提供:商船三井 造船各社や海運各社で、国際海事機関(IMO)が検討を進めている国際海運(外洋船)の二酸化炭素(CO2)と窒素酸化物(NOx)の排出削減を図るエコシップの開発・導入が進んでいる。
三菱重工業では日本郵船などと共同で、プラントや重量物などの大型設備を運ぶモジュール船について、送風機で送られた空気により船の前方から細かい気泡を噴き出して船底を覆い、航行時の船体と海水との摩擦を減らす「空気潤滑システム」を開発、高効率プロペラなど省エネ装置も採用し、同型船と比べて約10%燃費が向上燃料となる重油の消費を節約し、CO2の排出量も削減できる。
同社ではまた、三洋電機と商船三井と共同で、太陽電池とリチウムイオン電池とを組み合わせたシステムで、船舶におけるCO2排出量の削減を目指す取組み(船舶SES)を進めている。太陽電池(最大200kW予定)とリチウムイオン電池(最大3,000kWh予定)とを組み合わせたシステムで、従来船舶に搭載されているディーゼル発電機とのハイブリッドで電力供給を行い、船舶全体から排出されるCO2を削減する技術の確立を目指す。太陽電池パネルで創り、二次電池に蓄えられた電力は、主に停泊中に使用される。停泊中のディーゼル発電機を停止することで、ゼロエミッション化に寄与すると見られている。本システムを装備した「ハイブリッド自動車船」は2012年の竣工を予定している。
IHIの子会社の新潟原動機では、IMOが現行のNOx規制に対し15~22%のNOx削減を義務付けている次期NOx規制に対応した巡視船用高速ディーゼルエンジンを開発している。強度、延性に優れたダクタイル鋳鉄の使用、吸気室の一体化やアルミ合金などの軽合金部品の多用により、高剛性で小型・軽量化を図っている。高効率過給機を装備したほか、直接噴射式を採用して燃焼系統を最適化、高出力、低燃料消費を達成した
IMOの調査では国際物流の9割を担う外洋船のCO2排出量は全世界の約3割に相当する8.7tで、これはドイツ1国分のCO2排出量に相当するという(2007年度調べ)。こうしたことから国際海運船に環境税を課金してCO2削減につなげようという提案も出ている。外航船ではどの国の排出量として換算するかという課題もあり、エコシップの建造・運航が今後促進すると見られている。海運・造船主要国であるわが国のエコシップ開発が進み、上述のとおり、軽量・高剛性の材料や燃焼の高効率化を図るエンジン部品、太陽電池や風力などのハイブリッド化にともなうシステム部品など、船舶の省エネ化を支える材料・部品の市場が拡大していくことに期待したい。