サーフテクノロジー、独自微粒子投射処理技術でカビ増殖抑制効果を確認kat
2020年09日01日(火)
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サーフテクノロジーでは、原材料を流すためのホッパーや粉体をふるい液体を濾過するための網、商品を搬送するためのフィルムガイドやネットコンベア、金型や麺帯ローラーなど食品製造設備に共通する異物混入や衛生面での微生物対策、フードロス対策の一つとして、独自の微粒子投射処理「マイクロディンプル処理®(MD処理®)」を提案している。
MD処理は基材表面に微細凹凸(マイクロディンプル)を形成することで、食品用粉体の付着抑制や滑り性向上、洗浄性の向上などに効果を発揮。すでに、この微細凹凸によって大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌性能が付与されることや、抗ウイルス性が付与されることが確認されているが、このほど、カビの増殖を抑える効果が確認された。
MD処理を施したフルイ(左半分)では粉落ちが倍増、
目詰まりがなく材料ロスが激減するとともに洗浄時間も短縮できる
MD処理による付着抑制・滑り性向上と抗菌効果
MD処理とは、直径数µmから数十µmの微粒子を圧縮性気体に混合して高速に金属表面に衝突させ、表面を改質する方法で、使用する粒子の形状などは付着抑制をしたい粉体の物理的・構造的特徴によって使い分けている。ショットピーニングやサンドブラストでは直径数百µmの粒子が使用されるのに対して、MD処理は数十µm以下の粒子を用いた微粒子投射処理で、処理表面には不規則な微細凹凸が形成される。
MD処理の食品への応用では、基材表面に凸部が形成されることによって粉体が点接触となり、付着抑制や滑り性向上などの効果を発揮する。MD処理は、基材そのものの表面形状を制御するだけで、フッ素樹脂加工のようなコーティングではないため、異物混入の心配がないことからも、食品製造設備での採用が急速に進んできている。
食品製造ラインにおいて衛生管理は非常に重要な課題であり、大腸菌などの菌繁殖抑制に対して、多くの場合は次亜塩素酸水やオゾン水、エタノールなどを利用した衛生管理がなされているが、次亜塩素酸水は残留塩素の心配があり、オゾン水は使用方法によっては人体に悪影響を及ぼすため、安全性における懸念がある。エタノールも含めてそれらの薬剤を使用することによって耐性菌の懸念もある。
これらの課題がある中で、表面形状だけでの抗菌効果が近年注目を集めており、表面形状創成技術であるMD処理に関しても、微細凹凸形成による先述の付着抑制・滑り性向上の効果に加えて、抗菌効果の検証がなされた。食品製造設備では錆対策などでステンレス鋼が多く使用されていることから、サーフテクノロジーではSUS304を基材としてMD処理を施し、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)に委託してJIS Z2801に基づき実施抗菌性試験を実施した結果、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果が確認されている(下図参照)。
同社では現在、ナノ構造を有する昆虫の羽を再現することなどによる抗菌効果を検証するバイオミメティクス(生物模倣)研究の第一人者である関西大学 システム理工学部 教授の伊藤 健氏をはじめとし、KISTECとも連携して、MD処理による大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌メカニズムの解明、さらには、確立した抗菌メカニズムに基づくMD処理の抗菌性能向上に向けた研究を進めている。
8時間後の大腸菌群培地シート 左:SUS304 未処理、右:MD処理
MD処理のカビ増殖抑制効果の検証
サーフテクノロジーでは今回、食品工場の衛生管理において極めて重要なカビ対策の一環として、MD処理のカビ増殖抑制効果について検証した。
カビの増殖を抑える効果については、東京都立産業技術研究センターが確認。JIS Z 2911:2018 カビ抵抗性試験を参考にした試験として、試験カビ(Aspergillus niger NBRC 105649)を26℃、湿度95%以上で7日間培養した結果、下表に示すとおり、未処理では肉眼でカビの発育が認められないかほとんど認められないものの、実体顕微鏡下での発育部分は試料全面積の1/3以上という状態(レベル2)だったのに対して、MD処理(BおよびC)を施した結果、肉眼および実体顕微鏡下でカビの生育が認められない(レベル0)か、肉眼でカビの発育が認められないが、実体顕微鏡下での発育部分は試料全面積の1/3未満(レベル1)と、カビ増殖抑制効果が確認された。
また、下図は、SUS304鏡面とそこにMD処理をした試験片上に9日間餅を静置させた後の試験片の画像で、鏡面では顕著なカビの付着が確認できる一方、MD処理面はカビの付着が少ないことが分かる。
サーフテクノロジー 研究開発部 研究員の西谷伴子氏は、「大前提として金属にカビは生えないが、ここで見えているカビは金属表面に付着した栄養源(ここでは餅も含む埃など)に生えたカビで、MD処理面は粉体などの付着抑制効果があるため、その分カビが付着しにくくなっているとも判断できる。しかしそれだけではなく、試験カビを培養液中で培養させる前述の抗カビ試験では液体が存在することから、その液体=栄養源が微細凹凸によって細かく分断されてカビが発育しにくくなっているという仮説も立てられる。いずれにせよ微細凹凸がカビの発育を阻害しているとは考えているが、抗菌効果と同様に、カビ増殖抑制のメカニズムについては不明な点が多く、引き続き解明に努めていきたい」と述べる。
下平英二社長は、「食品工場は常に水が使われ湿度が高く、でんぷんや糖分などの植物残渣があり、カビが増殖しやすい環境にある。アルコールスプレーでの胞子の死滅、カビの除去といった作業が常に施されていると聞くが、機械の見えない部分でカビが繁殖し、ある時に胞子が飛散してしまう可能性もないとは言えない。そうした点で現場の担当者にとってカビ対策は極めて重要であり、悩ましく困難な問題だと思われる。MD処理の採用によって衛生安全性の確保に寄与し、担当者の作業面での負担や心労をいくらかでも減らせるよう、引き続きMD処理のカビ増殖抑制メカニズムの解明とカビ増殖抑制効果の高いMD処理の開発を進めていきたい」と語っている。