第188回 東京モーターショーが開催、世界にまだない、部品・材料技術を発信
日本自動車工業会( http://www.jama.or.jp )は11月22日~12月1日、東京・有明の東京ビッグサイトで「第43回東京モーターショー2013」を開催した。乗用車、商用車、二輪車、カロッツェリア、車体、部品・機械器具関連製品、自動車関連サービス、SMART MOBILITY CITY 2013を含む総合ショーとして開催。世界12ヶ国から合計177社180ブランド(展示面積38239m2)が参加、すべての国内自動車メーカー14 社・15 ブランドが出展し、海外からは18 社・20 ブランド(乗用車・商用車・二輪車)が出展した。
今回のショーテーマは「世界にまだない未来を競え。」で、環境、安全、エネルギーなど世界の様々な問題を解決するハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)など新しいエコカーを、日本のお家芸の部品・材料技術を含めて世界に向けて発信した。
実用化目前、FCVの軽量・高耐久材料
トヨタ自動車では、2015年に市販予定のセダンタイプの次世代燃料電池自動車(FCV)のデザインコンセプト「FCVコンセプト」を出展した。床下に小型・軽量化した新型の燃料電池(FCスタック)や70MPaの高圧水素タンク2本を搭載している。このFCスタックは、実証実験車「FCHV-adv」に搭載されているものの2倍以上となる出力密度3kW/Lを実現している。セル数を削減し小型・軽量化したが、高効率の昇圧コンバータを搭載することで、モータージェネレーターの大出力化と小型化を実現した。タンク質量あたりの水素の貯蔵量を示す貯蔵性能(wt%)と世界最高水準の水素タンクは、ポリアミドなど水素を透過させない内部構造と、カーボン材複層による外部構造で、実際には100MPaの高圧に耐えるほか、米国仕様として、銃弾にも耐えるという。約3分で水素をフル充填でき航続距離が500km以上という実用性能の一方で、水素ガスが満タンであれば一般家庭の使用電力(10kWh)を1週間分以上供給できるなど、非常用電源としても提案された。
走りを改善するEVのインホイールモータ―技術
日産では、三角翼をイメージしたEVコンセプトカー「ブレイドグライダー」を出展した。ドライバーがクルマの中心に座り、その後方に2人用シートを配置した3人乗り。シャシーはカーボンファイバー製で軽量化を図った。リチウムイオンバッテリーでリアタイヤに搭載した左右独立制御のインホイールモーターを回して駆動することで、コーナーリング性能を向上させた。
このインホイールモーターでは、ベアリングメーカーのNTNが、モーターと減速機を一体化してホイール内に配置することでモーターの駆動力をタイヤに直接伝達して高効率化を図るとともに、車両の軽量化などに貢献する小型インホイールモーター「IWM」を開発している。その特徴を実証するために今回、4輪すべてにIWMを組み込み、左右輪を転舵する新しいステアリング装置を搭載したコンセプトカー「Q‘moⅡ」をデモし、その場回転や横方向移動を披露した。小型モビリティなど次世代EVに向けてシステムを提案した。
HEVの高出力・高効率化を実現する軸受・材料技術
ホンダは、軽量なボディに次世代の直噴 V型6気筒エンジンをミッドシップレイアウトで配置するとともに、走りと燃費性能を両立した高効率・高出力のハイブリッドシステムを搭載した新しい走りの価値を提案するスーパースポーツモデル「新型NSXコンセプト」を出展した。新型ハイブリッドシステムは、エンジンと高効率モーターを内蔵したデュアル・クラッチ・トランスミッションを組み合わせるとともに、前輪の左右を独立した二つのモーターで駆動する電動式の四輪駆動システムを搭載している。ハイブリッド車(HEV)の出力向上、燃費向上では、小型・軽量化を実現する駆動用モーターとそのトルクを高めるリダクションギヤ、駆動用モーターに大電力を供給する発電機用モーターの高速回転化が進められている。
このHEV用モーターの高速化、小型化に伴い、プラネタリ機構向けのピニオンギヤには、さらなる高速回転への対応のニーズが高まっている。これに対し日本精工では、保持器に特殊皮膜を施した超高速プラネタリ用ニードル軸受を開発、出展した。軸受の保持器の母材であるクロムモリブデン鋼に浸炭窒化処理した後、特殊皮膜を施すことで、ピニオンギヤと保持器の摺動部における摩擦熱を低減させ耐摩耗性を向上、この結果ピニオンギヤの対応可能な回転速度を超高速プラネタリ用ニードル軸受標準品に対し約2倍、高速仕様に対し約1.5倍に高速化させた。これにより変速機の効率化を図った。
ハイブリッド車やアイドリングストップシステムでは、エンジンが頻繁に起動・停止されることから、またエンジン油が低粘度していることから、エンジンベアリングなどの摺動部では油膜が形成されにくい。これに対し大豊工業では、固体潤滑剤である二硫化モリブデンとポリアミドイミド樹脂からなる樹脂コートエンジン軸受を出展、油膜が形成されずに固体接触した場合の摩擦低減の効果(起動摩擦トルク20%減)と耐摩耗性(起動停止摩耗量60%減)を示した。この起動・停止の潤滑性保持のコーティングでは、大同メタル工業はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜も提案した。
自動車メーカーでは環境、安全、エネルギー問題への対応が必至で、特に今回の出展では、資源に乏しい日本では無尽蔵な水素をエネルギーとするFCVが実用化レベルの形で示された。しかし本質的なテーマとして、自動車メーカーの走りへのこだわりは強い。今回提示された新しい形の車が、日本のお家芸である部品・材料技術のバックアップによって、走りを楽しむ車として世界市場に登場していくことを確信している。