DLC(ダイヤモンドライクカーボン)が紙面をにぎわしている。高硬度で耐摩耗性に優れ、低摩擦で潤滑性にも優れる。金型では離型性の改善などに、切削工具ではドライ・セミドライ用途などに、人工関節では耐摩耗性向上などに利用され大活躍だが、その名前からは「ダイヤモンドのまがい物」のイメージがぬぐえず、DLCの先発メーカーではICF(真性カーボン膜)という呼称も使い始めている。
さて、ガイ・リッチー監督の本作も、本物とまがい物が入り混じったジェットコースター・ムービーである。ロンドンの下町イースト・エンド。非合法ボクシングのプロモーター、ターキッシュ(ジェイソン・ステイサム)と相棒トミー(スティーヴン・グレアム)は、ノミ屋経営の黒幕ブリック・トップ(アラン・フォード)のために八百長試合を仕組む中で、なくなくパイキー流浪民のミッキー(ブラッド・ピット)を敗戦ボクサーに仕立てることになる。一方、ベルギーでは86カラットのダイヤを強奪した4本指のフランキー(ベニシオ・デル・トロ)がNYのボス、アヴィー(デニス・ファリーナ)に届ける途中で仲間の裏切りに会い、ダイヤを奪われる。ダイヤを受け取るはずだったアビーは凄腕の殺し屋ブレット・トゥース・ハニー(ビニー・ジョーンズ)を雇い、フランキーとダイヤの行方を追う。
ダイヤをめぐる熾烈な争奪戦と賭けボクシングの裏取引が交錯するなかで、本物のダイヤと人工ダイヤが、八百長のボクサーと実力派のボクサー・ミッキーが、レプリカのガンと最強の自動拳銃・デザートイーグル50が登場する。ダイヤを奪おうとする間抜けな黒人3人組がレプリカのガンですごんでみせるところで、殺し屋ブレットはデザートイーグルを見せる。「こいつは本物だ」と。このガス・オペレーテッド・リピーティング・システムは、高圧のガスをうまく使い銃身を固定、命中精度が高く、その威力はレベル?規格のボディーアーマー(防弾チョッキ)をも貫通するという。たしかにレプリカの銃ではデザートイーグルに太刀打ちできっこないだろう。
人工ダイヤも宝飾用途としての価値は言わずもがなだが、その高い硬度から、研磨や切削加工など工業用では実に重宝されている。墓石の御影石だってスパッと切断できるのである。
「まがい物といわれたって、ただじゃ終わらない」この映画は、そんなことを感じさせる一作でもある。