度単結晶の高圧合成と、不純物制御による機能発現についての近年の取り組みを紹介した。

「表面機能化によるナノ粒子触媒・電池カーボン電極・二次元結晶の開発と評価」齋藤永宏氏(名古屋大学)…ナノ粒子触媒、炭素系電池電極、二次元結晶は、次世代エネルギーデバイスや環境適合機能システムの鍵となる材料として注目されている。本講演では、表面機能化戦略を用いたこれらの材料の開発と評価に関する最近の進展について発表した。

「原子間力顕微鏡を使って液中で「観る」には」関 禎子氏(東京都立大学)…本登壇者は約30年前にコンタクトモードによる液中AFM観察を開始、以来、試料の固定方法について試行錯誤を重ねてきた。本講演では、各種の吸着メカニズムを活用した液中での試料固定方法について、角膜内皮細胞など実際の測定例をまじえて紹介した。

「半導体デバイス用シリコンウェーハの表面制御」仙田剛士氏(グローバルウェーハズ・ジャパン)…半導体デバイス用シリコン(Si)ウェーハにおいては、半導体キャリア移動度の観点からその原子レベルでの表面形状制御が重要で、移動度はまたSi表面が有する結晶方位にも依存する。本講演では、熱処理や洗浄などのプロセス条件と、結晶方位、傾斜角度などの組み合わせによる、Siウェーハ表面の制御方法について紹介した。

「イメージングエリプソメトリーによる薄膜の観察とその光学特性評価」岡野 俊氏(Park Systems)…本講演では、一般的なエリプソメトリーと違い、面での測定が可能でスポットサイズに依存しない1μm程度の分解能を有するイメージング分光エリプソメトリー(ISE)の原理や構成と、ISEの特長を生かしたCVDグラフェンの観察(膜厚マップ、膜厚断面)など、いくつかのアプリケーションを紹介した。

 

講演のようす

 

 休憩時間には、人工知能(AI)搭載によりセットアップからスキャンまで一連の流れを自動制御できるAFM「Park FX40」を用いた、測定デモンストレーションが行われた。

Park FX40を用いた測定デモンストレーションのようす

 

 当日はまた、12件のポスター発表が実施され、選考委員により最優秀賞1件、優秀賞2件が以下のとおり選考された。

◆最優秀賞
・「Reduction of Sulfation in Lead-Acid Batteries Using Ultrafine Bubbles」尾木佑輝氏(東京都立科学技術高等学校)

◆優秀賞
・「Investigation to Improve Corrosion Resistance of Electroless Ni-Sn-P Plating Film」江 兵氏(関東学院大学)

・「DNA under attack:HS-AFM captures dynamic defense by protamine condensation against nuclease cleavage」楊 京格氏(京都大学)

ポスター発表のようすポスター発表 表彰式のようす

 

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東京理科大学・佐々木研究室、第36回トライボサロンを開催

2ヶ月 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第36回トライボサロンを開催kat 2025年10日25日(土) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://www.tribo-concierge.com/topics/296/)の第36回目が10月25日、東京都葛飾区の同大学 葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす


 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室のメンバーに限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。

 第36回目となる今回のトライボサロンでは、大分大学・大津健史氏が「流体潤滑膜の計測とキャビテーション現象の観察」と題して、話題提供を行った。

 今回の話題提供では、光干渉法による弾性流体潤滑(EHL)膜など接触面の可視化などによる、接触面で生じる現象の理解と物理量(油膜厚さ、温度、圧力)の測定といった流体潤滑膜の計測から、EHL膜のレオロジー特性の理解を目的に取り組んだ蛍光スペクトル法を用いた粘度測定について紹介したほか、油膜破断や表面損傷の原因となる一方でうまく制御することによりシールの密封性能向上や軸受の振動抑制につなげることができる「潤滑面でのキャビテーション現象」について、その発生現象の観察による発生条件解明への取り組みを紹介した。

 流体潤滑における今後の学術面での課題として、キャビテーション現象のさらなる解明、EHL膜のレオロジー特性の解明、薄膜潤滑の理解などを提示して、総括した。

 トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://www.tribo-concierge.com/topics/296/

kat

JAST、トライボロジー会議 2025 秋 函館を開催

2ヶ月 ago
JAST、トライボロジー会議 2025 秋 函館を開催kat 2025年10日25日(土) in

 日本トライボロジー学会(JAST)は10月8日~10日、北海道函館市の函館アリーナで、「トライボロジー会議 2025 秋 函館」(実行委員長:岩手大学・内舘道正氏)を開催した。会期中は約700名が参加した。

