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 ミシシッピ川のほとりの邸宅に暮らす敬虔なクリスチャン、マンソン夫人(イルマ・P・ホール)のもとに、大学教授と名乗るゴースウェイト・ヒギンソン・ドア(トム・ハンクス)なる紳士風の男が現れる。間借りを申し出たうえ、ルネッサンス後期音楽を練習したいとして地下室も借り受けるのだが、実は教授の狙いはミシシッピ川に浮かぶ船上カジノの地下金庫室。演奏仲間を装った4人の犯罪エキスパートがマンソン家の地下室からカジノに向け、ドリルやら火薬やらを使いトンネルを掘っていく。何やかやでカジノの売上金強奪に成功した彼らだが、マンソン夫人に計画を知られてしまい、教授は彼女の抹殺を企てる。

 ところが、マンソン夫人を殺そうとする仲間たちはいずれも愛すべき間抜けなキャラクターで、一人また一人と自滅していく。残った仲間の手で死体は葬られるのだが、これが何とミシシッピ川を定刻に通過するゴミ輸送船が使われる。橋げたを通過しようとする曳船(タグボート)の艀に積まれたゴミの上に、橋の上から死体をつき落とすのである。

 東京都でも不燃ゴミを船舶輸送しているが、輸送船は蒸気タービンなどによる動力船がゴミを積んだ艀を押して、あるいは曳いて航行する。押船方式は曳船方式に比べて動力が強く、一度に大量の輸送が可能で艀に人が乗船しない分、曳船より要らない。曳船の場合は、艀の後方に人が乗って舵を取ることなどもあって舵取りが押船に比べて正確で、川幅が狭い場所や川底が浅い場所での航行に有利という。ゴミの山の上に死体を見事に着地できるのも、お尻を振ることのない曳船の艀ならではと言えるかもしれない。艀で舵取りしている人の頭上に死体が着地してしまった場合は、その限りではないが…。

 2004年公開の本作は、1955年の作品『マダムと泥棒』をジョエル&イーサン・コーエン兄弟がリメイクしたブラック・コメディー。半世紀という時代背景、それぞれのテイストを見比べてみるのも一興かもしれない。