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第129回 東日本大震災の被害者救済と復旧を願う

 3月11日14時46分に始まった「東日本大震災」による被害が拡大している。国内観測史上最大のマグニチュード9の大地震と、波の高さが7mにも及んだ津波によって町は防備するまもなくのみこまれ、家屋が流され、火災に見舞われた。はじめに、震災で亡くなられた方々のご冥福を祈りたい。また、一人でも多くの方が救済されることを願っている。

 記者は地震発生時、東京にあったため、JRおよび私鉄の全線が運行を止めたことで帰宅難民になった程度に過ぎない。しかし、幾多の震災を経て防災システムが整備されてきたとはいえ、あらゆる地震に対して万全の備えなどないということは実感できた。

 その後の数回の余震を考えると、二次被害を抑えるべく電車を止め、線路の異常や車輪の浮き上がり、架線の摩耗など、点検を進め復旧に備えた鉄道関係者の判断を讃えたい。鉄道の安全神話はまずまず守られたといってよいのではないだろうか。

 一方、原子力発電所の対応はどうだっただろうか。東京電力福島第一原子力発電所1号機が爆発し、周辺住民の約100名が被爆した。原子力発電機は放射性物質を①核分裂生成物を閉じこめた「ペレット」、②ペレットからじわじわと拡散する核分裂生成物を封じ込めつつペレットから放出された熱を外側の冷却材に逃がす「燃料被覆管」、③冷却材が封じ込められた一次圧力バウンダリ、④捨てる冷却材を封じ込める「原子炉格納容器」、⑤「原子炉建屋」という五つのバリアが機能する、安全なシステムのはずだった。このうち、高温・高圧下にあるペレットと燃料被覆管には特に注意が払われる。

 ペレットは酸化ウランの粉末を圧縮して焼結したセラミックスでできており高温に強いが、薄い肉厚の金属のチューブである燃料被覆管はペレットの熱を素早く外側の冷却材に伝えることで自身が加熱されるのを防いでいる。今回は原子炉内の水位が下がり炉心が露出、燃料の温度が上昇し燃料被覆管が溶ける「炉心溶融」が起こり、水素爆発に至ったと見られる。

 ここに至る経緯としては、冷却機能を補うはずのディーゼル発電機が作動しなかった、さらに冷却水を補充するためのポンプ車などの手配も遅れたようだ。こちらは原発ルネッサンスと叫ばれる中、強く求められる安全信頼性の回復に応えられなかった。今回の対応を振り返りながら、今後より徹底した安全対策が図られるよう生かしてほしい。

 また、地震発生後30分も経たないうちに大津波が発生し、自動車よりも速いスピードで瞬く間に町をのみこんでいった。今回の未曾有の津波に対して対策の立てられようもなかっただろうが、これまでも声高に繰り返されているとおり引き続きの津波対策としては、高い堤防および防波堤の設置などハード面と、地震発生から津波発生に至るまでの早期の津波情報の提供や避難対策の充実などソフト面のさらなる強化が、国と地方自治体の課題と言えよう。

 専門家によれば、今後3ヵ月はマグニチュード8の可能性もある大きな余震への注意が必要、としている。引き続き、できうる限りの防災対策を施していかなくてはならない。これ以上の人命を危険にさらすことはあってはならない。家屋や工場、生産施設などの損壊を招いてはならない。

 あらためて被害に遭われた方々に追悼の意を表するとともに、今後一人でも多くの人命が救われることを、また被災地の少しでも早い復興がなされることを、ただただ願うばかりである。