会場となった函館アリーナ

 

 今回は、「機械要素」、「潤滑剤」、「分析・評価・試験方法」、「摩耗」、「摩擦」、「表面・接触」、「表面処理・コーティング」、「バイオトライボロジー」、「流体潤滑」、「マイクロ・ナノメカニズム」、「疲労」、「境界潤滑」、「摩擦材料」、「シミュレーション」のテーマによる一般講演と、「最新のトライボロジー実用化技術とその技術開発」、「メンテナンス・トライボロジーの新展開」、「ヤングトライボロジストシンポジウム」、「トライボロジーにおける非定常問題」、「進化・深化する高分子トライボロジー」、「金属加工プロセスにおけるトライボロジーの最前線」、「シールにおけるトライボロジー技術」、「カーボンニュートラル実現に向けたトライボロジーの戦略」、「e-駆動系/駆動系の変革を支えるトライボロジー-潤滑油技術と摺動部品の電動化に向けた取り組み-」、「スポーツにおけるトライボロジー」のテーマによるシンポジウムセッションで、全352件の発表がなされた。

研究発表のようす

 

 また、9日には特別講演会が開催され、北見工業大学・桝井文人氏とはこだて未来大学・竹川佳成氏が「カーリングをもっと強く,もっと身近に.カーリングを支援する技術の研究,その面白さと難しさ」と題して、講演を行った。

特別講演会のようす

 

 同日に開催された「懇親会」ではまず佐々木信也JAST会長(東京理科大学)が挨拶に立ち、「今回は多くの方に参加いただき、感謝している。近年では一番多い参加者数と発表者数と聞いている。トライボロジー会議に参加しての目標の一つは確かに研究発表を行うことだが、これからの懇親会のような、皆さまが集まってFace to faceで情報交換を行うことは、当学会の一番大事な機会だと思う。是非とも活発な交流を行っていただきたい」と語った。

挨拶する佐々木信也JAST会長

 

 続いて、来賓の挨拶として大泉潤 函館市長が、「トライボロジー会議2025秋函館が、このような多くの方々の全国各地からの参加のもと盛大に行われていることを心から喜びを申し上げたい。実行委員会をはじめ関係者の皆さまに、数ある候補地から函館を選んでいただき、この地での開催に多大な尽力をいただき、感謝したい。トライボロジーは摩擦や摩耗、潤滑といった現象を対象として、省エネルギーや環境負荷低減など、生産効率向上が求められる製造業や加工業において重要な分野と認識している。日本の技術力や産業の発展に大きな役割を果たしてきた皆さまの研究に敬意を表したい。今回の会議では過去最多となる約350件の研究発表や企業の展示、函館市民が自由に参加できる特別講演会などが行われている。函館の地で活発な議論と交流が行われ、トライボロジーの最先端技術や知見が共有されることで、産業のさらなる発展につながることを大いに期待している。函館市では地域産業の基盤を支える取り組みとして、DX、生産性向上のために利用する経費の一部補助、海外販路開拓の伴走支援など、企業の成長を後押しする取り組みを行っている。中でも臨空工業団地においては、陸海空いずれにも優れた交通アクセスを備えており、道内外との円滑なアクセスを可能にする立地環境を有している。函館市のこうした産業支援の取り組みにも注目していただき、次なるビジネス展開の場として検討していただきたい。短い滞在期間だとは思うが、函館山からの夜景や新鮮な海産物をはじめとするグルメなど、函館の街の魅力を存分に堪能していただきたい」と歓迎の意を述べた。

歓迎の挨拶を行う大泉 潤 函館市長

 

 さらに内館道正 実行委員長が、「参加者の皆さま、ならびに企業展示に協力をいただいた各社、特別講演をいただいた桝井先生ならびに竹川先生、函館市および会場となる函館アリーナの関係者各位のおかげで、このように盛況に開催できたことを実行委員一同、心よりお礼申し上げたい。明日最終日も引き続き、活発な議論と交流を行っていただきたい」と挨拶し、乾杯した。

乾杯の挨拶を行う内館道正 実行委員長

 

 懇親会ではそのほか、今回の企画の一つである「カローリングアトラクション」(企業展示を回ってシールを集めて参加可能)の高得点者の授賞式が行われた。

記念品を授与される第1位の王 岩氏(イーグル工業)

 

 会期中は「企業技術・製品展示コーナー」が設けられたほか、出展企業数社による製品PRやサービスについての企業プレゼンテーション(ランチョンセミナー)が実施された。

企業技術・製品展示コーナーのようす

 

