本作はフランス・マルセイユの街中を舞台にしたカー・アクション・エンターテインメント。監督はレーサー出身のジェラール・ピレスで、製作・脚本はリュック・ベッソン(監督作は『レオン』『ニキータ』など多数)。
港町マルセイユ。宅配ピザ屋でバイクの最速記録保持者であるダニエル(サミー・ナセリ)は、恋人リリー(マリオン・コティヤール)との生活を考え、趣味と実益を兼ねてタクシー運転手の仕事を始める。改造車を猛スピードで走らせ乗客の移動時間を短縮、運賃+チップを稼ぐのである。あるときダニエルのタクシーに、運転免許試験に落ち続けている、うだつの上がらない新米刑事エミリアン(フレデリック・ディーファンタル)が乗り込む。彼はベンツに乗った強盗団「メルセデス」を取り逃がしたばかりで、想いを寄せる金髪の女上司ペトラ(エマ・シェーベルイ)にそっぽを向かれ落ち込んでいた。一方、乗客が刑事とは知らず、いつものように取締まりをかいくぐり時速190kmで街中を飛ばすダニエルだが、さすがに御用。ペトラの信頼を得たいエミリアンはダニエルに、免許を返す条件としてメルセデス強盗団の逮捕に協力するよう取引を持ち掛けるが…。
ところで、ダニエルのプジョー406改造車はボンドカー並みのトランスフォーマーである。特急の依頼が入ると、いったん車を停止、自動ジャッキで車体を持ち上げると、最適なダウンフォースが得られるようフロントウィングとリアウイングが電動アクチュエータにより出現する。さらにタイヤも車体に折り畳まれたかと思うと、F1カー用みたいなトレッドパターンのないスリックタイヤに履き替える。きっと、タイやウォーマーで暖められて50℃くらいになって路面とのグリップ力が高まったやつだろう。もちろんステアリングも付け替える。
マルセイユの街中をサーキットに、メルセデスとカー・チェイスを繰り広げる刑事と走り屋のデコボコ・コンビ。その顛末は?笑いあり、お色気あり、典型的なフランス映画でありながら、目がくらむようなデッドヒートのシーンの連続は、走りに魅せられた監督の作品であることを思い出させる。