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第76回 相次ぐクルマの安全神話崩壊に、品質管理の徹底を!

プリウスⅢ トヨタ自動車が、米国でアクセルペダルの不具合に関してカローラなど8車種でリコール(回収・無償修理)を実施したのに続き、ハイブリッド車「新型プリウス」でブレーキが瞬間的に利かなくなるという苦情が国内外で出ている。

 アクセルペダルの不具合は、アクセルペダル内部のフリクションレバー部が摩耗した状態で、低温時にヒーターをかけることなどで当該部分が結露すると、最悪の場合、アクセルペダルがゆっくり戻る、または戻らないという現象であることは本欄で前回報告した。トヨタでは米国時間1月21日にリコールを行うことを決定、アクセルペダル内部にスチール製の強化板を挟み、これによりアクセルペダルの不具合の原因となるフリクションレバー部とペダルアーム部の接点に隙間を設けるとともに、ペダルの戻る力となるバネの反力を強化する改善措置を施すことを決めた。

 今回の、プリウスのブレーキの不具合は低速で滑りやすい路面などを走行中に、一時的にブレーキが利かなくなるというもの。ブレーキを軽く踏んだ状態でABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が作動すると油圧ブレーキの利きが遅れる可能性があるという、ABSの制御ソフトの問題としている。ABSは車輪速センサが車輪のロックを検知すると、ペダルのブレーキ圧を自動的に少し抜くことで車輪のロックを防ぎ、高い制動力とステアリング操作を両立させる。

プリウス回生ブレーキシステムプリウス回生ブレーキシステム プリウスでは、エンジンブレーキ時やフットブレーキによる制動時には、モーターを発電機として作動させることにより、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに回収し、再利用する「回生ブレーキシステム」を採用している。特に加減速を繰り返す走行パターンでエネルギー回収の効果が高く、フットブレーキ時にはECB(電子制御ブレーキシステム)の油圧ブレーキと回生ブレーキを協調制御して回生ブレーキを優先的に使用し、より低い車速までエネルギー回収を行っている。このコンピュータ制御の問題ではないかということだ。

 2月5日に開かれた記者会見で豊田章男社長は、社長をヘッドとする委員会により、(1)今回のリコールに至った要因を検証しながら、「設計品質」、「製造品質」、「販売品質」、「サービス品質」の全工程において、再度間違いがなかったか点検を実施する、(2)各地域でのユーザーからの情報収集と現地現物を充実すべく、技術分室を増強する(3)品質管理のプロを育成すべく主要地域において「品質教育機能」拠点を設置する、などの取組みを行うことを明言した。

 車輪がロックした状態で思い切りブレーキを踏むとクルマの姿勢が乱れ、最悪の場合はスピンしてしまう。ABSはそうした事態を未然に防ぐ安全装備の代表格だ。今回の苦情は、そのシステムが瞬時にせよ逆にブレーキ性能を脅かす可能性があることを突きつけた。アクセルペダルの不具合に続く、わが国自動車産業の景況を好転させつつあるエコカーの代名詞である「プリウス」でのブレーキの不具合。世界に誇る日本車の安全神話を揺るがすこの一大事に対し、豊田社長の明言したような自動車各社の品質管理がグローバルに徹底されることに期待したい