シチリアのジャンカルド村での少年時代、母マリア(アントネラ・アッティーリ)と妹の三人暮らしだったサルヴァトーレ(サルヴァトーレ・カシオ)はトトと呼ばれ、買物の金で映画を観るほどの映画好きだった。映画館パラダイス座の映写室に出入りし映写技師のアルフレード(フィリップ・ノワレ)との友情を育むトト。しかしある日、アルフレードが映画館に入れなかった人のために広場の白壁に同時映写している最中、フィルムが激しく燃え出しパラダイス座を全焼、トトの懸命の救出にもかかわらず、アルフレードは火傷が原因で失明してしまう。
さて、映画のフィルムは1秒に24コマ動き何百倍にも拡大して映写される。画面が変わったときフィルムに1mmでもずれがあると何十cmにも拡大されて映写されるため、すばやく正確にフィルムを動かす仕組みが必要になる。シャッターが開いているときフィルムは止まり、シャッターが閉じている瞬間にフィルムを移動させるため間欠輪動装置というメカが働いている。
当時のフィルムは可燃性で、こうした高速回転稼動に伴い高温になり、火災を引き起こすことも少なくなかったという。発火したフィルムから上下のリールに巻かれたフィルム全体に飛び火するのを防ぐため、防火トラップが装備され、レバーを操作するとフィルムを切断して最悪の事態を防ぐ仕掛けになっていたようである。
火災にならなくともフィルムが擦れて切れることもままあり、アセトンで切れたフィルムの両端を溶かして接合する場面もあった。意図的にフィルムを切断することもある。検閲の入ったキスシーンである。
コレクションされた数十作にも及ぶ美女たちのキスシーン。もちろんメカよりもこちらのほうがはるかに叙情的なことは、言うまでもない。