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第02回 乗降客の安全を守る可動式ホーム柵

 山手線が2010年の使用開始をめどに全駅に可動式ホーム柵(写真)を設置する。山手線全29駅設置で約550億円の投資が見込まれている。東京の新都心線など最近開通した地下鉄ではお馴染みだろう。列車のドアと連動して開閉するが、転落防止や列車との接触防止など乗降客の安全のために設けてあるので、たとえば電車のドアは抜けたがホームドアに挟まれた、なんてことはあってはならない。ここでは、センサー技術やそれに基く制御技術はもちろん、それを精確にレスポンスよく実行するメカ技術が重要だ。

 ここで言うメカ技術の一つにリニアモーション技術がある。たとえば京三製作所のホームドアの構造を見ると(図)、ドア駆動はACサーボモータの回転をボールねじで直線運動に変換している。このボールねじの直線運動を支持するのが直動案内機構で、特にLMガイドやリニアウェイ、リニアガイドなどの商品で知られる直線転がり案内により滑らかな動きを実現している。

 近年ではこうした直動転がり案内には、ボールベアリングと同様保持器の役割を果たす樹脂部品やメンテナンスフリーの潤滑部品が使われている。THKのLMガイドでは、ボールリテーナ付きとすることで、(1)ボール同士の相互摩擦がなくグリースの保持力も向上するため長寿命、潤滑における長期メンテナンスフリーを実現、(2)ボール同士の衝突がないため低騒音、(3)ボール同士の相互摩擦がなく発熱が低いため高速性・レスポンスに優れる、(4)ボールが均一に整列され循環するため滑らかな動作、といった利点があるとしている。可動式ホーム柵の場合はやはり相互摩擦がないことでの高速・高レスポンスや滑らかな動作という特長が利いてくるだろう。潤滑不良による摩擦の増加や摩耗に伴う故障もあってはならない。日本トムソンのリニアウェイでは、Cルーブという潤滑油内蔵部品から潤滑油が支給され長期間にわたり潤滑性能を維持し、5年または20,000kmのメンテナンスフリーを実現するという。また、日本精工のボールねじでは潤滑ユニット「NSK K1®」を装着することで5年間または10,000km以上のメンテナンスフリー化を図るとしている。

 ホームでの人身事故は08年3月までの5年間で168件もあって、このうち今回導入を決めた山手線では37件と最も多かったという。こうした信頼性の高いメカ技術に支えられた可動式ホーム柵が早い時期に全線で導入されることを期待したい。