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第122回 タブレット端末の操作をなめらかにするコーティング技術

提供:アップル提供:アップル ハードディスクドライブ(HDD)大手の日立グローバル ストレージテクノロジーズの堀家正充社長はある席で、「デジタルデータは年率55%で増え続けており、その中心を担うHDDはクラウド・ストレージの増大で今後も市場を拡大していくだろう。そしてそのクラウド・ストレージを押し上げるキードライバーの一つが、iPadなどのタブレット端末だ」と語った。


タブレット端末の操作をスムースに行うためのコーティング技術


提供:SMK提供:SMK そのタブレット端末で、たとえばiPadなど静電容量方式(キャパシティブタイプ)のタッチパネルは、タッチ面のガラス板を指で触れると生じる静電容量(電荷)の変化をセンサーが感知し、場所を認識する仕組み。静電容量式タッチ・スクリーン・センサーは、1層以上のガラスでできたタッチ・スクリーンに、多数のITO(酸化インジウム・スズ)透明電極を配置した構造をとる。

ピンチアウト(提供:アップル)ピンチアウト(提供:アップル) iPadでは、画面上のアイコンなどを指先で軽くつつく「タップ」、画面に指をつけたまま、上下左右にずらす「ドラッグ」、指の腹で画面上をはじくような「フリック」、二本の指で画面を押さえ、その指の間隔を広げる「ピンチアウト」、二本の指で画面を押さえ、その指の間隔を狭めてものを挟むような「ピンチイン」といった動作があるが、これら動作をスムーズに行い、またガラス基材表面の耐久性を高める技術の一つが、コーティング技術である。

 その代表的なコーティング技術は、基材にフッ素樹脂塗料などをディッピングまたは蒸着し、滑りの良さや指紋除去性を高めるもの。

 たとえばダイキン工業が先ごろタブレット端末の市場拡大に対して増産を決めたフッ素樹脂コーティング剤「オプツールDSX」を見ると、その優れた撥水・撥油性により、タブレット機器のタッチ・スクリーンの基材であるガラスなどの表面にコーティング処理することで指紋汚れが付くのを防ぐ「防汚性」、タッチ操作をなめらかにする「表面滑り性」を付加できるほか、さらに10nm以下の極めて薄い皮膜で視認性や反射率などの光学特性にほとんど影響を与えないため、ディスプレイの見やすさを損なわないという。

OH基がガラス基材のSi基に吸着、効果を持続(提供:ダイキン工業)OH基がガラス基材のSi基に吸着、効果を持続(提供:ダイキン工業) 同フッ素樹脂コーティング剤は、水酸基(OH基)を介した強固な化学結合によりガラス基材のSiに吸着、コーティング膜がはがれにくいことから、長期間それらの効果が持続する。

タブレット端末は、15年には10年の約10倍となる800万台の予測


 こうした防汚性・潤滑性コーティング剤はダイキン工業のほかに、旭硝子や信越化学工業などが手がける。

 調査会社のシード・プランニングでは、タブレット端末の2015年までの市場規模予測を実施、タブレット端末の日本市場は2台目のニーズをとらえていたネットブックと個人向けのノートパソコンの需要、業務用端末としての需要を取り込み、2015年には2010年の約10倍となる800万台の市場となると予測している。ここではタブレット端末の再表層の技術だけを取り上げたが、使われる部材は多く、iPadでもすでに、液晶ディスプレイや携帯電話高層波処理、フラッシュメモリー、水晶振動子などで日本メーカーが参入している。タブレット端末では、タッチパネルやバックライト、バッテリー、アルミフレームなどとその材料および加工技術など、わが国の強みである技術は多い。是非とも拡大基調にある市場に、その技術優位性をもってさらに食い込んでいってほしいものである。