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第40回 EV普及による波及効果に期待

 三菱自動車と富士重工業が7月にいよいよ電気自動車(EV)を発売する。三菱自は「i-MiEV」の初年度販売目標を2,000台、富士重は「プラグインステラ」で同170台と見込んでいる。京都市が充電スタンドを市内の公共施設や市営駐車場に38ヵ所設置、東京都と神奈川県で1台あたりそれぞれ30万?40万円、70万円を購入助成するなど普及を後押しする動きも活発化してきている。

 さてEVはモーターを動力源とし、バッテリーからの電力のみで駆動する。「i-MiEV」でみると、軽自動車「i(アイ)」をベースに、高性能リチウムイオン電池と小型・軽量のモーターを搭載している。この永久磁石式同期モーターが、エンジンの代わりとなって動力を発生させる。モーターは0rpmから最大トルクを発生可能で、内燃機関のように変速機を持たなくてもすべての走行領域をカバーできる。最高出力47kW、最大トルク180N・m、最高回転数8500rpmのモーター1個と、総減速比6.066の固定減速機とディファレンシャルギヤを組み合わせ左右後輪を駆動するシングルモーター方式により、ベース車の駆動力をまかなっている。

 このパワートレインでの動力性能は、発進加速、追い越し加速ともにベース車よりも良好な結果が得られている。アクセルを踏むと同時に変速機のキックダウンによるエンジン回転速度上昇もなくスムーズに力強く最高速度130km/hまで加速できる。静粛性も高く、50km/hからの全開速時の車外騒音をエンジン車と比較すると、5dBも低いという。

 また停車中のアイドリング騒音もなく、特に発進時など静か過ぎて歩行者が気づかないという指摘もあり、走行が確認できる音作りが電気自動車特有の新たな課題といわれている。だが、通常ガソリン車ではエンジンの空気を吸入する力を利用しブレーキ踏込力を助けているのに対し、EVでは電動ポンプで吸い込む力(負圧)を作り それを負圧タンクにためてブレーキを利かせているというから、タイヤの摩擦音とこのエア圧縮音で確認できるのではないかとも思う。課題はやはり、エアコンやABSブレーキサーボ、パワーステアリングの電動を支えるバッテリーの消耗だろう。航続距離は1回7時間の充電で160kmと改善されてきているが、さらなる延長が求められる。

 技術やコストの課題は残されているが、両社のEVとも、電力会社や郵便事業会社などが導入を決めており、各社の販売計画を上回る可能性も見込まれている。この新しい市場が創出されるにあたって、前述のとおり充電設備の整備も進んできている。たとえばEV住宅。トステム住宅研究所が発売した戸建て住宅では、大型の太陽光パネルを屋根に取り付け自家発電しつつ、EV充電用200Vコンセントを駐車場に標準装備した仕様となっている。国内最大級のショッピングセンター「イオンレイクタウン」でも巨大な太陽光発電パネルを持つエコモールの一角にEVの急速充電スタンドが設けられている。

 また、法人向け車両リース・レンタカーを手がける高栄企業はエコカー専門レンタカー店のネットワークを広げてきているが、ここでは小型の風力発電装置を設置、事務所や各充電スタンドで使う電力をまかなっている。

 EV元年。EVの普及が、こうした新エネルギー市場拡大の一翼を担うことに期待したい。