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第177回 JIMTOF2012に見る加工の高効率・高精度化を支える表面改質技術

JIMTO2012 11月1日~11月6日、東京・有明の東京ビッグサイトで「第26回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2012)」が開催、切削・研削・研磨・プレス加工などの工作機械をはじめ、直動案内機器や軸受などの工作機器、工具、工具・金型のコーティング、加工油剤などの関連技術が一堂に会した。我が国ものづくりの競争力を高める加工の高精度や高効率加工、省エネルギー、低コスト化を実現する多軸機や複合機、その可動部を支える軸受や直動案内などの機械要素技術、切削工具や金型の耐久性を高め加工品位を高める各種コーティング技術も多数出展された。

 加工の高効率化は、工作機械において工具主軸の高速回転と送りの高速化で実現される。これに対しNTNは、内輪の間座をエアで冷却する「エアオイル潤滑 空冷間座付軸受」を出展、従来比1.3倍以上の高速化と組み込み後予圧量が3倍以上の高剛性化の両立を提案した。送りの高速化では、たとえば日本精工が、ボールねじ「ハイスピードSSシリーズ」と高速・重荷重用サポートユニットを紹介した。独自の高速・静音技術を駆使し、滑らかなボール循環を実現、従来のチューブ循環方式の標準品に比べ2倍以上の許容d・n値(軸径d(mm)×回転数n (min-1))116万の高速回転と6dB(A)低減の静音化、振動レベルの半減が可能になり、最高送り速度は、80m/min(軸径40mm、リード20mmの場合)に達するほか、高速化による支持軸受の発熱低減のため、サポートユニットには予圧を最適化した軸受を採用し、発熱を1/2に低減した。

JIMTOF2012のもよう 工作機械側でこうした主軸や送りの高速・高精度・高剛性化が図られているわけだが、同様に各種材料に対して加工を施す加工工具にもビビリの抑制や、長寿命・高能率加工に最適な耐摩耗性向上が要求される。たとえば三菱マテリアルでは、エンドミル工具の耐摩耗性を大幅に向上する(Al,Cr)N系コーティング膜の平滑化により、切削抵抗の低減や切りくず排出性を向上した「スマートミラクルコーティング」を施した切削工具を紹介した。

 こうした耐摩耗性や潤滑性を付与した表面改質を施した製品が各工具メーカーから展示される一方、各種コーティングの受託加工メーカーや成膜装置メーカーも出展した。

 ハウザーテクノコーティングは、新開発の円形アーク蒸着技術「CARC+」と同技術を用いた成膜装置「Flexicoat850」を紹介した。同成膜装置により、工具に最適な平滑でドロップレットのないTiNやTiAlN、AlTiN、多層TiN/AlN膜を成膜、加工試験においてAIP(アークイオンプレーティング)による処理に比べて高い耐摩耗性能を示すとした。

 オンワード技研は超硬工具に最適な、1μmの膜厚と55~65GPaの硬度をバランシングさせた耐摩耗性の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を紹介した。

 ユニオンツールは、超硬合金加工用ダイヤモンドコートエンドミル「UDCB」を出展した。超硬合金の切削工具として単結晶・多結晶ダイヤ、CBN工具における切込み量は数μm単位での加工しかできないほか、電着工具では摩耗により高精度な加工が不可能だが、熱CVD法により成膜、9000HVの高硬度で高い密着性と耐摩耗性を持つダイヤモンドコート「UDC」を被覆することで、切込み量百μm単位の高効率加工を超硬材で実現している。丸紅情報システムズでは同社ブースで、そのダイヤモンドコート「UDC」とDLCコート「ウルフコート」の受託加工サービスをPRした。

 今回もヤマザキマザックやオークマ、森精機製作所、ジェイテクトなど多くのブースで、航空機部品の加工デモが行われていたが、航空機では機体重量を軽減し燃費を向上させるため、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの難削材を用いた複雑形状の部品が多い。そこで旋削機能も含めた高剛性・高精度な5軸複合加工機が必要となる。5軸複合加工機1台に工程集約することで、工程間の搬送や段取り時間の削減、加工精度のバラツキを抑え、航空機部品の生産性向上が図られている。

 オーエスジーは、このCFRP加工に適したダイヤモンドコーティング工具を紹介、また、オーエスジーコーティングサービスは、超微細結晶の多層構造により表面が平滑で切れ味がよくCFRP加工でのデラミネーション(層間剥離)の発生を防止するダイヤモンドコーティングを紹介した。

企画展示として公開された東京・大田区の町工場有志により作製された下町ボブスレーの初号機マシン(詳細は当コーナー第172回参照)。企画展示として公開された東京・大田区の町工場有志により作製された下町ボブスレーの初号機マシン(詳細は当コーナー第172回参照)。

 今回のJIMTOF2013では、新興国とのモノづくり競争力向上がますます求められる中、航空機、医療、エネルギーなど成長分野のアプリケーションに対応する工作機械や工具・金型などが多数紹介された。こうした中で、加工工具や金型では、スマートフォン向けなど高い生産性の求められる加工や、人工関節など難削材での高精度化が要求される加工などで、耐久性を高める各種の表面改質技術が活躍している。展示会を通じて、MQL(極微量切削油供給)加工などに見られるように加工現場の作業環境改善から加工油の使用が抑制される中、加工工具や軸受、送り機構などでの潤滑性能を補足し高める表面改質技術がますます求められている様子が、うかがえた。