日本滑り軸受標準化協議会、第39回総会を開催、新会長に持丸昌己氏(オイレス工業)
日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は6月11日、東京都千代田区のTKP 東京駅セントラルカンファレンスセンターで「2024年度 第1回総会(通算第39回総会)」をハイブリッド形式(集合&ウェブ配信)により開催した。
当日は開会の挨拶に立った林 洋一郎 会長(オイレス工業)が、「私が会長に就任して6年が経過したが、そのうち4年がコロナ禍で、その影響を受け、ISO/TC123委員会も対面での活動が制限されてしまった。また、PBSAの総会も、最初は書面のみの回覧、それからウェブ方式を経て、現在も続けているハイブリッド方式の開催へと変化してきた。全体的に活動が制限されてきたように思う。私自身は本総会をもって会長を退任し、後任には持丸理事が総会の承認をもって就任することが決まった。会員各位の長年のご支援、ご協力に感謝したい。昨年10月にISO/TC123国際会議を日本・京都で開催し、この際に試験的に同時通訳を採用し、その有効性は確認され、その結果に関しても日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会で記録として残している。しかしながら同時通訳の費用を支援したPBSAとしては、予算面で大幅なマイナスを計上することとなった。さらに海外支援に関しても、航空運賃や宿泊費の値上がり等もあり、マイナスが膨らんだ状況となった。経済産業省より今回大幅に増額のご支援をいただくこととなり大変感謝している。しかしそれでもなお、PBSAの収支バランスが取れない状況のため、この対策に関しては後ほど全体説明の中で私から説明したい。また、先日無事終了した「染谷常雅先生を偲ぶ会」に関しても、国内委員会から、韓国のISO/TC123メンバーであるKim氏の参加費等の支援要請があり、PBSAとして支援したが、事前の会合の中で電気自動車の軸受に関する研究の話題が各国で増えてきているという情報も得られ、国際協調の重要性、国際会議に参加して情報を得ることの重要性を改めて感じた。今後も積極的に継続していきたい。本総会の終了後は、カシオ計算機 開発本部 品質統轄部 統轄部長 小山 睦氏から「G-SHOCKの品質」という演題で講演をいただく。私の幼馴染でカシオ計算機の現社長でかつてG-SHOCKの商品企画を担当していた「G-SHOCKの育ての親」である増田裕一氏からは、一緒に遊ぶ折にG-SHOCKの魅力を度々PRされてきたので私自身も購入し、長持ちなので今に至るまで釣りやダイビングの折に使用している。今回の講演会も非常に興味深い。ルビーの軸受が使われるなど腕時計は我々の滑り軸受が関わるところが少なくないが、違う業態の品質試験・管理がいかに行われているのかをうかがい、活発な質疑応答をしていただければと思う」と述べた。
続いて、来賓の経済産業省 産業技術環境局 国際標準課の青山直充氏が「ISO/TC123国際標準化活動に協力をいただき感謝している。国際標準化の活動について、経産省としては今後も予算面で支援していく。今回支援の予算が増額されることとなったが、PBSAが注力する標準化にかかわる人材の育成の予算が含まれたものとなっている。経産省でも、我が国の標準化人材の情報を可視化することで、企業や団体において外部人材の活用を促進し、また、我が国の標準化人材のプレゼンスを向上させることを目的として、標準化人材のデータベースである「標準化人材情報Directory(STANDirectory)」をリリースしているが、国際標準化を担うための若手人材の育成に引き続き尽力してほしい」と挨拶した。
さらに、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会 委員長の片桐武司氏(大同メタル工業)が挨拶に立ち、「日頃のPBSAのご支援に対し、また、昨年度の京都でのISO/TC123国際会議での非常に多大なご支援に対し、感謝している。2024年度の国内委員会の計画については後ほど山田幹事から説明があるが、引き続き費用面での支援をいただきたい。円安の影響からドイツ・ベルリンで行われるISO/TC123国際会議への参加においては渡航費も宿泊費も高騰しており、宿泊費に関する日本機械学会の規定にある金額は、円安だからといって増額されることがない。その部分でご支援をいただくことになるものと思う」と述べた。
