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THK、製造業向けIoTサービス工具監視AIソリューションの提供を開始

1年 9ヶ月 ago
THK、製造業向けIoTサービス工具監視AIソリューションの提供を開始kat 2022年11日29日(火) in

 THKは本年11月末から、製造業向けIoTサービス「OMNIedge(オムニエッジ)」の工具監視AIソリューションの提供を開始する。切削工具の欠損、摩耗度をAIが検知し、ロス削減、生産性向上に寄与していく。

OMNIedge工具監視AI ソリューション

 

 OMNIedgeは、製造現場で発生するロスを削減して設備総合効率(OEE)の向上に貢献するソリューションを提供していくTHKのIoTサービスで直動転がり案内「LMガイド」、ボールねじ、アクチュエータの直動部品からサービスを開始し、プロセスオートメーションやユーティリティ設備向けのモータ、ポンプなどの回転部品まで対象を広げ「部品予兆検知AIソリューション」を展開してきたが、今回、工作機械の切削工具が抱える課題解決につなげるべく、後付け可能で面倒な閾値設定が一切不要な「工具監視AIソリューション」の提供を開始する。

 切削工具には、「寿命管理を最適にしながら工具コストを削減したい」、「欠損やチッピングによる加工不良、手直しロスの発生を防ぎたい」という製造現場ならではの課題が存在し、従来は加工したワークの個数をもとに加工不良につながらないよう工具を早期交換するのが鉄則だった。そのため、異常がなくても安全係数を見て交換することで、コストは相対的に上昇する傾向にある。そこでTHKでは、より簡単に、即座に使用できるAIソリューションを開発したもの。

 特筆すべきは後付け(レトロフィット)を可能にすることで、現場で稼働している年式やメーカーの異なる工作機械でも簡単に導入できる点にある。また、切削工具の欠損/チッピングの検知、さらには摩耗度のモニタリング検知ができるため、機械加工の量産を手掛ける事業所では工具寿命の最適化、工具交換のコスト削減、加工不良発生時の手直しロスの削減などにつながり、高い費用対効果が期待できる。センサから収集したデータはAIが自動解析し異常検知を行うため、繰り返し使用していくほど精度が向上する。特徴は以下のとおり。

・センサは後付けで簡単に設置できる:CT(電流センサ)をモータケーブルにクランプするだけで設置は完了。CNCへの接続は不要で、工作機械の年式・メーカーなど対応機種に縛られない

・すぐに使えるソフトウェア:設定ツールでの煩わしい設定が一切不要で、設置したその日からすぐに監視とデータ取得が可能

・進化するAIでどんどん精度がよくなる:AIによる自動解析をおこない、データに基づいて異常を検知するので、使用を繰り返すほどAIが賢くなっていく

OMNIedge工具監視AI ソリューション構成図

 

kat

JIMTOF2022開催、工作機械向けベアリング&モーション技術が集結

1年 9ヶ月 ago
JIMTOF2022開催、工作機械向けベアリング&モーション技術が集結 in kat 2022年11日29日(火) in

 日本工作機械工業会は11月8日~13日、東京都江東区の東京ビッグサイトで「JIMTOF2022(第31回 日本国際工作機械見本市)」を開催した。多品種少量生産に対応する複合加工機やマシニングセンタ+協働ロボットなどの高生産性の自動化システム、スラッジ・切りくず回収やクーラント吐出などの消費電力低減によるカーボンフットプリント削減といった工作機械の出展が見られる中、工作機械の効率向上や高精度化、突発故障回避のための状態見える化、加工環境の改善などに貢献するベアリング&モーション関連技術が多数披露された。

 以下にその一端を紹介する。

工作機械エリア 開催のようす

 

イグス ブース

 「作業時間を減らしたい」「部品点数を減らしたい」「無駄なスペースを減らしたい」といった工作機械周りの課題を解決する、耐久性に優れ、可動部や捻回部でも安全に使用できるケーブル保護管や可動ケーブル、潤滑油不要ですべりで動くベアリングおよびリニアガイドなどメンテフリー・長寿命のモーション・プラスチック(無潤滑樹脂製部品)製品と、それらモーション・プラスチック製品をセンサ付きとすることでメンテナンス時期を予測しダウンタイムを防ぐ予知保全システム「スマートプラスチック」を紹介した。ブースでは今回、ユニバーサルロボット社製6軸URロボットの第7軸の機能としてリニアガイド「ドライリン」を使用したデモンストレーションを行った。

