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 ボーイングのストなどいろいろと障害はあるが、世界的に航空機開発が盛んである。本作は『ゴッド・ファーザー』などで知られるマーティン・スコセッシ監督が、偉大なる航空家で映画監督だった大富豪ハワード・ヒューズの半生を描いたものである。

 18歳で父親の石油掘削機事業を引き継いだハワード(レオナルド・ディカプリオ)は、財産を注ぎ込み航空アクション映画『地獄の天使』を製作、ハリウッドの仲間入りを果たす。一方で航空会社TWAを買収、飛行機を自ら設計し自ら操縦して、世界最速記録を更新していく。しかし、高速・高高度、長距離の米軍仕様(日本本土の偵察用だそうである)で自ら設計したXF-11偵察機のテスト飛行のとき、XF-11は右翼のプロペラが止まり機体は墜落、炎上する。ハワードは奇跡的に一命を取りとめたものの…。

 XF-11は、プラット・アンド・ホイットニー社のピストンエンジン技術の最高峰といわれた空冷星型4列28気筒R4360エンジン「ワスプ・メジャー」を2基(3,000馬力×2)搭載、これにより二重反転プロペラを駆動させ推進力を得る。

 さて、病床のハワードがXF-11の故障原因を聞くと、エンジニアの答えは「オイルシールがやられてプロペラの回転がおかしくなった」とのこと。ピストンリングだろうか。現在、ピストンリングはトップ、セカンド、オイルシールの3枚を合わせても2cm弱という厚さでありながら、F1マシンでもピストンリングが原因で事故なんていう話はめったに聞かない。機械要素の信頼性が乏しかった時代を物語っているようである。再起したハワードが、「今度はジェットエンジンを積んでみよう」とスタッフに指示しているように、いずれにしてもその数年後、レシプロエンジンはジェットエンジンに取って代わられたのだが。

 ハワードの飛行機へのこだわりは、操縦桿のフィット感から機体の突出のない皿頭のリベットまで微に入り細に入っているが、まあ、機械要素で時代を感じるのも趣に欠ける。本作では、ハワードと恋に落ちるキャサリン・ヘップバーンやエヴァ・ガードナーなど、往年の大女優らや作品を眺め、古きよきハリウッドを懐かしんでいただきたいものである。