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三洋貿易、トライボロジー試験の受託ビジネスを開始

2ヶ月 ago
三洋貿易、トライボロジー試験の受託ビジネスを開始kat 2025年10日23日(木) in

 三洋貿易は、同社が販売代理店を務める各種のトライボロジー試験機を用いた受託試験のビジネスを開始した。トライボロジー試験機の中期的な販売拡大につなげる狙いで、10月から、メルマガ配信や雑誌広告などを通じて、装置の見込み顧客や試験委託の見込み顧客に対し、同社が受託試験を開始したことを周知し始めている。

 三洋貿易では、Falex社、Phoenix Tribology社、STRAMA社に加えて、2017年からはRtec-Instruments製の多機能トライボロジー試験機「MFT-5000」の国内販売を展開してきたが、受託試験はこれまでビジネスとしては行っておらず、装置の購入見込み顧客向けに数サンプルの無償デモを実施する程度だった。しかし、実際には予算やテーマによって装置を購入するほどのボリュームではないが、10サンプル、20サンプルといった時間を要するデモ試験を希望する問い合わせをもらうケースもあり、販売を主とする三洋貿易としては断らざるを得ないケースもあり、装置販売に至らない例も少なくなかった。

 これに対し三洋貿易では今回、トライボロジー試験の受託業務を科学機器事業の一つに据え、受託試験という入口を増やして、装置販売の拡大へとつなげる方策を決めた。装置販売の見込み顧客や装置購入の意欲はないがトライボロジー試験を委託したい顧客に対して、受託試験の項目や費用を設定して、顧客の希望するトライボロジー試験を希望する条件で、有償で実施する。三洋貿易が窓口となるが、三洋貿易の所有する試験機、および装置メーカーであるRtec-Instruments社 日本法人や、Rtec-Instruments社製トライボロジー試験機を保有して受託試験を行っている企業、同試験機を用いて研究し試験データを蓄積している東京理科大学 佐々木研究室などのアカデミアといったサポーター・協力者と連携しつつ、受託試験ビジネスを展開していく。

 受託試験ビジネスを開始することで三洋貿易は、①見込み顧客が納得感を持ったうえでトライボロジー試験機購入の後押しができる、②装置購入の意欲はないがトライボロジー試験を委託したい顧客から受託サービス料を得ることができる、③上述のサポーター・協力者などのネットワークを活用することで、受託試験の案件ごとに対応者/依頼先の相談が可能、といったメリットが得られる。同社では、受託試験ビジネスを始めることによるデメリットは、関係先も含めて現時点ではないとしている。

 受託試験ビジネスを担当する同社ライフサイエンス事業部 科学機器部の田森航也氏は、「受託試験ビジネスは、マーケティングコミュニケーションとアプリケーションの発掘に有効」と話す。

 「マーケティングコミュニケーション」の意味するところはトライボロジー試験の受託ビジネス開始を機にトライボロジー関連分野での露出度を増やし、長期間Falex社やPhoenix Tribology社などを取り扱っていたにもかかわらず業界における三洋貿易の認知度が低いという課題を、さまざまなアプリケーションで活躍が期待できるRtec-Instruments社の装置をきっかけに向上させたい、つまり“トライボロジー試験といえば三洋貿易”“摩擦摩耗試験で迷ったら三洋貿易に相談すれば解決できる”というイメージを浸透させることである。

 また、「アプリケーションの発掘」の意味するところは、ロードセルやモジュール、環境チャンバーなどの組み合わせによって四球試験やトラクション試験、高温・低温試験や真空試験などさまざまな試験が可能で活用の裾野が広いRtec-Instruments製多機能トライボロジー試験機を使い、受託試験を展開することで、まったく新しい試験アプリケーション、適用可能な産業分野などが見つかる可能性を秘めていることだ。

 田森氏は、「取り扱い装置はRtec-Instruments社に限っているわけではないが、日本国内に法人が存在するメーカーであるRtec-Instruments社との連携は深めていきたい。アプリケーションサポート機能や、アカデミアの持つデータ解析・R&Dコンサルティング機能、商社(三洋貿易)のバックアップパーツ・メンテナンスパーツなどを常時保管しつつ保守作業もカバーする機能など、それぞれの持ち味を生かしつつ、受託試験ビジネスを通じて顧客満足度をこれまで以上に高めるとともに、トライボロジー試験機の適用範囲の拡大と中期的な装置販売の伸長につなげていきたい」と語っている。

トライボロジー試験の受託ビジネスを担当する三洋貿易・田森氏

 