総会ではまず、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の2024年度の活動計画について国内幹事の山田 晃氏(大豊工業)が、11回の国内委員会と1回の国際委員会に参加することや、省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託の1テーマである「環境配慮型の水潤滑用軸受材料に関する国際標準化」への取組み状況や、「テーマ名:軸受の廃棄・リサイクルの国際標準化(SC6)」(プロジェクトリーダー:笠原又一氏)と「テーマ名:水潤滑用の軸受材料の国際標準化(SC7)」(プロジェクトリーダー:笠原又一氏)という新規規格制定および改正提案の2024年度に規格化を目指す状況、本年11月13~15日にドイツ・ベルリンで対面方式により開催されるISO/TC123国際会議、同国際会議にかかる費用に関するPBSAへの支援要請などについて報告した。
続いてPBSAの2023年度の活動報告と2024年度の活動計画について、PBSA会計の橋爪 剛氏(オイレス工業)より報告がなされ、2023年度の活動報告として、2023年6月と2024年3月の2回の総会と書面理事会が開催されたこと、国際会議が2023年10月に京都で対面形式にて開催された際の旅費・同時通訳の費用等をPBSA が支援したこと、第1回・第2回総会で計3件の講演会を設けたことが報告され、さらに2022年度会計報告がなされた。2024年度の活動計画としては、第2回総会を2025年3月に2回開催し、理事会を必要に応じて開催する予定のほか、本年11月にドイツ・ベルリンで開催されるISO/TC123国際会議の経産省予算の不足分の支援や、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会活動の支援、PBSAおよび同会員に寄与する講演会・研究・調査などの実施、標準化作業を円滑に進めるための会員が活用しやすいホームページの更新・整備、さらには新規規格開発のために参考となる他TC規格などの購入などの予定について報告された。
また、PBSA予算の今後の収支バランス改善に向け林会長から、総会の開催回数の見直しや、PBSAライブラリの流用、活動報告書の印刷から電子データ化への移行(国内委員会とPBSAとの議論が必要)、会費増額、会員増強といった経費削減に関する案が出され、この案にとどまらず引き続き議論・検討を進めてほしい、との要請がなされた。
本日付けで理事会互選によりPBSA会長に就任した持丸昌己理事(オイレス工業)が挨拶に立ち、「明日から会長の重責を務めることになったPBSAは、ISO/TC123平軸受国内委員会のサポートを行う団体。ISO/TC123平軸受国内委員会は、国内さらには海外の他のTCの活動の参考になるような、非常に活発でまとまりのある団体であり、素晴らしい組織だと思っている。PBSAは、国内委員会の活動をサポートする団体であり、引き続き予算面で厚く支援して滑り軸受の国際規格・標準化活動を推進していきたい。その一方で、PBSAの収支バランスを改善するための経費の削減案を理事会で諮って進めていきたい。今後ともPBSAに対するご支援、ご協力をお願いしたい」と挨拶した。
また、林会長の退任に伴いPBSAオブザーバーから会員に就任した冨田博嗣氏(オイレス工業)は、「持丸新会長より引き継ぎ、ISO/TC123 SC6の議長を務めることになった。PBSAの活動については良く分からない部分もあり、理事の方々に教えていただきながら取り組んでいきたい。また、SC6では新しい規格として静圧気体軸受の用語の準備委員会を設けることを鋭意進めていく予定なので、PBSAのご協力をお願いしたい」と挨拶した。
総会終了後には、カシオ計算機 開発本部 品質統轄部 統轄部長 小山 睦氏が「G-SHOCKの品質」と題して講演を行った。“落としても壊れない丈夫な時計を作りたい”という構想のもと生みの親である伊部菊雄氏が「5段階の衝撃吸収構造+点接触の心臓部浮遊構造」を確立し、10mからの落下にも耐える初代G-SHOCKの開発に至ったストーリーや、“世の中にないもの、品質、規格を創造、異業種を参考にしつつそれを超える”という長年受け継がれたスピリットから、現時点で202項目に及ぶ独自開発の品質試験と、品質試験のための耐衝撃性(ハンマー衝撃)試験、加速落下衝撃試験、静電気試験、耐泥性試験、振動試験といった独自開発の試験機、それら試験機を設置した「時計品質保証実験室」を一般公開することでG-SHOCKの品質・ブランドプロモーションへと活用していること、さらにはISO/TC123に関連して時計業界の国際標準化活動の概略などについて、紹介がなされた。