6軸URロボットの第7軸の機能としてドライリンを使用した例

 

 また、本年5月にドイツ・ハノーバーメッセで発表・披露したプラスチック製自転車「igus:bike」を国内初展示した。igus:bikeは「海洋プラスチックからモーション・プラスチックへ」という目標のもと作られた、90%以上がプラスチック製の都市型自転車で、イグスとオランダのスタートアップ企業mtrl(マテリアル)社とで共同開発した。可動部にイグスのモーション・プラスチックを用いることで、従来は金属でしか実現できなかったフリーホイールやギヤボックスなど負荷のかかる可動部品のプラスチック化を実現し、錆びることなくメンテナンスフリーで使用できる。将来的には、廃棄プラスチックのリサイクル素材で製造されたバージョンも販売予定であるほか、使えなくなったigus:bikeを回収し、その素材を使って新たなigus:bikeを製造することも計画されている。現在、ドイツでは2023年中の発売開始を目指して準備を進めている。販売元はmtrl社だが、将来的には世界中に製造拠点を置き、現地で出た海洋プラスチック廃棄物をリサイクルし、現地で自転車を製造する構想もある。また、イグスのスマートプラスチック技術を使用し、自転車部品の寿命をスマートフォンなどで確認できるようなシステムも開発中という。

igus:bikeNTN ブース


 工作機械やロボットの進化を支え、地球や社会、ヒトの未来づくりへの貢献と各種ESG課題の解決を目指し、「Navigate your future」をテーマに「超高速/高精度技術」「IoT技術」「ロボティクス技術」の三つのゾーンに分けて商品・サービスを紹介した。
 独自のリンク機構により、手首のような滑らかな動きを実現するロボティクス・モジュール商品である「i-WRIST®」を展示した。今回改良を加え、動作速度や取付け姿勢の自由度、最大可搬質量を1㎏から3㎏へと向上した。従来よりも幅広い機種のエンドエフェクタの搭載や製品の取り扱いが可能になり、様々な製造工程の自動化と効率化、製造現場の省人化に貢献できる。

i-WRIST

 

 また、ピッキングロボット用の部品供給機「TRINITTE」を紹介した。カメラおよびピッキングロボットと連携接続し、TRINITTEのパルス信号とカメラの画像処理信号をロボットに取り込むことで、安定した部品の連続ピッキングを実現。さらに、「工作機械主軸用センサ内蔵軸受ユニット」を披露した。軸受に隣接する外輪間座に内蔵したセンサで軸受軌道面付近の高度な状態監視を行い、軸受の焼付きを未然に防止。回転を利用した電磁式発電機と無線モジュールによってワイヤレス化を実現する。

TRINITTE

 

ジェイテクト ブース

 「カーボンニュートラル達成」をテーマとし、工作機械構成部品や生産ライン付帯設備、運用/保全を通じたソリューションを提案した。

 精度よく回る(精度)」、「静かに回る(静粛性)」、「速く回る(高速性)」、「軽く回る(低トルク)」、「長く回る(長寿命)」という軸受の五つの基本性能を高い次元で実現する工作機械の高精度スピンドル用軸受「PRECILENCE®(プレシレンス)」を展示した。低速から高速回転領域で低NRROを実現。これらの特徴により、工作機械における高精度加工の実現に寄与する。

PRECILENCE

 

 非接触回転ながら剛性が高い「エア軸受スピンドルユニット」を紹介した。潤滑油が不要のためランニングコストを削減できるほか、スティックスリップがないため高精度を維持しつつ、長寿命が可能。具体的には、多孔質絞りのエア軸受のため、オリフィス絞りや自生絞り等の他のタイプに比較して高い剛性を持つ。また、グラファイトの自己潤滑性により回転軸との接触時に凝着が生じないので、軽微な接触であれば再使用が可能。さらに、NRRO(非同期振れ)0.05μm以下の高精度の回転精度とエア消費量が40NL/min 以下の省エネ効果を実現している。

エア軸受スピンドルユニット

 

