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 本サイトでも取り扱う医療機器の技術は米国が先行している。なのに…と問題提起するのは『華氏911』のマイケル・ムーア監督。国民皆保険は夢のまた夢という米国の医療制度、医療政策を、狂人や変人などを意味する「シッコ (sicko)!」と糾弾する。

 米国は国民健康保険というものがない。頼りになる民間の医療保険にも加入できない人が約5,000万人いて、加入者2億5,000万人も、既往症の申告漏れなどと難くせをつけて保険金の支払拒否がなされる始末。営利主義一辺倒の医療保険会社や製薬会社と、それら業界からの賄賂で政策を動かすブッシュ前大統領をはじめとする政治家らが築き上げた腐敗した米国の医療制度とは、医療を施さない(医者は申請否定率10%を維持するという)ことで儲かる仕組みになっている。

 20代前半の女性が乳がんにかかっても、若すぎるという理由で拒否、女性は医療費が無料のカナダに通院する。だが、米国ならペットでも受けられるMRIが、オタワでは1台しかないとか、米国なら即対応のバイパス手術が9?10週間待ちなど、カナダも決して楽園ではないことも描く。日本の医療システムはよっぽどマシだなと思いつつも、病院嫌いの方は観ないほうがお勧めである。ますます病院嫌いになること請け合いだ。

 なぜなら5,000万人の医療保険未加入者の悲惨なことといったら。ホイール・ソーを組み込んだソー・テーブルで木材をカットする作業中に中指と薬指を切断してしまった保険未加入の男は、手術の実費負担を迫られる。中指は6万ドル、薬指は1万2,000ドルという。苦渋の決断で薬指のみの接合手術を受ける。中指はごみ焼却場へ。彼が言う「いまや中指が消えるマジックができるんだよ」というジョークは、米国の医療制度への冷ややかな批判であろう。

 米国に倣って入社試験で自己管理をBMI(肥満度の判定方法、ボディ・マス・インデックス指数)で図ろうとする近年のわが国が、何かと理由をつけて保険加入を拒否する米国と同じ末路をたどらないことを祈るばかりである。