提供:トヨタ自動車提供:Honda 本年2月に発売開始したHonda「インサイト」が発売から1ヵ月半で2万台を超え、5月に発売する第3世代「プリウス」は09年生産計画を49万5,000台(トヨタ車販売台数の5台に1台の計算)とするなど、ハイブリッド(HV)車の競争が激化している。
HV車は、発進や加速などエンジンの効率が悪くなる場面(ガソリンの消費量が高い)でモーターがエンジンをサポートする仕組み。通常走行時はコンピューター制御でエンジンとモーターの動力分布を最適配分、加速時にはバッテリーからモーターに電力を供給し、減速時は回生エネルギーとしてバッテリーに電力を蓄える。加速時に電力でエネルギーアシストすることにより、ガソリン消費量が節約できるというもの。
Honda「インサイト」は1,300ccで、現行のトヨタ「プリウス」よりも44万円安い189万円という低価格と、1Lで30kmという省燃費が売り。しかしインサイトでは、プリウスのようなモーターだけの「EV走行」ができず、発進時からエンジンが回転する。エンジンを主役に、発進加速時など大きなパワーが必要なときは、モーターがアシストするのである。信号などでの停車時は、アイドリングが自動的に停止。ストップ&ゴーの多い街中でも軽快でクリーンに走れる。
Hondaハイブリッドシステム「IMA」によるエンジン負荷の大幅低減をはじめ、空力性能の追求、ボディ骨格のほとんどに強度の高い高張力鋼板を採用するといった軽量化の徹底などにより、JC08モード走行では26.0km/L、10・15モード走行では30.0km/Lの低燃費を実現。全タイプで「平成22年度燃費基準+25%」を達成している。
一方、5月に発売するトヨタの新型「プリウス」では、インサイトの軽量化とは対照的に、これまでのエンジン排気量1,500ccから1,800ccに大型化、一部車種では太陽光パネルなどの装備もあり45kg以上重い。加速力を高める一方で走行時の出力とトルクに余裕ができるため、高速走行時のエンジン回転数を抑制できる。
また、モーターにはトルクを高めるリダクションギヤを搭載、大きな出力を得つつも、モーター全体を小型・軽量化できる。発電機も軽くした。
こうした工夫で、燃費は現行プリウスに比べ1割程度向上した1Lあたり38kmの世界最高レベルを実現している。
HV車の開発が急速に進む中、現行のニッケル水素電池に比べ体積、重量を半分以下に抑えるリチウムイオン電池や、エンジンとモーターの駆動を適正化する電子制御技術、車体の軽量化を図る小型・高出力モーター、アシスト力を大きくしながら小型・軽量化した電動パワーステアリング(EPS)、燃費向上の鍵を握る回生ブレーキなど、自動車部品の技術開発も進められている。
過去にトヨタ「カローラ」と日産「サニー」の間で繰り広げられた販売競争が「CS戦争」と呼ばれたのにならい、今回のトヨタ「プリウス」とHonda「インサイト」の販売合戦は「PI戦争」などとも呼ばれているが、いずれにしても09年国内需要が2年連続で500万台割れが確実視され、北米も1,000万台以下に縮小される可能性が高まる中、この自動車部品も巻き込んでのHV戦争が市場活性化の起爆剤になることを期待したい。