THK ブース

 部品の状態を数値で見える化し、予兆検知を実現する製造業向けIoTサービス「OMNIedge」を紹介した。OMNIedgeは、2020年から同社の直動案内「LMガイド」にセンサをつけてそこから収集したデータを専用のアンプで処理することで現在の状態を数値で見える化する予兆検知サービスを開始、その後ボールねじ、アクチュエータ、さらにモーターなどの回転部品まで対象を広げてきたが、今回、工作機械の切削工具が抱える課題解決につなげるべく、後付け可能で面倒な閾値設定が一切不要な「工具監視AIソリューション」を披露した。切削工具には「寿命管理を最適にしながら工具コストを削減したい」、「欠損やチッピングによる加工不良、手直しロスの発生を防ぎたい」という課題があるが、従来は加工したワークの個数をもとに加工不良につながらないよう工具は早期交換されていたため、異常がなくても安全係数を見て交換することで相対的にコストが上昇する傾向にある。これに対し開発した「工具監視AIソリューション」は、後付け(レトロフィット)を可能にすることで、現場で稼働している年式やメーカーの異なる工作機械でも簡単に導入できる。切削工具の欠損/チッピングの検知、さらには摩耗度のモニタリング検知ができるため、機械加工の量産を手掛ける事業所では、工具寿命の最適化、工具交換のコスト削減、加工不良発生時の手直しロスの削減などにつながり、高い費用対効果が期待できるほか、センサから収集したデータはAIが自動解析し異常検知を行うため、繰り返し使用するほど精度が向上していく。

OMNIedge 工具監視AIソリューション

 

 また、クロスローラーリングと同等の高剛性と高い回転精度を有する旋回軸受(高速複列アンギュラリング)「BWH形」を紹介した。複列に配置したボールを保持器で整列させる構造のため、ボールは安定したスムーズな動きができ、ローラーに比べて転動面から生じる発熱による温度上昇を抑制しながら高速回転が可能なほか、予圧調整が不要、組み付けが容易など取り扱いがしやすい。

BWH形

 

日本ベアリング ブース

 転動体にニードルローラーを採用し、高剛性、高運動精度、高減衰性を実現したローラーガイド「EXRAIL」を展示した。精密工作機械をはじめとする重荷重・精密駆動用途に幅広く対応できる。今回は特にEXRAILの紹介動画を新制作してブースで上映し、高剛性、高運動精度、高減衰性のキーとなるニードルローラーやローラーのスムーズな循環を実現するリテーナ、メンテナンスフリーを実現する潤滑油含浸樹脂、多方向からの給油に対応する給脂孔など主要構成要素の一部を3Dモーショングラフィックによる動作確認で示しながら、使いやすく設計のしやすいローラーガイドであることを紹介した。

EXRAIL

 

 そのほか、丸軸と外筒の軌道溝をボールが転がる直動軸受である「NBボールスプライン・ボールねじスプライン」を展示した。「NBボールスプライン」はボールの転がり運動を利用した直線運動機構で、ラジアル荷重とトルクを同時に負荷できることから、搬送装置やロボットなど幅広い分野で使用されている。「NBボールねじスプライン」は1本にボールねじとスプラインの軌道溝を設けた軸と高剛性で高精度なボールねじナットとボールスプライン外筒で構成。SPBR形はボールねじナットとボールスプライン外筒に高速回転が可能なアンギュラコンタクトの回転部を一体としたロータリーボールねじナットとロータリーボールスプライン外筒が組み合わされている。SPBF形にはロータリーボールねじナットとボールスプライン外筒が組み合わされている。NBボールねじスプラインは1軸で「位置決め」「直線運動」「回転運動」を行うことができ、これらの運動を組み合わせることでスパイラル運動やスカラ形ロボット、組立機、ローダーなど様々な機械に使用できる。

NBボールスプライン

 

日本精工 ブース

  ”工作機械メーカーとともに高度自動化とカーボンニュートラルの世界を目指す”をコンセプトに、ボールねじ送り系の状態安定化技術「NSK Feed Drive Adjuster™」を披露した。工作機械の送り系の温度上昇によって起こる、ねじ軸の伸びによる機能の変化を最小限に留める。通常、ねじ軸の伸びが著しい場合は送り系の異常や故障を防ぐため、ねじ軸を支持している機構の片側で軸方向の変位を逃すことで対処しているが、これにより支持剛性が低下し軸方向の荷重を適切に受けられなくなり、工作機械の加工精度・品質に影響が出る課題があった。これに対しNSK Feed Drive Adjuster™は、片側のサポート軸受部に適度な剛性と動特性の維持を可能にするとともに軸方向の変位に追従することで、送り系が発熱などの環境変化の影響を受けても剛性の変化が最小限となり、軸方向の荷重を支持し続けられるため、加工の精度や品質、生産性の変化を低減できる。また加工調整のための暖機運転、冷却などによるロスタイムや環境負荷の削減にも貢献する。 
 

