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ニッペコ、第2回トライボロジー技術セミナーを開催

5日 17時間 ago
ニッペコ、第2回トライボロジー技術セミナーを開催kat 2025年12日10日(水) in

 ニッペコ(https://www.nippeco.co.jp/)は12月3日、東京都千代田区の東京商工会議所で、「第2回トライボロジー技術セミナー〜トライボロジーでつながる未来〜」を開催、ユーザーやサプライヤーなど約60人が参加した。今回で2回目の開催となる本セミナーのコンセプトは、①グリース・潤滑技術とトライボロジー技術のさらなる発展につなげる場、②多くの業種のユーザーとの交流・技術創出の場、③同社が長年にわたりお世話になっているユーザー・原材料関連サプライヤーへの感謝・お礼を込めての情報発信の場、とすること。

会場のようす


 当日はまず開会にあたって同社 山口芳基社長が挨拶に立ち、二つのエピソードを紹介した。一つ目は、山口社長が会長を務め創立70周年を迎えた日本グリース協会の創立記念祝賀会(本年10月に開催)が開催されたことで、その席で米国グリース協会(NLGI)の統計では2022年から2024年にかけてグリース世界需要が約120万tから約110万tに減速しているものの、10万tの落ち込みはほぼ中国、北米、欧州の需要が占め、日本は1%程度しか低下しておらず7万t超の需要を維持できていることに対し、「ひとえにグリースユーザーのおかげ」と感謝の意を述べた。二つ目は、同じく創立70周年を迎えた日本トライボロジー学会(JAST)の佐々木信也会長(東京理科大学 教授)に創立70周年記念祝賀会での記念講演の依頼から交流を深めたことで、これを機に両会で日本のトライボロジーのマーケットを広げる共創を始めるきっかけとなったことに対し「出会いの重要性」を強調した。「本日は、カーボンニュートラル実現につながるユーザー各位の取り組みと、ニッペコの近年の新たな取り組みに関する発表がなされた後に、懇親の場も設けている。全会を通じて、グリースメーカーである当社と、ユーザーやサプライヤーの交流によって、新しいビジネスへの共創につなげられれば、うれしい」と述べた。
 

開会挨拶を行う山口社長


 続いて、以下のとおり講演が行われた。

「鉄道車両用潤滑剤の脱炭素化に向けた取り組み」鈴村淳一氏(鉄道総研)

 鉄道車両用潤滑剤の脱炭素化に向けた方向性として、使用済み油の再生利用、更油周期の適正化、バイオマス原料の適用などが考えられる。遠心分離により使用済み車軸軸受油は、比較的容易に再生できる可能性があるとした。更油周期の適正化に資する潤滑油の評価・診断技術およびオンラインセンサを適用した油分析による機器の状態診断/監視技術は、油の廃棄量削減や機器の非解体検修、車両故障の防止が期待でき、脱炭素化に貢献できる、とした。
 

講演する鈴村氏

 

「適切な装置管理を支える~潤滑剤の“劣化”を見極める要素技術開発の取り組み~」和田山勝也氏・岩間由華氏(IHI)

 適切な管理項目・管理基準を設けて潤滑剤の状態を簡便に正しく測ることで、設備の品質維持・向上、管理コストの低減といった管理上のメリットが得られる。例えば潤滑剤中の水分量が摩耗に及ぼす影響について基礎的な調査を行った結果、予想よりも少ない水分量で影響が生じることが分かった。また、熱分析により、グリース試料のちょう度を推定できる可能性があることが分かった。同社では、分光センサなどを用いて潤滑剤の状態を監視し、異常検知、予兆保全、品質管理への活用に取り組んでおり、今後は機械学習を取り入れ活用の場を広げたい、とした。
 

講演する和田山氏

 

講演する岩間氏

 

「アイシングループのカーボンニュートラルに向けた技術開発の取り組み」平塚一郎氏(アイシン)

 ニッペコのグリースがスムーズで静かな可動を目的に使われているアイシンのサンルーフ、ドアロック、パワースライドドアなどの製品技術について紹介がなされたほか、同社のカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、技術開発力とものづくり力、グループの三つの強みを生かした鋳造用バイオ成型炭、ペロブスカイト太陽電池発電システム、水蒸気SOEC(固体酸化物型電解セル)システムなどの開発事例を紹介した。最後にグリースとカーボンニュートラルの話題に触れ、水素製造環境下で使用できるグリースが求められている、とした。
 

講演する平塚氏

 

 続いて、ニッペコの原 規公氏、井出優希氏よりそれぞれ、「バイオマスグリース BIOLUB® GS-SPのご紹介」、「フッ素グリースの真価~過酷な環境に応える潤滑技術~」と題して、同社製品・技術の紹介がなされた。

 植物由来オイルの基油とリチウム石けん増ちょう剤からなるBIOLUB® GSに、さらにバイオマス由来の極圧添加剤を加えて極圧性をアップさせたBIOLUB® GS-SPが、耐久性を実現しつつカーボンニュートラルに寄与するバイオマスグリースとして直動案内機器に採用されたことや、食品機械用潤滑剤の規格NSF H1を取得しており食品機械用グリースとして使用が可能なこと、さらに、バイオマスマークを取得済みのBIOLUB®シリーズがPAO基油/リチウム石けん増ちょう剤グリースに比べ同等の性能を有しつつCO2排出量を約70%削減できると報告。

