フィリップスエレクトロニクスジャパンは、X線管球が体の周りを1回転する間に撮影できる画像を従来製品の4倍となる256枚に引き上げたコンピューター断層撮影装置(CT)を発売した。従来製品が1回転0.42秒だったのに対し、1回転あたり0.27秒で低被ばくの撮影が可能という。
肺がんなどの早期発見・早期治療につながる有効な手法として、CTの医療現場での採用が進み、その世界市場規模は3,300億円といわれる。
ヘリカルスキャン方式のX線CT装置では、X線管は対向配置されたX線検出器とともにガントリ内部で回転され、患者をベッドで送ることにより身体をらせん状にX線走査し、これにより身体の断面を0.5度などの細かいピッチで撮像できる。心臓のような動きのあるものを撮像する場合には、0.5秒に1回転など、X線管を搭載したガントリの回転数を上げることが求められている。
従来から回転機構の支持には真空環境下に置かれることから宇宙や半導体などで使われるような軟質金属の固体潤滑玉軸受が使われていたが、高負荷での高速化や静音性の点が課題となっていた。今回開発されたフィリップスのCTではボールベアリングに替えてエアベアリングを使うことで摩擦を低減し回転速度を高め、高速撮影により撮像時間を大幅に短縮したという。東芝メディカルシステムズのCT(写真は同社CTの一例)では、この支持機構に液体金属を作動流体とした動圧ハイブリッド軸受を適用、高速化、静音化を実現している。
ちなみに患者を載せたベッドを前後に移動する運動部には滑らかに送る直動転がり案内(THKのLMガイドなど)が使われ、振動や騒音を減らすことで患者への精神的な負担を軽減しているという。