状態安定化技術を適用したボールねじ送り系と、開発担当の新井 覚 氏

 

 また、耐焼付き性の向上とクーラント環境下での信頼性向上で環境にやさしいグリース潤滑の採用を拡大させ、オイルエア潤滑に比べ工作機械の消費電力削減や作業環境の改善に貢献する主軸軸受用グリース「ROBUSTGRD™」を紹介した。グリースを構成する増ちょう剤、基油、添加剤の最適配合により同社従来品比5倍の耐焼付き性能を実現するほか、グリース潤滑では加工の際に使用するクーラント液が軸受に浸入するとその水分で油膜が切れ潤滑性能に悪影響が出ることが懸念されるが、ROBUSTGRD™ではクーラントが浸入した際にその水分の影響による油膜切れを発生しづらく、信頼性を高めている。

ROBUSTGRDの展示:独自開発の、回転中の軸受の油膜を測定する技術を使い、
ROBUSTGRDと従来グリースの油膜厚さを比較

 

ハイウィン ブース

 「繋がる、広がる―Connect & Expand」をキャッチコピーに、工作機械Solutionと自動化・省力化Solution、Total Solutionの三つのソリューションを提示。
 状態可視化システム搭載の直動機器「i4.0シリーズ」を紹介した。ボールねじやリニアガイドウェイ、単軸ロボットに温度・振動センサを付けて直動機器の状態を可視化することで、工作機械案内部の予知保全につなげることができる。

i4.0シリーズ

 

 また、直動や回転部品だけではない、モーターやドライバーなどメカトロ部品を組み合わせ、産業用ロボットや超精密位置決めステージまでをカバーするラインアップによってユーザーの工数を削減する自動化・省力化の提案を行ったほか、直動機器から各種モーターやドライバー、そしてそれらを組み合わせたモジュールや超精密位置決めステージ、産業用ロボットなどの提供を通じて、設計・開発から、購買や組立、品質保証、生産管理まで、装置メーカーの工数削減に貢献するトータルソリューションの提案を行った。市に営業拠点を配置。ブースでは、神戸市内の約7500坪の敷地に研究開発機能を備えた本社工場を設立し、11月1日より稼働を開始したことをアピールした。

ロボットやステージによる自動化・省力化Solution

 

kat

高機能トライボ表面プロセス部会 第19回例会と第20回機能性コーティングの最適設計技術研究会が合同開催

1年 9ヶ月 ago
高機能トライボ表面プロセス部会 第19回例会と第20回機能性コーティングの最適設計技術研究会が合同開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)「第19回例会」と日本トライボロジー学会 機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)「第15期 第1回(通算第20回)会合」が11月16日、名古屋市千種区の名古屋大学 ベンチャービジネスラボラトリー ベンチャーホールでの対面参加およびオンライン参加からなるハイブリッド形式により、合同開催された。

開催のようす

 

 高機能トライボ部会は、自動車の低燃費化・高性能化などへの高機能トライボ表面の寄与が増してきていることを背景に設立され、自動車関連・コーティング関連企業や、大学・研究機関などが参加しての分野横断的な議論を通じ、低摩擦/高摩擦、耐摩耗性などに優れた高機能トライボ表面のためのプロセス革新に向けた検討を行う場として機能している。

 また、機能性コーティングの最適設計技術研究会は、窒化炭素(CNx)膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の硬質炭素系被膜および二硫化モリブデン等の固体潤滑被膜を実用化する上で重要となるコーティングの最適設計技術の向上を目指し、幅広い分野の研究者・技術者が集い、研究会での話題提供と討論や、トライボロジー会議でのシンポジウムの開催などを行っている。

 機能性コーティングの最適設計のための研究開発を支える先進表面分析技術に関して,特にラマン分光分析の話題にフォーカス。上坂代表幹事/主査の開会挨拶に続いて、以下のとおり、4件の話題提供がなされた。
           