講演する原氏


 

 また、機器や設備への高性能化要求が高まる中で、低トルク性や低温性、耐薬品性など各種の優れた特性から厳しい環境下で幅広く使われるフッ素グリースにおいても、低トルク性と低揮発性の両立、低温性と低揮発性の両立、金属対金属の潤滑性の改善、高湿環境下での潤滑性の改善、低アウトガス性の向上といった、より高度な要求性能が突きつけられている。これら課題に対応する、レンズ曇り対応、極低温対応、金属対金属対応、高湿環境対応、真空設備部向けの各種フッ素グリースの技術について紹介した。
 

講演する井出氏

 

 講演終了後に挨拶に立った営業本部 部長の沢田 茂氏は「今回のセミナーでは、最新のトライボロジー技術を中心に発表いただいた。皆様にとって有意義な時間となっていれば幸いと思う。今後も当社は、より良い情報の発信と学びの場の提供に努めていく所存なので、引き続き、皆様のご支援、ご参加をお願いしたい」と述べ、閉会した。
 

閉会の挨拶を行う沢田氏

 

 当日はまた、環境対応型グリースや射出成形金型用グリースなど、ニッペコの新しい製品技術に関するポスターセッションが行われた。

kat

東京理科大学・佐々木研究室、白層討論会を開催

6日 3時間 ago
東京理科大学・佐々木研究室、白層討論会を開催admin 2025年12日10日(水) in

 東京理科大学・佐々木研究室は12月5日、東京都葛飾区の同大学 葛飾キャンパスで「摩擦下における鋼の白色組織形成と疲労摩耗メカニズムに関する討論会(白層討論会)」を開催した。当日は佐々木信也教授の趣旨説明の後、以下の講演が行われた。

白層討論会のもよう

「水素可視化による金属研究へのアプローチ」物質・材料研究機構(NIMS) 板倉明子氏…近年、水素エネルギー利用が拡大する中で、水素が金属材料へ及ぼす影響を“その場で可視化”する技術の重要性が高まっている。従来は、水素透過挙動や拡散係数の評価に間接的手法が多かったが、板倉氏は電子顕微鏡内に水素導入系を組み込んだ 「オペランド水素顕微鏡」を開発し、材料内部の水素分布や時間依存性を直接取得するアプローチを紹介した。装置はSEMをベースに電子誘起脱離イオン(DIET)検出系と温度・圧力制御系を統合し、試料表面から放出される水素イオンを空間分布として取得する。SUS304を対象とした測定では、約65時間にわたり520枚(2048×2048px)の水素分布画像を連続取得し、粒界や相界面に沿った透過の偏り、オーステナイト/マルテンサイトで異なる吸蔵挙動などが明瞭に観察された。また、高純度水素フィルター開発やバナジウム合金の透過実験では、SEM像と水素マップを対応づけ、粒径・組織の違いが透過量へ及ぼす影響を検証した。補助的に銀デコレーション法も用い、水素チャージ時間に応じた析出分布変化を観察している。さらにCr2O3皮膜など耐食処理層が水素吸蔵を抑制する可能性も示された。板倉氏は、本技術が金属のみならずセラミックスにも展開可能であり、今後は溶接部の局所透過や軽金属への応用、装置小型化による実用材料評価へと発展するとまとめた。

「転がり軸受案内の白色組織はく離に関する研究とグリース・鋼材開発」ジェイテクト 材料研究部 金属材料研究室 金谷康平氏…白色組織(WEA)を起点とする早期はく離は、電装補機用軸受などで1990年代から報告され、そのメカニズムはいまだ統一的な理解に至っていない。本講演では、ジェイテクトが蓄積してきた水素起因説に基づく体系的な解釈が示された。高温・静電気・振動などによりグリース中の水分や炭化水素が分解し水素が発生、すべり接触で露出する鋼の新生面から水素が侵入する。侵入水素は応力集中部に偏在し局所塑性すべりを誘発、微小き裂や針状組織を形成し、進展するとWEA・巨大き裂に至るという流れである。水素雰囲気試験の結果、転動中に外部雰囲気から直接水素が侵入するのではなく、主な水素源はグリース由来であることが判明した。また、水素発生量と摩耗量の間には高い相関が認められ、界面反応を抑制するグリース設計が耐白色層性向上の鍵となる。さらに鋼材側では、残留オーステナイトや結晶粒界など有害なトラップサイトによる拡散性水素の増加を抑制し、微細析出物によって無害化水素を増やす材料設計が有効であることが示された。耐久試験では、微細炭窒化物を多量に析出させた鋼が従来材を大きく上回る寿命を示し、WEA起因はく離に対する有望な材料として位置付けられた。

 当日は、九州大学大学院 工学研究室 田中宏昌氏が「軸受の疲労摩耗に及ぼす水素の影響」と題した発表を行う予定だったが、前2件の講演後の討論が白熱したこともあり短縮版として発表、次回の同討論会でフルレンジの発表を行うこととなった。

 

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