6月3日東京都板橋区のマンション建設現場で、タワークレーンの台座が落下し、作業員2名が死傷するという事故が発生、台座を支柱に固定していた2本のカンヌキが支柱から外れたために落下したと見られている。作業者2名とも作業台にいて、長さ35mのアームを回転させる旋回台と作業台の間に挟まれていた。台座は旋回台や作業台からなり、事故当時は工事を終えたクレーンを解体するため、高さ24mの支柱の最上部にあった台座を下げる作業を始めたところだった。
タワークレーンのクライミング装置は、上部カンヌキを有するクレーンの旋回台、下部カンヌキを有する作業台、昇降シリンダーで構成され、上下のカンヌキでクレーン本体の全質量を交互に支えている。これらの台座は通常、支柱に等間隔に開いた穴に差し込まれた上下2本の鉄製のカンヌキで支柱に固定されている。台座を下げるには、下部の作業台のカンヌキを抜き、昇降の油圧シリンダーを伸ばした状態で、元の位置より下方の穴にカンヌキを差し込む。次いで、上部の旋回台のカンヌキを抜いて油圧シリンダーを縮め、下方の穴にカンヌキを移す、という尺取虫のような動きを繰り返す。カンヌキの大きさは直径約10cm、長さ約20cmで、一方のカンヌキを抜くともう一方に台座の重さ約13tの荷重がかかるため、各台に取り付けられたカンヌキの抜き差しも油圧シリンダーにより行われる。このカンヌキの抜き差しと昇降の油圧シリンダーの伸縮は作業台にいる作業者の操作で行われる。
昇降の油圧シリンダーの機能により、カンヌキが一方でも差し込まれていれば台座が落下することはないという。通常カンヌキの抜き差しを行う油圧シリンダーには、穴とカンヌキの位置を検知するセンサーが装着され、事故が起きた機種でも、カンヌキが2本とも抜けるのを防ぐ安全装置もあった。ところが、何らかの原因で2本ともカンヌキが抜け、台座は落下した。
カンヌキ脱着の油圧シリンダーやセンサーの不具合か、カンヌキの金属疲労などによる破壊か。タワークレーンの落下による災害は、10年前にも発生している。やはりカンヌキが2本とも抜けたことによるものだ。こうした事故が二度と起こることのないよう、機械・材料面から、作業のマニュアル面から、事故解明に向けた徹底的な調査、検証を行い、人命を守る、安全性を向上するシステムの構築に努めたい。