アップル「iPhone4S」 モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)は先ごろ、2011年1月~12月のモバイル関連市場の調査結果を公表した。スマートフォンのプラットフォーム別データでは、2010年12月時点でiPhoneが378万ユーザー、Androidが217万ユーザーだったのに対して、2011年12月にはそれぞれ、674万ユーザー、1146万ユーザーと急増した。
こうしたスマホ市場の拡大に対応してモバイル・コンテンツ関連市場は2011年、対前年比115%の1兆9061億円となった。このうち、着信音やゲームなどのデジタルコンテンツの有料配信市場「モバイル・コンテンツ市場」は対前年比114%の7345億円、物販(通販)やサービス系(各種興行、交通系チケット販売)、トランザクション系(証券取引、オークションなどの手数料)の「モバイルコマース市場」は対前年比116%の1兆1716億円だった。
こうしたモバイル関連市場の拡大を支えるスマホに製造関連でも、小さく薄いボディに内蔵される各種部品のコンパクト化を実現する工作機械が必要である。現在、電子部品ICチップの世界最小クラスは大きさ0.4mm×0.2mmの「0402サイズ」と呼ばれるもので、このICチップをはじめスマホ部品では微細加工求められる。
たとえば、カバーガラスやタッチパネルに使用されるITO(透明導電膜)ガラス基板などの端面を高速・高精度に研削する装置では、ガラスを加工ステージへ自動供給でき、装置を停止することなく連続的な研削加工が行え、研削時に発生するチッピングを最小に抑えることができるものなどが、中国向けをはじめ堅調な需要を支えている。
また、スマホで直感的に操作出来るタッチパネルでは、デザイン性、透明性、質感、薄型化の要望から、表示部分に強化ガラス製パネルが使用されているが、万一落下した場合でも、ガラスの破損、飛散を防止し安全性を付与するフッ素系などの特殊高硬度ハードコート材をポリエステルフィルム表面に精密コーティングすることで、表面鉛筆硬度2H以上(粘着層付き)を達成、ハードコート表面に付着した指紋を簡単、きれいに拭き取ることができるという。
ところで2010年度ノーベル物理学賞には炭素原子1個分の厚さ(0.1~0.3nm)のシートで、ハチの巣状の六角形の格子構造を持ち、高強度で導電性があり熱放散性が良く透明性の高いカーボン素材「グラフェン」の研究で物理学者2名が受賞した。この夢の半導体素材グラフェンが、透明電極材料として一般的なITO(酸化インジウム・スズ)を代替する材料として、適用が検討されている。サムスンではRT-CVD(急速加熱型化学気相成長)を用いてロールツーロールプロセスで透明電極用グラフェンをポリエステルフィルムに成膜させるパイロット生産ラインを完成させている。ITO膜が希少金属を使用していることや成膜の効率などから高価なのに対して、グラフェン透明電極では、約1/100にコストを低減できる可能性があるとしている。
成長が鈍化してきているといわれる中国でもスマホ需要は今なお旺盛で、その性能向上や生産性向上に関わる技術は世界的に求められている。加工や表面改質、材料など多角的なアプローチで、スマホ技術の高度化が進められている。