本作は、1966?73年に放映されたTVドラマ『スパイ大作戦』を基に、主演のトム・クルーズが初の製作も兼ねた〈クルーズ?ワグナー・プロ〉の第1回作品。先に紹介した『ファム・ファタール』のブライアン・デ・パルマ監督が手がけたため、アクションものながらアルフレッド・ヒッチコックを思わせる映像効果も、あちこちに散りばめられた映画である。
極秘スパイ組織「IMF」のリーダー、ジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)の元に入った任務は、東欧に潜入しているCIA情報員のリスト“NOC"を盗んだプラハの米大使館員ゴリツィンと情報の買い手を捕らえること。だが実はこの情報は、IMFに内通者がいるとしてCIAが仕組んだ罠で、盗まれたというリストは偽物。IMFの仲間は始末され、生き残ったイーサン・ハント(トム・クルーズ)が内通者と見なされた。イーサンはジムの妻、クレア(エマニュエル・ベアール)とともに、本当の裏切り者を探すべく行動を起こすが…。
物語で、世界一厳重な警備システムを持つCIA本部から本物のNOCリストを入手しようと、イーサンらが潜入する場面がある。CIAを解雇されたタフガイのクリーガー(ジャン・レノ)の支えるケーブルに吊るされながら、天井にあるダクト口からイーサンが一室に下りていく。床のセンサーは水滴1滴落ちても検知するため、床に触れずにコンピュータを操作し、リストを盗まなければならない。ケーブルは滑車を使って上げ下ろししている。滑車とロープの摩耗に関する比較試験を行った論文によれば、滑車はCr-Mo鋼第2種で作ったものが、ワイヤロープは鋳鉄滑車を用いた場合とCr-Mo鋼滑車を用いた場合が少ないという論文があったが, これらを組み合わせた滑車、ロープであればかなり頑丈だし滑らかな作業が可能だが、手を放したら滑り落ちるのも速い。さて、イーサンは床に触ることなく無事にリストを入手できただろうか…。
ところで本作中でデータの読み書きに使われる媒体は、1996年の作品だけあってFD(フロッピーディスク)である。なんと象牙のFDまで登場する。『スパイ大作戦』の有名な指令もさしずめ「このテープは自動的に消去される」じゃなくて、「このFDは…」だろうか。「このディスクは、…」なら、まだ使えそうなセリフだが。