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科学技術の潮流(338)AI for Scienceの展望(7)
材料相場表/PDFで公開
NTN、自動車向けボールねじで次世代ブレーキの先行開発に参画
NTNは、自動車の電動化に伴い需要の増加が見込まれる電動機械ブレーキ(EMB:Electro Mechanical Brake)向けボールねじにおいて、国際的な主要メーカーの先行開発に参画している。同社は電動油圧ブレーキ(EHB:Electro Hydraulic Brake)向けボールねじを量産中で、その実績と技術を基盤に、EMB市場への展開を加速する。
NTNのEHB向けボールねじは、軸受技術を融合した駆動モジュールとして、主要ブレーキメーカー向けに量産中で、近年は欧州を中心に各地域で新規案件の引合いが増加、採用の広がりが続いており、供給と販売体制の強化を進めている。
ボールねじは、回転運動を直線運動に変換する機構で、自動車のさまざまな部位に採用されている。NTNは2004年に自動車向けボールねじの量産を開始し、エンジンやトランスミッション用途を中心に実績を重ねてきた。さらに2012年にはEHB向けボールねじの量産を業界に先駆けて開始し、以降、高い応答性や信頼性が求められる領域で技術を進化させている。
NTNでは現在、EHB向けにボールねじ、ギヤ、軸受などを一体化した駆動モジュールとして展開しており、要素部品の一体化によりブレーキシステムに求められる高い応答性と制御性を実現するとともに、性能向上と設計自由度の両立に寄与している。また、軸受で培ったトライボロジーや熱処理、精密加工技術を生かした高品質・高信頼性と、安定した量産体制を確立している。
今後は、日本をマザー工場とし、アジアや欧州での生産展開も検討しており、グローバル供給体制の構築を進めていく。
EHBは、衝突回避支援ブレーキの義務化やADAS(Advanced Driver Assistance Systems:自動運転支援システム)の普及を背景に、今後も需要拡大が見込まれる一方、油圧配管を必要としない次世代ブレーキとしてEMBへの移行が進展すると予想されている。EMBでは、車両1台あたりのボールねじ使用本数の増加も見込まれ、中長期的な市場拡大が期待される。
NTNは、これらの市場動向を踏まえ、EMB向けボールねじの開発を進めており、先行開発に参画し、試作対応を進めている。
NTNは、EHBで培った実績と技術を基盤にEMB市場への展開を加速することで、自動車の電動化と安全性の高度化に貢献するとともに、グローバル市場における事業拡大に取り組んでいく考えだ。
電動油圧ブレーキ(EHB)用ボールねじ駆動モジュール電動機械ブレーキ(EMB)用ボールねじ
川崎重工業、米国・シリコンバレーにフィジカルAI開発拠点を開設
川崎重工業は、AI・半導体分野における日米連携を加速するために、米国・シリコンバレーに、フィジカルAIの社会実装を推進する拠点「Kawasaki Physical AI Center San Jose」(以下、本センター)を開設した。AI開発を行う世界のトッププレイヤーであるNVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通などとの協業を推進していく。
同社は5月21日に開所セレモニーを開催し、AI開発企業などの代表者、本センターの開設に協力を得た日本政府機関の関係者を前に、橋本康彦・同社社長が挨拶に立ち、「本センターでは、高齢化と労働力不足という世界共通の課題を抱える医療・介護分野にまず注力します。フィジカルAIとロボティクスとの融合で、来院から診察、治療、手術、術後ケアまでを一貫して支援する「病院ワンストップソリューション」を確立する。さらに、半導体・自動車など幅広い産業分野やニューモビリティの分野への適用も同時に進めていくことで、さまざまな分野で共通のフィジカルAIとロボティクスの融合ソリューションを展開させる。重要なのは現場に根付き、継続的に活用され、医療の質向上に貢献すること、これが私たちの目指す「社会実装」であり、我々は、人の置き換えではなく、人の判断と行動を安全・効率的に支援するフィジカルAI を目指す。本センターには、AI、半導体、ソフトウェア、アカデミア、そして現場の課題を理解するパートナーが集まる。ここをグローバルなパートナーシップの起点にしたいと考えている」と述べた。
近年、AIの進化により、製造、医療・介護、モビリティなど幅広い分野でフィジカル AIの活用が期待されている。フィジカルAIは、現実空間で自律的に認識・判断し、機械を通じて物理的行動を起こすAIで、社会実装を加速化させるためには「現実世界」に関するデータが必要となる。
川崎重工業では、航空宇宙、造船、エネルギー、プラント、モーターサイクル等の幅広い事業領域を有している。これらの製造現場から生み出される、多様な現場データやノウハウを長年にわたり蓄積しており、フィジカルAIが価値を発揮する「現実世界」において強みを持つ。同社はこの強みを最大化し、フィジカルAIに関する研究や実証の域を超えて、新たな事業領域の創出や既存事業の拡張に繋がる共創活動を、AI開発プレイヤーとともに取り組む拠点として、本センターを開設したもの。
同社は、シリコンバレーにおいて、世界でトップシェアを誇る半導体製造装置向けロボットの販売・サービスを展開しており、本センター開設を機に、AI開発に取り組む世界的なテック企業やアカデミアが集積し、最先端の技術・人材・パートナーが集まる世界有数の地域において、様々なテック企業やアカデミアと連携していく。まずは医療・介護分野およびモビリティ分野を起点に、川崎重工グループとして有する自律走行サービスロボット(Nyokkey)、屋内配送ロボット(FORRO)、手術支援ロボット(hinotori(TM)※)、ロボティック・マルチレッグド・ビークル(CORLEO)などの製品とフィジカルAIを組み合わせた、現場に根ざしたソリューション創出を目指す。
川崎重工業とNVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通との具体的な協業テーマは、以下のとおり。
・NVIDIA: 医療をはじめ、多様な分野における、AI・ロボティクス技術を融合した新たなソリューションの創出
・Analog Devices:AI・オーディオ・マニピュレーション技術を融合した、幅広い業務に対応できるロボットの実現
・Microsoft:信頼性と拡張性を備えたクラウド/AIプラットフォームの活用により、実世界でのソリューションの導入を加速
・富士通:業務システム・ロボットシステム・AIが連携によるヘルスケア領域における新たな価値提供の実現
また、本センターは、市場や顧客との接点である日本国内の開発拠点や本年3月にフランス・ストラスブールにて運営を開始したR&Dイノベーションセンター「Kawasaki Innovation Centre Europe SAS」とも連携を行い、各地域のニーズを取り入れたトータルソリューションとしての実用化を担うことで、フィジカルAIの社会実装の推進を加速させていく。
同社では、社会課題の解決と持続的な事業成長の両立に取り組むため、長年蓄積してきた製造現場に関するデータ・ノウハウを有する強みを生かしながら、今後も世界的に注目されているフィジカルAI(医療を含む)や半導体分野へ重点的に投資していく考えだ。