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メカニカル・テック社、講演会・交流会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」を開催

2ヶ月 3週 ago
メカニカル・テック社、講演会・交流会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」を開催 in kat 2025年10日08日(水) in in

 メカニカル・テック社『メカニカル・サーフェス・テック』編集部は9月26日、東京都丸の内のTKPガーデンシティPREMIUM東京駅丸の内中央で講演会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」を開催した。

 本講演会では、耐摩耗性や潤滑性、付着抑制など基材表面にさまざまな機能を付与できるダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングおよびダイヤモンドコーティングの技術と、それら薄膜の各種特長を活用した自動車、切削工具、地熱発電での適用についての3件の講演が行われたほか、講演の合間に薄膜・トライボロジーの試験・計測機器メーカーによる2件のショートプレゼンがなされた。

講演会のようす講演1「自動車におけるDLCコーティングの技術と適用」糸村大輔氏(デンソー)

 小型・軽量化、省エネ、燃費向上、リサイクル性、高性能化といった自動車における課題に対して、多様化する機能を低環境負荷・低コストでグローバルに提供するための被膜開発の取り組みについて説明。尿素インジェクターにおけるニードルの摩耗抑制のためのDLC成膜の事例では、尿素水作動試験ではく離が発生した課題に対して、はく離メカニズムを究明した上で、密着力向上に向けて中間層材料を比較・検討し、密着力の発現メカニズムを明らかにし、高密着力のWC中間層を適用した事例を紹介した。

講演する糸村氏講演2「ダイヤモンドコーティングの技術と切削工具における適用」村澤功基氏(オーエスジー)

 切削工具に使われる単結晶、多結晶、電着ダイヤモンドなどの特性について解説した後、同社の微結晶/粗結晶のダイヤコートをそれぞれ処理した切削工具について、切削性能の比較、加工面粗さの比較を実施。CFRPの加工には粗結晶のDGコートより靭性の高い微結晶のDIAコートの方が適し、加工面粗さではDIAコートがDGコートよりも良好との結果を示した。そのほか、粗結晶のHDGコート初採用品のセラミックス・ガラス加工用超硬ドリル「DIA-MXD」による炭化ケイ素やジルコニア、石英ガラスの加工事例を紹介した。

講演する村澤氏ショートプレゼン1「大塚電子の製品・技術紹介」森田 祥氏(大塚電子)

 工具や自動車部品上のDLC膜の膜厚を非接触・非破壊で1秒程度の時間で測定できる顕微分光膜厚計「OPTM」について紹介したほか、測定者や測定場所に縛られず高精度な膜厚計測が可能なハンディタイプの測定器「スマート膜厚計」、フィルム製品などの膜厚をライン上において面でとらえることができる「ラインスキャン膜厚計」、さらには、今まで見えなかったものが見える最新の光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。

ショートプレゼンを行う森田氏ショートプレゼン2「トライボロジー試験機の紹介」國井卓人氏(Rtec-Instruments)

 モジュールを交換することでさまざまな試験方法を実行できる多機能型トライボメーター「MFT-5000」を用いて、ISO 20502(引っかき試験によるセラミックコーティングの密着性測定)に準拠したスクラッチ試験を実施し、金属板へのDLC膜の密着性を評価した事例を紹介した。最初のき裂が出現した臨界荷重Lc1点、最初の層間はく離が発生した臨界荷重Lc2点、完全な層間はく離が発生した臨界荷重Lc3点について、インライン統合3Dプロファイラーによるスクラッチ痕の状態を併せて示し、装置の有用性をアピールした。

ショートプレゼンを行う國井氏講演3「地熱発電システムにおけるDLCコーティングの技術と適用」中島悠也氏(富士電機)

 再生可能エネルギーの中でも電力系統の安定化に大きく寄与する地熱発電の優位性と、シリカスケールの付着による出力低下の課題について解説。シリカ付着を抑制して高出力を維持し収益性を向上させる目的で、化学的に析出付着するシリカに対してDLCによる低付着化を行った。シリカの析出付着モードに対して低付着なDLC化学構造を明確化したほか、DLC表面へのシリカ低付着化モデルを解明した。DLCによるスケール抑制効果を実証した取り組みを紹介、さらなる長尺化に向けた管内成膜プロセスを開発中とした。

講演する中島氏

 

 講演会終了後は、講師と参加者による交流会が催され、表面改質分野の横断的な情報交換と人的交流が、和やかながら活発に執り行われた。

kat
Checked
38 分 56 秒 ago
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