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第154回 東京モーターショーが開催、エコと走りを両立する自動車部品技術

第42回東京モーターショー2011のもよう第42回東京モーターショー2011のもよう
 日本自動車工業会( http://www.jama.or.jp )は12月2日~11日、東京・有明の東京ビッグサイトで「第42回東京モーターショー2011」を開催、会期中は84万2,600人が来場した。24年ぶりに会場を東京に移し開催した今回の東京モーターショーでは、国内全メーカー14社・15ブランド、海外からは21社・25ブランド(乗用・商用・二輪・カロッツェリア)が参加し、ワールドプレミア(世界初の発表)53台を含む最先端の製品や技術が多数登場した。今回のショーテーマは、「世界はクルマで変えられる。」"Mobility can change the world."とし、クルマが移動手段だけでなく、環境、安全、エネルギーなど世界の様々な問題の「解決手段」となりつつあるというクルマ社会の未来を、世界に向けて発信した。

トヨタ自動車「プリウスPHV」トヨタ自動車「プリウスPHV」 トヨタ自動車では2012年1月に発売するプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」を出展した。高容量・高出力な新型リチウムイオン電池の採用などで、フル充電でEV(電気自動車)として走行するEV走行換算距離26.4km、EV走行とHV(ハイブリッド車)として走行する燃費を複合して算定したプラグインハイブリッド燃料消費率(PHV燃費)は61.0km/Lを実現、JC08モード走行の場合の電力消費率は8.74km/kWhを達成している。そうした省燃費につながる100km/hまでの走行、坂道走行でEV走行などを可能にするため、モーターのさらなる高出力化が図られている。

 ハイブリッド車の出力向上、燃費向上では、小型・軽量化を実現する駆動用モーターとそのトルクを高めるリダクションギヤ、駆動用モーターに大電力を供給する発電機用モーターの高速回転化が進められて、それらを支える軸受の高速化が求められている。これに対し日本精工では、次世代ハイブリッド車のモーター用・発電機用玉軸受として、潤滑が枯渇しやすい内輪側に潤滑油を確実に供給する油流制御プレートの設置や軸受内部の溝寸法や玉径の最適化や保持器の高強度化などで回転数を30000rpm以上に高めた軸受を展示した。ジェイテクトではハイブリッド車の変速機(リダクションギヤ)向け軸受に、高速回転時の遠心力による保持器の変形を抑え、50000rpmという高速回転対応を可能にした軸受を展示した。

 ハイブリッド車やアイドリングストップシステムでは、エンジンが頻繁に起動・停止されることから、エンジンベアリングやピストンリングなどの摺動部ではエンジン油の膜が形成されにくい。これに対し大豊工業では、固体潤滑剤である二硫化モリブデンとポリアミドイミド樹脂からなる樹脂コートエンジン軸受を展示し、油膜が形成されずに固体接触した場合の摩擦低減の効果を示した。

 富士重工業では、量産AWD乗用車用として世界初の縦置きチェーン式無段変速機(CVT)「リニアトロニック」(5代目レガシーで初採用)を搭載した「ADVANCED TOURER CONCEPT (アドバンスド ツアラー コンセプト)」を出展した。BOXERエンジンの性能をフルに発揮し、常に最適な回転数を維持することで、快適な走りと優れた燃費性能を両立するとしている。チェーン式CVTは、プーリーへのチェーンの巻きかけ径を変化させることで変速、巻きかけ径の最小~最大の幅(レシオカバレージ)が広いほど、トランスミッションとしての変速範囲も広くなる。チェーンは一般的なCVTのスティールベルトに比べ、より小さく曲げることができるため、同じサイズのプーリーの場合、スティールベルトよりも巻きかけ径が小さく、レシオカバレージを広くとることができる。つまりリニアトロニックでは、トランスミッション全体をコンパクトにまとめつつ、全速度域でエネルギー効率が高く、燃費も速度域に関わらず良くなる。また、アクセル操作に対するリニアなレスポンスが良好で、思い通りの加減速ができるため、クルマを操る愉しさがより深まるという。
ジヤトコ「CVT8 Hybrid」ジヤトコ「CVT8 Hybrid」
 リニアトロニックでは独シェフラー社が提供するCVTチェーン(LukハイバリューCVT)を採用しているが、アウディ、スバルに続いて、ジヤトコでも今回、このCVTチェーンを採用したハイブリッド車用CVT「CVT8 Hybrid」を発表した。軸径を小さくしたプーリーと同チェーンを採用することで、軸間距離を大きく変えることなくプーリー比を拡大し、変速比幅をCVTとして世界トップレベルの7.0に拡大したほか、オイルリーク量を低減させることでオイルポンプを小型化し、新開発の低粘度オイルを採用することなどで、フリクションを約40%低減させた。

 EV車への対応としては、NTNや日本精工などで車軸軸受(ハブベアリング)にモーター、荷重センサー、電動ブレーキなどを組み合わせてホイールを制御する「インホイールモーター」などが出展された。特にNTNでは、独自インホイールモータシステムと新開発の独立操舵システムにより、その場回転移動や4輪すべてを真横90°方向まで転舵することによる真横方向移動を実現した小型二人乗り4輪電動コミュータのコンセプトモデルを試作、デモ走行を行い、シティーユースとしてのEVの未来像を示した。

 環境、安全、エネルギー問題を解決する技術対応が必至の自動車分野ではあるが、自動車メーカーの走りへのこだわりは強い。中国や韓国の自動車需要が拡大する中で、国内のクルマ離れは進む一方だが、クルマの消費喚起を促そうという自動車関連税制の減税も議論されている。上述のような部品技術を搭載したエコと走りを両立する「ワクワクするクルマ」の開発・上市で、わが国の自動車産業の活性化に期待したい。