高機能トライボ表面プロセス部会、第24回例会を開催
表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)は9月6日、岐阜県岐阜市のハートフルスクエアーG/岐阜市生涯学習センターで第24回例会を開催した。
今回は上坂代表幹事から開会の挨拶と岐阜大学工学部附属プラズマ応用研究センターの紹介がなされた後、以下のとおり、講演が行われた。
挨拶する上坂氏・「立方晶窒化ホウ素のイオンビームアシストMBE成長: 結晶多型と電気伝導性の制御」平間一行氏(日本電信電話 NTT物性科学基礎研究所)…①イオンビームアシストMBE法によるcBN薄膜のヘテロエピタキシャル成長において、Ar+照射によるsp3結合の選択的な形成が可能、②BN薄膜の成長相図構築と成長モデルの提案として、FAr+/FB>1:sp3 cBN成長、の式を示し、イオンの役割としてはcBN相の形成とt-BN相の優先的なエッチングがある、③典型的な結晶欠陥と熱的安定性については、低い成長温度では積層欠陥による双晶が形成し、N2雰囲気1300℃まではcBN構造は安定、それ以上ではsp2結合相に構造相転移する、④cBN薄膜上のダイヤモンド成長とn型SiドープcBN薄膜の電気伝導性制御を実証した、と総括した。
講演する平間氏「層間すべりと化学作用を伴う水潤滑下のhBNの低摩擦特性」齊藤利幸氏(ジェイテクト)…層間すべりと化学作用を伴う水潤滑下のhBNの低摩擦特性に関して、①水潤滑下でhBNは低摩擦・低摩耗を示す、②hBNの層間すべりは低入射XRDでも確認可能、③定量可能な量のアンモニアが摩擦により生成される、④hBNの摩耗は機械な作用が大きい、⑤実用の一案としてはhBN配合材も想定可能、と総括した。
講演する齊藤氏・「プラズマCVD法を用いた高品質cBNコーティングの合成とその応用」堤井君元 氏(九州大学)…高密度プラズマとフッ素の強い化学作用を用いればcBN生成に強いイオン衝撃は必ずしも必要なく、最小で数eV~10eVの平均イオンエネルギーでもcBNは生成できる。弱いイオン衝撃化で得られる低残留応力cBN膜を用いれば密着性の良い薄膜が形成可能で、WC-Co上では中間層挿入や化学親和層形成が望ましく、バイオ応用も期待される。高結晶性cBN 膜によって電気的応用が可能となりつつあり、現状の多結晶は電子エミッターと誘電体応用が、もし単結晶が可能になれば半導体応用が期待される。今後の課題として、①イオン衝撃を必要としないcBN 膜の形成法、②高品質・大面積バルク単結晶cBN基板の作製法、③長期的視野、分野活性化、支援(人>資金>スペース)、④生成条件の再現性、装置依存性、を挙げた。
講演する堤井氏「電子ビーム励起プラズマCVD法によるcBN膜コーティング」髙島成剛氏(中日本炉工業)… 現在のcBN切削工具は焼結体のみで、大きさ、形状が制限されるため、cBN膜コーティングによる切削加工の高速化・多様化の実現を目指した。しかし、cBN成膜はダイヤモンド合成と同様に高温高圧状態が必要なため、高密度なプラズマ源が必要、成膜時にイオン衝突を必要とし、膜中に巨大な内部(圧縮)応力を蓄積するため密着性が乏しく、はく離が発生するという課題があった。これに対し、電子加速電圧を変えることで最適な電子エネルギーを選択でき高密度なプラズマを生成できる電子ビーム励起プラズマ(EBEP)CVD装置を用いて、ホウ素膜とBN傾斜膜の中間層の形成による密着性の確保(ホウ素膜:cBN膜の膜応力の緩和、BN傾斜膜:ホウ素膜とcBN膜の密着性確保)を実現した。厚膜化の要求に対しては、膜厚(BN傾斜膜+cBN膜)の成膜時間依存性をクリアする成膜温度制御によって成膜時間を短縮、基材の温度制御によって50GPa以上の高硬度化と60N以上の密着力を実現している。
講演する髙島氏当日のもようadmin 2024年9月13日 (金曜日)