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第20回『トワイライトゾーン/超次元の体験』

 本作は、1959?65年にCBSで放送されたTVシリーズを、進歩したSFX手法を使ってリメイクしたもの。スティーヴン・スピルバーグとジョン・ランディスが製作にあたり、さらにジョー・ダンテとジョージ・ミラーが加わった4人が、それぞれ1話ずつ監督した。

 ランディスが担当したプロローグは、真夜中の山道を走る車の中から始まる。1968?72年に活躍したCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の曲、『ミッドナイト・スペシャル』に合わせて、二人の男がエアー・ドラムやエアー・ベースをまじえ、はしゃいでいる。1983年作品だけに音楽メディアはテープである。CDが聞けるカーステレオの普及は、もう少し後。「このテープは自動的に消去される…」のあのテープで、ここでは巻取りがおかしくなりテープが切れてしまう。昔はそんなトラブルによく泣かされたものだ。音楽が消え静まり返った車中、二人は退屈さをまぎらすため、TVシリーズのテーマ曲の当てっこを始めた。トゥルルル、トゥルルルーという「トワイライトゾーン」のテーマ曲が出て、「あれは本当に怖かった」なんて会話になったとき、助手席の男(ダン・エイクロイド)が運転している男(アルバート・ブルックス)に「もっと怖い話をしてやろうか」と言って、車をとめさせ…。

 記録媒体であるフロッピーディスクの駆動装置(FDD)がCD-Rの急速な普及から05年度で1億台だった世界需要が06年に5,000万台、07年に2,000万台と激減しているのに対し、音楽用途ではないがテープ型記憶装置(テープストレージ)は、データ保護や災害対策を目的としたバックアップシステムへの企業の関心の高まりから、その市場成長率は07?12年で年率2.3%減程度と、意外に堅調である。

 テープ走行系の記録装置は、音の信号を磁化の強さ、方向の変化にして記録する。磁気ヘッド周辺がキーで、薄い樹脂フィルムの上に酸化鉄や二酸化クロムの粉末などを塗ったテープを一定の速さで走らせるため、細いキャプスタンとゴムのピンチローラーとの間に強く挟んで送る。キャプスタンモーターの精度はベアリングの精度、低い振れ回り特性(NRRO)に左右される。これはHDD(ハードディスクドライブ)のモーターでも同じである。

 テープの巻取りがおかしくなるのは、樹脂テープが高温下の動作の繰り返しで劣化したためか、振動でこの送りの機構に悪影響を及ぼすためと見られる。「新品のCCRのテープなのに!」とアルバート・ブルックスが嘆いているから、ここでは後者、つまり車の振動でモーターの動きがおかしくなったのであろう。このカーステレオはたぶん、日本製ではない。

 ところで、エピローグでも『ミッドナイト・スペシャル』が流れる車中でダン・エイクロイドが「もっと怖い話を…」とやらかすのだが、ジョン・ランディス監督はよっぽどCCRの音楽が好きなようだ。トゥルルル、トゥルルルーという『トワイライトゾーン』のテーマ曲がかすんだしまうほどに。