・「DLCをちょっと深く考えてみる」鷹林 将氏(有明工業高等専門学校)…DLCの化学構造とその変化はラマンスペクトルでよく表されると考えられているが、ラマンスペクトルは融合形状を示しピーク分離解析は困難であるため、DLCのラマン分光解析は多種多様となると解説した上で、以下のとおりまとめた。①DLCのラマンスペクトルは五つの活性バンド(N、D、G-、G+、D′)から構成されている、②各バンドはLorentz関数(G-バンドはBWF関数)を共通のGauss関数で畳み込んだ関数で表現できる、③光電子制御タウンゼント放電(PATD)中で成膜したDLCは、五つのバンドを明確に分離できる、④各バンドの比面積と位置シフト量からDLCの化学構造を類推できる。最終的にラマンスペクトル解析によってDLCの化学構造は、π共役の発展度合いがDLCの特性を決定するとした「sp2クラスターモデル」で説明できると結論、DLCはπ共役成長が緩やかで誘電性が特徴的な炭素材料である、と総括した。

・「各種分析手法によるトライボフィルムの分析事例紹介」沼田俊充氏(日産アーク)…各種分析手法を用いたトライボフィルム調査と摩擦特性との相関について解説。低分子添加剤の定性・含有量を見るLC-MS、金属錯体添加剤の変質を見るXAFS、元素の定量化を行うICPといったオイル(添加剤)の分析手法や、最表面の元素分布を見るAES、最表面の化学状態を見るXPS、被膜の厚さ・断面構造を見る断面TEMといったトライボフィルムの分析手法を組み合わせることで、オイルの劣化やトライボフィルムの化学状態・構造を解析し、摩擦特性への影響を考慮できる、とまとめた。また、NOxガスバブリングにより市販エンジンオイルを劣化させ、摩擦特性、添加剤含有量の変化、摺動面におけるMoS2の分布についてラマン分光法による分析を行った結果、AFMとラマン分光法の複合解析によって突起部のMoS2の被覆率を算出したほか、潤滑油中MoDTCの減少が摺動面接触部におけるMoS2の被覆率の低下を引き起こし摩擦係数の上昇につながることを明らかにした。添加剤分析、トライボフィルム分析の結果を総合的に解析することでオイルの劣化が摩擦特性へ与える影響を考察できる、と総括した。

・「熱可塑性高分子における顕微ラマン散乱分光法による結晶化度測定」山口 誠氏(秋田大学、オンライン講演)…今後市場が急拡大すると予測されている、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたCFRPとマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を使用したCFRTPという炭素繊維複合高分子材料について解説した後、熱可塑性高分子における、機械的特性に影響する結晶化度の評価法として、1μm領域という局所領域の評価が可能な各種のラマン散乱分光法について紹介した。CFRTPのマトリックス樹脂の熱可塑性高分子としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の低波数領域のラマンスペクトルを見ることで、結晶化度評価や結晶化度の局所空間分布評価を行った結果、炭素繊維との相互作用や局所加熱部周辺の結晶化度、レーザ加工における熱影響、局所ひずみなどを明らかにした。

・「表面増強ラマン分光法を用いた水素含有DLC膜の極表面測定~MoDTC分解中間物質による摩耗促進機構の解明~」野老山貴行氏(名古屋大学)…DLC膜表面の表面増強ラマン分光法(SERS)を用いた測定を簡便に行うための手法として、金ナノ粒子塗布または金スパッタ法を比較。増強効果を得るために最適な波長の選択やラマンデータの検出深さについて明らかにした。金スパッタ法に比べ金ナノ粒子塗布法はラマンシグナルの検出深さに優位性があり、通常ラマン測定法に比べ金ナノ粒子塗布法を用いたSERS測定では最大強度が増加したほか、SERS測定における波長の影響を明らかにした結果、特に633nm波長の場合にIDピーク強度が高く摩擦に伴う結晶構造の変化を検出する際に分かりやすい結果が得られるものと推測した。そのほか、MoDTC由来物質をそれぞれ純物質として添加したポリアルファオレフィン(PAO)油中における摩擦試験を行い、DLC膜の摩耗形態の分類(アブレシブ摩耗、水素脱離摩耗、炭素脱離摩耗)を行った。講演後は、野老山氏の所属する生産プロセス工学 梅原研究室を訪問、上述の研究を支える試験・分析評価機器の一部を見学した。

 

梅原研究室にて見学した機器の一例:大塚電子製の反射分光膜厚計「OPTM」
無潤滑下/潤滑油下の摩擦界面その場観察による摩擦メカニズムのその場解析などに適用

 

kat 2022年11月29日 (火曜日)
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