本作は、ティム・バートン監督、『シャイニング』のジャック・ニコルソン、『007』のピアース・ブロスナン、『エド・ウッド』のサラ・ジェシカ・パーカー、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックス、『レオン』のナタリー・ポートマンなどオールスターキャストにより、火星人の襲来で翻弄される人々を描いたSFパニック・コメディである。
火星からの飛行体を確認したホワイトハウスでは、合衆国大統領デイル(ジャック・ニコルソン)は、宇宙生物学者のケスラー教授(ピアース・ブロスナン)や核ミサイルで迎撃しようというタカ派のデッカー将軍(ロッド・スタイガー)、対話を求めようとするハト派のケイシー将軍(ポール・ウィンフィールド)らの意見を聞きながら火星人への対応を協議する。一方ラスベガスでは、火星人来訪をネタにひと儲けしようと「ギャラクシー・ホテル」を建設中のアート(ジャック・ニコルソン二役)と、その妻でアル中のバーバラ(アネット・ベニング)は火星人たちを救世主と思い交信を図ろうとする中、政府はアリゾナ州の砂漠で火星人の宇宙船着陸を歓待することになる。しかし、友好的な雰囲気もつかの間、ケイシー将軍も報道レポーターのジェイソン(マイケル・J・フォックス)も歓迎式典に列席した人々は、火星のレーザー銃による急襲で無惨にも殺戮されてしまう。彼らの地球侵略に対処する術はあるのか。
ところで火星人の襲来を確認したのは、ハッブル望遠鏡である。1990年にスペースシャトル・ディスカバリーにより打ち上げられ、地上約600km上空の軌道上を周回する口径2.4mの可視光線、赤外線、紫外線用大型天体望遠鏡だが、打上げの際に光学系に歪みが発生、1993年にスペースシャトル・エンデバーに搭乗したスタッフにより修理が行われ、各種装置の交換、取付けが行われた。大気による観測上の障害を克服するために考案されたハッブル望遠鏡は、広域惑星カメラ、 微光天体カメラ、高精度分光装置など5種類の観測機器を搭載、地上からの観測で見ることのできる最も暗い天体のさらに1/15の明るさのものまで観測でき、分解能も10倍以上になる。本作は1996年作なので、整備万端である。ロボットアームなどを使って数回の点検修理を受けたハッブル望遠鏡は、2009年の最終点検修理のときにドッキング装置が取り付けられた。2020年以降に無人ロケットにより大気圏まで曳航され、燃え尽きる運命にあるという。後継機としては、星や太陽系、銀河の最初期の形成をスペースデブリなどを通して調べるため、地球からさらに遠い150万km上空で軌道を周回するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2013年に打ち上げられる予定となっている。
本作では、火星人たちの乗る円盤の飛行や着陸のシーンもよく出てくる。円盤の底のハッチから折りたたまれた脚の関節が放射状に伸びていき、相撲のシコ踏みの腰割りのような形で着地し姿勢を保つといった、コミカルなメカの動きにも注目したい。