トヨタ自動車が米国でアクセルペダルの不具合による約230万台のリコール(無償の回収・修理)を発表、「カローラ」や「カムリ」など8車種の生産・販売を一時中止した。リコールの台数は世界で約460万台に上ると見られ、業績を回復しつつある自動車業界に影を落としている。
不具合は二つで、一つはアクセルペダルの先端部分がマット表面のくぼみに引っかかり戻らなくなる恐れがあるというもので、トヨタでは薄いマットに交換し、アクセルペダルの長さを短くする措置を取った。もう一つは、アクセルペダルの戻り具合を調整する「フリクションレバー」の表面が使用で摩耗し、そこに暖房の熱が流れ込んで結露すると、調整機能が働きにくくなり、ペダルの戻りが遅くなったり、戻らなくなったりする可能性があるというもの。「レクサス」が暴走してクラッシュ事故を引き起こしたことなどから、北米での批判が高まった。
中央は円盤状のスロットルバルブ矢印部分がスロットルレバー 車の速度調整はドライバーがアクセルペダルを操作することで吸気量を変化させて行う。ワイヤー式ではアクセルを踏み込みアクセルワイヤーが引っ張られるとスロットルレバー(報告のあったフリクションレバーであろう)の回転軸が回り、それと同軸のスロットルバルブが回転して開かれ吸気量が増大し速度が上がっていく。アクセルを戻すとリターンスプリングによってスロットルレバーの回転が戻り、スロットルバルブが閉じて吸気量が減り速度が下がっていく。今回の不具合は、このスロットルレバーの摩耗した部分に結露がたまったことで、すべりが生じ戻りの回転が正常に行われなかったということであろう。いずれにしても十分な調査と公正な報告を待ちたい。
今回不具合を起こしたのは米国部品メーカーCTS社製のフリクションレバーだったが、トヨタをはじめ現地生産では多くの部品を現地調達に頼らなければならない。特にこれからの新興国の市場開拓の上では、自動車部品メーカーも含め、現地でのビジネスの円滑化、またコスト低減から、現地の材料や部品を調達し生産を進めるシステム作りが必要となってくる。そうした低コスト化に対応した上で、製品の信頼性を確保しなければならない。今回のリコールを教訓に、現地での材料や部品の信頼性を評価し、安全性向上につながる製品性能を確保する体制作りに努めてほしい。